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★PS2ゲームレビュー★
「お前たち、史上最小の作戦を体験したいか!?」
「Sir,Yes Sir!」

「突撃! アーミーマン~史上最小の作戦~」
  • ジャンル:アクションSLG
  • 発売元:株式会社カプコン
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:PS2
  • 発売日:1月30日発売


■ プラスチック人形が繰り広げる“箱庭”戦争シミュレーション

 いきなり戦争物のアクションシミュレーション(以下、アクションSLG)というと、「堅苦しい」とか「複雑そう」といった食わず嫌いをする人も多いと思う。だが、カプコンからリリースされた「突撃! アーミーマン~史上最小の作戦~」は、身長数センチのプラスチック人形がユニットという、ユーモア満載のアクションSLGである。人形だけに燃料補給や食料の供給などの煩わしさは一切無し。実にシンプル設計で、アクションSLGにチャレンジしたい人にピッタリの遊びやすさとなっている。

 まずは軍人気質に溢れる本作の雰囲気を掴んでもらうために、ゲーム冒頭でかわされる軍曹と兵隊たちの会話デモをお届けしたい。

    「お前たち仕事だ! 内容は単純明快、タン・フォースの穴倉を見つけてぶっ叩く!」
    「Yes,Sir!」
    「いいか……俺たちが安っぽい大量生産のオモチャだと言われたくなかったら、しっかり働け!」
    「Yes,Sir!」
    「どいつが俺と行く!?」
    「全員です! 軍曹どの!」
    「愛してるぜ……」
 「突撃! アーミーマン~史上最小の作戦~」の基本的なゲームシステムは、施設を建設しユニットを生産して戦力を増強するという流れになっている。ほかのアクションSLGをプレイした経験があるならば、すぐに馴染めるだろう。また、アクションSLG初心者向けに、ユニットの選択方法からゲームの進め方までを教えてくれるチュートリアルステージが用意されている。レスポンスのいい操作系と、スピィーディーなユニットの移動速度も特徴のひとつといえるだろう。

 各ユニットは、選択されると「Sir,Yes Sir!」、「出頭しました!」、などとイカしたボイスでリアクションをしてくれる。これらボイスは実に軍人らしくハキハキしているため、プレーヤーの心に熱い軍隊魂を宿してくれるだろう。ちなみに、ボイスのほとんどは日本語。どう見ても米国の軍人にしか見えない人たちが「いてもうたれ!」、「聞こえとるわ!」と関西弁を喋るのが、妙にしっくりきていて笑える。ゴールデン洋画劇場の戦争映画の日本語吹き替え版を観ているような感覚だ。

小隊を前に檄を飛ばす軍曹。軍隊口調は確かに荒々しいが、それほど粗野な言葉が使われているわけではない ユニットは3Dグラフィックで細部まで描きこまれている。動作パターンは人形というよりむしろ人間に近い滑らかさ ユニットが入り乱れる交戦風景。数十体のユニットが登場しても画面が処理落ちすることはない



■ 弾薬の補給は不必要~これがオモチャのルールだ~

 アクションSLGの肝となる資源関連のシステム。「アーミーマン」に登場する資源は「プラスチック」と「電力」のふたつだけだ。材料回収機を建設すると、ダンプトラックが自動的に資源を採集。庭や室内といった家庭的なマップに点在している「プラスチックの食器」や「ビデオカセット」を溶かし、施設の建造やユニットの生産を賄う寸法だ。電力は「乾電池」や「非常灯」などから集積され、主に車両の生産に利用される。効率的な資源採集のために、ダンプトラックは複数作っておいたほうがいいだろう。

 ここで筆者的が高く評価したい点は、ウォーシミュレーションなのに燃料や弾薬の補給の概念が無いことだ。ヘリは何時間飛ばそうが墜落しないし、機関銃は無限に弾を連射し続ける。そのため、「アーミーマン」では、補給のためにユニット部隊をいちいち基地へ戻さずに済む。生産したユニットを最前線で戦わせつつ、プレーヤーは内政(軍備拡張)に専念することができるのだ。

 この弾薬無限ルールを踏まえたうえで、最優先で作りたいユニットが救護車だ。このユニットは、隣接しているユニットのダメージを人員ユニットに留まらず、ヘリだろうがタンクだろうがおかまいなしに回復させる。この救護車を数台作って部隊に放り込んでおけば、常に自動回復が行なわれる無敵部隊が誕生する。ただ、無限弾薬と救護車の利便性によって、ゲーム内容がやや単調になっている感は否めない。施設が作れるミッションは、一組の強力な大隊を作って突撃という力技で進めてしまうからだ。

 だが「ステージ内のメダル獲得条件を満たしてクリアーする」となると話は違ってくる。このメダルは、より過酷な任務が用意されている「大戦役モード」や「ボーナスミッション」への鍵となる物だ。メダル獲得条件は「プラスチック消費量~以下で勝利せよ」や「30分以内に勝利せよ」という制限が課されている。いずれも上記の無敵部隊を作成する余裕はないため、緻密な戦略を練る必要がある。

オートで資源を採集するダンプトラック。味方や敵の死骸もプラスチックなのでリサイクルできる。地球に優しい戦争とも言える ヘリ5台、戦車2台、救護車3台+人員ユニット数十名の無敵大部隊。時々進行を止めて、回復時間を設けるのが勝利の鍵だ メダルの獲得条件は中々シビアに設定されている。クリア条件には関係ないので、無視して構わない



