RISE OF NATIONS~ポストAGE OF EMPIRES!
18文明が繰り広げる軍事、経済、技術戦争

2月27日 開催

会場:Las Vegas Seven nightclub


「ポストAGE OF EMPIRES(AOE)はなんなのか」

 リアルタイムストラテジーゲームファンの間では、よくこうした議論がかわされる。AOEのリードデザイナ、Rick Goodman氏が制作した「EMPIRE EARTH(EE)」、それとも同じくAOEのゲームデザイナBruce Shelly氏が制作中の「AGE OF MYTHOLGY」のどちらが後継作品として優れているのだろうか。

 血筋は違うが、その「魂」を受け継いだ新たなる作品が今回の「International Game Festival(IGF)」で公開された。それが「RISE OF NATIONS(RON)」だ。

 画面を見る限り非常にAOEライクな印象を受けるファンも多いかと思うが、ただのAOEクローンとは違う。ゲーム性の部分、そしてゲームエンジンの部分でかなり高いオリジナリティが発揮されている。


■ 国境という名の勢力圏

 RONは、これまでの多くのRTSのように単に資源採取をベースラインにおいた軍事戦略ゲームとして収束させず、プレーヤーに対して様々な「RISE OF NATIONS」すなわち「国家の台頭」の実現を楽しめるように作り込まれていた。

 プレーヤーはまず、数人の人民と基本的な街を構成する建物を与えられゲームをスタートさせる。金はAOEのようにはじめから露出しているわけではなく、探索チームによって周囲を探索して見つけ出さなければならないが、食料、木、金といった資源を採取し、これを元手にして各種施設を増設していき、街全体を発展させていく……という初期の展開はAOEにかなり似ている。

 プレーヤーの街……というか国家なわけだが……には「国境」という概念があり、各種施設はその国境の範囲内にしか建設できない。
 敵陣近くに軍事施設を建てまくり、ゲーム開始直後から相手にプレッシャーを与えるような速攻(ラッシュ)は、システム的に難しいと言うことになる。
 もともと、自陣から遠く離れた敵陣近くにポッと建設した軍事施設で軍事ユニットを大量生産できるというAOEをはじめとした多くのRTSが許容しているこのシステムは「シミュレーション」という見地からはかなり奇妙なシステムなので、RONの解釈の方が自然だといえる。

 さて……ということは、敵陣にプレッシャーを与えるのに一番効果的なのは「国境の拡大」ということになるわけだが、これは人口の増加、建物の増設、そして関連技術の進化等で行なえる。

 逆に言うと、プレーヤーが国家を発展させれば、自ずと国境は広がるというわけだ。さらにいえば、国境の広さは、その国がどれだけ発展しているかというバロメータ的なものになるのである。プレイ中は、自軍のみならず敵国の国境も地形に表示されているので、もしそれが自陣側にじわじわと拡大してきているようであれば、それだけ敵は国力を増強してきていることがわかるわけだ。


■ 戦術の多様性を促す新たな進化システムの提案

 RONも特殊設定を除き、ゲームは基本的に古代からスタートする。時代区分は紀元前5000年から現代までを8つに区分しており、一定条件を満たすことで進化させることができるのもAOEライクだ。

 AOEではその条件として「資源の量」というのが大きな敷居として設定されていた。これにより「プレーヤーがまずすべきことは『資源の採取』」という戦略の方向性が強制的に設定されてしまい、戦略の多様性を制限してしまう格好になっていた。

 これに対し、RONでは進化の際に必要な上限を「ある決められた一定のテクノロジーの進化」と緩めている。これにより、プレーヤーは資源採取に関しては国家運営のために必要な最低限のことを行なっていればよく、特定のテクノロジーの進化を押し進めるだけで次の時代に進化できることになる。

 このシステムは、引いては将来、採りたい戦略行動のために特化した国家の発展が行なえることにつながり、プレーヤーごとにかなり違ったプレイスタイルがとれることを意味する。たとえば、経済大国に発展させたければ、その関連技術を優先的に発展させ、その面で敵国より優位に立てばいい。軍事技術優先で進化させていけば、それこそAOEライクなプレイスタイルも成り立つことだろう……というわけだ。

 8つの時代区分はAOEの2倍の時代数になるわけだが、「Empire Earth(EE)のように4つくらいの時代進行でゲームが決着してしまうことはないのか」という質問を担当者にしたところ「EEは素晴らしいゲームだが、我々もそれがEEの弱点だと思っている。RONでは多くのプレイで最終的に現代まで時代が進むようなデザインとしている。目安として1時間くらいのプレイで現代近くまでくるはずだ」と答えていた。

