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Taipei Game Show 2003現地レポート

Taipei Game Show 2003 Gamania&Soft-Worldブースレポート
単純で複雑な台湾ゲーム事情

2月20日~24日開催

会場:世界貿易中心

 続いては、大手メーカーのブースレポートをご紹介していく。来場者の注目を集めたタイトルはやはり大手に集中していたが、大手はライセンスものが多く、ブースの小さいメーカーのほうが逆に自社開発もので一発を狙っていたりと、日本や欧米とはもちろん、韓国とも異なる台湾独自の出展風景が印象的だった。本稿では、台湾を代表するゲームパブリッシャーであるGamaniaとSoft-Worldを中心に台湾のゲーム事情を見ていく。


■ 台湾最大手はMMOG(Massively Multiplay Online Game)ばかりを出展
~Gamania Digital Entertainment

自社開発タイトルの「巨商」。MMORPG+RTS的なノリの経済MMORPG
平面マップ上でコミカルなキャラクタを操作して対戦相手を倒していくお手軽なMMOG「Cococan」
同社今年最大のチャレンジといえる「EverQuest」。3DMMORPGの元祖はどこまで台湾市場に食い込めるのか
初日のステージには台湾の行政院長(首相)游錫坤誌が出席(右)。日本や欧米ではちょっとありえない光景だ。隣はCEOのAlbert Liu氏
 韓国NC Softからライセンスを受けたMMORPG「天堂(Lineage)」の大ヒットで一躍台湾トップのゲームパブリッシャーとなったGamaniaは、会場のちょうどど真ん中に最大のブースを構え、ゆったりした展示構成で多くの人を集めていた。

 出展タイトルは、「天堂 遺忘之島(リネージュ 忘れられた島)」、「巨商」、「EverQuest」、「混乱冒険2003(エターナルカオス2003)」、「Cococan」、「戦場(Hel Breaeth)」の6タイトル。弊誌の読者ならご存じのように、「天堂 遺忘之島」は韓国NC Soft、「EverQuest」は米Sony Online Entertainment、「混乱冒険2003」は韓国Nako Interactive、「戦場」は韓国SIEMENTECHの作品だ。

 残る「巨商」は韓国の開発子会社が開発している自社タイトルで、「Cococan」も内部開発によるMMOタイトルだ。同社は、台湾市場では現時点でほぼ唯一の本格的な海外展開を果たしているメーカーのひとつだが、子会社は北京、韓国、香港、日本、そして北米の5カ国に展開している。今後は海外展開している強みを活かし、自社開発にも力を入れていく方針のようだ。

 中でも「巨商」は、同社が次年度に向けてもっとも力を入れているタイトルのひとつだ。現在、台湾および韓国でβテストが行なわれており、春までには日本でも同様のテストが開始されるものと見られる。今回、初めてプレイアブルバージョンを見ることができたが、自社開発だけあって台湾人好みのMMORPGに仕上がっている印象だ。

 具体的には、オーソドックスな2DベースのMMORPGスタイルを採用しつつ、キャラクタの豊かなアニメーションや良く描き込まれたフィールドグラフィック、シンボル化された街に入ると、建物がずらりと並んだ1枚絵にかわって、さくさく取引が行なえるところなど、ゲームシステムの明快さとクライアントそのものの軽快さを何よりも重視する台湾人に好まれるゲームデザインになっている。

 ゲームに登場する国は、台湾、日本、韓国、明朝(中国)の4カ国。各国ごとに男女キャラが用意され、バリエーションは全8種類。デフォルトでは、中国女性はチャイナドレス、日本男性は侍風、日本女性は和服姿とこれまたわかりやすい設定になっている。自動翻訳機能を実装して4カ国対応にすればおもしろそうだが、そこまでは難しいということで、国別サーバーでの展開になる模様だ。

 なお、国内、国外両方でのギルド間領土争いが楽しめるように、各国ごとに細かく街が設定されており、大海原を亀甲船で移動するシーンなども見られた。旅商人的感覚と大航海時代的感覚をミックスさせたような懐の深い経済戦争MMORPGになりそうな雰囲気だ。

