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■ 日本人の琴線に触れる「O・TO・GI」の世界 「O・TO・GI~御伽~」の広告を見て、ハッと息を飲んだ人は多いと思う。絹織物の木目細かさを感じさせる雅な背景パターン、生き人形のような主人公、教科書で見た平安京の世界そのままのグラフィックレベル。“Xboxを買ってでもやりたい”という日本人の本能が、プレーヤーを衝き動かす。先に発売されたフロム・ソフトウェアのXbox参入第1弾ソフト「叢-MURAKUMO-」で、同社のクオリティの高さは実証済み。第2弾の「O・TO・GI~御伽~」もまた、様々な人々から注目されているといえよう。 本作は、フロム・ソフトウェアの得意ジャンルであるRPGにアクションを加えた3DアクションRPG。死を司る一族の末裔にして上級巫術士のライコウを操り、妖鬼を討伐していくのがゲームの目的だ。アクションの自由度は非常に高く、地上と空中を全方向に移動できる。3Dゲームにありがちな背景に引っかかることも、跳ぶ、ダッシュなどの入力で解消されている。ストレスを微塵も感じることなく、ライコウを操作できるのがうれしい。 日本の伝承を取り入れたストーリーも、和風世界の演出に大きな役割を果たしている。朝廷が「結界」を施したことで「死」が失われた世界。結界の崩壊時、死を司る一族の末裔ライコウは謎の人物ヨモツヒラサカノヒメにより、生と死の狭間に留められる。ひとりのために戦い、妖鬼を死へと導くことで、一族の積み重ねてきた罪を許される。贖罪の戦いを続けるライコウに、安らぎの時は訪れるのだろうか……。 ゲーム画面で重要な意味を持つのが、右下に表示される巫力ゲージと体力ゲージだ。外側の緑の球が生命珠、すなわち体力を表す。緑の球がすべて割れるとゲームオーバー。だが、巫力があり球が完全に割れていない状態なら、時間経過で回復する。内側の紫のゲージは巫力を表し、時間経過とともに減少していく。巫力は巫術(西洋RPGで言うところの魔法)や、ダッシュの使用に影響する。巫力ゲージは妖鬼を倒すことで回復するので、敵を倒し、巫力を維持して進んでいくのがコツだ。
■ スマッシュ感溢れる戦闘の美学、究極の全破壊を追及せよ! 「O・TO・GI~御伽~」のウリが、この戦闘アクションである。360度から一斉に襲いかかってくる妖鬼たちを、簡単な操作で吹き飛ばせるのは快感の一言。主人公のライコウは祭器(武器)で敵を攻撃する。祭器の攻撃判定は大きめに設定されており、敵との軸が多少ずれていてもヒットしてくれる。ただし、これは“判定が甘い”という意味ではない。序盤なら、妖鬼の集結する真っ只中に斬り込んでいき、攻撃ボタンを連打しているだけでクリア可能だ。 爽快感を増す仕掛けとして、連続攻撃システムのコンボがある。これは、敵に攻撃を続けてヒットさせた時に“○閃”という表示で当てた回数が表示されるものだ。主に、隙が小さい小攻撃を続けることでコンボは発生する。小攻撃の連打終了後に、素早く小攻撃を当てることでコンボはまた繋がるので、敵の密集している場所なら数百閃というコンボ数を弾き出すことも可能。また、コンボで敵を倒すと巫力が多く回復するため、巫力の維持にも重要なファクターとなってくる。 小攻撃に対し、大攻撃はオーバーアクションを伴う威力の高い攻撃。大攻撃を当てると、妖鬼は吹き飛んでいき背景に派手にぶち当たる。巨石や背景を壊すときも大攻撃を使用する。壊した背景には攻撃判定があるので、敵にぶつけてダメージを与えることも可能。巫術は一般的なRPGで言うところの“魔法”にあたる。敵を追尾するタイプや、近距離に大ダメージを与えるタイプがあり、上手く使えば妖鬼掃討の大きな助けとなる。 武器となる祭器は、剣から杖まで多種多様。攻撃モーションも祭器によって異なり、好みの戦闘スタイルを選ぶことができる。道中で条件を満たした時のみ入手できる祭器もあるので、武器コレクターはコンプリートを目指すという目標ができる。さらに、一定の条件を満たすと「キングスフィールド」などでおなじみの、あのアイテムが……ということもある。フロムファン垂涎のこのアイテム、なんともニクい演出だ。