■ 戦争映画のパロディ満載! ~キャンペーンモードのミッションを制覇せよ~

 最初にプレイ可能なモードは、スリリングなストーリーが展開するキャンペーンモードだ。キャンペーンモードは15のミッションで構成され、タン・フォースに寝返った元ミドリ軍のブリンツ大佐を抹殺するのが最終目的である。ユニットや施設を生産してゆくベーシックなミッションと、ヒーローユニットのみを使うパズル的要素の入ったミッションが交互に出現するので、同じような内容のミッションが続くことはない。

   各ミッションのタイトルは、「シン・グリーンライン(シン・レッド・ラインのパロディ)」、「深く静かに入浴せよ(深く静かに潜航せよのパロディ)」など、戦争映画のタイトルをもじって付けられている。いずれも、戦争映画に詳しくなくても“名前だけは聞いたことがある”という人も多いのではないだろうか。ここでは、そうしたユニークなミッションの中から3編をピックアップしてご紹介しよう。

【Mission 9:荒野のプラスチック用心棒】

 おもちゃのブロックで作られた村落に到着したミドリ軍。そのとき軍曹の前に、タン・フォースの無差別攻撃を受ける村人の代表者が姿を見せる。代表者は「村人を全員脱出させれば、村のプラスチック資材をすべてミドリ軍に提供する」と条件を提示してくるが……。NPCの村人を敵の銃弾から守るという、戦略性が問われるミッションだ。

非常にカンタンな作りの村人が登場。勝手に動き回る彼らを、画面外に脱出させるのが目的だ 道路に沿って移動する村人は、一定量の被ダメージで撃破されてしまう。道路沿いにトーチカなどを建造するといい 鉄条網で村を囲む、村の入り口を戦車で防ぐなどの作戦を試みたが失敗。やはり正攻法で守り抜くしかないのか!?


【Mission 11:ヒーローユニットの条件】

 タン・フォースの捕虜になってしまった軍曹と主要ヒーローユニットたち。ただひとり難を逃れた地雷処理兵のフーバーのとった行動とは? 映画「英雄の条件」とはタイトル以外あまり関係ないが、地雷処理兵という地味なユニットにスポットを当てた、真の勇気を知ることのできるミッションである。

タン・フォースの大隊に包囲される軍曹たち。抵抗は不可能と判断し、あえなく囚われの身となってしまう 「おウチに帰りたい!」が口癖の地雷処理兵フーバー。ユニットの性格が理解できるデモは、スキップせずに鑑賞してほしい なんと地雷処理兵だけで戦場に!? と、思いきやブルドーザーと小隊が支給される。これで一安心だ


【Mission14:プラスチック・トゥルーパーズ】

 タン・フォースは「女王アリ」を捕獲し、兵隊アリをコントロールしていた。「女王アリ」の入った捕獲ビンを破壊し、アリとの戦いに終止符を打て! 巨大宇宙昆虫との戦争を描いた映画「スターシップ・トゥルーパーズ 」の雰囲気が、アリ VS. 軍人人形という形でアレンジされている。

列車に乗ってタン・フォースの本拠地に侵攻した軍曹一行。敵基地の防衛網も、これまでになく堅固である 生物兵器を使用するタン・フォースに正義の鉄槌を下せ。ちなみに、巨大アリの主要攻撃方法は蟻酸だ 女王アリを救出すると、兵隊アリの攻撃が止む。敵戦力を削ぐために、何としても女王アリを助け出そう



■ 癒しを感じさせる“アーミーマン”たち

 セーブは各ミッションをクリアした時に行なえる。面の途中でセーブができないのは、最初は厳しいと感じられるだろうが、ひとつのミッションは30分~1時間程度でクリアできるため、それほど目くじらを立てることはないだろう。プレイタイムを考慮すると、緊張感が持続するという意味ではノーセーブのほうが気持ちいいくらいだ。ただし、最終面は相当に厳しかったが……。

 ざっと全面を通してみると、敵のAIが容赦なく大量のユニットを送り込んでくるミッションは少なく、拠点防御に徹しているという印象を受けた。よって、プレーヤーは基地の建造や部隊の作成にかなりの時間を割くことができる。マニアには少々物足りない部分があるかもしれないが、熟考してゲームを進めることが可能な“せっつかれないアクションSLG”として、「アーミーマン」はアクションSLGのビギナーに胸を張ってお勧めできる作品だ。

 フルオーケストラの勇ましいマーチや、軍人たちの肉声(ボイス)を聴いていると、彼らがオモチャであることをついつい忘れてしまう。経験値などがないため、キャラクタの成長性に対する愛情はないが、ちょこまかと動き回るアーミーマンたちに“癒し”を感じずにはいられない。もっとも、彼らは自分たちが人形であることを認識したうえで、真剣に戦争をしているのだが。

 最後に。筆者としては、これほど秀逸なアクションSLGに“多人数でのマルチプレイモードが無い”のは非常に惜しいように思われる。次回作では、PS2のBBユニットを使った通信マルチプレイ機能の搭載を切に望む次第である。


(C) 2002 The 3DO Company. All Rights Reserved. 3DO, Army Men, Real Combat. Plastic Men., and their respective logos, are trademarks or registered trademarks of The 3DO Company in the U.S. and other countries. All other trademarks belong to their respective owners.

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□製品情報
http://www.capcom.co.jp/armyman/
□関連情報
【1月24日】カプコン、PS2「突撃! アーミーマン -史上最小の作戦-」基本戦術と、ユニットを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030124/man.htm
【1月8日】カプコン、PS2「突撃!アーミーマン -史上最小の作戦-」スペシャルサイトを開設
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030108/capcom.htm
【2002年12月20日】PS2「突撃! アーミーマン -史上最小の作戦-」登場キャラクターを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021220/arm.htm

(2003年1月30日)

[Reported by 福田柵太郎]


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