 一方の「Cococan」は、日本ではバンダイが展開している「ポトリス」の影響を強く受けた2Dベースの対戦ゲームで、現在台湾でβテストが行なわれている。同社CEOのAlbert氏の話によれば、「毎日、MMORPGばかりではユーザーは疲れてしまう、誰でも手軽に手が出せて、数十分でひととおり楽しめるようなライトなMMOGを造りたかった」ということだ。

 この背景には同社がリリースした3D MMORPG「混乱冒険」が台湾市場で予想以上に苦戦していることがある。同社の方向性、イコール台湾市場の今後の方向性は、現在βテスト中の「EverQuest」の成功如何によって決まるといっても過言ではないだろう。

MicrosoftのPCゲームは、「Age of Mythology」、「Combat Flight Simulator 3」、「Ralli Sports Challenge」、「Impossible Creatures」の4タイトル。AoM以外はすべて英語版のままで中文マニュアルを付けて発売されている


■ 「ラグナロクオンライン」を擁する、今もっとも勢いのいいオンラインゲームパブリッシャー
~Soft-World

規模は中の大程度だったが、一番の集客を見せていたSoft-World(智冠科技)
子会社Chinese Gamerの2大タイトル「金庸群侠伝」、「三國演技 Online」
「仙境伝説 口袋情人」のデモ機はフリープレイだが、自分のアカウントを使用する必要がある。中にはプリペイドカードをこの場で使う人も
 Soft-Worldは、3つのゲーム子会社を抱えた台湾大手メーカーのひとつで、自社内にしっかりとした開発ラインを備えているところが特徴。Gamaniaと同様にゲーム誌出版部門、流通部門を擁し、子会社ごとに異なる方向性を持たせている。

 子会社の中でも最大の規模を誇るのがChinesegamerで、自社開発タイトルはすべてここで取り扱っている。今回出展していたのは、「金庸群侠伝(Jin Young Online)」、「三國演技 Online(Three Kingdom Online)」の2タイトル。

 「金庸群侠伝」は、中国の作家“金庸”の武侠小説(台湾の書店に行くと、文庫版が司馬遼太郎のそれのように完全にひと棚占領している)をモチーフにしたMMORPGで、会員数250万、最大アクセス数95,000という国産タイトルとしては最高クラスの支持を集めている。基本的には2Dベースのリアル系MMORPGで、「Lineage」の台湾での大ヒットを受けて開発された背景もあり、同作の影響が色濃く反映されている。

 一方の「三國演技 Online」は、「三国志」の世界観をモチーフにしたMMORPGで、2002年6月にリリースしたばかりのピカピカの新作だ。担当によれば「まだまだこれから」ということだが、キャラクタたちのアニメーションは「Diablo II」並のレベルで、生産系の要素もたっぷりで、2DベースのMMORPGとしてはかなりグレードが高い。

 ゲームには曹操や劉備といった有名武将たちが多数登場し、会話シーンの武将絵はもろにコーエーの「三國志」シリーズの影響を受けている。「金庸群侠伝」はともかく、「三国志」は日本人に対する親和性も高いため、日本展開も考えているという。早ければ年内にも日本法人が開設される模様だ。

 そして現在もっとも注目されている子会社がGame flier。Gravityの「ラグナロクオンライン」の中国語版「仙境伝説」を台湾、香港、中国の3カ国で展開している。今回は、2月8日に正式スタートした最新アップデート「仙境伝説 口袋情人(ラグナロクオンライン ポケットの中の恋人)」を出展。Gravity直伝の派手なステージイベントでステージ前は常に超満員だった。Game flierについては、別途インタビュー記事で詳しい台湾「ラグナロク」事情をお伝えするつもりだ。

