★ PS2ゲームレビュー ★

OVA感覚で楽しむ痛快ドラマチックRPG
「暴れん坊プリンセス」

  • ジャンル:痛快!娯楽RPG
  • 発売元:角川書店/ESP
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(11月29日)

【ゲームの内容】
 軽くノリのいい、遊び心満載の「スニーカー文庫系」RPG。右腕に龍を宿した王女を補佐し、共に冒険するというストーリー。誰もが気軽に楽しめるよう配慮されている一方で、斬新なゲームシステムを取り入れたほか、全編OVA感覚で作られているところが楽しい。原案・シナリオは桝田省治、キャラデザインは桜瀬琥姫。豪華声優陣が声を当てているところも見逃せない。



 暴れん坊プリンセス見参!!

物語の舞台となるシルバーベル王国の城下マップ
 ファンタジーといえば、かつてはトールキンの『指輪物語』やイェイツの『妖精詩集』、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』や『ウィザードリィ』など、西洋原産の、しかもかなりヘビーな作品が中心だった。ま、これはこれでおもしろいのだが、設定がカタ過ぎて、あまり親しみやすいものではなかったと思う。はたして、どれだけの人があの難解な『指輪物語』を読破し、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイしたことがあるのだろうか?

 そんなガチガチだったファンタジーを身近な存在に変えたのが、角川書店のスニーカー文庫だった。とりわけ『ロードス島戦記』や『フォーチュンクエスト』が与えた影響は大きく、これらの作品によって日本における“ファンタジー”の解釈は大きく押し広げられたと思う。西洋の「剣と魔法の世界」が「マンガやジャパニメーションの世界」と融合することによって、自由に、そして誰もが楽しめるようになったのだ。

 今回紹介するこの作品『暴れん坊プリンセス』も、同名の小説が角川スニーカー文庫から発刊されている。原作というわけではなくゲームと相互補完の関係、つまりゲームと小説が共に『暴れん坊プリンセス』というひとつの作品を織り成す関係にあるのだが、とにかく設定やストーリーはとことん「スニーカー系」だ。主人公ルージュは18歳の王女。しかも腕には龍を宿し、キレると街ひとつを軽く吹き飛ばしてしまうほどの破壊力を秘めている。その王女を補佐するのが、同じく18歳の気弱な聖騎士シオンと、妖艶な(でも実はオトコ)剣士ジャスミンのふたり。この三人が王国を襲った危機に立ち向かい、悪い魔物どもを叩きのめすというストーリーだ。笑いあり、ナミダあり、お約束ありの、ファンタジー版『水戸黄門』といったところだろうか。

雰囲気たっぷり、ノリノリのオープニングシーン


 琥姫キャラ+豪華声優陣

 ゲームそのものの話に入る前に、まずお伝えしたいのが、豪華絢爛たる制作スタッフ。原案・シナリオは、『俺の屍を越えていけ』の桝田省治(敬称略、以下同)。キャラクターデザインは桜瀬琥姫。起用された声優陣も厚い。主人公(?)ルージュ=ヴィクトワールは三石琴乃、気弱な聖騎士シオン=アースランドは関智一。ルージュの護衛兼お目付役の剣士ジャスミンは藤田淑子。そのほか冬馬由美、小杉十郎太、永井一郎、八奈見乗児、大谷育江、高山みなみ、青野武らが脇を固める。フルボイスではないものの、セリフの数は7,000個を超えるとか。「いったいどれほどの予算を音声に使ったのか!?」と、つい余計な心配をしてしまうほど。

 ベテランたちがアテているだけに、どのセリフもたまらないほど自然、かつ個性豊かで、不安なく楽しめる。とくにルージュ役の三石琴乃とジャスミン役の藤田淑子はベストとも思えるキャスティングで、申し分のないほどに完璧だ。

出会った相手と会話をしながら情報収集


 全編明るく、スニーカー系の軽いノリ

登場人物の関係が一目でわかる、便利な人物相関図
 プレイを始めて、まず最初に笑ってしまったのが、テレビアニメそのままのオープニングシーン。テンポのいいテーマソングをバックにゲームのハイライトシーンが流れ、最後には「暴れん坊プリンセスは、角川書店とご覧の各社がお届けしま~す」というクレジットつき。とことん明るいノリで、「なるほど。スニーカーをゲーム化すると、こうなるワケね」としばし納得。

 さて、このゲームでプレーヤーが演じるのは王女ルージュではなく、それを補佐する気弱な聖騎士シオンのほうだ。なにかと暴走しがちなルージュに付き従って、共にシナリオを解いていく。シオンを演じるという点ではたしかにRPGといっていいが、戦闘シーンはさして重要ではなく、ストーリーをドキドキ楽しむための手段……というか、スパイスでしかない。戦闘が苦手ならオプションの難易度設定で「シナリオどっぷり、戦闘は軽めで」を選べばいいし、逆にスリル満点の戦いを楽しみたいのなら「シナリオよりも、戦闘を楽しむ」を選べばいい。どちらを選んでも進行に違いはなく、自分にちょうどいい遊び方ができるというわけだ。

