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Taipei Game Show 2003現地レポート

Soft-World宣傅課課長謝明娟氏インタビュー
台湾における「ラグナロクオンライン」事情を聞く
「仙境伝説」はカップルで楽しむMMORPG

2月20日~24日開催

会場:世界貿易中心

 ひとくちにMMORPGといっても、ハイファンタジー系から、SF系、人気ゲームのMMO化までさまざまなタイプのものが存在する。中でも「可愛さ」で頂点を極めた作品が韓国Gravityの「ラグナロクオンライン」だ。日本ではガンホー、そして台湾および中国ではSoft-Worldの子会社Game flierがサービス展開している。

 台湾でも「ラグナロクオンライン」は絶大な人気を獲得し、正式サービス開始からわずか4カ月で、Soft-Worldタイトルの中で最高のユーザー数を獲得するに至った。日本での好調ぶりから見れば、この現象は納得できるものともいえるが、そうした人気ぶりとは裏腹に、これほどゲームトラブルの多いMMORPGも他に類を見ない。そこで今回は台湾における「ラグナロクオンライン」サービス展開の内情を聞いてみた。

 今回インタビューに応じて頂いたのはSoft-Worldの宣傅課課長謝明娟さん。傘下子会社の全タイトルのマーケティングを担当している。質問で不明な点があると、すぐ携帯電話を取り出し、その場で担当者に確かめるという機敏さと誠実さが印象的だった。


■ 「仙境伝説」の会員数は148万人! 「口袋情人」のユーザーの反応は?

Soft-Worldの宣傅課課長謝明娟さん。左手のロゴ入りヘルメットも彼女の考案という
「仙境伝説 口袋情人」お正月バージョン。台湾では2月上旬に旧正月を迎えたばかりだ
街が混み合うのは万国共通の現象といえるようだ
編集部(以下、編) それではまず最初に、遊戯新幹線(Game flier)の会社概要について教えてください。

謝明娟(以下、謝) 昨年の6月に設立された新しい会社です。スタッフは100名ぐらいですが、現在、GM(Game Master)やカスタマーサポートを中心に人員を増員しています。現時点でサービスを行なっているのは「仙境伝説(ラグナロクオンライン)」だけですが、今後は新しいタイトルを扱うことも検討しています。

 βテストはいつから始まったのでしょうか?

 昨年の8月から「仙境伝説」のβテストを開始し、10月から正式サービスに切り替わりました。ただ、現在もテストサーバーを設置し、ここはβテストと同様に無料でプレイすることができます。

 それではテストサーバーにユーザーが集中してしまうのではないですか?

 テストサーバーをプレイするユーザーは、既存ユーザーと新規ユーザーの2種類がありますが、サーバーのユーザー数が4千人に達すると正式なサーバーとして運営がスタートするという仕組みになっています。その時点でまた新しいサーバーをテストサーバーとしてスタートさせるわけです。

 「仙境伝説」の現在のユーザー数と最大アクセス数を教えてください。

 19日の時点で会員数は146万人、最大アクセス数が12万8千人です。もっと正確な数字をお教えします(といって携帯を取り出す)。21日の時点で会員数148万人、最大アクセス数が13万3千人です。

 ユーザーのコアな年齢層はどれぐらいでしょうか?

 15歳から25歳の女性が中心になっています。正確な数字は未調査なので出てませんが、女性が5割を越しているのは確かです。サーバーの増強などに手間が掛かりすぎて、ユーザーの分析などはまだ実施できていません。

 現在ゲームサーバーは何台で運営されているのでしょうか?

 確認してみます(といって携帯を取り出す)。正式サーバーが15台、テストサーバーが1台です

 中国でも正式サービスを開始されたそうですが、反応はいかがですか?

 中国では1月1日から正式スタートしました。先週のデータで同時接続数が4万2千人。会員数はまだデータが出ていません。正確なデータが出ないのは、中国大陸はまだ都市同士の繋がりが薄く、北京、上海、香港という風に都市ごとにサーバーが完全に独立しているためです。この4万2千人という数字は上海だけのものです。香港は台湾サーバーに接続します。北京はこれからですね。

 「仙境伝説 口袋情人(ラグナロクオンライン ポケットの中の恋人)」の内容について教えていただけますか。

 ペットシステムを実装した「仙境伝説」の最新バージョンです。スターターキットを1月28日から発売し、2月8日からサービス開始しました。

 モンスターをペットにするには、捕まえるための捕獲道具とおびき寄せるためのエサが必要です。モンスターを捕まえるとタマゴに変わり、今度はそれを孵化させるための孵化器が必要になります。ぶじタマゴを孵化させるとペットが誕生し、フィールドはもちろん、街にも自由に連れ歩けるようになります。

 ペットにはエサを与えて大事に育てていきます。エサを長期間与えないと逃げられることもあります。育ったペットは、ご主人が戦闘する時に、さまざまなアニメーションで応援してくれます。可愛い表情が多いです。

 ペットはどれぐらいのバリエーションがあるのですか?

 タマゴの時点では8種類ですが、孵化させることによって10数種類のペットに変化します

 すると、ポリンを捕まえてタマゴを孵化させてみたら、まったく違うペットが生まれることもあるわけですか?

