★ PCゲームパーツレビュー ★

対応ソフトでなくてもOK!
既存のあらゆる3Dゲームが立体視できる

Beautiful 3D

  • 分類:立体視ゲームシステム
  • 発売元:イーレッツ
  • 対応OS:Windows 98/Me
  • 発売日:発売中


 これまでにもさまざまなゲームプラットフォームに、立体視ゲームシステムが発売されてきたが、コンソールゲーム機のそれは大抵対応ソフトが必要で、結局は投資に見合わない、マニア向けのグッズでしかなかった。今回、イーレッツより発売された「Beautiful 3D」は、NVIDIA製ビデオチップ搭載のビデオカードと組み合わせることで、既存のあらゆるPCベースの3Dゲームを立体視で楽しめるような設計になっている。
 「立体視専用ソフトでなくとも立体視でプレイできる」というのは、将来発売されるソフトはもちろんのこと、過去に発売された名作ゲーム等も立体視で楽しめるということだ。「わずか7,800円の投資で手持ちのPC-3Dゲームの全てが立体視対応ソフトに変身してしまう」と考えればかなり魅力的な製品だろう。Beautiful 3Dが一体どんなシステムなのか、まずはこのあたりから見ていくことにしよう。


■ 「Beautiful 3D」立体視システムの仕組み

 一般的な3Dゲームは、ゲーム世界に設置されたカメラ(視点)から見た映像をディスプレイに映しだしている。プレーヤーキャラクタがゲーム世界で移動すれば当然この視点も移動する。このゲーム世界を捉えるカメラはまさにプレーヤーの視点に相当するのだが、表示するディスプレイ装置が1個なので、ゲーム世界に設置されるカメラも一個、すなわち単眼ということになる。

 しかし、実際にもしも自分がゲーム世界に飛び込んだら、ゲーム世界を単眼ではなく2つの目で見ることになるだろう。この発想を具現化した製品がBeautiful 3Dなのである。つまり、NVIDIA製ビデオチップ(以下、GPUと表現する)が、視点から捉えた映像をレンダリングする際、左目から見た映像、右目から見た映像をそれぞれレンダリングする。それぞれの映像には「視差」があるので、それぞれの映像を対応する目に実際に見せてやれば、「立体映像になる」……とこういうわけだ。

 「どんな3Dゲームも立体視!!」というキャッチコピーから「NASA開発のアダルトビデオ・モザイク除去機」みたいなインチキくさいイメージを抱いてしまった人もいるかもしれないが、Beautiful 3Dは、いうなればごく一般的な立体視基本理論に基づいて制作されたものなのである。

NVIDIAのTechnical Briefより。このTechnical Briefは、同社の公式サイトからPDF形式でダウンロードできる


■ ある程度のCPU/GPU性能が要求される点に注意

ドライバセットアップ後は、この画面でまず立体視モードを有効にすることから始める

 さて、1画面しかないディスプレイ装置で右目用と左目用の映像をどうやって目に見せるかだが、これにこの立体視眼鏡を活用することになる。このタイプの眼鏡は液晶シャッター方式と呼ばれており、その名の通り、液晶駆動のシャッター動作をする。

 すなわち、画面に左目の映像が出ているときは、眼鏡の右目サイドのシャッターが閉じ、左目サイドが開き、目には左目の映像が届く。逆に画面に左目の映像が出いるときは、眼鏡の左目サイドのシャツターが閉じ、右目サイドが開き、目には右目の映像が届く。この一連の動作を1秒間に60回程度高速に行なう。こうした立体視映像の画面を眼鏡無しで見ると、ぶれて見えるのは左目用、右目用の映像が高速に切り替わっているためだ。

 ここで、1つ注意点がある。通常時は単位時間あたり、1枚の3D映像をレンダリングすればよかったのに、立体視システムでは、ここまで解説してきたように、左目用、右目用の映像をレンダリングしなければならなくなる。しかもリアルタイムにだ。すなわち、いってみればCPU、GPUに対する負荷が二倍となるのである。

 たとえば、これまで、1,024×768ドットの解像度で快適にゲームがプレイできた環境で、Beautiful 3Dを用いて立体視ゲームプレイを楽しもうとすると、1,024×768ドットでは動きが重くなる可能性がある。あくまで漠然としたアドバイスだが、立体視プレイを楽しむときには、表示解像度は1、2ランク落とした方が無難だ。上の例でいけば立体視プレイ時は640×480ドット、800×600ドット等の解像度を選択した方がいいだろう。

 なお、Beautiful 3Dが対応しているGPUは

 ・RIVA TNT/TNT2(M64/Pro)/Vanta
 ・GeForce256/DDR
 ・GeForce2/GTS/PRO/ULTRA/Ti
 ・GeForce2MX(200/400)
 ・GeForce3/Ti500/Ti200
 ・Quadro1/2

