★ PS2/DCゲームレビュー ★
確かにシューティングゲームは難しくなりすぎた。だが、それに対するアンチテーゼとしてこの作品がなぜ今、この時期に登場するのか? 「トランス状態」をウリにするその秘密をここで考えてみたい。 ■ 見ているだけではわからない「Rez」の魅力 このゲームの操作は前述の通り、ウィルスをロックオン(×ボタンを押している間にアナログスティック[方向キーでも可]を操作し、カーソルを敵座標に重ねる)し、離せばレーザーを発射するというだけ。ロックオン、レーザーの発射時、そして何もないところで×ボタンを押すとSEが鳴るが、これがいわゆるパーカッション(ハンドクラップなど)的役割の音色になっており、バックを絶え間なく流れるテクノと組み合わさることで、あたかも自分がB.G.M.の演奏に参加しているかのような感覚が得られる。あくまでSEはリズム体なので、特に大きな気配りをしなくとも、“勝手に”リズムをB.G.M.とともに刻んでいる。音楽を聴いたりレイブやライブに行ったとき、つい足でリズムを採ってしまうように、気がつくと×ボタンでリズムを刻んでしまう。このボタンを押す、離す行為は、あたかもデジタルドラムを叩いているよう。この操作の類似性もこのゲームの魅力に一役買っている。 「じゃ、それって音ゲーじゃん?」という人もいるだろう。確かに既存の音楽ゲームと呼ばれるものの定義を“キーを押すことで対応する楽器の音が流れる”という意味に捉えるのであれば、全くもって「Rez」もその範疇のものだ。しかし、「Rez」の場合は、ガイドバーに現れるマーカー通りにボタンを押す必要はない。あくまでシューティングなので、ウィルスを倒せばいいのだ。この「ウィルスを倒す」行為が、「音を奏でる」、もしくは「リズムを生み出す」ということに直結しているのだが、あくまでそのすべてのタイミングはプレーヤーにゆだねられている。たとえリズムを外してもミスにはならないし、あるのは「なんかカッコワルイなあ」という気分の問題だけだ。だから、プレイしている本人にしか、この画面と音と操作の一体感は味わうことができないし、ただ聞いているだけならテクノが流れている、としかわからないだろう。 レールシューティングという形態は、プレーヤーが起こすアクションに対してのリアクションがキモになる。このゲームの場合も、ウィルスを見逃してループすることはあっても、基本的に展開は変わらない。サウンドにそのリアクションの重要なポイントを置いているだけに、同じフィールド、時間軸の中で自分がいかに動くか、もっと言えばどんな音をどのタイミングで出すのかが、さらにプレーヤーの意識を深いところまで持っていくのだ。
■ 生き残るための最低限のシステム シンプルだとはいっても、アイテムの役割を覚えて出現パターンを考えつつ進んでいかないと先には進めない。特に、青色の「プログレスアイテム」は、プレーヤーレベル(form)を進化させるためには必須のものだ。アイテムの取り方は、アイテムにサイトを重ねてロックオン(攻撃してもよい)すればOK。プレーヤーレベルが0(zero form)の時に攻撃を受けてしまうとゲームオーバーになってしまうので、プログレスアイテムは必ずゲットしたい。formは全部で6段階あり、最終形態のfifth formまで行けばかなりの攻撃力になる。また、ウィルスが多くなりすぎて対処に困るときは、○ボタンで発動するオーバードライブを使おう。対象物に自動ロックオンして攻撃してくれる。しかし、オーバードライブ中は任意にロックオンして攻撃することはできず、その効果も一定時間で切れてしまうため、それ以上にウィルスが出てきた場合は実は危険な状態に陥ることもある。使いどころを考えるべきだろう。ストックは4で、デフォルトではゲージは0のままでスタートなので、赤いアイテムを見つけたらすかさずロックオンすべし。
また、各ステージにはレイヤーが設定されており、その所々にウィルス「パスワードプロテクター」が出現する。これを攻撃し、「ネットワークオープニング」に8発撃ち込むことでレイヤーを突破し、ネットワーク内部の解析率を上昇させる。先に進むためにはネットワークオープニングを破壊することが必要不可欠で、逃してしまうとエリアをクリアしても解析率は100%とはならない。
解析率は序盤でかなり大切な要素で、エリア1~4までは解析率に関係なくクリアすれば次のエリアがプレイ可能となるが、エリア5だけはエリア1~4までの解析率が100%でないとオープンされない。ネットワークオープニングは1発撃てば後退するので、他のウィルスが残っているときは画面の中から消えない程度に撃ち、ウィルスをせん滅してからゆっくり破壊すればいい。 ■ やり込み派やのんびり派にも対応する各種モード メインとなる「Play」モードの他にも、じっくり音楽を楽しみたい人、スコアアタックに燃えたい人用に各種モードが用意されている。【気楽にRez】