 「戦闘はストーリーを楽しむための手段」というコンセプトは、『暴れん坊プリンセス』全編に貫かれている。たとえば戦闘に入る前には必ずセーブするかどうかを尋ねてくれるし、もし負けてしまってもいちいちリロードすることなく再戦できる。どうしても勝てない場合は、相手を弱くしてしまうことも可能だ。またプレイ中はほぼいつでもセーブ→中断することができるし、新しいシナリオに入る前には「予想クリア時間 15分」といった具合にプレイの見通しまで教えてくれる。


 「やる気」を高めて一発逆転

 とはいえ、戦闘シーンにもいくつかの新機軸が盛り込まれていて楽しい。まずひとつは、「やる気」の導入だ。『暴れん坊プリンセス』では、キャラクターの「やる気」が高いほど、出せる技のバリエーションが広がる。マジックポイント(MP)と似た位置づけだが、戦闘中にどんどん増えていくところが違う。戦闘開始直後はたいした技を使うことができないが、他のキャラクタから応援されたり(応援したり)気合を入れて「やる気」を高めることによって、一撃必殺の大技を放てるようになるのだ。キャラクタの「やる気」が上がるにつれてプレーヤーの「やる気」もグングン上昇し、戦いはヒートアップしていく。めいっぱい「やる気」を高めてズバッと必殺技を繰り出したときの快感は、ちょっとほかでは味わえない。

 技にジャンケンと同じグー、チョキ、パーの属性があり、それを同じ属性の技で相殺、つまり完全に無効にできてしまうこと、また次のターンで敵が行なうアクションを予測表示してくれるのも、おもしろいアイデアだ。敵の行動を先読みし、それにあわせて技を相殺すれば、自分よりずっと強い相手とも互角以上に戦うことができる。逆に予測が外れれば痛恨の一撃を受けてしまうこともあり、このスリルがなんともたまらなくいい。

戦闘シーンは、敵味方が左右に分かれてコマンドを入力。ルージュの体力がゼロになってしまわないよう注意しよう
戦闘終了後に、他のメンバーから点数が付けられる パーティメンバーの「やる気」をチェック


 オマケや遊び心も満載

 たっぷりのセリフに、たっぷりのアニメ。個性が際立った登場人物たち。お約束のギャグ。あれよあれよと巻き込まれるように続いていくストーリー。なんだか、ふと優しさを感じるゲームシステム。凝っているけれど、決して複雑ではない戦闘シーン。とにかく、徹底的にプレーヤーを気持ちよくしてくれる作品だ。

 筆者が『暴れん坊プリンセス』をプレイしていて一番気持ちよく感じたのが、つまらない「手順」や「修行」がないということ。レベルアップのためにただひたすら雑魚モンスターを殺しまくったり、必要な情報を求めてしらみつぶしに会話を繰り返したりと、そういうウンザリするような手間がいらないのだ。戦闘はシナリオごとにちょうどいいレベルに設定されているし、どうしてもキツいと感じたら相手を弱くしてしまえばいい。プレイを続けるために必要な情報は、無理に会話しなくても自然に提供されるようになっている。これは、コンピュータRPGにとって画期的なことだと思う。

 オマケや遊び心も満載だ。戦闘が終わるとパーティの仲間がその戦いぶりを点数で評価してくれるし、それによって「秘密設定資料集」や「コント」を見ることができるようになる。隙がないというかなんというか、細かいところまで本当によくできている。

「おまけ」もたっぷり。キャラクターを全方向から眺められる「3Dモデリング」や、ウチワネタ炸裂の「パロディ&コント」も楽しい


 読んでから遊ぶか、遊んでから読むか?

 余談。プレイを続けているうちに小説のほうも読みたくなってしまい、速攻で手に入れたのだが、これがまたおもしろい!! スッパリ切れ味のいい文章で、登場人物たちもイキイキとした口調でセリフを語っている。小説はシオンの視点ではなく三人称で書かれているため、ストーリーを客観的に楽しめるところもよかった。

 「読んでから遊ぶか、遊んでから読むか」はお好み次第だが、先に小説を読めばキャラクタ同士の内なる機微を理解した上でゲームを楽しめ、先にゲームから始めれば声とビジュアルの支援つきで小説を楽しむことができると思う。筆者はゲームを先にプレイしたせいか、ルージュのセリフは三石琴乃の軽快な声で、ジャスミンのセリフは藤田淑子の色っぽい声で小説を堪能することができた。ちなみに、小説は現在1~2巻が発売中で、2002年1月1日に第3巻が発売される。

 角川書店らしくメディアミックスも順調に展開中で、iモード版の『暴れん坊プリンセス』も公開されている。2種類のミニゲームが楽しめるほか、携帯電話接続ケーブルを使えばPS2版のソフトに「iモードオマケ」も追加される。ただし2002年1月31日(予定)までの期間限定公開なので、アクセスはお早めに。

選んだ回答によってパーティメンバーの「やる気」が変わる ところどころに入るムービーも、このゲームならではの楽しみ どこか憎めない、ひょうきんな敵モンスターたち



原案(C)2001 MARS
企画・ゲームプログラム(C)2001 アルファ・システム
キャラクターデザイン(C)2001 桜瀬琥姫(Rig・Marge)
(C)2001 角川書店/ESP

□角川書店のホームページ
http://www.kadokawa.co.jp/
□「暴れん坊プリンセス」のページ
http://www.aba-pri.com/

(2001年12月25日)

[Reported by 駒沢丈治]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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