となっている。

 CPU等についてはBeautiful 3D側の動作条件では「Pentium 90MHz以上」となっているが、これでは最近の3Dゲームがまともに動くはずもなく、実際に最近の3Dゲームを立体視で快適にプレイするには、筆者のこれまで使用してきた手応えでいえば最低でも700MHz、できれば1GHz級以上のCPUはほしいといった感じだ。

 また、ディスプレイにもある程度の表示性能が求められる点も気に留めておく必要があるだろう。高速に右目用、左目用の映像を表示するわけだが、たとえば1秒間に左目右目のペア映像を60回交互に表示するとなれば60Hz×2=120Hzのリフレッシュレートに対応していなければならない。

 640×480程度の解像度では120Hzのリフレッシュレートに対応しているディスプレイ製品は多いが、1,024×768以上の解像度で120Hzに対応している製品は限られてくる。まぁ、CPU、GPU、ディスプレイのいずれについても、よく自分のシステムの素性がわからなければ、立体視プレイ時は画面解像度640×480ドット表示を選択した方が無難だ。


■ セットアップ時のアドバイス

立体視モードを有効にしたら、今度はこのテストモードで立体視のチューニングを行なっていく
 ハードウェア的に接続するものは、付属のY字ディスプレイケーブルと立体視眼鏡本体だけ。パソコン側のVGA端子にY字ケーブルの一端を接続、二股となった先の片側、VGA端子にディスプレイケーブルを接続、もう一端のP/S2キーボード・コネクタライクの端子に立体視眼鏡を接続する。これだけだ。

 その後、何よりも先にやるべきことはNVIDIA製純正GPUドライバ「DetinatorXP」のインストール。  「え? すでに、ビデオカードベンダーの最新ドライバを入れてるけど?」というユーザーでも、Beautiful 3Dの正常な動作が確認されるまではNVIDIA純正のDetonatorXPドライバをインストールして試すことからお勧めする。

 また、ドライバの類は何でもかんでも「新しいものにしたがり」のユーザーも多いと思うが、Beautiful 3Dを正しく動作させるためにはちょっとその考えを改める必要がある。Beautiful 3Dの立体視ドライバはNVIDIA制作のものだが、これはGPUドライバ側とバージョンを合わせる必要があるのだ。よってGPU側のDetonatorXPドライバを最新バージョンにして、立体視ドライバを付属のCD-ROMからインストールしたりすると正しく動作しない(動作しないことは筆者も確認済み)。このことはBeautiful 3Dの購入を考えている人はぜひとも留意してほしい。

 結局、最も安全策といえるのは、マニュアルの手順通り、Beautiful 3D付属のDetonatorXPドライバと立体視ドライバをインストールすることだろう。

 なお、それぞれのドライバの最新バージョンは

・DtonatorXPドライバ……http://www.nvidia.com/view.asp?PAGE=drivers
・立体視ドライバ……http://www.nvidia.com/view.asp?IO=IO_20010614_4380

にアップロードされているが、ドライバ類のアップデートは上記の理由から、基本的にBeautiful 3Dの発売元イーレッツの公式サイトから入手した方がトラブルが少ないはずだ。


■ 実際にどんな感じに見えるのか

「SWAT3」。屋内シーンでは、建造物の閉塞感がうまく出ている
「RAINBOWSIX ROGUE SPEAR」。奥行きある照準の表示が狙撃の際に役に立つか?
 Beautiful 3Dでもっともリアリティを感じやすいのは、「HalfLife:CounterStrike」、「QUAKEIII」、「UnrealTournament」などに代表される1人称シューティングゲーム(FPS)だろう。敵や障害物の単純な相対的な位置関係だけではなく、障害物のどのくらい前や後ろにいるのかといった点まで視覚できるし、さらに敵キャラクタの腕はどのくらいの太さなのか(!)、自分の位置からあの扉までどのくらい離れているのか、といった容積や空間の広がりまでも知覚できる。

 非立体視時、すなわち通常プレイ時、FPSで重要となる照準(レーザーサイト)は、画面中央付近にポツンと表示されており、北極星のごとく静止したままのはず。ところが、立体視でプレイすると、本当のレーザーサイトのように「奥行きのある表示」となる。これも感動的だ。

 たとえば目の前に壁があれば、レーザーサイトは壁に定位し、目の前が開けていれば、遙か先にある壁に定位する。敵と照準がクロスすると、実際に3次元的にレーザーサイトが敵の腕や頭部等に照射されるのである。

