★PS2ゲームレビュー★
■3人の異なる視点が織りなすストーリー
特にヒューゴと、クリスのストーリーは密接に関係しているのが面白い。ストーリー序盤でヒューゴと冒険を共にしていた親友“ルル”のイベントはとても衝撃的だ。ゲームは1章ずつ主人公を変えて進めることも、ひとりの主人公で3章分進めてしまうことも可能だが、ヒューゴ編をプレイしているとき、クリスの行動はとても不可解で、理不尽に見える。もちろんクリス側でプレイをすることで、彼女の「理由」は理解できるのだが、あえて「縦割り」でプレイすることで、よりキャラクタに感情移入してプレイをするのも楽しいだろう。
ストーリーは複雑で、奥が深い。シックスクランとゼクセンは、和平を結ぼうとしたその瞬間に不可解な交渉決裂をおこし、全面衝突へと発展してしまう。時を同じくしてハルモニアのシックスクラン襲撃。鍵を握るのはかってハルモニアと戦い、グラスランドの独立を勝ち取った「炎の英雄」だ。彼は不老を得る“27の真の紋章”のひとつ真の火の紋章を持ち、仲間である「炎の運び手」とともに戦い50年前の大きな戦いを最後に姿を消した。 しかし、この3つの勢力が平原を舞台に戦いを始める今、再び人々の間で囁かれるようになってきたのだ。3人の主人公は、それぞれ別の立場、手がかりからやがて炎の英雄の姿を探し求めるようになっていく。そして真の敵の姿を見つけだすようになる。中心となるのは、こういったシリアスなストーリーだ。
とはいえ、ただ深刻なだけではなく、個性的な仲間と共に異世界を冒険していく楽しさが、この作品にはある。トカゲ人間や、擬人化したアヒルのようなダッククランの人々が住むシーンが非常に細部まで描かれており、神経の行き渡った「息吹」が感じられる世界観が実感できる。そして練られた戦闘システムや、成長システムがゲームとしても、物語としても楽しい体験をさせてくれる。
もちろん、旅先で出会うちょっとした会話にもそのこだわりは健在で、村人の会話ひとつとってもその種族や街ならではの考え方や、風習が反映されている。そういったキャラクタ、世界に囲まれた中で、主人公が己に問い、やがて進むべき道を決めていく。そこにプレーヤーが感情移入できるのである。ストーリー、世界観共に非常によく作り込まれた良作のRPGであると言えるだろう。 ■108人の仲間と共に、「城」を造る楽しさ 仲間はただのパーティー要員だけではない。本拠地でもその個性的な技能を活かしてくれるのだ。彼らを城に迎えるごとに、店が増え、機能的になり一大拠点へと成長していく。ぼろぼろの何もない城が、立派になっていく姿にはちょっとした充実感が味わえる。 彼らを仲間にするイベントは非常に楽しいものが多い。突然「ダッククラン殺人事件」に巻き込まれたり、腹話術人形との口論が目の前で展開したりと、暴走するキャラクタを主人公がちょっと引いて見ているイベントは特に楽しい。 ただ、ひとつ不満があるとすれば逆に仲間の多さから、攻略本や雑誌の情報をプレーヤーが求めてしまいがちなところだろうか。しかし、だからこそファン同士の情報交換などの交流が活発になっているという側面もある。またスタッフのこだわりによって、特定のタイミング以外では仲間にならないといったキャラクタは存在せず、ゲーム終盤までいつでも仲間が探せるようになっているようだ。 今作はダンジョン、フィールド、キャラクタをすべて3Dで表現している。フィールドを歩いている臨場感は高いが、その分移動に時間がかかるなど、2Dと比べ賛否が出る問題である。ドラマ部分も同様で、ちょっと頭身を低めに設定したポリゴンキャラクタはまるくてかわいらしく、「アニメで表現してほしい」という声もあがるだろう。ただ、今作のドラマ部分で私が感心したのは「間」の使い方である。キャラクタが顔を見合わせて沈黙したり、小さく首を傾けたり、「人形」風のポリゴンモデルならではの演出が秀逸で、アニメーションにはない独特の劇空間を作り上げているのだ。こういった点には、感心させられた。 また、本拠地が立派になっていく姿や、ダッククランや虫使いの村“ルビーク”など建物の個性化は、ポリゴンモデルならではの実在感を持ち、説得力を生んでいる。また、こういったPS2の能力を高い次元で要求するゲームにあっても、戦闘前での読み込みをあまり感じさせない、視点での不自由さが比較的少ないなど、コナミの非常に高い技術レベルを感じさせる。
残念ながら、私は幻想水滸伝シリーズにプレイしたのは今作が初めてであった。出てくるキャラクタや背景に触れるのも今作が最初となる。そのため、50年前の事件がシリーズで描かれたのかどうかや、出会うキャラクタが前作との関係があるかもわずかしか分からない。
それでも私の感性にとってこのゲームは非常にしっくりときて、楽しめるゲームであったし、私と同じように初めて触れる人も楽しめると思う。シリーズを通してプレイすることで思い入れの深いプレイができるが、ボリュームもたっぷりで、世界観、キャラクタ、ストーリーともに強い思い入れと、高い技術力をつぎ込んだ本作は、RPGが好きなプレーヤーにはオススメできる作品である。
□コナミのホームページ (2002年10月22日) [Reported by 勝田哲也] |
I |
|
GAME Watchホームページ |