 いうまでもなく、ゲーム開始時の時代設定や最終時代設定はゲームオプションで変更可能であり、時代進行を中世までで打ち止めとしてAOEライクな雰囲気で楽しむことも可能になっている。

【スクリーンショット】
現代兵器も数多く登場する。核爆弾は現代の最終兵器として使用可能。


■ 知識という名の資源

 もうひとつユニークなのは、時代ごとに採取資源が増加するという点だ。ゲーム開始時はすでに述べたように食料、木、金というおなじみの資源が登場するが、時代が進むと金属という資源が登場する。さらに進むと「知識」という資源が登場し、現代近くになると「石油」も必要になってくる。

 ちょっと変わっているのは「知識」という資源。これは大学で生産(?)可能な資源で、知識を蓄積するためには研究をしなければならない。
 これを行なうのが「学者」というユニットだ。
 学者を生産して大学に詰め込むと、ガリガリと何かの研究を始めだす。学者をたくさん生産すれば、当然テクノロジーの進化も効率よく早く行なうことができるわけで、「テクノロジーの進化」に重きを置いたゲームデザインとなっているRONにおいて、学者ユニットをどのタイミングでどれだけ生産すべきかということは、おそらくゲーム展開を左右するキーポイントとなるはずだ。


■ 戦闘はAOEライク、文明は全部で18種

 軍事ユニットは、その種類に対応した軍事ユニット生産施設を建設すればそこで行なえる。これはAOEライクなシステムそのままだ。

 近接軍事ユニット生産施設(俗称:戦士小屋)、遠隔軍事ユニット生産施設(俗称:弓小屋)、攻略軍事ユニット生産施設(AOEでいうところの破城兵器小屋)といったお馴染みの施設があり、ここでそれぞれの軍事ユニットが生産できる。時代を進化させたり、テクノロジーを進化させたりすると、弓兵が銃士になるといったユニットが変化するシステムもとAOEライクだ。
 現代に近くなると飛行ユニットなどが登場したり、軍艦が製造できたりするのはややEEライクだといえなくもない。

 戦闘自体のシステムもAOEライクで、自軍ユニットをまとめて選択し、敵ユニットをクリックすればおのおのが自前の攻撃手段で敵を攻撃してくれる。
 RONの戦闘システムで特徴的なのは、建物への攻撃システムだ。AOEでは破壊することに終始した戦闘システムになっていたが、RONでは敵の建造物をある程度攻撃して機能不全に追い込んだあと、占領して自軍用のものにしてしまうことができるのだ。再び自軍の建造物として再活用するには修繕が必要なわけだが、それでもゼロから建設するよりは遙かに低コストでその機能を確保することができる。自軍勢力拡大の手段としてはもちろんのこと、敵陣へのカウンターアタック手段としても活用できそうなシステムだ。

 ちなみにAOEでは、建物まで寝返らせることができる伝道師というユニットがいたが、RONではこれに相当するシステムやユニットはないとのこと。

 各プレーヤーごとのユニットの総数は最大300。大量のユニット同士が入り乱れて戦うビジュアルの手応えもAOEに近いが、AOEよりもユニットの描写力は優れている。

 登場文明は、以下に列記した全18種類。それぞれが文明特有のユニークユニットを持っているのもAOEライクだ。各文明1~2種類あり、全部で32種類ある。

JAPANESE (日本)KOREAN (朝鮮)CHINESE (中国)
AZTECS (アステカ)BANTU (中南アフリカ)BRITISH (イギリス)
EGYPTIANS (エジプト)FRENCH (フランス)GERMAN (ドイツ)
GREEKS (ギリシャ)INCA (インカ)MAYA (マヤ)
MONGOLS (モンゴル)NUBIANS (北東アフリカ)ROMAN (ローマ)
RUSSIANS (ロシア)SPANISH (スペイン)TURKS (トルコ)

 ところで、AOEでは自軍ユニットが最大数に近づいてきたときには、不要なユニットを自殺させて数減らしを行なったりしていた。この点について担当者に聞いてみたところ「不要ユニットは再訓練をすることで別のユニットに生まれ変わらせることができる」との答え。

