★ PS2ゲームレビュー ★
プレイステーションと共に進化してきた「鉄拳」シリーズも、はや5作め(『鉄拳タッグトーナメント』を含む)。「2」から一気に対戦格闘としての知名度を上げ、タイムリリースキャラクタの採用、家庭用オリジナルモードの充実度など、他の対戦格闘ゲームから1歩抜きんでたクオリティを提供してきた。今作はチームにとって「鉄拳タッグトーナメント」以来のPS2で2作めの作品となる。新キャラクタの登場や、操作システムの変更など、「鉄拳」が4になってどうなったのか? 家庭用オリジナル要素はどんな具合なのかを中心にレビューをお届けする。
■ 「横移動」をベースに操作系もリファイン
また、相手との位置を入れ替える「ポジションチェンジ」が導入された。左パンチ+左キックで相手をつかみ、その後方向ボタンを入力することで任意に相手との位置関係を変更できる。これは投げ技の簡易的なものと考えてもらってかまわない。この導入により、通常の投げ技は右パンチ+右キックとこれもシリーズ伝統のコマンドから変わった形になっているので注意。 ポジションチェンジは、成立してもダメージはないが、その分つかむまでがほんのわずか通常投げより早く、さらに抜けコマンド受付時間が短い。さらに、壁近くで相手を押し出すようにポジションチェンジすると、壁に相手を叩きつけてダメージを与えられるうえ、さらに追撃までが可能となる。壁に打ちつける角度によっても変わるが、チャンスであることには変わりない。 ここで「壁」という言葉が出てきている通り、「4」ではステージによって差違はあるものの、壁が導入されているのもシリーズ初の試みである。無限フィールドであった「鉄拳」シリーズに、この壁と「アンジュレーション(高低差)」の概念が持ちこまれている。 壁は、相手を叩きつけることでダメージを増加させるだけでなく、さらにそこから追撃のチャンスがある。食らった側も壁に叩きつけられると攻撃こそできないが、ガードしたり、受け身を取ることで追撃を回避するチャンスがある。が、90度コーナーなどに追い込まれた場合、壁受け身をとっても非常に危険な状態が続くこともあり、この試み自体、すべてうまくいっているとは限らない。 これはもう追い込まれないよう立ち合いの状態で壁との位置関係を考えながら闘う必要がある。だが、攻め側も空中コンボの途中で壁に当たってしまった場合は状況に応じてコンボを切り替える必要がある。「鉄拳」の場合、ダウンしたあとの起き上がりの攻防も、攻め側がやや有利にできているといえるので、この壁をめぐる攻防も「鉄拳」らしい、といえばそのとおり。受け身に失敗すればタコ殴りにあうし、受け身中は無敵なので成功すれば窮地は脱出できるが、手練れと対戦すると非常にシビアなことになる。
それから、アンジュレーションに関しては、追い打ちする技のヒット判定に影響が出たり、空中コンボにも影響が及ぶ。上り(追撃する側よりされる側が高い位置にいる)では、中段攻撃が当たりやすくなるし、逆に空中コンボを多段ヒットさせるのが難しくなる。逆に下りでは、下段攻撃でも当たらないものが出たり、空中コンボをよりヒットさせることが可能となっているというセガの「バーチャファイター3」のようなシステムになっている。
■ PS2初のプログレッシブ出力に対応したグラフィック
また、「鉄拳タッグトーナメント」の海外版で採用されたフリッカフリーの画質にも対応(デフォルトの設定はフリッカフリーになっている)。フリッカフリーの画質選択は、「OPTION」で「ADJUST DISPLAY」を選択すると、「SOFT(フリッカフリーモード)」と「SHARP(鮮明画質)」モードに切り替えることができる。通常のTVでは、「SHARP」モードでは多少ちらつきが気になる。デフォルトの設定で十分なので、特にこだわらない人はデフォルトのままで十分。 テクスチャとキャラクタの作り込みはさすがナムコ、といえるだけのものはある。「BEACH」や「JUNGLE」の水の表現や、「AIRPORT」、「BUILDING」、「LABORATORY」のライティングやスモークの演出には安心感のようなものすら感じられる。しかも、ロード時間は格闘ゲームの中ではかなり短い。「QUICK SELECT」をOPTIONでONにする(キャラクタセレクタが簡易版になる)と、さらにストレスなくゲームがプレイできるのはありがたい。
■ 家庭用ならではの仕掛けも健在
