ゲーム開発をより効率的にサポートするCRI・ミドルウェア
ゲームの裏側をほんの少しだけ解説

 株式会社CRI・ミドルウェアという会社をご存知だろうか? 同社は、株式会社CSK総合研究所が株式会社SEGA-AM2に社名を変更したとき、ミドルウェアを提供する会社として設立された経緯がある。今回はこのCRI・ミドルウェアに取材をする機会があったので、ゲームに使われるミドルウェアを少しご紹介したい。

 このミドルウェアとは、アプリケーションの要求にあわせて、音声再生や動画再生などを行なうソフトウェアのことだ。CRI・ミドルウェアではゲームなどのエンターテインメント系のソフト開発に必要となる各種ミドルウェアの開発・販売およびサポートを行なっている。

 ドリームキャストでの多くの実績を残し、最近ではさまざまな会社やハードでのツールの使用や、同社のエンコード技術によるムービーの収録などを行なっており、これまでに、テクモの「DEAD OR ALIVE 3」やカプコンの「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風」などのゲームソフトで使用されている。現在、同社の主力としているシステムは「ADX マルチストリームサウンドシステム」、「MPEG Softdec ゲーム向け動画システム」などがある。

■ 同時に音声の読み込み、再生を行なう「ADX マルチストリームサウンドシステム」

ADX マルチストリームサウンドシステム。いくつもの音声を同時に再生できるほか、今まで以上のデータ圧縮も可能
 「ADX マルチストリームサウンドシステム」とは、CDやDVDなどの記録媒体から独立した複数の音声ファイルを同時に再生する技術。いくつもの音声を同時に再生することが可能なほか、音声を再生中に、次の音声ファイルを読み込むことで、まったくラグがない状態で次の音声に変えることができる。

 また、このADXのマルチストリーム技術は単なる音声技術の枠を越えて、 ファイルアクセスシステムとして非常に高いスペックを誇っている。 代表的な素材としては「DEAD OR ALIVE 3」のリアルタイムデモがある。フィールド全体の遠景から、キャラクタたちの格闘シーンへと続くこのデモは、今までの技術では実現が難しかったという。従来の技術では遠景から、キャラクタの格闘画面、そして戦うキャラクタが変わるごとに「NOW LOADING」という画面を写し、データを読み込むというような方法を採っていたのであるが、同社の技術により「データの先読み」を実現。とぎれのないデモを可能にしたのである。

■ ゲーム制作を支える数々の技術を開発

 「MPEG Softdec ゲーム向け動画システム」には他にも多彩なシステムが組み込まれていて、ポリゴンのテクスチャーにムービーを張り付けるものや、CGムービーに奥行き(Z軸)を持たせることで、ムービーとリアルタイムポリゴンの干渉を可能にしている。これによりリアルタイムCGでは表現が難しかったエフェクトや、膨大なポリゴンを表示することでのCPUの負荷を低減することが可能だという。また、「ムービーファイル」という形式なため、データを他機種間で共有することが可能であり、マルチプラットフォーム展開も容易になるとのことだ。

 また上記の技術の他にCRIでは、音声に合わせてキャラクタの口が動くアニメーション、いわゆる「口パク」を支援するプログラム「CRI Clipper」を開発、音声データを解析することで、タイムレコードに沿った形で口パターンを自動生成させることができる。このツールは、「サクラ大戦」などのほか、いろいろなゲームですでに使用されているとのことだ。

 こういったシステム・技術は従来各ソフトハウスのプログラマが独自に考案、使用しているものだ。私たちはそういったプログラマの知られざる努力と経験の積み重ねにより、快適なゲームをプレイすることができる。しかし、こうした基礎技術というべきライブラリやミドルウェアの部分は、ハードの進化や高スペック化に伴い、自社内だけで技術の開発を行なっていくことが非常に困難になってきているのが現状だ。

 そこで、こうした「事実上の標準規格化」された技術を導入することにより、プログラマの負担を大幅に減らし、ゲームコンテンツの本体部分や「面白さ」といったゲームの核となる部分へ注力することを可能とする。CRI・ミドルウェアの各技術やツールはゲームを開発している「現場」から生まれたもので、これを導入することでゲーム開発の効率化を計るメーカーも増えているとのことだ。

 ハードの進歩によって、ゲームの表現力が上がり、だからこそプログラマ・デザイナの作業量も跳ね上がっている。ゲームの起動時に表示されるさまざまな会社や、何気なく表現されている高度な技術にちょっと注意を向けてみるのも、ゲームの楽しみ方のひとつかもしれない。

ポットのテクスチャーにムービーを貼り付け再生したところ。写り込みを再現している 攻撃エフェクト部分にムービーを使用。炎や、雷などポリゴンで表現の難しかったものをきれいに再現する 「MPEG Softdec」はADXと同じように複数同時再生も可能。キューブすべてに別々のムービーを貼り付け再生できる
水槽の中の映像はムービーだが、ポリゴンで描かれた女の子が自由に回り込める。ムービーの後ろが透過していることに注目 灰色の物体がムービー。Z軸を持たすことで、ポットと自然に融合している。ムービーと融合させたゲームを今まで以上のクオリティーで作成できる

CRI Middleware Co.,LTD.

□CRI・ミドルウェアのホームページ
http://www.cri-mw.co.jp

(2002年8月13日)

[Reported by 勝田哲也]

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