Electronic Entertainment Expo 2001現地レポート

任天堂、宮本茂氏ゲームを大いに語る
マリオ、ゼルダの新作は8月に発表! メトロイドは1人称視点に

会期:5月17日~19日(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

有名なゲームデザインナー、ウィル・ライト氏が“父”と呼ぶ、その人は宮本茂氏
 ゲーム関連のトレードショウ「Electronic Entertainment Expo 2001」の2日目には任天堂のゲームデザイナー・宮本茂氏のパネルディスカッションが開催された。開幕早々マイクの前に立ったのは「シム・シティ」のゲームデザインで知られるウィル・ライト氏。ライト氏は任天堂からスーパーファミコン用ソフト「シム・シティ」が発売されたときに、宮本氏とはつながりがあった。ライト氏は挨拶の中で宮本氏のことを「父」と呼び、ゲームデザイナーとしての功績をたたえた。

■ 「メトロイド」は順調、「マリオ」「ゼルダ」は8月に発表

 パネルディスカッションは質疑応答形式で行なわれ、その内容の大半は宮本氏のゲーム制作に関する姿勢の話となった。そんな中で、これからのニンテンドーゲームキューブ用タイトルに関するキーワードがいくつか登場した。ちなみに現在宮本氏が監修しているソフトは30本程度で、「若いディレクターが育ってきてくれているし、米国や英国とも協力しているので、(ニンテンドウ64とくらべ) ゲームキューブでは本数が増えると思う」とうれしいコメントがあった。

 まず最初に、ゲームキューブの発表時からすでにムービーが公開されていた「メトロイド」についての情報が明らかにされた。今回残念ながらプレイアブルバージョンは公開されなかったが、進行状況については「開発は順調に進んでいる。今回のE3でプレイアブルバージョンを出展したかったのだが、(個人的な基準に達しなくて) 手応えがないのでやめた。今後もっと力を入れて取り組みたいと思う」とコメント。肝心の内容に関しては「メトロイドを商品化する上でベストと思われるメンバーで制作してもっている」とし、「まだ決定したわけではないが、現在1人称視点のアクションゲームとして制作しているのは事実」と発言した。メトロイド独特のアクションとして“ワイヤーアクション”や“転がりながら爆弾をばらまく”といったことが再現されるのか? それとも全く新しいアクションとなるのかが非常に注目される。

 このほかでは「ゼルダ」、「マリオ」の両シリーズの最新作については、「8月にすごいものをお見せしますから」とのコメントに終始した。ただし、「マリオ」に関しては「マリオが大人になると言った発言をしてきたが、それはマリオのゲームデザインが子供向けにフォーカスされたものとなり、落ちていくのはよくないと思ったから。マリオのゲーム性は子供だけでなく、もっと幅広い年齢層に通用するものだと思う」とコメントした。

 また、今回の発表の目玉となった「LUIGI'S MANSION」、「PIKMIN」の両タイトルについてのコメントも行なわれた。「LUIGI'S MANSION」については「3Dで制作されているが、カメラが動かないため2Dに近い。でも懐中電灯を自由自在に操るのは難しい」とコメント。操作性については、「慣れなければ難しい」と昨日のファーストインプレッションに書いたが、むしろ宮本氏としては、その“難しさ”がゲーム性として重要であるといった発言だった。「Quake」などゲームのスピードが速い場合、操作が難しくなるとゲームとしては致命的となるが、「LUIGI'S MANSION」のようなゆったりとしたゲームではむしろ面白いのかもしれない。
 また、制作チームについて「いつもマリオを作れと言っているので、『またマリオですか? ルイージでゲームを作りたいです』というスタッフ達が作っている」とルイージに対する愛情が深いことを強調した。

 「PIKMIN」については、最近は庭をいじるのが好きという宮本氏の興味とシンクロしている。「プレーヤーが『PIKMIN』に思い入れができるようなゲームにしたい」とコメントした。ちなみに、会場の熱狂度では「PIKMON」の方が上だった点が興味深かった。


■ マルチプレイ、エミュレータなど気になるキーワードが続々

 今回のパネルディスカッションでは気になる話題も続出した。たとえば、ゲームキューブでも発売が予定されているブロードバンドアダプタなどの通信関連の話題や、中古問題などにも抵触するエミュレータの話だ。

