インタビュー
「セガ3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part1
仮想ハード「セガ リマスターシステム(マーク3D)」で、移植+立体視+機能追加を実現!!
(2015/11/25 10:00)
仮想ハード「セガ リマスターシステム(マーク3D)」で、移植+立体視+機能追加を実現!!
――話を少し戻しますが、おまけのボーナス収録であるマスターシステム(マークIII)タイトルも、とてつもなく大変なんですよね。それは、単体ダウンロードで続けているプロジェクトと比較しても、実は同じぐらい大変なのでしょうか?
堀井氏:クレジットで遊んだりとか、そういう要素がない分は軽減されますが……タイトル移植そのものの労力はほとんど変わらないぐらいです。
奥成氏:「アーカイブス1」では、おまけとは言っても「スペースハリアー 3D」ならコンティニュー制限があるとしんどいよねという話をして、「ヘルパーモード」という機能が新たに実装されたんですよね。そこからは僕が何も言わずとも、「アウトラン 3D」にもヘルパーモードが自然と付いたりして。
その流れで、今回の「アーカイブス2」のマスターシステム(マークIII)タイトルにも、当然のようにヘルパーモードがあるんですけど、「ファンタジーゾーン」2作にはさらに「レーダー」(基地の場所がゲーム画面に表示される)まで付いちゃった。
堀井氏:ギガドライブ(※)のように機能を拡張して実現しているものですね。僕はこのマスターシステム機能のことを「セガ・マーク3D」と呼んでいるんです!
――「セガ・マーク3D」!
堀井氏:でも会議ではあんまりウケなくて。そうしたらディレクターの松岡が「セガ リマスターシステム」でどうだろう!! と。
――「セガ リマスターシステム」!
堀井氏:でもやっぱりピンとこない人の方が多いみたいで。その名称とシリーズ化の話はお蔵入りになり、2人ともほぞを噛んでいるんです(苦笑い)。実は、ロゴを発注する程度には気に入っていたのですが……。
――普通は歴史をたどっていくんですけど、さらにコアな方向へと逆行していってますしね……(笑)。
※「ギガドライブ」はエムツーが「セガ 3D 復刻プロジェクト」を進めるなかで開発した、3DS上でメガドライブ+3D立体視を実現するための仮想の新ハードの名称。詳しくは「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」インタビューを参照頂きたい。
奥成氏:名称はさておき、マークIII版「ファンタジーゾーンII」なんですが、すごく良くなっているんですよね。レーダー表示が加わることで、とても遊びやすくなりました。言うなれば、RPGだとオートマッピング機能が追加されたようなもので。
「ファンタジーゾーンII」っていうゲームは、当時、シューティングゲームにアドベンチャー的な要素の入ったアクションアドベンチャーみたいなゲームが流行になった典型的なタイトルですよね。「ファンタジーゾーン」にその要素を加えて、ワープがあり、いろんなマップを行き来して、ショップを探し、前線基地を破壊していく。それが「ファンタジーゾーンII」の面白さなんですよね。
堀井氏:とてもコンシューマー向けなシステムで。シューティングゲームなのにマップで迷えるんですよね。
――あの頃、「スーパーゼビウス ガンプの謎」とか、「スーパースターフォース」とか、シューティングにアドベンチャーの要素を加えるのが流行してましたよね。
堀井氏:そうそう!
奥成氏:多分「スーパースターフォース」などの方が先なんじゃないかな?
堀井氏:「スーパースターフォース」と「スーパーゼビウス ガンプの謎」が先で。「ファンタジーゾーンII」は後だった記憶がありますね。
※「スーパーゼビウス ガンプの謎」は1986年9月19日発売、「スーパースターフォース」は1986年11月11日発売、「ファンタジーゾーンII オパオパの涙」は1987年10月17日という発売順。アーケードでヒットした名だたるシューティングゲームが、コンシューマー機で続編を発売する際に、オリジナルなアドベンチャー要素をプラスするという流れがあった。
奥成氏:アドベンチャー的な「ファンタジーゾーンII」なのですが、コンプリートコレクションに収録したシステム16版および「3D ファンタジーゾーンIIダブル」は、“アーケード版で作られたら”というコンセプトなのでアドベンチャー要素を入れる方向では開発しないだろうということで。そこは縮小したんですね。
でも、今回のマークIII版「ファンタジーゾーンII」ではその要素もそのままに遊んでもらおうと。
堀井氏:だけど、今、そのまま遊んでもらうのは厳しいと考えて、「レーダー表示」を付けました。ワープに番号が振られ、前線基地の場所もわかり、隠しショップなどもお知らせしてくれる。いたれりつくせりです。
過去に「ファンタジーゾーンII」は、マークIII版、ファミコン版、MSX版などありましたが、それで挫折した方がいたとしても今回はスムーズに楽しんでもらえると思います。
――あの頃のシューティング+アドベンチャーものは挫折した人が多そうですよね。当時は調べる手段があまりない時代ですし。
堀井氏:そうですね、「Beep」の攻略記事とかぐらいでした。
――積極的に情報を集めて攻略できていた人と、そうでない人の温度差が結構ありそうで。でも、今回のヘルパーモードを使えば、いけますね。
【レーダー表示ON/OFF対応】
(「ファンタジーゾーン」、「ファンタジーゾーンII」共通)
画面下部にレーダーマップが表示されて、より快適なプレイが可能になる
・ショップのあるエリアには「S」の文字を追加
・隠しアイテムのあるエリアでは白枠カーソルが点滅
・ワープホールに移動先エリア番号を追加
(「ファンタジーゾーンII」のみ)
・各マップの基地撃墜表示
【ヘルパーモード実装】(「ファンタジーゾーン」)
お助けモードに対応しより快適にプレイ可能。ONにすると以下の3種類のお助け機能に対応。
・ショットパワーが3倍になる
・ウエポン使用時間が60秒になる
・ショップ価格が物価上昇しない
【ヘルパーモード実装】(「ファンタジーゾーンII」)
お助けモードに対応しより快適にプレイ可能。ONにすると以下の3種類のお助け機能に対応。
・初期体力が3になる
・ショットパワーが3倍になる
・ウエポン使用時間も60秒になる
――またしても少し話が戻りますが、以前のインタビューで「マスターシステムの移植は、ゲームギアのバーチャルコンソール移植をやっていたことが経験として活きた」というお話がありました。それは今回のボーナス収録にも同じことが言えるのでしょうか?
