★PS2ゲームレビュー★
「人はなぜゲームをするのだろう?」と思うことがある。寝食を忘れ、勉強や仕事によろしくない影響を出しながら、いったい何が楽しくてゲームを続けるのか? しかもその内容がつらく、ギリギリのゲームバランスであるほど、一度始めるとなかなか止められない。今回紹介するフロム・ソフトウェアの「KING'S FIELD IV」も、そういう不思議なも力を持つ作品のひとつだ。戦っているうちに、ダンジョンの奥にズルズルと引き込まれていくような、効しがたい“おもしろさ”がある。
■ 5年ぶりのシリーズ最新作
「KING'S FIELD IV」は、最近では珍しい3DリアルタイムRPGだ。戦闘やキャラクタの成長より、謎解きやストーリー性を重視したアクションアドベンチャーのほうが、あるいはインターネット対戦を目的とした3Dのバトルアクションが好まれる今日、それだけでも十分異色の存在といえるかもしれない。'94~'96年にかけてPS用ソフト3本がリリースされたが、その後はぱったりと発表が途絶え、'98年にリリースされた同系列の作品「SHADOW TOWER」を別にすれば、「KING'S FIELD IV」は5年ぶりの新作となる。もちろん、PS2用としては今回が初めてだ。
■ 『滅びの像』をあるべき場所に戻せ 物語は、辺境の小国『ヘリオドール』に一体の像がもたらされるところから始まる。王はその像をいたく気に入り自分の傍らに飾ったが、その後まもなく『ヘリオドール』は原因不明の疫病に見舞われ、王自身も臥してしまう。賢者たちが調べたところ、その像は、決して触れてはいけない『滅びの像』であることがわかった。王はただちに遠征隊を派遣し、その像を『厄災の地』へ戻そうとするが、その試みは失敗してしまう。そこでヘリオドールの隣国『カルザイト』の第三王位継承者イクシオン・ロズベルグ=このゲームの主人公が『厄災の地』へ赴き、『滅びの像』を本来あるべき場所に納める使命を請け負った。
しかし、この物語は最初から多くの謎に満ちている。所有するだけで災難に見舞われるほど危険な『滅びの像』は、いつ、誰によって、何のために作られたのか? その像が納められていた『厄災の地』とはいかなる場所か? 小国『ヘリオドール』の災難を払うために、なぜ隣国『カルザイト』の王位継承者が危険を冒さねばならないのか? わからないことが多いまま、プレーヤーは冒険に旅立つ。
■ すべてがキャラクタの視点で進行する プレイ画面は、キャラクタ視点で眺める、奥行きのある3D表示だ。見えるのは正面だけで、足元や天井を確認するためには視界を動かさなくてはならない。しかも照明の届く範囲しか見ることができず、ダンジョン内部では10~15m先は闇に溶け込んでしまう。このどんよりとした薄暗い画面、そして全体に漂う重苦しい雰囲気こそが、「KING'S FIELD」シリーズならではの味わいといえるだろう。今回プラットフォームがPS2になったことで、闇の中に揺らめく炎や水面の描写、壁面のテクスチャのクオリティが格段に向上しているものの、映像の基本的な部分に変化はなく、過去の作品が築いてきた“「KING'S FIELD」らしさ”がよい形で踏襲されたことを好ましく感じる。
操作は、もちろんパッドを使う。左側の方向キー、もしくは左スティックで前進・後退・左回転・右回転。右側の(△)ボタンで剣による物理攻撃、(□)ボタンで魔法の使用。シンプルでわかりやすい設定なので、扱いはとても楽だ。また、パッドのL1/R1ボタンを押すと正面を向いたまま左右に平行移動できるので、慣れてくると敵の攻撃を紙一重でかわしつつ、こちらの一撃を浴びせるような戦法も可能になる。もちろんこれらの操作を使いこなし、敵に対して回り込むといった操作が出来なければ、ダンジョンを進むにつれて徐々に厳しい戦いとなっていってしまう。
