★ PCゲームレビュー ★

可能性に賭けて全力で突き進め!
ボードゲーム発いぶし銀の戦術級SLG

スコードリーダー

  • ジャンル:戦術シミュレーションゲーム
  • 発売元:マイピック
  • 価格:8,800円
  • 対応OS:Windows 95/98/Me
  • 発売日:8月31日


 ボードゲーム、ミニチュアゲーム、テーブルトークRPG、ゲームブックなど、一昔前まで想像力を持て余した男たちの知的挑戦の場として、膝をつき合わせるような勢いで大いに遊ばれていた玩具たちが、いまやPCやゲーム機で手軽に楽しむことができる。マイピックは、その手のいわば通向けのタイトルを数多く取り扱っているメーカーだ。ちょっと思い出してみただけでも「RISK」「Magic:The Gathering」「Diplomacy」「Monopoly」「Warhammer」「Scotland Yard」など、結構な数ある。最近はそういった類のネタは確実に減りつつあるが、今回紹介する「スコードリーダー」は、30歳以上の戦史好きな人なら間違いなくピンと来るウォーゲーム界の元祖的存在だ。


■ あらゆるウォーシミュレーションゲームの元祖「スコードリーダー」

これが我が小隊の総兵力。シナリオが進むと戦死者が増え、歯抜けのようになっていく
 「スコードリーダー」は、第2次世界大戦における歩兵戦をまるごと再現した戦術級のゲームシステム。ゲームにおける最小単位は歩兵1人で、5人1組で分隊を編成し、1~4分隊とそれを取りまとめる小隊長、そして通信兵、衛生兵、工兵、狙撃兵などスペシャルなスキルを備えた特殊兵を加えたものが手持ちの総兵力となる。各兵士の装備は、戦闘前に軍から配備された各種銃器や迫撃砲の類、手榴弾や爆薬といった兵器群から自由に分け与えることができ、この選択如何によってミッションの難易度や作戦内容自ずと決定される仕組みだ。

 ところで、「スコードリーダー」に似たゲームシステムを採用した国産タイトルに「アドバンスド大戦略」の開発元として知られるチキンヘッドが開発した「プラトゥーンリーダー」('97年発売)がある。ウォーシミュレーションゲームといえば戦略級が当たり前、という時代に堂々と小隊戦を持ち込み、「戦闘級SLG」というふれこみでSLGファンの話題をさらった。

 プラトゥーンリーダーは、ターン制ヘックス式のシステムを採用し、随所に「スコードリーダー」の匂いを感じさせるきっかり戦術級のSLGで、機関銃を銃身、架台、弾帯(帯状にした弾丸の束)に分けてそれぞれ別の兵士に持たせて戦場で設置して使うといったマニア好みの兵器システムや、特定の人物に超人的な特殊技能を与えるヒーローシステムなど、グラフィックは地味ながらも噛んで含めるような味わいのあるゲームだった。

兵士の装備選択画面。どう攻めようかあれこれ考えて、かなり頭を悩ませる
 もう少し余談を続けると、ちょうど同じ時期にマイクロソフトから発売されたウォーシミュレーションゲーム「CLOSE COMBAT」のスローガンが、確か「Beyond Squad Leader」だったように記憶している。現在5作目まで発売され、リアルタイム性のゲームシステムを活かしたネットワーク対戦に最大の醍醐味を置いたつくりで、日本にもファンは多い。4作目あたりから軍団制を敷くなど、戦略性の高い内容になり、「スコードリーダー」本来の内容とはかなり方向性の異なるゲームになっているが、それはそれで痺れるようなおもしろさがある。ちなみに10月には最新作「CLOSE COMBAT V」の完全日本語版がマイピックから発売される予定だ。

 そのほかにもTalon SoftのウォーSLGブランド「CAMPAIGN SERIES」やSSIの「Panzer General」シリーズなど、「スコードリーダー」にインスパイアされて制作されたタイトルはいくらでも挙げられる。そのようなウォーゲームの大元がPCゲーム化されたのだから、楽しみにするなというほうが無理な相談というものだろう。

【ノルマンディ上陸作戦】
アメリカキャンペーン1本目のシナリオはノルマンディ上陸作戦。難易度もかなり高い。クリアするにはいくつか方法があるが、普通に匍匐前進するだけではかなりの確率で全滅する