無敵状態で選択したエリアをプレイする。演奏を重視してプレイしたい人向けのモード。「Play」モードでオープンしたエリアの1~4までがプレイできるので、練習にもなる。
「Play」モードでエリア1をクリアすると出現。クリアしたステージのスコアアタックが可能となる。画面右上にトータルスコアが常に表示されるようになり、「option」モードの「point display」をオンにすれば、ウィルスごとの得点も表示されるようになる。スコアアタックのコツとしては、多数のロックをかけてから敵を撃破すること。ロックオン数に応じて対象のウィルスの得点に一律の倍率がかけられる。
■ シューティングゲームへのオマージュ? シンプルなグラフィック このゲーム、サウンド方面への力の入れ具合はハンパではないものを感じるが、もうひとつこだわりを見せているのがグラフィック。ワイアーフレームからフラットポリゴン、そしてテクスチャポリゴン(一部)というゲームの進行に合わせたグラフィックは、やはり強烈なインパクトを与える。ATARIの一連のワイヤーフレームゲームや、“光速船”などに燃えた人には懐かしさを、そんなものを皆目見たことがない人には新鮮な驚きを提供しているといえるだろう。なにしろテクノにはワイアーフレームが合う。暴言かもしれないがこれはひとつの解だろう。グラフィックを控えめにしてサウンドを目立たせる、ということではなく、無機質なものと無機質なサウンドをぶつけあうことで、自意識を没入させやすくする効果も生んでいるのではないだろうか。 もはや「次世代機」と呼ばれることはないPS2やドリームキャストだが、ワイヤーフレーム全盛の時代ではここまで緻密なグラフィックはやはり生成できなかっただろう。点と線と面が生み出す圧倒的スピード感やグルーブ感は、プレーヤーの意識(ゲームを重視するか、サウンドを重視するか)のリアルタイムな移り変わりに華美に反応するわけでなく、かといって地味すぎることはない。 キャラクタデザインも、「トロン」や「スターブレード」など、一斉を風靡した未だ“未来”を感じさせるものにどことなくオマージュを感させるものが多かった。ナムコの「O.R.B.S.」の取材をしたばかりの筆者には、エリア3のボスにはやはり「スターブレード」のテイストを感じずにはいられなかった。
個人的にはかなり気に入ったゲームだ。テクノもシューティングも大好きだし、久しぶりにテクノを聞いてみようかな、ゲームを遊んでみようかな、という人にはピッタリだと思う。プレイ時間もそれほどかからないし、やり込まなくてもクリアはできる。逆に、今までこのような世界に触れたことのない人にも一度プレイを勧めたい。 純粋にシューティングでトランス状態になりたい、という人は、既存のモノでも弾よけの最中などにちょっと意識がトンじゃったりすることはあったと思う。筆者も同じような体験が格闘ゲームなどで起こったことがある。このゲームは、入口にテクノやサイバーチックなグラフィックを置いて、「レスポンスによるリズム体の演奏」を取り入れることで、「トランス状態への手助け」をしてくれる作品だと思う。 また、最後になったが「トランスバイブレーター」についても触れておこう。デュアルショック2と異なる振動パターンを持つトランスバイブレーターだが、これがあるとないとではまた印象が多少異なる。ヘッドホンである程度のボリュームを上げ、トランスバイブレーターを背中などにセットして、そこそこ大きな画面でのプレイを推奨したい。スピーカーからの音響でも十分だが、住宅事情を考えると音量はやはりヘッドホンに頼らなければならない家庭も多かろう。 また、PS2版とDC版の違いだが、フレームレートが60fps(PS2)と30fps(DC)、振動伝達機構がデュアルショック2とぷるぷるパックと異なる。さらにPS2にはトランスバイブレーターがある。振動面はPS2版の方が圧倒的にいい。画面に関しては30fpsでもあまり違和感がなく、アナログの操作系に関して重みのあるPS2と、スーッと軽い操作感を持つDCと、慣れは必要だがトータルでは甲乙つけがたい。結局、どちらのプラットフォームを重視するか、ということで判断してもらいたい。DC版はVGA対応なので、ぜひVGAアダプタでのプレイを勧める。
(c)UGA/SEGA,2001
□セガのホームページ (2001年11月28日) [Reported by 佐伯憲司] |
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