インタビュー

「セガ3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part1

マスターシステム(マークIII)タイトルの移植も単体ダウンロード作品並の労力が……

マスターシステム(マークIII)タイトルの移植も単体ダウンロード作品並の労力が……

――もうここまででも、本当にスケジュール的にギリギリでギリギリの状態からさらに、おまけのマークIII版「ファンタジーゾーン」までも加わった、というお話になっていますが……。お話を伺う前は、もっと前作も踏まえたおかげで新作を収録する余力も持てたという、余裕から生まれた収録なのかと思っていました。

堀井氏:今回は前よりもバタバタですよねー。「パワードリフト」と「ぷよぷよ通」は新規収録ですし。本当にバタバタですよ。

奥成氏:既存のダウンロードタイトルのパックであり、それに加えてボーナス収録のタイトルというものだったらスケジュールは見えやすいんですよね。でも今回は、新たなアーケード移植が2本に、マークIIIタイトルからのもともとは3Dではないゲームの3D立体視化というものが入って。スケジュールの読めない部分がたくさん出てきたんですよね。

――なるほど。実は気になっていたのですが、マスターシステム(マークIII)タイトルを3DSへ移植するのは、これまで単体ダウンロード配信されてきたアーケードやメガドライブのタイトルに比べると、難易度や労力というのはどれぐらいの差があるのでしょう? 3Dグラス対応のタイトルの場合は、液晶シャッター方式(※1)の3D映像を、3DSの裸眼立体視であるアクティブ視差バリア方式(※2)に対応させるのは大変というお話が「アーカイブス1」のインタビューではありましたが。


※1……液晶シャッター方式は、左右それぞれの目にあわせた映像を交互に表示し、そのタイミングに同期して液晶シャッターを作動させることで、グラスの片側をふさぎ、1/60秒ごとに片目ずつ、1/60秒ずれた別の映像を見せることで動画立体視を実現する。フレームシーケンシャル方式とも呼ばれるこの方式では、1秒間に表示されるそれぞれの目に向けた映像枚数は30枚ずつとなる。

※2……3DSの裸眼立体視は、アクティブ視差バリア方式と呼ばれる。1枚の絵に左目用と右目用の絵を縦に1ラインおきに表示し、電気的に光学視差バリアを設けることで、光の進行方向を制御し、左右の眼に異なる映像が映るようになっている。それぞれの目向けに同時に絵を表示できるため、時間軸上、描画枚数は右目と左目で同じになるが、横方向の表示解像度は半分になる。さらにソフトウェア処理により、3D深度(3Dボリューム)や焦点位置(ニンテンドーNew 3DSの場合)をリニアに制御可能。

【マスターシステムと3Dグラス】
マスターシステム本体(画像左)と3Dグラス。現在も使われる液晶シャッター方式で、このグラスの片側を映像と同期させて交互にふさぐことで3D映像を実現している。もちろん、3DSの立体視とは全く方式が異なる

奥成氏:最初は、「わりとなんとかなるんじゃね?」っていう感じにエムツーさんは請け負ってもらえたんですけど……。

堀井氏:はい、いつものことです!

奥成氏:でも、実際やってみるととんでもなく大変。3D方式の違いの部分を合わせるのが、やはり1番苦労が大きくて。「『スペースハリアー 3D』はいけても『アウトラン 3D』はもう間に合わないんじゃないか!?」とか、「でも、もう発表しちゃってるからね!!」みたいな空気でした。本当にギリギリ。あの当時にマークIII版「ファンタジーゾーン」や他のことは……絶対できなかったですね。

堀井氏:スケジュール的にきつかったですね。

――先ほども少しありましたが、もともと3D対応だったタイトルを3DSの裸眼立体視化するよりも、そうではなかったタイトルを、自分たちでオリジナルに3D化する方が早いというお話になるのでしょうか?

堀井氏:必ずしも毎回そうとは言えないのですが、立体視の安全面などの配慮を現在の基準で踏まえないといけないところがあって。昔のタイトルを解析しつつそれを実現するよりも、ゼロから自分達のやりやすい方法で作った方が早いという事情はあります。

――今となっては掴みづらい、ハードウェア的な違いや制約などから挙動を再現することと、現在の安全基準との適合を両方実現するのは大変ですね。

堀井氏:そうですね。すべてコントロールするとなると、自分達の理解しているやり方で立体視対応版を作る方が楽というときはあります。

奥成氏:そもそも、液晶シャッター方式の左右に点滅させるという手段が、3DSの視差バリア方式とは全然違いますからね。まずは60フレームに持ってくるというひと工程がまず大変で。そして3DSの方式へと実装させていくのが、やはり大変。

 そういうかなりの労力と、まだ残っている3Dグラス対応タイトル群を考えると……労力に見合わないというと失礼ですが、そういうところがあるんです。3Dグラス対応タイトルってあまり数が出なかったし、実験的なタイトルが多いんですよね。「3Dになった! すごいでしょ!!」というところで完結しているものが多いです。

――とりあえずやってみた感が。

奥成氏:最初はパッと見て「お、すごい!」って思うんです。でも、それ以上の良さがないタイトルも……。

堀井氏:まぁ、無いとは言いませんが……。

奥成氏:そういうタイトルはそれはそれで、ある意味ミニゲームっぽいところがあって。僕とかはそれが愛おしかったりはするんですけどね。限られた時間の中で選んでいくとしたら、かかる労力とお客さんたちにどれだけ喜んでもらえるのかを考えると、「アーカイブス2」に当時の3Dタイトルを増やすのはもう、厳しいんじゃないかと思いましたね。

堀井氏:そうですね。例えば全部の3Dグラス対応タイトルを3D立体視化しようとしたら、1年に1本アーカイブスを出すことすらも、無理になりかねないです。それだけの労力がかかってしまうことが「アーカイブス1」を手がけたことでわかったんですね。今回もボーナス収録を4本にしましょうと言われたら……まだ終わっていないと思います。

 マスターシステム(マークIII)のタイトルも手間がすごくかかっているんですよ。あれもこれも……というのは現実的ではないなぁと思います。もっと手間のかからない良い方法を思いつければ話は変わるのですが……。今のところないんですよねぇ。

奥成氏:なので僕は、今回「メイズウォーカー」というタイトル名が出たときは、嬉しかったですけどびっくりもしたんですよ(笑)。大丈夫なのかなと思って。

堀井氏:実は……。○○○○を○○して……。

――出たー!

奥成氏:始まった!(笑)

※ここから「メイズウォーカー」移植の実現秘話で、とてつもない話が展開されたのだが……その内容はインタビューPart2にて!!

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(山村智美)