★ PS2ゲームレビュー ★

新しい必殺技を探し出す楽しみが詰まった
「レガイア デュエルサーガ」

【ゲームの内容】
 破滅の一途をたどる世界が舞台。太陽に突如黒い“蝕”が現われ、破滅の象徴としての闇は邪気を放つ“黒い太陽”が出現する。自然界はバランスを崩し、邪気の影響によって蘇るモンスター達が闊歩するなか、プレーヤーは旅に出なければならない。プレイステーションで発売された「レガイア伝説」の続編となり、前作で人気のあった戦闘システム“タクティカルアーツ・システム (TAS)”をさらに強化している。グラフィックも進化したものとなっている。



 「レガイア デュエルサーガ」はオーソドックスなターン制の戦闘システムに、格闘ゲームのようなコマンド入力の要素を取り入れた前作「レガイア伝説」の流れをくむ正統派のRPG。一見すると相反するとも思える両者の融合を実現したタクティカルアーツ・システムこそが、このシリーズのキモと言える。


 自然との調和をテーマにした
  個性的なキャラクターたちの織りなす物語

 不毛の荒野にあってなお、潤沢な水をたたえた泉を持つノールの町。尽きることなく清浄な水を生み出す「水の石」こそが、この地に町を存続させている何よりの存在だった。この町の自警団に所属する主人公のラング(名前は変更可)は、ある日森の巡回中に今まで見たこともないような巨大なモンスターと遭遇する。そしてこれが、やがて世界を覆う破滅の「闇」と戦う、ラングの冒険の旅への第一歩となるのだった……。

 「レガイア」の名こそついているが、ストーリー的には直接的なつながりはないようだ。ただ、自然の具現である「オリジン」と、彼らと語り力を借りることのできる「ミスティック」など自然をうかがわせる存在や、世界を覆いつくし魔物を生み出す「闇」(前作では「霧」)というように、共通する部分は多い。タイトルからも「レガイア=大地を取り戻す」という一貫したテーマが根底に流れていることがうかがえる。前作を知らなくても全く問題はないし、知っていれば共通したテーマに違和感なくなじむことができる。そんなゲームに仕上がっている。

 登場人物は主人公のほか、パーティに加わるのは言葉を失った少女マヤ、老武術家のカザン、アネゴ肌の女戦士シャロン、巨人族の闘士アイン(いずれも名前は変更可)のバラエティに富んだ4人。敵キャラクタにも個性的な人物が多く登場し、プレーヤーを楽しませてくれる。メインのストーリーから外れた部分でもイベントが多く用意されているので、飽きずにプレイすることができるだろう。唯一残念だったのは、戦闘や一部のイベントには音声が用意されているものの、重要なイベントで音声がなかったりすること。「なぜここでしゃべらない!?」と首を傾げてしまうイベントも見受けられ、この点に関しては若干中途半端な印象を受けた。

主人公ラングに敵対するキャラクタ、アヴァロン。彼は大いなる野望を秘めていた かつて天牙一刀流 (剣術) で名を轟かせた初老の男、カザン。オリジンのなぞを語るシーン 強大な敵を前に、はじめての実戦を経験するラング


 新しい必殺技を探し出す楽しみ
  タクティカルアーツ・システムとは?

 さて、このゲームの最大の特徴であるタクティカルアーツ・システム(以下TAS)について触れておこう。戦闘シーンで使用されるこのシステムは、方向キーをそれぞれ上下左右の攻撃に見たて、いくつかの攻撃を組み合わせて1回の攻撃とするシステムだ。リアルタイム制は全くないので「上・下・右・右」などのように自由に攻撃を組みたて、戦闘を開始する。最初のうちは攻撃回数(アーツブロック)も少ないが、レベルが上がるにしたがってブロックの数も、1回あたりのダメージも増え戦闘を有利に進められるようになっていくわけだ。そして、ここからがTASの真髄ともいえる部分なのだけれど、特定の順番で攻撃をすることで「アーツ」と呼ばれる特殊攻撃を出すことができる。たとえばラングの「蒼月破」なら「右・下・右」といった感じだ。アーツは冒険の中で出会う人物から教えてもらったり、書物などのアイテムから学んだりできるが、プレーヤーが戦闘の中で思考錯誤して、自ら探し出すこともできる。序盤の少ないアーツブロックでは強力なアーツを繰り出すことはできないので、ブロック数が増えるごとに色々なコマンドを試してみたくなる。さまざまなアーツを探し出し、戦闘に組みこんでいくことが有利に立ちまわるための早道になるだろう。

