インタビュー

「セガ3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part1

ルーツの1人、下村氏が「3D復刻」を引き継いで「アーカイブス3」を目指す!!

ルーツの1人、下村氏が「3D復刻」を引き継いで「アーカイブス3」を目指す!!

奥成氏よりプロジェクトを引き継ぎ、リードプロデューサーとして指揮を執る下村一誠氏

――また話がさかのぼってしまって恐縮なのですが、「アーカイブス2」発売の経緯について改めて伺わせてください。自分などは「当然、出してくれるはず」ぐらいの印象だったんです。でも、実際はそういう流れではなかったのでしょうか?

下村氏:んー、1番最初は“何も無かった”んですよね。奥成からこのプロジェクトを引き継いだときは、もう第2期が一区切りしてからの追加タイトル(※)の頃でした。


※第2期追加タイトルは、「3D ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌(レクイエム)」、「3D ガンスターヒーローズ」、「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」の3作品。いずれも2015年に配信された。

堀井氏:「3D ガンスターヒーローズ」とか「3D ベアナックルII」の頃でしたね。

奥成氏:僕が異動しまして。プロジェクト的にもちょうどキリが良く、区切りがついていた。具体的には「3D サンダーブレード」が完成して、そこで終わろうと。ただ、このまま終わらせるのは……という話になって、「アーカイブス1」をリリースできましたが、それはもう言わばボーナスステージでした。それで、それもなんとか形になり、僕はプロジェクトから降りました。

 でもそこから、海外で「第2期」の配信が決まり、そのサポートが必要になって。そのときに「どうせならタイトルを追加しよう!」となって、メガドライブの3タイトルを増やせちゃった(笑)。そこで「この増えた分とか誰が引き継ぐの!?」となったところに……。

下村氏:ちょうど私は手が空いてましたので。「私がやりますよ」と社内で話し、引き継いだと。

奥成氏:10年ぐらい前ですけど、PS2の「SEGA AGES 2500」シリーズで「スペースハリアーII ~スペースハリアーコンプリートコレクション~」のインタビューもGame Watchさんにはして頂いて。実はその前には「ドラゴンフォース」の移植もやっていたんですよね。そのシリーズの中で「ドラゴンフォース」の移植をやらせてくれと直談判したのが、当時SEGA AGES 2500でD3パブリッシャーさんと折衝していた下村なんです。

 その「ドラゴンフォース」をきっかけに「SEGA AGES 2500」シリーズそのものを僕がやらせてもらえるようになり、他タイトルの開発はどうしよう、どこにお願いしようとなったときに、下村からエムツーさんを紹介してもらいまして(笑)。

――なるほど。「3D復刻」のルーツを辿ると、この3人から始まっているんですね。

堀井氏:そうっすねー、この3人ですね。

奥成氏:そこからは僕が現場を見て、下村はチュンソフトさんやプラチナゲームズさんと開発をしていて、そうして今回、また……(笑)。

下村氏:僕にバトンが帰ってきたというか。

堀井氏:受け継がれる輪というか。

奥成氏:この移植の仕事って、自分で言うのはなんですけど、誰でもできる仕事ではないんですよね。

――誰でもじゃないです、はい。

奥成氏:(笑)。例えば、「パワードリフト」ってタイトルを伝えたときに、「すみません、知りません……」っていう人だと、引き継ぎどころか会話も成り立たない。そういう状況に、本当にいい形でお願いできる人が来てもらえた、という感じです。

下村氏:僕がバトンを渡された直後は、まず海外配信の残務処理があり、奥成が最後に追加した3本の、日本での配信開始。それが終わればプロジェクト自体が完全終了する予定だったんです。

奥成氏:昨年夏の「3D サンダーブレード」の頃にはそういう話が出てきて、実際に下村に仕事を引き継いでもらったのは年明けぐらいですね。

――その頃には「アーカイブス2」の話は影も形もない。

下村氏:まるで何も無くて。「もう、このプロジェクトは終わるんだなー」という感じでいたというのが事実です。

 でも奥成から、「実は『アーカイブス2』もやりたかったんですよねー」という話を聞いて。ちょうどそのタイミングで「アーカイブス1」へのアンケート集計があがってきました。それを見ると、ユーザーさんの満足度が非常に高い。営業スタッフからも「『アーカイブス2』やらないんですか?」という話が出てたりもして……。

 これらを演繹するともう、「やるしかないな!」という話ですよね。

 それでエムツーさんに「『アーカイブス2』やりたくはないですか? 12月発売に間に合うなら出せるかもしれないですよ」と話して。もちろん納期とコスト、ラインナップの充実度、そういう諸々の課題があります。でも、「やりますか?」と聞けば、「やります!!」と。

堀井氏:「やります」に決まってますよね。

下村氏:じゃあ僕は予算取ってきますよ、と。社内でプレゼンし、営業さん含め味方を増やしていって、プロジェクトを立ち上げたという。立ち上がったのはもう今期に入ってから、4月、5月以降のことでしたね。普通は4月、5月に立ち上げて12月発売というのは、ありえないスピード感ですよね。でも、そこをなんとか……スタッフみんなの熱意で。