 このようにFPSでは、ゲーム性の部分をBeautiful 3Dがグレードアップしてくれるイメージなので、利用価値は高い。また、ゲーム世界を極めて直観的に動き回ることができるので、プレーヤーによっては通常プレイ時よりも上手にプレイできるようになるかもしれない。いずれにせよ、「飛び出る絵本」程度の立体視を想像していた人は、この臨場感を体験したら考えを改めることになるだろう。

 さて、ブラック&ホワイト、SACRIFICEなどの3Dエンジンを使ったストラテジーに関しては、どうだろうか。こうしたタイプのゲームはあまりゲーム性を拡張してくれるような手応えはないが、コンピュータ画面の中に広がる「箱庭世界」が「ただのCG」という印象から「生きている世界」……のような実感を得ることができるようになる。普段からプレイしなれたお馴染みのタイトルでも、初めてプレイしたときの感覚に近い、実に新鮮な感覚でプレイできると思う。

 「MAXPAYNE」、「トゥームレイダー」シリーズなどの3人称視点のアクションゲームの場合は、障害物との距離感や、跳び越す溝の長さなどのリアリティが強化される。また、トゥームレイダーのように、ピラミッドやら遺跡やらの狭く閉ざされた空間を通り抜けて行かねばならないようなシーンの多いゲームでは、広がりの逆、閉塞感にリアリティが感じられる。FPSとは違って、立体視プレイでプレーヤースキルが増加するかはちょっと分からないが、少なくともゲーム側で演出したがっていた雰囲気は立体視プレイであますことなく体感できるようになる。

 ドライブゲーム、レースゲームに関しては、立体プレイ時、通常プレイ時よりも、カーブまでの距離感、道幅、敵車との距離感などがわかりやすいと感じるはず。この種のゲームの場合、通常プレイでは3Dものであるのにもかかわらず「看板が画面のこのあたりに来たらブレーキング」のような、2D的な目安を立ててプレイしてしまうことがよくある。しかし、立体視プレイを極めれば、カーブへの突入角度、ブレーキングポイントなどを、実車を取り扱っているときと同じように、周りの情景との三次元的な位置感覚で捕らえることができるようになるかもしれない。

 フライトシミュレータ、スペースコンバット系は、確かに立体視は出来ているものの、意外にもあっさりした印象だ。これは、飛行中や戦闘中は対象物が少ないせいがあるだろう。しかし、フライトシミュレーターならば着陸時には陸地や各種ランドマークが画面に数多く出てくるので、このときばかりは立体視プレイの方が臨場感はある。

 そして、スペースコンバット系でもアステロイドベルトや巨大戦艦への突入時などは、対象物がプレーヤーに近づいてくるため、迫ってくるような強い立体感が得られる。

「オペレーションフラッシュポイント」。オープンフィールドのシーンでちょっと視野が狭くなる感覚があるが、立体感は上々 「No One Lives Forever」。立体視システム側の照準をオーバーレイ表示させることが可能 「ブラック & ホワイト」。ランドスケープの凹凸がリアルに見えるだけで大満足

「スタートピア」。各建物が実際にどんな形なのかが直感的にわかるのが楽しい 「サクリファイス」。オープンフィールド系だがポツポツと生えている草木が世界の広さを演出。お勧め 「ALIEN VS PREDATOR2」。ゲームの立体感はいいのだが、照準に奥行きが無いのが残念

「MAXPAYNE」。ライティングが暗いゲームなので輝度を一杯一杯まで上げてプレイするのがよし。照準に奥行きあり 「トゥームレイダー5」ゲームエンジンの古さを立体視でカバーしてプレイせよ……っていう感じかな 「アリス イン ナイトメア」これも暗いゲームなので輝度アップは不可欠。ゲーム世界の立体感は上々

「NASCAR RACING4」。バックミラーの中の情景もちゃんと「立体視してた」ことに感動 同じく「NASCA RACING4」。リプレイシーンも当然立体視で楽しめる 「スターランサー」遙か遠方の背景の星々は、2Dの一枚絵で処理されているため、意外なことに通常時も立体視時も見た目の印象が変わらない

「スターウォーズBATTLE FOR NABOO」レーザーが自分に向かって飛来して来る感じは大迫力 「ジャイアンツ・シチズン・カブト」。立体感はいいのだが、照準が「奥行き表示」に対応してくれなかったのでちょっとプレイしにくい 「Microsoft Flight Simulator 2000」。飛行中の立体感は意外にも寂しかったりする