 そうです。タマゴの育て方によって属性値が代わり、違うペットが生まれることもあります

 ユーザーのあいだで人気のペットはなんでしょうか?

 レベルの高い強力なペットが好まれます。ポリンのような可愛いペットはレベルが低いため好まれません。

 ペットのレベルが高いことによって何かメリットがあるのですか?

 特にないです(笑)。ただ、レベルが高いペットのほうが連れ歩いていて格好いいと思われるんです。可愛いのでは鬼女(女キョンシー)が人気が高いですね

 この39元で発売されている「仙境伝説 口袋情人」のスターターキットですが、現在までにどれぐらい販売されたのでしょうか?

 約30万本ぐらいです。このスターターキットは、199元と399元の限定版も含めて3種類をリリースしています。これらも合わせると35万本ぐらいになります。

 「仙境伝説 口袋情人」のユーザーの反応はいかがですか?

 MMORPGはレベル上げだけではいつか飽きてしまいます。今回のような新しい機能を加えたものを定期的に発売することによって、ユーザーに新しい刺激を与え、すでにやめてしまったユーザーにも復帰してもらうことができます。

 なるほど。それでは「口袋情人」のひとつ前のキットはどういう内容だったのでしょうか?

 「愛情競技場」というもので、PvP用のコロシアムを追加しました。しかし、台湾のラグナロクユーザーはPKはあまり好きではなかったようで、コロシアムに入る人はあまりいなく、外でチャットしたりするユーザーが多かったです。

 コロシアムのシステムはどうなっているのですか?

 レベルわけされていて、レベル1~10、11~20、21~30と、レベル100までの部屋が用意されています。ひとつのコロシアムの中に最大160人まで入れます。

 「愛情競技場」のスターターキットはどれぐらい発売されたのでしょうか

 発売は11月で、2カ月で30万本を売り切りました。これ以外に無料ダウンロードや雑誌へのバンドルなどもあります。これらの数字は含んでいません。また12月のクリスマスには50万の特別パッケージを無料配布しました。

 なるほど。そうすると「口袋情人」の2カ月後にはまた新しいパッケージが発売されるのでしょうか?

 それはないです。我々としても10月のスタートからここまでやや急ぎすぎたという実感があります。プログラム自体も非常に不安定なところがありますので、慌てて新しいパッケージを売るよりは、システムの安定に力を入れようと考えています。希望としては6月ぐらいに新しいパッケージを発売しようと考えています。

 それはどういう内容になりそうでしょうか、またタイトルは決まっていますか?

 タイトルはまだ決定していませんが、新二次職や新しいエリアの追加などになりそうです。

ペットを捕獲するとスロットが回転し、それに当たるとタマゴが獲得できるようだ。右の画面を見ればわかるようにタマゴは複数の種類がある。どれを捕獲機にかけるかで自分のペットが変わってくるようだ


■ ゲームに奨学金? 驚きのイメージ戦略の数々

「口袋情人」のひとつ前のバージョンにあたる「愛情競技場」のスターターキット。
「仙境伝説」のテレビCMを担当した陳怡蓉と許紹洋のおふたり。CMではまったく喋らない2人がサイン入りグッズを売るのだから、人が集まるのも理解できる気がする
 いまのお話しはおそらくGravityが「Episode 2.0」と名付けている内容だと思います。まだ日本ではペットシステムすら実装されていないのですが、2.0には特に新二次職を中心に大きな期待が寄せられています。この点、台湾ではいかがでしょうか?

 うーん、それほどでもないような気がします(笑)。台湾では毎回新しいデータ集に「情人」とか「愛情」などと名付けていますが、これはプロモーション戦略の一環です。台湾では「Lineage」や「金庸群侠伝」は男性向けのMMORPGとして認知され、「石器時代(Stone Age)」や「クロスゲート」は女性向けのMMORPGとして認知されています。つまりこれまでは両極端だったわけですが、「仙境伝説」は男性と女性のカップルが一緒に楽しめるようなMMORPGとして売り出しています。

 たとえば、「愛情競技場」は、エリア限定でPKが可能になるという内容ですが、タイトルに「愛情」の文字を加えて、競技場で新しい恋人に出会えるようなそんな柔らかいイメージにしてます。次のデータ集のタイトルも、本来の方向性とは少し異なるものになるはずです。

 なるほど。それにしてもカップルがターゲットというのはおもしろい考え方ですね。このイメージ戦略は成功したといえそうですか?

 我々としては大成功を収めたと考えています。「仙境伝説」では陳怡蓉と許紹洋という台湾では有名な芸能人をテレビCMに採用しました。このテレビCMは1回40秒で、ひとつのドラマ仕立てになっています。セリフなしです。

 ストーリーの概略は、男(許紹洋)は昼間は石像になって、夜しか人間の姿になれない。女は昼間は人間の姿だけど、夜は画中の人となってしまう。ふたりは恋人同士ですが、唯一ふたりが出会えるのが明け方だけという内容です。この間、「仙境伝説」の情報は一切登場せず、実写映像だけが映し出されます。BGMは「仙境伝説」の主題歌です。謳っているのは日本人の土屋亜有子さんという方です。これが凄く話題になりました。

 現在、台湾では日本のドラマや映画などが流行っているのですが、このようなCMにしたことによって、多くの人が「これは日本のドラマか映画のCMかな」と注意を持って見てくれたようです。

 今後のプランなどは何かありますか?