堀井氏:奥成さんと、この前の東京ゲームショウ2015でお会いしたときに「僕がメインのプロデューサーだったら、『パワードリフト』はOK出しませんね(笑)」なんてさらっと言われて。僕らはおっかないギリギリなことをやっているんだなーと思いましたね。まぁ今までも散々おっかないことはやってきましたから、「綱渡り度合いがすごいよね」、「いやいや、今も渡ってますけどね!」みたいな話をしました。

奥成氏:下村に引き継いでもらう頃から僕は、「ぜひ『アーカイブス2』もやってもらいたい」というバトンタッチはしていたんです。で、そのラインナップも「アーカイブス1」の頃に「次があるなら、こうしていきたいな!」と、考えたものがあったので。その資料を下村に渡したんです。

下村氏:そこには「アーカイブス2」と「アーカイブス3」って書いてあって!!

(一同笑い)

奥成氏:僕は「アーカイブス2」を今年の6月、「アーカイブス3」を12月に出そうって思ってたんですよ!

(堀井氏、それを聞いて吹き出す)

――死んじゃう(笑)。

堀井氏:鼻水出るわ(苦笑い)。

奥成氏:もちろんエムツーさんにも話してなくて、あくまで僕の中だけの話ですけどね。でも、そうやって考えると、収録タイトルが足りないよなーとも思ってました。それが去年の秋ぐらいの話ですね。

下村氏:普通に「アーカイブス2」を出すと、シリーズものの常で数字(売り上げ)ってどうしても下がっていくんですよね。そこで考えないといけないのは、「ファンの皆さんに支えられている」ということ。やるのなら「アーカイブス2」で終わらせてもダメだ、「アーカイブス3」まで繋がるように「アーカイブス2」は絶対に成功させなければならない、そのためにも何かサプライズを入れないといけない。そういう気持ちがありましたね。

 そのためにも、「アーカイブス2」のラインナップの魅力を最大限に高めようと。奥成の考えていた「アーカイブス3」まで続けていく構想は僕の中にもあるのですが、まずは「アーカイブス2」を成功させなければならないという意識がより強いですね。

奥成氏:当時、インタビューでもお話しましたが、「アーカイブス1」には入れたいものを全部入れているんですよね。その「アーカイブス1」を作っている時には「2」や「3」のことはほとんど考えてなかった。で、「アーカイブス1」がだいぶ進んだ頃に「もし続けられるようなら、次はこうしたいな」というラインナップを考えていた、というもので。

 その時に考えたものは「この内容なら3カ月でできないかな?」という感じで。それを下村にも伝えました。そこから下村とエムツーさんとの相談になりますが、まず技術的にできることを精査して。例えば「ドリームキャストのタイトルとかは無理だよね」とか。そうしたところから話し合って、12月に出せるものが決まっていった、ということですね。

「アーカイブス2」を、「アーカイブス3」が出せるぐらいに魅力的なものに……! そのための新規収録作品でまず挙がったのが「パワードリフト」だった

下村氏:1番最初の案は、配信中のタイトルを単にまとめたものでした。奥成リストの中からダウンロード配信中のタイトルだけに集中して、新作は無しという形で考えていました。でもそれだと魅力が乏しい。それをエムツーさんに相談したら「……新作もやりたいですね」というお返事が。

堀井氏:やれるのならやります!

下村氏:で、「例えば何ができます?」って聞いたら、ポロッと「パワードリフト」って名前が出てきたんですよね。んで、奥成に「パワードリフト」っていう提案がきたよって伝えると「無理でしょ!?」って反応で。

 だけど、エムツーさんが「できる」って言ってるものを僕が「できない」って言うのは嫌ですし。それに「パワードリフト」が入っていたら、「アーカイブス1」を越えるんじゃないか、とも思えて。「アーカイブス1」は配信タイトルをまとめたもので、おまけがついてましたが、「アーカイブス2」は新作も入れておまけも付ける。それなら「アーカイブス1」を越えて「アーカイブス3」まで繋げていけるんじゃないか、と。そうしてエムツーさんに「『パワードリフト』行きましょう」と話しました。

 でも実は最初、「『パワードリフト』は納期を考えなくていいです」って言っちゃったんですよね。「納期を考えないのなら実現できそうですか?」という話をして、「それならいけそうです」というやり取りだったんですよ。

――最初は(笑)。

堀井氏:すごい話だよなぁーほんと(苦笑い)。

下村氏:(笑)。でもまぁ、納期は当然あるわけで。後から、実はありましたーと(笑)。
(一同笑い)

堀井氏:そりゃ、ないわけないんですよねー(笑)。

下村氏:まぁ、なんやかんやで納期が設定されて。年末には発売したいというハードルができて、それもエムツーさんに相談すると「なんとかやります」というお返事を頂けて。そこもなんとかがんばってもらいました。

堀井氏:実はそれも裏話があってですね……。○○○○○○○は○○で……。

下村氏:(笑)。

奥成氏:おかしい! いろいろおかしい!!

※ここから「パワードリフト」の移植について、とてつもない話が展開されたのだが……その内容はインタビューPart2にて!!

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(山村智美)