堀井氏:あります! それがなければ話にならなかったです!!
奥成氏:そこはもうアーキテクチャの流れの話ですね。セガという会社のゲームハードには進化の系図があるので、それを踏まえると話が早いのですが、業務用と家庭用のハードウェアが相互に関連があるんですよね。
セガのコンシューマーハードウェアの派生の流れですが、まず「SG-1000」があり、「SG-1000II」があって。この2つはほとんど中身的には同じでした。ここに「システム1」と「システム2」というアーケード基板が並行して登場します。この「システム1」と「2」の技術を取り込んだのがコンシューマーの「セガ・マークIII」。このマークIIIにいろんな要素を加えたのが「セガ マスターシステム」となります。と言っても、マークIIIとマスターシステムも基本はほぼ同じなのですが。
そして、マスターシステム(マークIII)の延長線上にあるのが、ゲームギアという携帯ハードになるんです。もちろん携帯化ということで小型化や、音もステレオ化されたり、使えるパレットの色数も増えていたり。マークIIIが1985年で、ゲームギアの登場は1990年なので、5年の技術的な進化が加わっています。でも、基本は同じなんですよね。
このマークIIIから「システムE」というアーケード基板が派生したりと続くのですが……それはさておき。ようはゲームギアはマークIIIの進化形なんですね。
堀井氏:血が濃いです。
奥成氏:なので、ゲームギアのタイトルを3DS上で動かせたなら、マスターシステム(マークIII)のタイトルも比較的やりやすいということになります。
――なるほどー。そこに3DSの3D立体視など、拡張機能を実現させられるものにしたのが、ギガドライブ的な言い方をすると「セガ・マーク3D」や「セガ リマスターシステム」であると。
堀井氏:そうです。プログラマーからは「ゲームギアの方が液晶が小さくて描画範囲も狭いから3DSで動かすのは楽なんだよ」とか言われそうですけど(笑)。マスターシステム(マークIII)も3DS上では最初は動いていなかったのですが、ゲームギアのバーチャルコンソールを手がけたことで、3DS上で動くようになりました。
奥成氏:日本だとゲームギアの頃にはメガドライブがあって。メガドライブはもう16bitの新しいゲーム機でしたけど、ヨーロッパあたりでは、8BITハードの歴史であるゲームギアとマスターシステムは、メガドライブの時代でも現役だったんです。メガドライブとマスターシステムとゲームギアの3機種が展開していました。
海外ではメガドライブの時代にも、ゲームギア版とマスターシステム(マークIII)版とで、ほぼ同じゲームが同時期に発売されたりしてたんですよ。
堀井氏:海外では「ベアナックルII」もマスターシステム版がありましたからね。(※)
※日本ではメガドライブ版とゲームギア版のみ発売。
奥成氏:一部そういったゲームを移植しようと、Wiiのバーチャルコンソールでゲームギアで出ていた「ソニック2」や「ソニック&テイルス」など海外ではマスターシステム版として発売されたタイトルを、日本ではゲームギアで出ていたからと任天堂さんに許可を頂いて、日本でも配信するという試みを何本かやっています。
Wiiのマスターシステム版「ソニック&テイルス」などは画面の描画範囲が広いので、ちょっと遊びやすくなっているんですよ。逆に言うとゲームギアは同じ解像度でも、ちょっと描画範囲が狭く、使われていない範囲があるんですよね。
――なるほど。だからこそ、「アーカイブス」でマスターシステム作品を収録するのは、なにより3D立体視化が1番苦労する、というお話になるんですね。ゲームギアVCを経ているから、動かすだけならいけると。
堀井氏:そうなんです。
奥成氏:「アウトラン 3D」を移植するのはもともとのゲームとハードが3D対応タイトルだったんだし「ゲームギアとそんなに変わらないでしょ?」という話だったのですが、今回の「ファンタジーゾーン」と「ファンタジーゾーンII」ではもともと3Dじゃないものを3D立体視にしているので。それを可能にするために、ギガドライブ的な「セガ・マーク3D」みたいな、エムツーさん的な仮想の新ハードが展開していて。その恩恵でレーダー表示までついちゃったと。
堀井氏:まさに「セガ リマスターシステム マーク3D」なんです!
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