また、「プラクティス」モードから技練習のモードが独立し、「トレーニング」モードが増えている。これは規定の20個の技を入力しきるまでをタイムアタックできるようになっているモードで、初心者でも組み立てを覚えて入力タイミングを削ればかなりアツいバトル(といっても対戦ではないが)ができる。 一方、「プラクティス」モードは「3」、「タッグトーナメント」に引き続き、調べごとをしたいプレーヤーにもってこいの機能がふんだんにもりこまれている。「COMMAND CAPTURE」モードで、自分が入力した連携を記録、再生することも可能。コマンド受け付けの可、不可を体の色で表す「HIT ANALYSIS」も、先行入力にクセのある「鉄拳」シリーズでは非常に役に立つ。「プラクティス」モードのオンラインコマンド表では、技を再生してくれる機能も付いている。オンラインコマンド表は、「ARCADE」や「ストーリーバトル」モードでも参照が可能。「3」から取り入れられた「ジャスト入力」で特性が変わる技の練習もここで十分できるだろう。 残念なのは、「トレーニング」モードで左右が入れ代わった時、コマンド表記が入れ代わらないという点のみ。これは実現してほしかった機能だ。
■ 「TEKKEN FORCE」モードはテクニカル 1対多人数という闘いが楽しめる「TEKKEN FORCE」モードは、通常のシステムを利用した3Dアクションゲーム。ターゲットの切り替えをL1orR1ボタンで行なうという点が異なるほかは、基本的操作は他のモードと同じ。 最大10人近くの鉄拳衆と同時に闘うこのモード、攻撃と横を中心とした移動、そしてガードを駆使することで闘い抜くのがコツになる。攻撃を当てて敵を吹き飛ばしたり、回転系の攻撃をヒットさせることで一気に攻撃が仕掛けられるという点がおもしろい。また、敵によっては、早く倒せば高得点というやつがいたり、倒すとアイテム(鉄拳だけにタマゴやニワトリの形をしている)が出現し、重なることで体力を回復できたり、攻撃力を一定時間パワーアップできる。鉄拳衆ひとりひとりに名前が付いているのもユニークだ。倒しても敵が消えることはなく、空中コンボを重ねたり、ダウンした相手に当たる攻撃を出せばスコアが稼げるのもやり込みがいがある。 ルールとしては、制限時間内にライフがゼロになる前にエリアの最後に待ち受けるボスを倒せばクリアだが、はっきり言って鉄拳衆の同時攻撃のほうがボスより手強いし厄介だ。攻撃の硬直に攻撃されるので、コーナーに追い詰められるとうかつに技が出せなくなる。しかも、視点がサイドから後方視点になっているため、非常にわかりにくいポジションが多発する。鉄拳衆とカメラがライバル、といえるモードだ。鉄拳衆が繰り出す攻撃は、基本的に登場キャラクタのものばかり(「タッグトーナメント」までの木人と思えばいい)だが、後半になると独自のコンビネーションも使ってくる。固有技コマンドとガードがおぼつかない人は、「プラクティス」モードで鍛えてからのほうがやりやすいだろう。また、壁に囲まれたステージゆえ、後方への移動と横移動の移動量が限られているため、位置取りとアイテムゲットに多少ストレスを感じた。このモード用に動きが調整されているとのことだが、横移動中の処理など、もうひと工夫欲しかったような気もする。 クリアはしてみたものの、やはり視点問題が厳しいかな、と思わざるをえなかった。特に自分がステージの四隅にいるような状態では、背後の敵は見えないし、手前の敵も見えない(描画されない)ので、背後からいきなり吹き飛ばされたり、次のエリアに行くと、前ぶれなく蹴られたりしたのは痛かった。それから、コンティニュー画面でタコ殴りにされている自キャラを見るのはつらい。いきなり背後から鉄拳衆の集団に蹴られて倒れるのを見たときは正直ムッとした。
「4」は、各モーションの見直しが利いており、空手をベースとした新キャラ(羅刹門など一部技に名残があるぐらい)になった「風間 仁」、「スティーブ・フォックス」、「クレイグ・マードック」などの新キャラの動きはとくにすばらしい。だが、一部技のモーションが見えにくかったり、動作が重く感じるのは、ちょっと原因がわからないが、寂しいところではある。 壁やアンジュレーションの採用により、今までのシリーズにあった空中コンボで得られた爽快感はスポイルされた感が否めないが、起き上がりを含めた受け身など、ダウンする恐怖に対してのシビアさは独特のおもしろさを持っているとは思う。だが、知らないとそれこそボコボコにされてしまうので、PS2版をやりこんでみる価値は十分あるだろう。 シリーズで一番遊びやすくはなっている。だが、なにか足りない、というのがAC版から「鉄拳4」に対して筆者が思っていたことだった。PS2版も、基本的に対戦部分やシステムには違いが見られなかったので、その点に関する感想は変わらない。「ストーリーバトル」モードのキャラ別のエンディングなど、ファンへのサービスも変わらず導入されているからこそ、次の「鉄拳」に期待したいところだ。
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□ナムコのホームページ (2002年3月26日) [Reported by 佐伯憲司] |
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