■ 内容のぎっちり詰まったPC版「スコードリーダー」

キャンペーン選択画面。どれも難易度は高めだが、比較的イギリスがプレイしやすい印象だ
 さて、PC版「スコードリーダー」はシングルプレイ専用のゲームとなっている。ゲームモードは、アメリカ、イギリス、ドイツ計3本の「キャンペーンゲーム」と、好きなシナリオを選んでプレイできる「シナリオゲーム」、そして隊員のひととおりの操作が学べる「新兵訓練所」が用意されている。キャンペーンは、それぞれ10本以上のシナリオが収録され、かなり遊びがいのあるものになっている。

 作戦日時はいずれもノルマンディ上陸作戦以降で、アメリカは上陸作戦からフランス方面のドイツ軍を完全に駆逐するまで、イギリスはオランダ、アルンヘムを舞台に史上最大の空挺作戦「マーケット・ガーデン作戦」が再現され、そしてドイツは「バルジの戦い」に挑戦できる。いずれも担当国が大苦戦を強いられた戦い、というところにおもしろみがある。

 PC版「スコードリーダー」は、ボードゲーム版と同じくターン制のシステムを採用しているが、細部のところでかなりの相違点が見られる。一番の違いは「アクションポイント制」を採用したことで、これにより兵士たちはアクションポイントの範囲内であれば、何度でも好きな行動を取ることができる。アクションポイントは、各兵士ごとにだいたい20~40ぐらいの範囲内で定められている。移動に使うのは当然として、その移動の仕方も、歩く、走る、匍匐前進と3パターンがあり、それぞれ1ヘックスごとの移動コストが異なっている。そのほか、攻撃や姿勢の変更、特殊技能の仕様など、兵士が取れるすべての行動にアクションポイントが必要となる。

作戦会議画面では、作戦目標の確認はもちろんだが、推奨装備にも要注目。これでだいたいの作戦の方向性がわかる
 たとえば、アクションポイント30の兵士であれば、前屈みから立ち上がる(8)→走る(2×8ヘックス)→立った状態から前屈みへ(6)、で1ターンが終了となる。前屈みで隠れた状態から立ち上がって2連射して再び隠れるといった行動も可能だし、ダッシュして手榴弾を敵要塞に向けて投げつけたり、負傷兵を担いで後ろに下がってもいい。このように本作は、ボードゲーム版の微細にわたる仕様を可能な限り盛り込んでおり、この兵士たちの一挙手一投足に至るまでの細かい戦術操作が、新鮮でたまらない。慣れないうちは、アクションポイントの計算を間違って、隠れ損なったり、前屈みに戻るだけのポイントが残っていなかったりして、ついつい兵士を無駄死にさせてしまう。が、慣れてくると、この自由度たっぷりの戦闘システムがおもしろくてたまらなくなってくる。

 マニュアルでは一切触れられていないが、スコードリーダーでは「照準線が通るか通らないか」、つまり兵士が持つ銃器のスコープに敵兵が映るか否かというのが決定的に重要になっている。照準線が引けなければ敵がどんなに近くても兵器の命中率は0%だし、仮に照準線が引ければ敵兵を倒せる可能性が生まれる。兵器の命中率は、兵器の精度、射程距離、兵士の射撃能力/姿勢/士気、敵兵の姿勢などによって算出される。この照準線は、ボードゲームでは「定規で引いた線の途中に障害物が無ければ通る、あいまいな場合はサイコロを振って決める」と厳格に定められているのに対し、PC版では敵にターゲットカーソルを当ててみないとそれがわからない。攻撃するために移動するのに、移動しなければ攻撃できるかどうかわからないというのはやや本末転倒な気がする。敵兵が森の中に潜み、どこからか照準線が引けそうな場合はなおさらだ。

【マーケット・ガーデン作戦】
イギリスキャンペーンは、マーケット・ガーデン作戦。史実では近代史史上稀に見る大敗を喫したこの作戦は、ゲームでも剽悍なドイツ兵がどこからともなく襲いかかってきて少しも気が抜けない。空挺団が味わった恐怖感がいやでも実感できる