■ ゲームの「世界」を創造する上手さはフロム・ソフトウェアの至芸 Xboxの描画性能を最大限に活かした、フルポリゴンの広大なフィールド。それだけなら「とても綺麗ですね」の一言で片付いてしまうが、「O・TO・GI~御伽~」の場合は構造物、石段、岸壁までも破壊できる点で、圧倒的な説得力がある。背景の破片に敵を巻き込んで倒すなど背景とゲーム性を自然に溶け込ませたことで、背景グラフィックに見せかけではないリアリティが生まれたと言えよう。 主人公のライコウも、明確なテーマの基にキャラクタ像が描かれている。写真を見てもらえばわかるが、スラリとした細い体躯で、色白の美青年である。その上、ほとんど喋らず意志も苦痛すらも発しない。まるで死んでいるかのように……。だが、戦闘では自分の数倍もあるクリーチャーを軽々と吹き飛ばし、巨大な石柱をも一閃で破壊する。戦場において、初めてライコウは生命力を宿すのだ。この死と生を併せ持つ主人公ライコウの姿からは、今までにない妖艶な魅力が感じられる。 フロム・ソフトウェア製RPGの醍醐味として忘れてはいけないのが、倒すのがもったいないくらい出来の良い“禍々しくクリーチャー”の数々だ。筆者もフロム・ソフトウェアが和風クリーチャーを作ったらどうなるのかと、「O・TO・GI~御伽~」には強い関心を持っていたが、実際にゲーム内のモンスターを見て、瞬時に理解した。フロム・ソフトウェアのクリーチャーが持つ独自のテイストは普遍である、と。そう感じる理由は、同社のゲームに登場するクリーチャーには、プレーヤーの敵として必要不可欠といえる要素「絶対悪」が、デザインの中に必ず備わっているからではないか、と筆者は考える。 細部のパーツまで作りこまれた妖鬼の中で、筆者の琴線にスマッシュヒットしたのが、ステージ9のボス大百足「九陀羅」だ。これまで、さまざまなゲームで、竜やムカデなどの体が細長く節で分かれた、いわゆる「多関節クリーチャー」を見てきたが、間違いなくこの「九陀羅」が多関節クリーチャーの中でナンバーワンの美しさ。デザイン、甲殻の光沢、アクションパターン、どれをとってもダイヤモンドの輝きを誇る出来だ。巨体に電光を纏いながら突進してくる迫力には、どんなプレーヤーも思わず体を揺らして避けてしまうことだろう。
■ 総プレイ時間、そして難易度は? 全29ステージを普通にプレイして、エンディングまでにかかったタイムは約15時間。1ステージは約5分ほどで終わるため、時間の無い人は一日1ステージクリアなど、まったり遊べるのが嬉しい。セカンドプレイでは、クリアした時点のレベル、アイテム、お金などを持ち越してステージ1からプレイが可能だ。まずは1回エンディングを迎え、セカンドプレイの無敵に近い状態でタイムアタックやステージ全破壊を狙うのも面白いだろう。 ゲームの難易度は「基本的に中くらいで、特定のステージのみ高難度」と採点したい。難易度を押し上げているのは「奈落の底に落ちると1発でゲームオーバー」という点のみ。ジャンプアクションが不得手な人は、かなりの苦戦を強いられるだろう。とはいえ、フロム・ソフトウェアのRPG「キングスフィールド」や「シャドウタワー」で転落死しまくった筆者としては、「転落死があるから、フロム・ソフトウェアのRPGって感じするよな」と思えてしまった。 だが、アクションが苦手だからといってパスするには「O・TO・GI~御伽~」は余りに惜しいタイトルである。それは「O・TO・GI~御伽~」が、秀麗で和風テイストなビジュアル、厚みのあるストーリー、弦楽の叙情を感じるBGMで紡がれた“万人向けのエンターテインメント作品”であるからだ。本作品でXboxユーザーへの第一歩を踏み出し、Xboxのスペックに痺れていただきたい。とりあえず、ビギナーキラーのステージ4さえクリアできれば「O・TO・GI~御伽~」は制覇したも同然。何度も挑戦して、フィールドの構成を把握してほしい。
「O・TO・GI~御伽~」は死というテーマが扱われているだけに、そこはかとない儚さが全編に漂う。この死生観が設定に留まらず、見事にゲーム内容にマッチしているところが素晴らしい。死を司るライコウの強大さは、敵や背景の完全破壊を持ってプレーヤーに提示される。そして、数多の死と破壊に絡むミステリアスなストーリー展開。何としても先に進みたいとプレーヤーに決意させる力が「O・TO・GI~御伽~」には詰まっている。典雅で秀麗な「O・TO・GI~御伽~」の世界、空虚な現実を彷徨う私たちが誘われるのは必定と言えるだろう。
□フロム・ソフトウェアのホームページ (2002年12月25日) [Reported by 福田柵太郎]
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