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■ プラスチック人形が繰り広げる“箱庭”戦争シミュレーション いきなり戦争物のアクションシミュレーション(以下、アクションSLG)というと、「堅苦しい」とか「複雑そう」といった食わず嫌いをする人も多いと思う。だが、カプコンからリリースされた「突撃! アーミーマン~史上最小の作戦~」は、身長数センチのプラスチック人形がユニットという、ユーモア満載のアクションSLGである。人形だけに燃料補給や食料の供給などの煩わしさは一切無し。実にシンプル設計で、アクションSLGにチャレンジしたい人にピッタリの遊びやすさとなっている。
まずは軍人気質に溢れる本作の雰囲気を掴んでもらうために、ゲーム冒頭でかわされる軍曹と兵隊たちの会話デモをお届けしたい。
「Yes,Sir!」 「いいか……俺たちが安っぽい大量生産のオモチャだと言われたくなかったら、しっかり働け!」 「Yes,Sir!」 「どいつが俺と行く!?」 「全員です! 軍曹どの!」 「愛してるぜ……」 各ユニットは、選択されると「Sir,Yes Sir!」、「出頭しました!」、などとイカしたボイスでリアクションをしてくれる。これらボイスは実に軍人らしくハキハキしているため、プレーヤーの心に熱い軍隊魂を宿してくれるだろう。ちなみに、ボイスのほとんどは日本語。どう見ても米国の軍人にしか見えない人たちが「いてもうたれ!」、「聞こえとるわ!」と関西弁を喋るのが、妙にしっくりきていて笑える。ゴールデン洋画劇場の戦争映画の日本語吹き替え版を観ているような感覚だ。
■ 弾薬の補給は不必要~これがオモチャのルールだ~ アクションSLGの肝となる資源関連のシステム。「アーミーマン」に登場する資源は「プラスチック」と「電力」のふたつだけだ。材料回収機を建設すると、ダンプトラックが自動的に資源を採集。庭や室内といった家庭的なマップに点在している「プラスチックの食器」や「ビデオカセット」を溶かし、施設の建造やユニットの生産を賄う寸法だ。電力は「乾電池」や「非常灯」などから集積され、主に車両の生産に利用される。効率的な資源採集のために、ダンプトラックは複数作っておいたほうがいいだろう。 ここで筆者的が高く評価したい点は、ウォーシミュレーションなのに燃料や弾薬の補給の概念が無いことだ。ヘリは何時間飛ばそうが墜落しないし、機関銃は無限に弾を連射し続ける。そのため、「アーミーマン」では、補給のためにユニット部隊をいちいち基地へ戻さずに済む。生産したユニットを最前線で戦わせつつ、プレーヤーは内政(軍備拡張)に専念することができるのだ。 この弾薬無限ルールを踏まえたうえで、最優先で作りたいユニットが救護車だ。このユニットは、隣接しているユニットのダメージを人員ユニットに留まらず、ヘリだろうがタンクだろうがおかまいなしに回復させる。この救護車を数台作って部隊に放り込んでおけば、常に自動回復が行なわれる無敵部隊が誕生する。ただ、無限弾薬と救護車の利便性によって、ゲーム内容がやや単調になっている感は否めない。施設が作れるミッションは、一組の強力な大隊を作って突撃という力技で進めてしまうからだ。
だが「ステージ内のメダル獲得条件を満たしてクリアーする」となると話は違ってくる。このメダルは、より過酷な任務が用意されている「大戦役モード」や「ボーナスミッション」への鍵となる物だ。メダル獲得条件は「プラスチック消費量~以下で勝利せよ」や「30分以内に勝利せよ」という制限が課されている。いずれも上記の無敵部隊を作成する余裕はないため、緻密な戦略を練る必要がある。
■ 戦争映画のパロディ満載! ~キャンペーンモードのミッションを制覇せよ~ 最初にプレイ可能なモードは、スリリングなストーリーが展開するキャンペーンモードだ。キャンペーンモードは15のミッションで構成され、タン・フォースに寝返った元ミドリ軍のブリンツ大佐を抹殺するのが最終目的である。ユニットや施設を生産してゆくベーシックなミッションと、ヒーローユニットのみを使うパズル的要素の入ったミッションが交互に出現するので、同じような内容のミッションが続くことはない。 各ミッションのタイトルは、「シン・グリーンライン(シン・レッド・ラインのパロディ)」、「深く静かに入浴せよ(深く静かに潜航せよのパロディ)」など、戦争映画のタイトルをもじって付けられている。いずれも、戦争映画に詳しくなくても“名前だけは聞いたことがある”という人も多いのではないだろうか。ここでは、そうしたユニークなミッションの中から3編をピックアップしてご紹介しよう。 【Mission 9:荒野のプラスチック用心棒】 おもちゃのブロックで作られた村落に到着したミドリ軍。そのとき軍曹の前に、タン・フォースの無差別攻撃を受ける村人の代表者が姿を見せる。代表者は「村人を全員脱出させれば、村のプラスチック資材をすべてミドリ軍に提供する」と条件を提示してくるが……。NPCの村人を敵の銃弾から守るという、戦略性が問われるミッションだ。
【Mission 11:ヒーローユニットの条件】 タン・フォースの捕虜になってしまった軍曹と主要ヒーローユニットたち。ただひとり難を逃れた地雷処理兵のフーバーのとった行動とは? 映画「英雄の条件」とはタイトル以外あまり関係ないが、地雷処理兵という地味なユニットにスポットを当てた、真の勇気を知ることのできるミッションである。
【Mission14:プラスチック・トゥルーパーズ】 タン・フォースは「女王アリ」を捕獲し、兵隊アリをコントロールしていた。「女王アリ」の入った捕獲ビンを破壊し、アリとの戦いに終止符を打て! 巨大宇宙昆虫との戦争を描いた映画「スターシップ・トゥルーパーズ 」の雰囲気が、アリ VS. 軍人人形という形でアレンジされている。
■ 癒しを感じさせる“アーミーマン”たち セーブは各ミッションをクリアした時に行なえる。面の途中でセーブができないのは、最初は厳しいと感じられるだろうが、ひとつのミッションは30分~1時間程度でクリアできるため、それほど目くじらを立てることはないだろう。プレイタイムを考慮すると、緊張感が持続するという意味ではノーセーブのほうが気持ちいいくらいだ。ただし、最終面は相当に厳しかったが……。 ざっと全面を通してみると、敵のAIが容赦なく大量のユニットを送り込んでくるミッションは少なく、拠点防御に徹しているという印象を受けた。よって、プレーヤーは基地の建造や部隊の作成にかなりの時間を割くことができる。マニアには少々物足りない部分があるかもしれないが、熟考してゲームを進めることが可能な“せっつかれないアクションSLG”として、「アーミーマン」はアクションSLGのビギナーに胸を張ってお勧めできる作品だ。 フルオーケストラの勇ましいマーチや、軍人たちの肉声(ボイス)を聴いていると、彼らがオモチャであることをついつい忘れてしまう。経験値などがないため、キャラクタの成長性に対する愛情はないが、ちょこまかと動き回るアーミーマンたちに“癒し”を感じずにはいられない。もっとも、彼らは自分たちが人形であることを認識したうえで、真剣に戦争をしているのだが。
最後に。筆者としては、これほど秀逸なアクションSLGに“多人数でのマルチプレイモードが無い”のは非常に惜しいように思われる。次回作では、PS2のBBユニットを使った通信マルチプレイ機能の搭載を切に望む次第である。
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□カプコンのホームページ (2003年1月30日) [Reported by 福田柵太郎]
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