![]() |
★ PS2ゲームレビュー ★
父親譲りの二挺拳銃を手にした主人公は、18才の少女ヴァージニア・マックスウェル。まだ世慣れていないため、まっすぐに突っ走っては壁にぶち当たり、荒野の中で成長していく若き渡り鳥だ。渡り鳥とは、荒野に生きる冒険者の呼び名。財宝目当てのジェット、定められた宿命から逃れるため集落を飛び出したギャロウズ、賞金首を倒して報酬を得るバウンティハンター・クライヴ、思惑も様々な3人の渡り鳥と偶然の出会いを果たし、冒険の物語が幕を開ける。
■ 注意深く村を歩き、フィールドを歩き回る 本作は基本的にクォータービューのRPGで、視点を様々な角度に回転させながら村やダンジョンを進んでいく。世界は「アウトフィールド」と「インフィールド」(村とダンジョン内)に分けられ、「アウトフィールド」も漫然と歩いているだけではダメ。村の人の情報を頼りに、何も見えない場所を手探りで、目的の建物を探し当てなければならないのだ。これが「サーチシステム」。村やダンジョンなどが最初から見えておらず、□ボタンを押してサーチしなければ目的地は現れないのだ。広大な「アウトフィールド」は、アイテム「フィールドスクリーン」を購入することで全体マップを見ることができる。最初は大陸の沿岸が線画のみで表示された白地図の状態で、自分が移動した部分に色が付いていくため、未開拓の土地はこれを確認しながら目標の建物を探すことができる。また、せっかくのマップを全て塗りつぶして完成させたいという欲求にかられる。 村の人たちの台詞にはしっかり耳を傾けておかないと、「アウトフィールド」上で泣きを見ることになる。漫然とフィールドを歩いていれば村がある、というシステムに慣れている人は、最初は戸惑うかもしれない。筆者がそうで、最初はダンジョンがなかなか見つからず何て面倒なんだろうと思ったが、ヒントはきちんと用意されている。それさえ聞き漏らさなければ大丈夫なのだとわかってからは、村で情報収集するのに注意深くなった。
また親切なことに、聞き流しがちな会話も、覚えておくべきところはしっかり覚えられるように配慮されている。
■ インフィールドでアクション
シュレディンガー一家との戦闘は、毎度マヤ自身が中身も外見も大きく変貌するので面白い。マヤの得意な戦法が、本や漫画で読んだキャラの性能をトレースするというものでコスプレ状態で登場するため笑えて、可笑しいわりにはマヤが飛躍的に強くなっているのでハラハラさせられた。
1度戦った相手が何度も立ちはだかるのはいいのだが、中には前の戦闘から性能があまり変わっていないと感じる相手との戦闘もあって、それが長丁場になると足止めを食っている感じでちょっともどかしかった。
■ 「ミーディアム」について知ろう 戦闘のシステムでは、まず「ミーディアム」について触れておかなければならない。ワイルドアームズの世界の中では、万物に守護獣(ガーディアン)が宿ると言われている。「ミーディアム」とは守護獣の化身で、各キャラに装備させる(インストールする)ことができ、ストーリーの序盤で4つの「ミーディアム」を入手することができる。インストールすることでステータスを強化できたり、戦闘中に守護獣を具現化して戦闘させたりできるようになるのだ。またそれだけでなく、「ミーディアム」に応じた「アルカナ」を使用できるようになる。
キャラはそれぞれ「フォースアビリティ」を備えている。これはキャラ固有のアビリティで、例えばヴァージニアならパーティー全員に対してアイテムを使用できる「ミスティック」、クライヴなら狙った敵に100%銃弾を撃ち込み、その際攻撃力が通常の2倍になる「ロックオンスナイプ」などを持っている。また「ミーディアム」をインストールすることによって、このコマンド内の「マテリアル」というコマンドで守護獣を具現化することが可能になる。これは召喚獣のようなものと思ってもらえばいい。 そして、「アルカナ」は魔法のようなものと想像してもらえばいいだろう。回復系、攻撃系、補助系などがあり、こちらはミーディアム固有となっている。例えば火の守護獣「ムァ・ガルト」の「ミーディアム」を装備すれば、火属性攻撃のアルカナ「クリメイト」や、敵の物理防御ポイントを下降させる「フラジャイル」などが使用可能となり、水の守護獣「シトゥルダーク」は、水属性攻撃「プレッシャー」や、味方のダメージを回復させる「ヒール」などを持っている。 メインの武器であるARM(銃)で攻撃をすると「FP(フォースポイント)」のゲージが上昇していき、このポイントに応じて「フォースアビリティ」や「アルカナ」を使用できる。