 通信に関しては「我々はもともとマルチプレイには積極的だった。ただ、ケーブルでゲームボーイアドバンスを接続して4人対戦を行なうというところまでは問題ないが、それ以上の、たとえば電話回線などを利用してのマルチプレイに関しては、僕らだけでは環境を整えられなくなってきている。それにゲームを簡単に遊べるという点では、やはり敷居が高いと言わざるを得ない。(そう言った問題点はあるが) コンピュータとの対戦に比べ、人とのコミュニケーションが面白いことはわかっている」とコメント。通信環境などのインフラ整備の遅れなどに対して、ゲームの作り手側の歯がゆさとも思われる発言となった。

 また、一般来場者の「私としては昔の任天堂のゲームも遊びたいのだが、エミュレータに関してはどう思うか」といった質問に対し、宮本氏は「ソフトの中古問題や、サードパーティのソフトまで動くのかと言った問題 (勝手に動かせないという問題と保証できないという問題) もあり難しいところだが、エミュレータに対しては積極的だ。今回『どうぶつの森』でファミコンのエミュレータを搭載し、昔のソフトを楽しめるようにしている。僕たちのソフトに関しては動かしている」とし、“任天堂社内のソフト”という限定事項付きだが、比較的前向きなコメントとなった。




■ 宮本茂氏、ゲームを大いに語る

 ゲーム作りに関しては、「3Dの登場は、ビデオゲームが初めて登場したときに匹敵する衝撃があった。それからニンテンドウ64が発売され、当初は“3D”になるだけで価値となる時代があった。現在はその後の時代として“面白いもの”を制作する中で、“3D”はひとつの選択肢となる」と発言。ゲームマシンとしては「ファミコンからスーパーファミコンになったときは、同じ方法論の中で制作でき、格段に自由度が増したが、スーパーファミコンからニンテンドウ64になったときは、方法論からすべてが違ったものとなった。もちろんゲームの制作に関してはすべてが新鮮で、それゆえ大変だった。ニンテンドウ64からゲームキューブへの変化は、ファミコンからスーパーファミコンへの変化と同じで、3Dゲームの制作について自由度が格段に増したといえる」と表現した。
 この発言は、ゲームキューブでのラインナップがN64ソフトのバージョンアップものが数多く含まれる (『WVERACE』、『どうぶつの森』など) 現状にヒントがあるのではないだろうか? それは、本当に作りたかったものが簡単に制作できる……ということだ。

 だが同時に、宮本氏としては数多くの悩みも抱え込むこととなったようだ。「工業デザインではラインのコントロールが大変。少し変更しただけで多くの部署に迷惑をかけてしまう。ビデオゲームの制作の醍醐味は、ソフトウェアを少し変えるだけでOKな点。これまで自分がプリレンダムービーを使わなかったのは、ソフトをちょっと変更するとムービーを一からすべて制作し直さなければならないため。現状、制作チームも大きくなってきて、そういった自由度が失われつつある」という。

 また、「マシンがどんどんパワフルになるに従って、パワーやグラフィックで勝負する時代ではなくなった。終わりがなく、グラフィックの制作に時間をとられ、ゲームプレイ自体を考える余裕がなくなってきている。また、外の声が大きくそれに答えなければならないため、自由度が少なくなり、自分の好きなことができなくなっている」と続けた。「ゲームデザインの醍醐味は、少しのアイディアでちょっと作って、すごく面白くて、ウソみたいに儲かるところではないのか? 自分がゲームプレイ自体を中心にゲームを制作するのか、そうでないのかを自分の中で整理する時代となった」と語った。

 「どういったゲームをプレイしていますか?」と言う質問にしばらく考え「あまりゲームはプレイしませんね。ギターを練習して遊んだり、庭いじりをしている、この前は大きな机を作ったんですよ」と生き生きと語った宮本氏。「手塚治虫と吉本の落語」に育てられたという同氏の今後には、目が離せない。

□E3のホームページ
http://www.e3expo.com/

(2001年5月19日)

[Reported by 船津稔]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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