 アーツには、アーツポイント(AP)を蓄積するノーマルアーツと、APを消費するスーパーアーツや、さらに強力なハイパーアーツ、さらに、2人のキャラクタが特定のアーツを繰り出すことで発動するヴァリアブルアーツなどが存在する。基本的にはノーマルアーツでAPをため、手ごわい相手にはスーパーアーツなどで攻撃していくことになるだろう。「右・左・右」と「右・下・右」のアーツは「右・左・右・下・右」とつなげて短縮することができるので、使用できるアーツブロックの中で効率的な組みあわせを探すのも重要な戦略だといえる。ただ、空を飛んでいる相手に下攻撃は当たらないし、同様に背の低い敵に上攻撃が当たることもない。下手をすればAPだけを消費して攻撃は空振りということにもなりかねないので、攻撃のパターンは臨機応変に組み立てていくようにしたい。

マヤのアーツが発動したところ ラングのアーツ入力画面

各キャラのアーツが連携することで敵に大打撃を与える「ヴァリアブルアーツ」の連続写真。上3枚がラングの連続写真。下がマヤの連続写真


 戦闘に影響を与えるさまざまな要因を
  把握するのが攻略の第1歩

 攻撃や防御を補佐するアイテムに「アクセサリ」がある。これは装備することで攻撃力や防御力、体力などのパラメータに働きかけたり、毒や麻痺などの状態異常を防いでくれたり、攻撃時に敵からアイテムを奪ってくれたりと、さまざまな効果(スキル)を持つものが存在する。そして、装備しつづけることでアクセサリの経験値が増え、新しい効果が追加されることもある。注意しなければいけないのは、必ずしもプレーヤーに有利に働きかけるものばかりではないということ。攻撃するごとにHPを消費して攻撃力を上げるものや、単純にパラメータを下げてしまうもの、攻撃が100%成功するか全て空振りするかがランダムで決定されるものなどもある。攻撃と防御のスキルは1つずつしか選択できないこともあり、複数の効果を持つアクセサリは、どのシーンで誰に装備させるか悩むことになるはず。不利な効果を打ち消すスキル(「HP減少」に対して「HP増加」など)もあるので、うまく組み合わせて装備するようにしたい。

 また、食材とレシピを入手することでキャンプ中に料理が作れるようになるのだけれど、これもパラメータに働きかけるという意味ではアクセサリと同じ効果を持っている。一定回数の戦闘をこなすと効果は切れてしまうが、ボス戦の前などで効果の高い食事を取ることで、かなり有利に戦えるようになるはず。料理はサラダやスープからメインディッシュ、デザートまでさまざま。種類によってパラメータの上下にかなりの差があるので、場面に応じて効果的にメニューを選んでいこう。食材は各地の店で購入し、レシピはアーツと同様に人や書物から学ぶことでレパートリーを増やしていく。町ごとの特産品などもあるので、全てのメニューを覚え、作れるようになるにはある程度習熟する必要があるだろう。

 多少趣が異なるが、作るという意味で一緒に紹介しておきたいのがアイテムの加工。武器や防具、アクセサリ、消耗品などベースとなるアイテムに素材を合成することで(同じ種類の)別のアイテムへと姿を変える。素材は店でも購入できるほか、戦闘終了時に手に入ることもある。うまく合成していけば店で買えないような強力なアイテムを作ることも可能だけれど、素材も消耗品なので、何をどう加工していくかも考慮していく必要がある。唯一、アクセサリだけは素材を必要とせず、2種類のアクセサリを合成して新しいものを作成していく。合成後のスキルには継承されるものと失われるものがあるので、重要なスキルが失われないように配慮しよう。装備できるアクセサリの数は重量(BG)に左右される。レベルが上がれば多くのアクセサリをつけることもできるが、うまく合成していけば少ないBGで高い効果を生み出すこともでき、レベルの低さを補うことも十分に可能だ。不利になるスキルは捨て、有利なスキルを残す、そんなに都合よくいくこともないが、さまざまな組み合わせを試して最適な合成を選び出そう。

自然界の物質などが意識を持ち具現化した存在「オリジン」。「ミスティック」と呼ばれる人を宿主として、共生、実体化することができる。このオリジンを戦闘に呼び寄せることで強力な攻撃が可能となる


 敵は己の中にあり!? なによりこわい状態異常

 このゲームで一番こわいのは、敵よりもむしろ味方の攻撃。もちろん、普段ならそんなことはないのだけれど、敵の特殊攻撃による状態異常の中で「魅了」「狂暴」にかかった場合仲間への攻撃が発生し、これがクセモノなのだ。なにせ、敵のHPが味方の10倍以上ということも少なくないこのゲーム。自然、攻撃力に主体をおいた装備を整えがちになるが、パーティアタックが発生した場合、これが全て味方に向いてしまうわけだ。ひどいときになると、どう見ても格下のモンスター相手にわずか2ターンで全滅させられたことがある。全滅しても教会で復活できるようなゲームではなく、即ゲームオーバーになってしまうので、それ以来この2種類の状態異常を防ぐ効果を持ったアクセサリは、パーティの標準装備になっている。