 3つめのTGLは、ゲームジャンル、開発国を問わず、幅広くライセンス製品を扱っている子会社。今年は日本ファルコムの「Zwei!!」の中文版もリリース予定とのことだが、現在猛烈売り出し中なのが「傳奇Online(Legend of Mir 2)」。これもまた「Lineage」タイプの2D見下ろし型MMORPGだが、プロモーションの仕方が尋常ではない。テレビCMに無名の美人三姉妹を使ったところ、素人臭さが大いに受けて、これを機に芸能人デビューを果たし、ゲームのプロモーションにも大きく寄与したという。ここまではいい。

 だが、それ以後は、ゲームのパッケージからポスター、雑誌広告に至るまで、すべて三姉妹の写真とタイトルのみを使用し、彼女たちの知名度をゲームブランドに直結させるという生々しい手法でプロモーション展開を行っている。彼女たちの服装はチャイナドレスに、学生服、ナース姿と何でもありだが、ゲームの内容は中世アジアをモチーフにした真面目なファンタジーMMORPG。この関連性のなさが凄い。

 こうした例は「傳奇Online」だけではなく、今回いくつかのブースで同じような例を見ることができた。このように、現在の台湾MMORPG市場は、いわば勢いだけで新作を売り出し、ビジネスとして成功させてしまうという、攻城戦一番槍的なノリが強い。現象としてはバブルに近いが、この商法がいつまで続くのかには疑問が残る。バックには潜在的に自国の数十倍の市場規模を持つ中国大陸が控えているとはいえ、これが永遠に続くとは思えない。

 その一方で、各ブースに配置されている説明担当者からはまた違った反応が返ってきた。日本のプレスと知った瞬間にまるきり対応が代わり、「このゲームはおもしろくない。『ファイナルファンタジーXI』は本当に素晴らしいMMORPGだ。FFのような本格的なMMORPGをウチも扱って欲しいよ」といった具合に、クールな意見を持った人もいたのは驚きだった。

 現在、台湾で流通しているMMORPGは2Dタイプのものが大半を占め、3Dゲームはどちらかというと「パフォーマンスと操作性の悪いゲーム」といった否定的な意見が強いという。わかりやすくいうと、多くのユーザーは3DMMORPGをプレイするためにビデオカードを新しく買うぐらいなら、最近新しく発売された2DMMORPGのスターターを買い、メーカーも大金を投入して本格的な3DMMORPGを開発するぐらいなら、半分の予算で2つの2DMMORPGを立て続けにリリースするほうを選ぶわけである。こうした事情から、台湾では3DMMORPGに対する市場の反応はいまひとつなのが現状なのだ。

 仮に私が北米のプレスだったら、「Dark Age of Camelot」や「Ashelon's Call 2」を称揚する意見も聞けただろうという気もする。ともかくも、目の肥えてきたエンドユーザーの当然の欲求として、MMORPGという茫漠としたゲームジャンルに対し、「おもしろさ」や「グラフィックの美しさ」を求める声が、市場の成長に従って徐々に高まってきているようだ。これから数年の台湾ゲーム市場は、まさに目が離せない。

Soft-Worldのステージでもっとも盛り上がったのは2日の午後に行なわれた即売イベント。「仙境伝説」のテレビCMでイメージキャラを担当している女優陳怡蓉と俳優許紹洋のふたりが壇上にあがり、サイン入りアイテムの即売会が行なわれた。その後は、3,000個のヘルメットの配布会が行なわれた。台湾はスクーターによる移動が主流になっているとはいえ、3,000個とはなんとも桁外れだ

台湾各社のライセンス作品。左から順にSoftstarの「クロスゲート」(エニックス)、Digicelの「神之領域(アスガルド)」(NEXON)、Unalisの「Tom Clancy's Ghost Recon」(UbiSoft)。

TGSで見られた3DMMORPG。Tai-Giumの「奇蹟 Online(Mu Online)」(韓国Zebzen)、遊技龍の「蒼竜少年(Young Gatt)」(自社開発)、International Game Systemの「封神 Online」(自社開発)。大手以外に自社開発タイトル、しかも3DMMORPGが目立つところが、台北市場の特徴のひとつといえる

□Taipei Game Show 2003のホームページ
http://show.tca.org.tw/tgs/

(2003年2月23日)

[Reported by 中村聖司]


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