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■ 「ライジンピンポン」の秘密に迫る!! ~開発者インタビュー(Part.1)~ 今回は、本作のゲームデザイナー“ひげパパ”こと寺内武宣氏と、“松桐坊頭”ことプログラマ菊池正行氏のインタビュー(Part.1)をお届けしよう。 ちなみに開発者の両氏とも、非常にノリが良くトークも滑らか。そのためか、インタビューにはお目付け役としてタイトー広報の永田みうさんが同席。「余計な事は絶対に言っちゃダメだからね!!」と鋭く目を光らせる中、「いや、やっぱ滑らせてナンボでしょう」などと不遜なことを考えつつインタビューにのぞむ記者であった。
■ 「ライジンピンポン」ができるまで -- 「ライジンピンポン」の制作は、いつ頃から開始されたんですか? 寺内(以下敬称略) 昨年の……おおまかには約1年くらいですかね。 菊池 筐体の制作とか、細かい実作業も含めると1年以上かかってます。もちろん(ゲームによって)長い、短いはありますから、全てが同じではないですが。 永田 「ライジンピンポン」に関しては、構想を含めるとそれくらいになるということです。 -- 今回、ラケットに“センサー”が使用されていますよね。こういう体感ゲームを作る場合、2パターンあると思うんです。ラケットに適したセンサーがあるから、それを使ったゲームを作ろうというパターン。もうひとつは、まずゲームのコンセプトがあって、それに適したセンサーを調達するか開発するパターン。「ライジンピンポン」の場合は、どちらになるんでしょうか? 寺内 今回の場合はネタ(ゲーム)が先ですね。で、使えるセンサーを探してきて、色々試しながら検討した結果、最終的には“地磁気センサー”と“加速度センサー”の組み合わせでやりましょう、ということになりました。 -- 仕組みや原理などを簡単に説明していただけますか?
菊池 真似しないでね(笑) 寺内 でも、開発している途中で……コナミさんの体感ゲームで「剣(つるぎ)」が出たりとか、これ(ライジンピンポン)を発表した「AOU2002」では、ラケットを使ったテニスやゴルフとか同じようなゲームが出ましたけど、ああいったものとは“アプローチが全く逆になってしまった”のが面白いなぁ、と。 -- 逆のアプローチとは、具体的にどういうことですか? 寺内 例えば、ナムコさんのもの(魔斬 -MAZAN-)だったら周囲にセンサーを張り巡らせて判定していますし、コナミさんの「剣」は、たぶん柄にセンサーを仕込んで筐体側とのやり取りでチェックしている……か、そういったものの応用になっていると思います。うちと同様に“持つ部分にセンサーを仕込んでいる”もので「AOU2002」に出展されていたのは、コナミさんのゴルフ(ハワイdeゴルフ)とふたつで、他の振り物系は(センサーが)外から見てる、っていうのが面白かった。 菊池 二極化ですよね。外から受けるか、中から……か。 寺内 どちらも一長一短ありまして。そこの選択で、うちはたまたまこういう形になった。 -- センサーの精度は? 寺内 かなり細かい所まで出せますよ。傾き具合をリニアに捉えることができます。で、ちょっと裏話になっちゃうんですが……卓球って“バックハンド”と“フォアハンド”のふたつ(のスイング)があるじゃないですか。最初は、これを正確に画面の真ん中から、画面のこっちはバックで、こっちはフォアで打たないとミスにしよう! ってことをやったんです。そうしたら、とてもとても難しくて……(笑) -- そうしなくても大丈夫だと判っていても、なんとなく(右利きの場合で)画面の左側に飛んできた球はバックで……という風に、つい身体が反応して打っちゃうことがありますね(笑) 寺内 でしょう?(笑) それと、右利き左利きの問題とかありまして。そこを厳密に取ってしまうとゲームにならなくなる……まぁここは涙を飲んで、どちらでも打てるように仕組みを変えてもらったり。ゲームにするために遊びやすい方向で調整しました。 -- “遊びやすさ”については、どんなに力一杯打っても決して相手のコートをオーバーしないとか、そういう部分にも表れていますよね。