 状態異常には、ほかにも「睡眠」「麻痺」「石化」などのおなじみのものや、アーツが使用できなくなり、全ての攻撃が通常攻撃になる「呪縛」や、無条件で防御になってしまう「恐慌」、毎ターンHPなどが減少し、仲間に伝染する可能性もある「疫病」など、多くの種類がある。状態異常は戦闘が終了すると無条件に回復するので、薬などのアイテムは出し惜しみしないで積極的に使うか、アイテムに頼らずに速攻で敵をしとめるかが求められる。ただ、後者を選んでいた筆者は一瞬の隙を突かれて全滅の憂き目にあっている。アクセサリも100%の効果は期待できないので、油断することなく立ち向かっていこう。


 寄り道はほどほどに
  本編以外での楽しみ方いろいろ

 物語の本編から外れた部分にも楽しみはある。ドラクエなどでもおなじみのカジノや、NPC (ノンプレーヤー・キャラクタ) から挑戦を挑まれる田植えや横っ跳びなどのミニゲーム。モンスターを倒したときなどに入手できる種を植えてのガーデニング、それに、さまざまな依頼をこなして報酬を得るギルドなど、その種類は多彩だ。いずれも好成績を達成すればアイテムなどを手に入れることができるので、ときには挑戦してみるのもいいだろう。ギルドからの依頼は戦闘が発生するものも多いので、レベル上げと資金稼ぎをしたいときには最適だ。

 アイテムの収集もまた、このゲームの楽しみのひとつ。とにかく種類が多く、戦闘終了時に得たアイテムのうち、初めて目にするものは黄色の文字で表示されるなど、制作者サイドもこれを意識しているようだ。ただ、未発見のアイテムがどれだけあるかわからないのは残念。料理のレシピのように、未発見のものは「???」で表示するなどの配慮があれば、まだ見ぬアイテムを求めて冒険を続ける楽しみもあったと思うのだが。

 フィールドマップと、ダンジョン内に配置されたテントのある場所ではキャンプを張ることができる。前述の料理は、このキャンプ内で行なうことができるのだけれど、ほかにもパーティのメンバー同士で話をする「談話」なども選ぶことができる。談話では、次の目的についての話や謎解きに関するヒントなど有益な情報を得ることもできるが、折りにふれて発生する雑談やメンバーの過去をうかがわせる会話や独白などもあって飽きることがない。テントはセーブができる重要なポイントでもあるので、テントを見つけたらまずキャンプ。そして、セーブのついでに談話に花を咲かせるのがおすすめだ。

ラングの“オリジン”がついに覚醒。炎の化身が登場 ラングはついに旅立ちを決意する


 楽しむ要素が多すぎて
  ユーザーを選びそうなRPG

 芯の通った物語と個性豊かなキャラクタ、前作から評価の高いTASを搭載し、本編以外にも楽しみの多い「レガイア デュエルサーガ」。けれどプレイしてみると、このゲームを楽しめるかどうかは、結局のところプレーヤー次第なのではないか、という印象もある。うがった見方かもしれないけれど、TASは、ウラを返せば新しいアーツを発見できないと厳しい場面も多く、状態異常についても対処方法が見つからなければ足踏み状態になる。アイテムの多さや合成などの要素は、ヘタをすればプレーヤーに煩雑な印象を与えかねない。ビジュアル面でも「ファイナルファンタジーX」などのビッグタイトルに比べると、どうしても見劣りしてしまうのは否めないところだろう。

 逆に、1本のゲームをすみずみまで味わい尽くすタイプのプレーヤーには、相当長く楽しめるタイトルになると思う。新しいアーツやアイテムを探して冒険を続けるもよし、幻の料理を求めて各地を旅するもよし、ミニゲームのハイスコアを極めてみるのもいいだろう。本編だけ見ても、今回のレビュー用にソフトを借りてから40時間ほどプレイしているが、実はまだ終わりが見えていないというくらいのボリュームがある。価格も低く設定されているし、これからの年末年始にかけて1本のゲームでじっくり遊んでみたいという方はぜひともチャレンジしてみて欲しいタイトルだと思う。



(C) 2001 Sony Computer Entertainment Inc.

□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□レガイア デュエルサーガ
http://www.scej.jp/legaia_ds/

(2001年12月18日)

[Reported by 山城 宏]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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