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「セガ 3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part2

「3D ギャラクシーフォースII」では未到達のサウンドエミュレーション再生を実現!!

「パワードリフト」- 「3D ギャラクシーフォースII」では未到達のサウンドエミュレーション再生を実現!!

――「パワードリフト」については、実は「3D サンダーブレード」のインタビュー内で堀井さんが「これ(3D サンダーブレード)がたくさん売れたら勝手に『パワードリフト』を作りますよ」って発言されているんですよね(笑)。

奥成氏:その理論で言ったら作っているはずがないんですけどね(笑)。

堀井氏:(「サンダーブレード」は)バカ売れしてないですからね! あの名作はもっと売れないと……おかしいですよ!

奥成氏:僕の覚えている堀井さんとのやりとりだと、「セガ 3D復刻プロジェクト」で「ギャラクシーフォースII」の移植を行なっていた頃ですが、「Yボードのタイトルも頑張れば3DSで動かせるんだな!」と、やっと思えるようになったぐらいのときに、エムツーさんから「Yボードのタイトルから次にやるなら『パワードリフト』だね」という話が出ていたんですよね。

 でも、その時は、「じゃあ解析用にROMを用意しようか?」という話をしつつも、結局は用意しなかったんです。セガの倉庫には「パワードリフト」のROMがあるし、それこそ「パワードリフト」のツイン筐体(※)のROMも。それを解析すれば進められるだろう……と思いつつ、結局は時間が無くて何もやらなかったんですよね。


※「パワードリフト」のツイン筐体……通信対戦プレイが可能になったバージョン。通常バージョンとはコース選択ができなくなっているなどの違いがある。

――なるほど。でも実はその頃、エムツーさんの社内では水面下で進んでいたと。

堀井氏:ですね。齊藤はそれこそ3DSが発売された頃から、「いつかは『パワードリフト』を3DSで動くようにしたい!」と考えていて。僕は「それはさすがに動くわけない」って思ってたんですけど、まさか最終的には音まで含めて動くとは……。

奥成氏:はい、今回はその音がポイントなんですよね。「ギャラクシーフォースII」とは異なり、「パワードリフト」ではサウンドもエミュレーションしています。エミュレーション再現だとBGMとSEの同時再生によるアーケードゲームとしての臨場感が上がるので、嬉しいポイントになりました。

 「3D ギャラクシーフォースII」の時はエミュレーターのパワー不足で、サウンドのエミュレーションをすると60フレームで動かなくなってしまう可能性があって……。そこで、サウンドはストリーム収録にしたという経緯があって。今回の「パワードリフト」も、最初は同じようにサウンドはストリームで収録しようという話で進めていたんですよ。

堀井氏:「3D ギャラクシーフォースII」については、それこそ最初は「サウンドをストリームにしたところで3DSでは動かないよ」とすら思っていたんですけどね。でも結局はストリーム収録にすることでできちゃった。

 その流れがあったので、今回の「パワードリフト」について下村さんと話したときにも、最初は「じゃあ、『ギャラクシーフォースII』みたいにサウンドはストリーム形式にしましょう」という話にはなりました。

 でも、あの頃よりさらにエミュレーションが軽くできるようになっているし、「ひょっとしたら今回はサウンドもエミュレーションでできるかもしれない……」と思っていたところも、実はあったんです。それでやってみた、という感じですね。

――「3D ギャラクシーフォースII」のインタビューだと、BGMのエミュレーションによる再現は断念され、ストリーム形式にしたことが結果としては良かったよね、というお話もありました。ただ、サウンドエミュレーションに関しても、「厳しいながらも、ひょっとしたらできなくはないのかも……」というニュアンスがちょっとだけありましたよね。

堀井氏:そうでしたねー。今回の「パワードリフト」で実際にできちゃった今となっては懐かしい話ですけど。でも今は笑顔で「『パワードリフト』はストリームじゃなく、ちゃんと内蔵音源で鳴っていますよ!」と言えますが、東京ゲームショウ2015に出展したときですらサウンドはちゃんと鳴っていませんでしたからね。あれ今年の9月ですよ!?

奥成氏:「パワードリフト」のサウンドがちゃんと鳴るようになったのって、ファイナルの2つ前ぐらいのバージョンからですよね。

堀井氏:ファイナルの2、3日前のROMからですね。

東京ゲームショウ2015でのステージイベントより。このときも「発売日を守れるかは『パワードリフト』の開発が順調にいくか次第」という話がされていた

――TGSの時に行なわれていた配信イベントでも、BGMはスローモーションになっていましたよね。

堀井氏:配信を視聴されていた方からは、「この時期にこの状態ってすごい大変だけど、大丈夫なのかな?」というコメントもありました。お察しのとおり、「今、死ぬほど頑張ってます!!」という気分にはなりましたね(笑)。