-- では、製品化されるまでに省かれた要素も少なくない? 寺内 ええ。先ほど申しあげた“画面の左右で打ち分けをする”というのもそうですし。ギミック的な所では、ラケットにソレノイド(電磁石)を仕込んで「カツーン、カツーン」とラケットに球が当たる音や感触を出そうよ、ということもやりました。「無いと面白くないよね」っていう話になって。で、感触を出すためにソレノイドを何個も用意して“これなら!”とラケットを試作してみたら……えんらい重い(笑) まるで牛乳瓶を振っているような。ちょっと、これはゲームにならないね、と(笑) -- 試作ラケットの重さって、どれくらいだったんですか? 寺内 何キロ……とまではいかないけど(笑) 確実に300(グラム)は超えてましたね。 菊池 今時の軽い携帯の6~7個ぶんぐらい。 寺内 いや、6個は大袈裟や~(苦笑) 菊池 だって、最軽量で50gじゃない。まぁ、平均で3~4個くらい? -- 開発サイドでは、どれくらいまでの重さなら大丈夫だろうと判断されました? 寺内 いや、これはもう軽ければナンボでもいいと……ただ、強度との兼ね合いもありますから。機構開発のメカ屋さんの方とボクらの方とで、すったもんだの殴り合いがあって……まぁ殴り合いじゃないですけどね。色々あって。 菊池 難しいのは、ラケットの重さだけじゃないんですよ。ケーブルも含めてだから。ラケット自体を軽くしてもケーブルが重かったら、一緒に持ってるぶんテンションがかかる。 寺内 ケーブルに入れるラインも減らさなきゃとか、そういう所でも難儀しました。圧縮された期間の中でやらなきゃ、意見をフィードバックしなきゃ、っていうのもありましたし。生みの苦しみでしたね。 ■ 開発陣が予想もしないトラブルが発生! ~ロケテスト~
-- ケーブルがひっかかる? 菊池 プレイしているうちに人が回り込んじゃう。 寺内 みんなプレイしているうちにエキサイトしてきて、ホルダーに回り込むように動いてケーブルをひっかけちゃう。それで、みんな「アッ!」って気がつく(笑) 菊池 ケーブルの接続位置も最初は違ったんですよ。ひっかからないように移動させた訳です。 寺内 ロケテストに出しながら、何度も何度も補強したり改造したりして……メカ屋さんもかなり苦労されてます。 -- ロケーションの現場って、結構ムチャやる人が居ますもんね。 寺内 ガッツンガッツンやりますからねー。初めてロケテストに出したときは、結構……。 菊池 こちらが想像しなかった遊びをしてくれますよ。 -- 例えば“こんな凄い現場を目撃した!”とか、そういうのはありますか? 寺内 一発目……渋谷に初めてロケに出したとき、一番最初に触ったお客さんが何をやったかというと、コードを持って……(と、カウボーイが投げ縄をするようにコードを握りながら頭上でラケットを振り回す真似をする) -- (爆笑) ※注意:絶対に真似してはいけません!! 寺内 思わず「待てーーー!!」……と言いたいけれど、テスト中なんで言えないツラさが(笑) 「ウワー!!」と。 -- 子供か、と(笑) 菊池 あと、中学生くらいだったんですけど、遊ぶ位置が違うんですよね。我々は普通に振ってくれるもんだと思って作ってますけど、彼らはこうやって……(筐体中央部に乗り出すように) 寺内 身を乗り出してラケットを振る(笑) 菊池 あとは、飛んでくる球に合わせてラケットを画面の上にかざしたり。オハジキみたいに。 -- 失礼な表現ですけど、ある意味ネイチャーな感覚ですね。見たまんま反応してるっていうか、原始的なノリ。 寺内 これはもう、ある意味ボクらにしてみれば“してやったり”なんですけど。でもまぁ、そこまでしなくていいよっていう。 -- でも、気持ちは判りますよ。そういう(つい身体が動く)ゲームだと思います。だからこそ、ストラップに関する注意画面がスキップできない訳ですね 寺内 そうなんですよ。ストラップもそうなんですけど、製品版は「危ないから気をつけてね」っていうエリアシート……ちょうどラケットのケーブルが届くエリアの中だけでやってくださいっていう範囲を示すものが用意されます。 -- でも、ロケーションによっては、空間を確保するのが難しい店舗さんもあるかもしれませんね 寺内 そこの所は……運営される店舗さんに気をつけていただくしか。 菊池 くれぐれも殴り合いは絶対に止めてね。ラケットは凶器じゃございませんので(笑)
……ということで、「ライジンピンポン」開発者インタビュー(Part.1)はここまで。
(C)TAITO CORP.2001
□タイトーのホームページ (2002年4月12日)
[Reported by 北村孝和] |
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