「D.I.C.E Summit」開催
米国を代表するクリエイターがラスベガスに集結

2月28日より開催(現地時間)

会場:Las Vegas Hard Rock Hotel

 「Microsoft International Game Festival」が終わったラスベガスでは、引き続き「D.I.C.E Summit」と呼ばれるイベントが開催されている。主催は米国内のほとんどのデベロッパーを会員として抱える学術研究団体「The Academy of Interactive Arts & Science(AIAS)」。同アカデミーはこれまで対外的な活動としては、年に1回、「Annual Interactive Achievement Awards」を発表していただけだったが、今年からは米国ゲーム産業の発展を促す目的で、クリエイターによるクリエイターのためのイベント「D.I.C.E Summit」を開催する運びとなった。本稿ではその初日の模様をお伝えしたい。

好天の続くラスベガス。日中は太陽が燦々と降り注ぎ、外はサングラスなしでは歩けないほどまぶしい
 D.I.C.E Summitの会場はメインストリートから少し離れた場所にあるHard Rock Hotel。正面玄関の裏側にある多目的ホールを借り切り、そこに即席のステージを作成して2日間に渡って1時間区切りのセミナーやラウンドテーブルが行なわれる。

 開催初日となった2月28日は、AIAS代表Paul Provenzano氏による開幕挨拶のあと、引き続きセミナーが始まり、午前中はLorne Lanning氏(Oddworld Inhabitants代表)、Mark Cerny氏(Cerny Games代表、「クラッシュ・バンディクー」の作者)、Sid Meier(Firaxis Games代表取締役、「シヴィライゼーション」シリーズの作者)が壇上にのぼった。

 Lorne Lanning氏は「Laughing Matters」と称した、プレーヤーをゲームに引き込むための見せ方のテクニックを紹介。見せ方の巧いゲームとして「スーパーマリオ64」「ルイージマンション」「Halo」「Oddworld, Munches Odyssey」などを挙げ、中でも何度も繰り返し取り上げ、賞賛を隠さなかったタイトルがSCEIの「ICO」。全編に渡って取り入れられている映画的手法や断続的に主人公に心理的圧迫を加え続ける展開の仕方などを繰り返し褒め称えた。自身もハリウッドで映画作りに携わっていたこともあり、舞台慣れした軽快なトークで笑いの絶えないセッションだった。

派手な身振り手振り口まねなどで場内を沸かせてくれたLorne Lanning氏。スクリーンに映っているのは「ルイージマンション」と「ICO」

自分の大失敗を惜しげもなく多彩なユーモアを交えて堂々と解説するSid Meier氏。これほどの人物が世界にふたりといるだろうか
 続いて壇上に上ったMark Cerny氏は、これまで自身が手がけてきた作品の経験を元にゲーム開発に関するノウハウを紹介した。プランニングから実際に着手するまでの内容だったため個人的には興味薄だったが、参加者たちはまるで逆だったようで、左右に置かれた質問用のマイクの待ち行列が絶えなかった。

 そして午前中、もっとも注目を集めたのが、いまや米PCゲーム界の総帥的存在Sid Meierのセミナー「The DINO Project: Three Glorious Failures」(「The Dino」プロジェクトにおける3つの偉大な失敗)。最初に、かつて後輩のひとりとして同氏とともに仕事をしたBluce Shellyが彼の紹介を行ない、その後、Sid Meierが壇上にのぼって握手を交わすという劇的な光景も見られた。

 The DINO Projectは、Firaxis Gamesの公式サイトで「開発中」とだけアナウンスされ続け、いつしか姿を消した幻のタイトル。セミナーでは、当時作成したプロトタイプを実際に起動し、自身でプレイしながら「偉大な失敗」について解説していった。驚いたことにプロトタイプは1つではなく、「シヴィライゼーション」タイプのターンベースストラテジーを2パターン、「Starcraft」タイプのRTSを1パターン、「Magic: The Gathering」タイプのカードゲームを1パターン作成していた。それぞれ手持ちのスクリプトを駆使してひとりで組み上げたものということで、場内から次々に見せられるプロトタイプの作りの見事さに嘆声が挙げられていた。

 ターンベースストラテジータイプについて「遺伝子組み換えのルールを複雑化しすぎて、プレーヤーがゲームを遊ぶのではなく、ゲームがプレーヤーを弄ぶ感じになってしまった」とコメント。RTSタイプでは「恐竜が勝手に食物を食べるようになって以前よりゲームらしくなったが、よく考えたら恐竜には飛び道具がないことに気づいた。また、恐竜といってもそのほとんどは草ばかりを食べているだけで、肉食同士だけの頭突きあいゲームになってしまった」とコメントした。

 その経験を活かして最後の開発されたカードゲームタイプについては、「子供をターゲットにするためコレクション性も重視し、自分としては一番気に入っている作品だが、ルールが複雑になりすぎた。15分のプレイでプレーヤーが作品が持つ多様性(醍醐味、おもしろさ)を理解できるぐらいでないとゲームとして成立しない」とコメント、続けて「ゲームに不運の要素があるのはいけない、プレーヤー自身に戦術の失敗を悟らせる必要がある」と自らのゲーム観の根本に触れるコメントも行なった。

 質疑応答では、「The Sims」のWill Wrightを始め、米国では相当に名のあるクリエイターから質問が殺到した。「(あなたのような)スタークリエイターについてどう思うか」といったあまり建設的ではない質問もあり、とにかく彼の考えや結論へ至るまでの思考過程を探りたいといったクリエイターたちの異様な熱意が充満したひとときだった(ちなみに質問の答えは「自分たちは後ろで控え、面前に出るべきではない」)。

 昼食後、午後も引き続き各種セミナーが消化されていった。スケジュールの都合でじっくり聞くことができなかったが、午後のメインとなったBluce Shellyのセミナー「Differentiate and Innovate, Don't Imitate」(差別化と革新を狙え、真似はするな)では、いずれの参加者も入り口で手渡されたメモ帳にびっしりメモを書き込んでいた。明日は、Richard Garriott、Will Right両氏のセミナーのほか、午後のラウンドテーブルでは任天堂を代表するクリエイター宮本氏が参加する予定となっている。

最初で最後の公開となりそうな「The DINO Project」。タイトル名は「Age of Dinosaur」とも「Dinamon」とも(もちろんジョーク)。最後に紹介されたカードゲームタイプはひとりで制作したにしてはびっくりするほどの完成度の高さで、彼の全方位的なクリエイティビティの鋭さがよく伝わってくる

□The Academy of Interactive Arts & Sciencesのホームページ
http://www.interactive.org/
□「D.I.C.E Summit」のホームページ
http://www.sicesummit.com/
□関連情報
【3月1日】「5th Annual Intractive Achievement Awards」授賞式
Game of the Yearは「HALO」が受賞、クリエイターが支持する「ICO」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020301/awards.htm

(2002年3月1日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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