「FP」の初期値はキャラのレベルが上がっていくにつれ増えていくので、レベルが高くなってくれば戦闘の最初のターンから使用できる。また、「フォースアビリティ」は「FP」を消費するが、「アルカナ」は消費しないため、FP残量を気にせず魔法を何度でも使えるような感覚だ。「FP」の初期値が高くなってくると、戦闘の最初から「フォースアビリティ」や「アルカナ」を使用できるのだ。 更に、キャラはそれぞれ「パーソナルスキルポイント」を持っており、この範囲内で装備している「ミーディアム」に応じたスキルを付加させることができる。例えば地のミーディアム「グルジエフ」を装備させているキャラには、「地」属性に対する耐性などいくつかのスキルがあり、これを選んでポイントを振り分けることで起動する。段階に応じてその効果もより大きくなる他、戦闘中に手に入れた「ギア」アイテムを「インストール」すれば、新たな別の「パーソナルスキル」を付加することもできる。「ギア」はひとつの「ミーディアム」に対して5つまで付加することができるが、外すとなくなってしまうので注意が必要だ。 と言った感じで、説明すると少々ややこしく感じるかもしれないが、プレイしていればすぐしっくりくるはず。というのも、コマンド入力のインターフェイスが親切だからだ。あらかじめARMに合っており、上下左右にレバーを倒せばアイテムやフォースアビリティ、アルカナ、などにカーソルが合うが、レバーを離すと中央のARMに戻る。全てのコマンドが一列に配置されているのと違って、重要度が付けてあるぶん分かりやすく感じた。最初のうちは、とりあえず銃だけ撃っていれば何とかなる。そこから派生するコマンドは、最初のうちは「FP」も少ないのでそんなに使えないし、冒険を進める中で使いこなしていけばいい。 これら細かな戦闘のシステムによって、攻撃をするにも守るにも選択の幅があって面白い。しかし、ただ経験値稼ぎをしたい場合、こんな幅広い選択肢の中からずっとコマンド入力していては疲れる、という人には「オートバトル」もちゃんと用意されている。「ノーマルアタック」を選べばキャラがARMのみで攻撃をし、ちゃんとリロードもしてくれる。また「キャラクターバトル」を選べば「アルカナ」などの能力を使用した戦闘を勝手に進めてくれるのだ。
■ エンカウントの仕組み フィールドやダンジョン内を歩いていると敵と遭遇するが、戦闘に入る前にキャンセルすることが可能だ。キャラの頭上に白い「!」が表示された際、画面左上のエンカウントゲージが一定量あれば、一定時間内にボタンを押すことでキャンセルできるのだ。これが赤い「!」だと不意打ちだったりエンカウントゲージが足りない状態なので、問答無用で戦闘に入ることとなる。また緑色ならプレーヤーのパーティーよりも敵が弱いので、キャンセルしてもキャンセルゲージが減らない。敵の強さに応じてキャンセルゲージが減る度合いも変わってくるのだ。 アウトフィールド上では、最初から目的地が視認できるわけではなく、歩き回ってサーチすることが多いため、敵との遭遇を避けられることはストレス軽減になる。逆に「!」の表示中にボタンを2回押せばすぐに戦闘に突入できるので、経験値やギャラ(お金)をためたい時はどんどんエンカウントすればいい。経験値を稼ぐ時と、何かを探したりする目的で敵を避けたいときとで、選ばせてくれるのがありがたい。 とは言えダンジョン内などでは、試行錯誤して解法を導き出すパズル的な要素が多いので、うろうろしてキャンセルゲージを消費してしまいがち。何度か戦えばゲージは回復し、またダンジョン内ではゲージを回復するジェムが落ちている。
BGMは口笛やアコースティックギターで奏でられ、雰囲気満点。宿屋に宿泊したときに流れる口笛なんて、「荒野で負った傷を癒しました」という状況がこれ以上無いほど伝わってくる。またキャラの台詞やナレーションも、うずうずするほどカッコイイ。旅の途中で聞ける村人や他の渡り鳥の台詞にも、ちょっとクサいけどこの世界にはよく似合う渋さが散りばめられている。 また、キャラそれぞれの背景も興味深く、特にまだ青いヴァージニアやギャロウズに関しては、全体のストーリーが進んでいくのとあわせて個人が渡り鳥として育っていく過程も楽しみだった。 やりごたえは十分。こってり長時間やり込めるRPGを探しているなら、買って間違いないと思う。
(C) 2002 Sony Computer Entertainment Inc.
□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ (2002年4月1日) [Reported by 河本真寿美] |
I |
|