 RONはゲームデザイン上、非戦闘員である学者ユニットを多く作ってしまうことが予想されるが、敵国と戦争になったときには不要な学者を別の軍事ユニットに変更すればいい。最初から軍事ユニットを生産した場合と、ユニット種別変更の再訓練を行なった場合とで、どの程度コスト差や生産時間の差があるのかは不明。しかし、一度攻め込まれたらもう軍事ユニットの生産が間に合わない……というような攻め手優勢の、ややかたよった一般的なRTSのゲーム性に対するアンチテーゼにはなっている。

 前述の「占領システム」といい、RONではAOEに比べ防衛サイドにまわっても逆転できる可能性を残したゲーム性が設定されているのだ。

【スクリーンショット】
登場文明は18種類。グラフィックスは文化圏で4パターン程度用意されているのはAOEと同じ


■ ゲームエンジンはオリジナル。2D + 3Dのハイブリッドエンジン採用

 ゲーム画面を見て「AOEのエンジンを使ったものか」と思った人も多いかもしれない。たしかにゲーム画面の印象は似ているし、メニューのデザインまで似ている。しかし、意外にもこのゲームエンジンはオリジナルのものを開発して、これを利用しているという。

 まず一目見てびっくりさせられるのが、各ユニットの挙動のリアルさと細かさだ。
 これは全ユニットが3Dベースのグラフィックスになっているため。ポリゴンベースでモデリングされており、かなり多様なモーションを見せてくれる。大砲を撃てば大砲の銃身の掃除までするし、着弾した砲弾は周囲の敵を吹き飛ばす。見た目こそAOEに似ているが、Xドット×Yドットという制限の範囲内で描かれたグラフィックスではあり得ない、ダイナミックな動きを見せてくれるのだ。

 そして、別な意味で意外なのは、建造物が2Dベースで描かれたものになっているという事実。そう、ユニットは3Dなのでダイナミックなビジュアルを持っているのだが、建造物は「描ききり」グラフィックスなのである。視点の回転移動が行なえず、AOEと同じ俯瞰視点固定のビジュアルになってしまっている。
 ノートPCでも動作させることができるように……という配慮なのか……と思ったのだが、担当者に聞いてみると、なぜか地形は3Dベースで描かれているとのこと。発売まであと1年もあるし、ここまで徹底した3D化が行なわれているのであれば、今後、建造物が3D化される可能性もあるのかもしれない。

 なお、現時点では視点の回転こそ対応していないものの、ズームイン・アウトの視点変更は4段階で行なえるようになっていた(建物の拡大縮小は当然2Dベース)。低解像度画面モードでも、視点をかなり引いたビジュアルにして全体を見渡すことができるわけで、大量ユニットへのコマンド発令などができることになる。


■ 発売は2003年春

 発売は2002年冬から2003年春といわれており、今回IGFで公開されたバージョンはまだ開発途中バージョンといった感じだが、ゲームコンセプトと基本的なゲーム性はかなりしっかりと固まっていた。最終的にどのようになるかは未知の部分も多いが、すでにゲームの核心的な部分まで明らかにされているので、ここでは初公開ながらかなり掘り下げて紹介してみた。

 開発はBig Huge Games Incが担当し、販売をMicrosoftが担当。開発の中心的メンバーとなっているのは「Civilization II」や「アルファケンタウリ」のデザイナーとして知られるBrian Reynolds氏で、これまで彼が携わってきたタイトル達の遺伝子が多分に受け継がれている感がある。

 マルチプレイは8人まで。動作条件としては現段階で450MHz級CPU、メモリ128MB、ビデオメモリ16MBのビデオカード等が挙げられている。最近のゲームとしては「軽め」という感じだ。

 発売時期的には「AGE OF MYTHOLOGY」のあとになるが、これに勝るとも劣らぬ注目度を持ったRON。今から登場が非常に楽しみだ。

【スクリーンショット】
大勢対大勢の迫力の戦闘シーンの爽快感は、ユニットの3D化によって一層強まった感がある

□Microsoftのホームページ
http://www.microsoft.com/games/
□「Microsoft International Game Festival」のホームページ
http://www.microsoft.com/games/gamesfestival/
□「RISE OF NATIONS」のホームページ
http://www.microsoft.com/games/PC/riseofnations.asp
□関連情報
【2月27日】Microsoft、次世代PCゲームを一堂に集めたイベント「International Game Festival」をラスベガスにて開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020227/igf.htm

(2002年2月28日)

[Reported by トライゼット 西川善司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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