下村氏:あのときは、「TGSで何も見せないよりも、何かは見せた方がいいでしょう」ということで、エムツーさんに頑張って頂いて。「TGS用のROMをなんとか、どういうものでもいいから用意してください」とお願いしたんですよ。

堀井氏:実際の制作中には、多少画面が壊れていたり不具合があったりしても、作るための作業を突き進めるんですが、TGSの時だけはちょっと寄り道して見ためを整えて、音もちゃんと鳴らそうと努力したんです……。でも、そういう考えで特別に用意したものですら、あれぐらいになっちゃうような状況でした。

下村氏:「このボタンは押さないでください」っていう指示もありましたね(笑)。

堀井氏:ありました。舞台裏はそんな状況だったんですよ(笑)。

――下村さんは、それこそ最初は「納期を考えなくていいから『パワードリフト』を作って」というお話をされたんですよね。でも、9月にはそういう状況だったということですが……当時はどういう心境だったのでしょう?

下村氏:週一くらいのペースでエムツーさんと話をしていて。「……大丈夫ですよね?」と聞けば、「……ギリギリですけど、なんとか大丈夫ですよ」という返事を頂いていましたね。営業スタッフにも「納期問題ありません」と虚勢を張りつつ、僕はもう……エムツーさんと心中するつもりでいました(笑)。

堀井氏:……すごいなぁー……!!

下村氏:もう「エムツーさんを信じています」という気持ちですよ。奥成は逆に「いや、ホント大丈夫ですかね!?」ってずっと言ってましたけどね(笑)。

奥成氏:まぁ、ギリギリぶりでは大丈夫じゃなかったんですけどね!

(一同笑い)

奥成氏:フタを開けてみると、齊藤さんがはるか前から対応されていたというお話で(笑)。

――それもあって、なんとか発売には間に合ったということですけど、完成までにはかなり高いハードルがあったわけですよね。

堀井氏:いやーもうホントに。途中には、New3DSでは60フレームで、3DSでは30フレームでプレイできる……という仕様にしてしまおうかとすら、考えたぐらいです……。そこからなんとかがんばって、どちらでも同じように60フレームで動くようにできました。New3DSだけを対象にするなら、やれることは今より結構広がるんですけどね。

――なるほど。New3DSは動作クロックが上がるなど性能が向上していますから、そういうお話に。そんな葛藤もあったんですね。

奥成氏:「パワードリフト」はサウンド面の苦労もかなり長く続きましたね。先ほどのBGMがスローモーションになるのは、結局は処理落ちではなくバグだったようで。サウンドの再生スピードが変わってしまっていたんですよ。

 でも「パワードリフト」ってプレイ中はずーっと1つの曲が流れっぱなしなので、アーケード感覚でプレイしつつチェックしていると、3面くらい進むと「このタイミングでこのフレーズが流れているのはおかしい!」って気づくという(笑)。

堀井氏:体が覚えてる的な。

――それは……結局はタイマー関連のバグだったのですか?

堀井氏:いや、タイマーのバグならすぐに気がつけたとは思うのですが、すぐには気づかなかったので。もっと根深いところにあったんですよね。

【チーフサウンドクリエイター並木学氏よりコメント頂きました】

エムツー チーフサウンドクリエイター 並木学氏

 シューティングゲームを中心に数多くのタイトルの楽曲を手がけてきたサウンドクリエイター。現在はエムツーに在籍し、「セガ 3D復刻」シリーズでもサウンドディレクターを務めている。

――「パワードリフト」は、「セガ 3D復刻プロジェクト」で初のYボード基板作品のサウンドエミュレーション作品となりましたが、再現にあたってご苦労された点はどこですか? また、「3D アウトラン」に続いてのドライブゲームとなりますが、環境音の組み込みに関してこだわった部分などありましたら教えてください。

並木氏:今作収録のYボードの「3D ギャラクシーフォースII」をはじめ、本プロジェクトで同系統のいわゆる体感ゲームラインナップを移植開発してきた経験を活かせたのと、ゲーム仕様的に「3D アウトラン」に近いこともあって、環境音を含めたサウンド全般に渡って比較的スムーズに再現できたかと思います。

 ……と、それだけでは何ですので、ひとつエピソードを。当ゲームではサウンドのテンポを制御するタイマ機能の使われ方が従来タイトルとは少々違いまして、その箇所への対応を僕からメインプログラマの齊藤へ頼んでいたのですが、メインとなるゲーム側のプログラム作業が相当難航したようで、開発終盤、わりとギリギリまで全BGMでテンポが合っていなかったという状況に……さすがに自分も肝を冷やしました(汗)。

 もちろん製品版はバッチリですので全くご心配いりません。ぜひお気に入りのBGMをバックに
走りまくっていただければ!と。ちなみに僕はEコースのBGMが好きです(聞かれていません)。

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(山村智美)