■ Beautiful 3DにまつわるQ&A

 最後に、一般ゲーマーがBeautiful 3Dを購入する際や導入した際に、疑問に思うだろう情報を筆者の経験を元にQ&A型式にまとめてみたので参考にして欲しい。

「ポピュラス・ザ・ビギニング」のように、地形が3D、キャラクタがスプライトというゲームは立体視には向かない

【Q】どんな3Dゲームでも立体化されるというけど、本当?
【A】NVIDIA製GPUが3D映像をレンダリングする仕組みになっているゲームであれば基本的にはOK。具体的にはDirect3D、OpenGLを使ったゲームが立体視化可能になる。
 1つ注意したいのはゲームによっては3Dゲームに一部2Dゲームの処理系を導入しているものがあるという点。例えば、ゲームフィールドは3Dだが、キャラクタはスプライト、すなわち描き込みの2Dオブジェクトの場合は、ゲーム世界には視差が発生するが、キャラクタには視差が発生しないことになる。結局背景が立体に見えて、キャラクタが空間に張られたステッカーのように見えてしまい、非常に見にくい画面になってしまう。その意味では、「全部が全部」ではなく、ある程度ゲームは選ぶことになる。

【Q】ちゃんとセットアップしたのにまともに見えない、なぜ?
【A】筆者も最初試作バージョンを借りたときにハマったパターン。
 これは「画面のプロパティ」の「設定」タブの詳細ボタンを押して出る「モニタ」タブの状態が非常に重要なのである。ここが「規定のモニタ」になっていたり、「標準モニタの種類」グループの「Super VGA 1024x768」等になっているとステレオドライバが立体視実行時の最高リフレッシュレートが取得できないために、表示と同期がうまくいかないことがあるのだ。
 ちゃんと動作させるためには自分の使用しているディスプレイを選択するか、適切なINFファイルをインストールしなければならない。激安品とかマイナーメーカーのディスプレイでINFファイルすらもないというユーザーは、「プラグアンドプレイモニタを自動的に検出する」のチェックを外し、適当なメーカーの自分の使っているディスプレイと同ランクと思われるものをチョイスしておくといい。

【Q】液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクターでも立体視は使える?
【A】使えない。実際に試してもみたがダメ。
 よく考えてみると当然で、こうした映像表示デバイスは一度、映像信号がフレームバッファに蓄積されたり、信号処理を受けたりするのでうまく眼鏡のシャッターとの同期が取れないのだ。

【Q】なんか左目には右目の映像が、右目には左目の映像が漏れているようでちょっと見にくい気がする……。
【A】これはゴーストと呼ばれる現象だ。
 そう、1画面に2枚の映像を表示させる、Beautiful 3Dで採用されている立体視方式では避けて通れない問題がこの現象なのだ。このゴースト現象は、シャッターOFF時の映像カット制度の問題、液晶シャッターの応答速度の問題、微妙な同期信号のずれ……などいくつかの要因があって発生するものだが、実は単純な軽減方法がある。それは「ディスプレイ表示輝度を上げる」だけ。具体的にはブライトネス、コントラストの値を映像が破綻しないギリギリにまで上げるといい。
 液晶シャッター方式の立体視システムでは、その動作原理上、単位時間あたりに片目に入る光量が裸眼時よりも減る。ディスプレイ側で光量を増量し、うっすらと見えるゴーストとの光量差を広げて目立たなくしてやるわけだ。
 「MAX PAYNE」、「アリス イン ナイトメア」などの暗いゲームはゴーストが目立ちやすい。プレイしにくいと感じたらこの方法を試してみよう。

【Q】「画面のプロパティ」から「詳細ボタン」を押すとこのようなエラーメッセージが出てしまうんだけど?
【A】筆者も悩まされた問題。まず、Beautiful 3Dを正しく動作させるためにはDetonatorXPドライバと立体視ドライバのバージョンは合っていなければならない。それでもこのメッセージが出てしまう場合には、
 (1)立体視ドライバをインストール
 (2)立体視ドライバに対応するバージョン番号DetonatorXPをインストール
という手順で試してみるといい。つまり「マニュアルのインストール順序」とは逆の手順でインストールしてやるのだ。筆者の場合はこれで解決した。

【Q】Windows XP/2000で動作する?
【A】出荷バージョンでは対応ドライバが収録されていないので動作しない。現時点ではWindows 9x系のみ、ということになる。しかし、現在、Windows XP版はβ版の評価が行なわれている状況で、近いうちにリリースされる予定。もう少し待っていよう。


□イーレッツのホームページ
http://www.e-lets.co.jp/
□「Beautiful 3D」の公式ページ
http://www.e-lets.co.jp/product/Beautiful 3D.htm
□関連情報
【8月23日】イーレッツ、3Dゲームを立体視でプレイできるPC向け立体グラスシステム「Beautiful 3D」
http://www.e-lets.co.jp/product/Beautiful 3D.htm

(2001年11月26日)

[Reported by トライゼット西川善司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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