■ キャンペーンを終えたら、次は「作戦の自動作成」で骨の髄まで楽しむ

これが作戦の自動作成機能。通常のマップエディタに比べて細部の自由度はないが、ボタン一発で新マップが作成される大変有用な機能だ
 シナリオ1本につき、最低でも1時間近くはかかり、キャンペーン後半ではゆうに4~5時間はかかりそうな大きなマップも用意されている。シナリオごとに「強襲」「待ち伏せ」「戦略的撤退」「追撃」といった作戦タイプが定められており、それに従って双方とも動くことになる。こういった軍団内の一組織として、軍から与えられた作戦内容に従って行動するという部分にこそ戦術級SLGの戦術級らしさがあるわけで、「アドバンスド大戦略」のようにとにかく敵を全滅させて首都を占領すればいい、というものではない。「シチュエーションをまるごと再現した」というところに本作の醍醐味があるといえるだろう。

 スコードリーダーでは、キャンペーンをすべてクリアしたユーザーのために、「作戦の自動作成機能」を用意している。要は「Age of Empires」のランダムマップと考えて良く、違いは先述した作戦タイプを決めたり、建物や地形の密度のバランスを細かくコントロールできるところ。すべてを設定してゲームをスタートさせると、自動的にマップがジェネレートされ、新しいマップで戦闘を行なうことができる仕組みだ。このモードでは、アメリカ対イギリス、ドイツ対ドイツといった仮想戦も試せるなど、楽しみが多い。もちろんキャンペーンの途中でも自由にプレイできるので、新兵器の使い勝手を試したり、新たな戦術の模索にも使えたりできそうだ。

これが自動作成したマップ。左手前の3階建てを押さえて、次に中央の丘に進んで塹壕をつぶす。いかにも敵が潜んでいそうな奥の家屋はどう攻略しよう?
 今回の評価では、実を言うと、初プレイでいきなり所属分隊を全滅させてしまった。シナリオは、アメリカのキャンペーンの1本目のシナリオ「上陸作戦」。要塞に籠もるドイツ兵の機関銃掃射が熾烈で、こちらもあらかじめそれを予想して全員前屈み&匍匐前進で進めていったのだが、毎ターンごとに誰かしら銃弾に背中を撃ち抜かれ、結局誰も砂浜を渡りきれずに全滅してしまった。初回のプレイでこれほど鮮やかにゲームオーバーになったのは久々で、何か根本的な部分で見落としがあると思って、詳しい人間にセオリーを聞いてみると、「ノルマンディは手榴弾しかない」との由。正直言ってそういう発想自体が無かった。

 手榴弾を遠方に投げつけるためには、体力のある兵士に砂浜を駆け抜けてもらわねばならず、いうまでもなく危険が伴う。しかし、実はそれしか道はなく、その可能性にすべてを賭けるという実にリアリスティックなゲーム性にひどく惹かれるものを感じた。スコードリーダーは、「誰も死なせずにクリアする」などという甘い考えはまったく通用しないゲームであり、そこにこそ本作のいぶし銀の味わいがあるといえる。

 以下余談だが、海外のゲームサイトを見ると、本作の評価は意外と低い。確かにグラフィックはB級だし、インターフェイスにもまどろっこしさがあり、演出面も手ぬるい印象が拭えない。ただ、第2次世界大戦を未曾有のミクロ的視野で再現したPCゲームというのはこれ以外にないし、おそらく今後も現れないだろう。存分に楽しむためにはある一定以上の想像力が必要になりそうだが、新しもの好きのウォーゲームファンにはぜひお勧めしておきたい1本だ。

【バルジの戦い】
ドイツキャンペーンは独軍最後の決戦となったバルジの戦い。豪壮な戦車戦が楽しめると思いきや、雪に覆われたアルデンヌの森の中で撤退戦を行なうことになる。与えられる兵器は最小限だが、中でも複数のヘックスに攻撃できるGr24衝撃手榴弾が有効。M39破片手榴弾のかわりに持てるだけ持っておこう

【カットレベル】
戦場マップの高度を自由に輪切りにして表示させるカットレベル機能。標準はすべて描画されたカットレベル10で、家屋や小高い丘があるときは、カットレベルを下げて表示させる仕組み

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【動作環境】
  • CPU:Pentium II 400MHz以上(Pentium III 600MHz以上を推奨)
  • メモリ:64MB以上(256MB以上を推奨)
  • HDD:350MB以上
  • CD-ROMドライブ:8倍速以上 (起動時必須)
  • 解像度:800×600ドット固定


□マイピックのホームページ
http://www.mediaquest.co.jp/
□「スコードリーダー」の公式ページ
http://www.mediaquest.co.jp/hot2/sl_c.html

(2001年8月30日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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