 そうですね、我々が見る限り、「仙境伝説」のプレーヤーは他のMMORPGに比べて礼儀正しい人が多いように思います。そこで今後は「『仙境伝説』をプレイしている子供は賢い子供」といったイメージを植え付けていきたいと考えています。具体的には奨学金制度などですね。ラグナロクプレーヤーの中で学校成績が優秀な人には奨学金をいくら与えるといったようなプランも検討しています。


■ 台湾でもシステムトラブルに大苦戦 ゲーム内の詐欺行為にも刑事罰を

 先ほどシステムが不安定というお話しが出ました。これについて具体的に教えてください。

 一番大きな問題は、サーバー負荷です。Gravityは1サーバーで5,000人が限度といっていますが、実際には常時10,000人以上がアクセスして、ラグが酷かったり、長時間ログインできないユーザーがいたりといった問題が発生しています。

 このユーザー数の多さというのは、実は完全に予想外の現象でした。それまでSoft-Worldで一番売れていたMMORPGは「金庸群侠伝」でしたが、数カ月でそれを追い抜き、いまや「Lineage」に勝るとも劣らない人気です。少なくともBBSの投稿者数では完全に一番になっています。

 韓国や日本と似た状況ですね。ちなみに日本ではギルド機能やパーティー機能といったシステムの根幹部分に障害が発生し、いまだに復旧の目処が立っていません。こうしたトラブルは台湾では発生していないのでしょうか?

 台湾ではパーティーもギルドも正常に機能しています。いまのところゲーム内のすべての機能は正常に稼働しています。

 日本ではBOTや各種ツールを使ったチート行為も数多く報告されています。これについてはいかがですか?

 弊社としては厳しく取り締まっているつもりですが、チート行為に対して「もっとしっかりやってくれ」というユーザーの意見は多いです。発見したらIDの取り消しです。

 日本では今月、一部のユーザーによる不正行為が行われた結果として、サーバーのロールバックが実施されました。こうした例は台湾ではないのですか?

 台湾でも先月ロールバックが実施されました。こちらは不正行為ではなく、プログラム上のバグが原因です。日本と同じ原因なのかもしれませんが、お金がいくらでも複製できたり、強力な武器が手に入ったりできるバグです。BBSを通じてあっという間に広がり、韓国や日本にも伝わってしまいました。

 こうしたクリティカルなバグについてどのように考えていますか?

 上記のバグは台湾が一番先に発見し、Gravityに通報して修正してもらいました。確かに「仙境伝説」は自社で開発運営しているMMORPGなどに比べてもバグが多いです。この対策としてはGravityから5人程度の人員を派遣してもらい、24時間体勢で処理をしてもらっています

 ユーザーの中にはログインするとスキルやアイテムを消失していたといった話も聞かれています。台湾ではこうしたトラブルはどのように対処されているのでしょうか?

 システム上の問題で発生した場合は個別対応になります。また、悪意あるプレーヤーによってそのような行為が行なわれた例も報告されています。この場合、被害者は警察に届け出てもらって、協議の上、しかるべき処置を執ります。

 警察にはオンライン専用の「偵九隊」という部署があり、ここに届け出ることによって、悪事を働いたユーザーに、アカウント取り消しに加えて、刑事罰を課すことができます。この前、実際に捕まったユーザーがいたのですが、犯人は中学3年生でした。多くのユーザーはゲームをプレイする前にポイントを登録する必要があるのですが、そのウィンドウを自分のホームページに貼り付けて、コードを盗もうとしていたのです。被害者はおらず、犯人も若いので警察には告訴を取り下げてもいいと伝えましたが、そういうわけにはいかないようで、彼には詐欺罪が課せられたようです。

 それはちょっと怖い話ですね。それでは最後に将来的な展望についてお聞かせください

 今年1月から中国でも正式サービスをスタートさせましたが、今後はさらにタイとマレーシアにも広げようと考えています。また、今後は台湾だけでなく、中国、香港、韓国、日本でも通用する国際的なイメージキャラクタを育てていきたいと考えています。

 それは趙薇(ヴィッキー・チャオ)みたいな中国圏のスターをイメージキャラクタに起用するということですか?

 そうですね。すべての国で知名度の高い芸能人です。現在、芸能プロダクションを通じて探させていますが、ビビアン・スー(Gamaniaの「エターナルカオス」のイメージキャラクタ)ではないことは確かですよ(笑)

 なるほど(笑)。長い時間ありがとうございました。

□Taipei Game Show 2003のホームページ
http://show.tca.org.tw/tgs/
□Soft-Worldのホームページ(中国語)
http://www.soft-world.com/
□「仙境伝説」のホームページ(中国語)
http://ro.gameflier.com/

(2003年2月23日)

[Reported by 中村聖司]


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