■ 数々の制限とルール 「KING'S FIELD IV」には、いくつか知っておかなければならない特徴がある。まずひとつは、武器の属性。登場するすべての武器には「斬」「殴」「刺」のパラメータがあり、それぞれ有効な相手が違う。たとえばスケルトンを相手に戦う場合、「刺」系の武器は思ったほど効果がないのに対して、「殴」系の武器はとてもよく効く。つまり効率よく戦うためには、相手の弱点を突いた武器の選択が重要というわけだ。一方鎧や盾にも同じ属性があり、こちらも敵の攻撃に合った選択が欠かせない。 武器や鎧に、それぞれ重量と耐久度が設定されているところもおもしろい。どんなによい武器を手に入れても、使っているうちに耐久度が下がり、どんどん威力は弱まっていく。また防御効果の高い鎧はえてして重く、無理に装備すると走れなくなってしまうこともある。使えば使うほど消耗する武器と鎧。体力と重量のバランス。プレーヤーは常にこの2つを考えながら、もっとも生き残りやすい装備を考えなければならない。
このほかにも、武器の長さや射程、片手用か両手用かの選択、同じ武器を使い続けることによって変わる熟練度、攻撃魔法の属性によるダメージの変化など実に細かく、またリアルな設定になっている。一度消耗した体力やマジックポイントは時間の経過とともに自然に回復することがないので、補うために回復薬や特別なアイテムが必須であるところも、「KING'S FIELD IV」の厳しい点だ。
■ コンピュータRPGの基本に立ち返った作品 誤解を恐れずにいえば、「KING'S FIELD IV」はとても古いタイプのゲームだと思う。映像的にもすばらしい内容だし、また伝統に囚われないオリジナルのモンスターが登場するなど全編に新しいアイデアが盛り込まれているが、しかしその本質は「ウィザードリィ」や「ダンジョンマスター」など、10年以上も昔に人気があり今なお愛好者がいる正統派のダンジョンRPGに近い。「当時は稚拙な表現しかできなかったコンピュータRPGを、最新の技術で作り直したらこうなる」といった感じだろうか。
ヒントは与えるが、決してプレーヤーに媚びたりはしない。マッピングする必要はないが、だからといって一本道でもない。次に何をするかはプレーヤーの判断に任されているから、進むべき道を誤れば当然即死もある。武器やアイテムの乱売はしない。かつてのダンジョン型RPGが持っていた「進むべき道を自分で選ぶ楽しさ」と「暗闇の奥からモンスターが現れる恐怖」、そして「まだ進むか、それともここで引き返すか?」という迷いが、「KING'S FIELD IV」の持ち味なのだ。
■ 我々が忘れてしまったもの だから当然、評価も分かれる。自分で考え、モンスターの群れと戦いながらダンジョンを探索することをいとわないプレーヤーにとっては最高におもしろい冒険の場だが、「もっと気楽にシナリオを楽しみたい」「面倒な手順は嫌だ」というプレーヤーにとっては、修行のような感じがするかもしれない。ゲームの楽しみ方は人それぞれなので、どちらがいい・悪いという話ではないが、相対的に後者が多くなった現在、「KING'S FIELD IV」のおもしろさが理解されるのは困難かもしれないと思ったりもする。ごく限られたプレーヤーが対象となる以上、「ファイナルファンタジー」のような大ヒットとなることもないだろう。もちろん、フロム・ソフトウェアも十分承知の上でこの作品を開発し、販売しているに違いないが……。 しかし、それでも筆者は伝えたい。このゲームには、最近のRPGが忘れてしまった古きよき味わいがある。思い出してほしい。 ダンジョンは暗くて危険な場所だし、高いところから落ちれば死んでしまうのが当たり前だ。モンスターはいちいち予告や前口上を垂れてから攻撃などしないし、背後から突然襲いかかって来ることもある。最初に喰らった一撃で、あえなく葬られることだってあるだろう。武器や鎧は、使い続けていればどんどん痛んでいく。アイテムはいつも必要なだけ買えるわけではない。そんな当たり前のことを、いつのまにか我々は忘れてしまったのではないか?
フロム・ソフトウェアには、ぜひこの「KING'S FIELD」シリーズを大切に、そしてRPGのおもしろさと難しさを織り込んだ作品を作り続けてもらいたいと願う。
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□フロム・ソフトウェアのホームページ (2001年10月30日)
[Reported by 駒沢丈治] |
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