Electronic Entertainment Expo 2002現地レポートSEGA-AM2の鈴木裕氏がゲーム開発について語る |
会場:Los Angeles Convention Center
■ 鈴木氏とライト氏のゲーム開発よもやま話
世界最大のゲームトレードショウE3だが、単にブースでのゲーム展示にとどまらず、さまざまなカンファレンスやパネルディスカッションなども行なわれている。5月22日(現地時間)には「Design Secrets, Part1: Japan and the USA (日本とアメリカの開発秘話)」、と名づけられたカンファレンス・セッションで、SEGA-AM2の鈴木裕氏とシムシティシリーズの作者として知られるMAXISのウィル・ライト氏がゲーム開発について語り合った。
タイトルに“Japan&USA”と銘打たれてはいるが、セッション内容はアメリカと日本の開発環境差といった硬い話題ではなく、鈴木裕氏とウィル・ライト氏という稀代のゲームデザイナー2人の、ゲーム開発に関するよもやま話といった風情。新たなゲームを考え付くきっかけや、どんなものに影響を受けたことがあるのかなど、開発アプローチに関した話題が多かった。
鈴木氏は開発アイデアを逃さないために、最近はスケッチブックとノートを持ち歩いているとのこと。新しいゲームのアイデアは、頭にポップアップした途端たくさん浮かんできてしまうので、突然の発想を逃さないよう、すぐに書き留めて忘れないようにしているそうだ。以前は、ノートなどと同様にテープレコーダも肌身離さず持ち、良いメロディが浮かんだときは録音していたと語った。「これがいつも持ち歩いているノートです。ここに新しいゲームのアイデアが入ってます」と広げた書き込みいっぱいの鈴木氏のノートをライト氏が覗き込んで、会場の笑いを誘っていた。
SEGA-AM2の鈴木裕氏 |
一方のウィル・ライト氏のゲーム製作へのきっかけや興味は多岐にわたっており、中でも日本の文化が大好きだということで、ザウスやフジテレビ本社といった奇天烈な日本の建物や金閣寺などの伝統的な建物、日本製のアニメについてなどをスライドで紹介していた。やはりジャパニーズカルチャーが大好きな娘さんが夢中になってる漫画などの話も登場し、彼女が父であるウィル・ライト氏に様々な日本の漫画やアニメを見せてくれるので、いいリサーチャーになっているといったことを冗談交じりに語っていた。
「シムシティ」などで知られるMAXISのウィル・ライト氏 |
鈴木氏はゲーム制作へのヒントのひとつとして、意識的に映画をたくさん見ているとのこと。「映画をすごい研究してます。5年以上映画を分析してて。シネマティックな表現ができるようなプラットフォームが出てきているので、映画の表現はとても有効だと思います。これからどんどん生かしていけるんじゃないかなあと思っています」と語った。
それを受けて、インパクトあった映画は? とたずねられたところ、「うーん、ゲームに参考になる映画と好きになる映画は違うんですけど、昔の映画は好きだし参考になりますね。『ローマの休日』とかね。映画はDVDで500本ぐらいぶっ続けでみてます。最近のハリウッドの映画はテクノロジー的に高度なものが多いので解析がとても難しい。そういう意味では香港のB級映画がわかりやすいです。何をやっちゃいけないかというのがよくわかる(笑)。いい映画ばっかり見ていても勉強にはならないですしね」と続けた。
■ これからのゲームは、ゲーム製作はどうなっていくのか?
セッションはスライドなどを交えながら進められた |
最近のネットインフラの拡大がゲームやその制作にどういう影響を及ぼすかという話題では、鈴木氏は「通信とかが発達してコミュニケーションをやりやすくなってきましたよね。インターネットとかがどんどん進んでいくと、いろんな国のエンジニアが一緒に仕事できるようになるし、いろんなカルチャーで影響を与え合って、新たなことができあがるんじゃないかなあと思っています」と語った。
一方、ライト氏によると、娘さんはPCではあまりゲームをせず、家庭用ゲーム機で友達と遊ぶことが多いのだそうだ。彼女がゲームから得られる楽しみは、30%ぐらいはゲームそのものにあるけれど、70%は友達とのコミュニケーションや対戦によるものではないかとのこと。人とのコミュニケーションがゲームに大きな影響を与えることについて、鈴木氏は「10人でプレイするゲームは世界で1番速いCPUを10個使ったようなものだと思いますね」。プレーヤーのアクションや思考や操作はゲームの一部であると考えており、プレーヤー自体もゲームを構成するのエレメントのひとつであると考えているという。
■ 「ピュアな気持ちで新しいものを作りたい」
これからどんな風なゲームを開発したいかという話題で鈴木氏は「新しいゲームジャンルを作りたいです。最初は体感ゲームにチャレンジしましたし、次は3Dを意識してやってきました。そういった感じのもう一度新しい流れを作りたいですね。」と意欲的に語っていた。また、セッション内での鈴木氏の、「過去ではなく未来のことを常に考えて、ピュアな気持ちでゲームを製作したい」という言葉は非常に印象的だった。両氏にはこれからも多くのゲームファンを虜にする新作を期待したい。
□E3のホームページ
http://www.e3expo.com/
(2002年5月24日)
[Reported by 西尾ゆき]
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