インタビュー

「3D ファンタジーゾーンIIダブル」インタビュー

「これまでのタイトルで培ってきた3D化技術の集大成」

「これまでのタイトルで培ってきた3D化技術の集大成」

ボスキャラなど、いろんなところが立体化されている

奥成氏:オリジナルから作っているという恩恵の一番大きなものが、3Dの立体視はこれまで以上に立体感を付けることができたということです。では「本気の3D」について堀井さんどうぞ(笑)。

堀井氏:オブジェクトに対しての立体視については、今までずいぶんいろいろ試してきました。「オパオパブラザーズ」では、例えば前線基地の丸みだとかがそうですが……でもあれってたかだか2枚のオブジェクトを重ねて立体に見せるという形だったんですけれども、今回はオブジェクトをいっぱい表示させることができたので、2枚なんてケチくさいことを言わず、本当に複数枚、最大で7枚くらい重ねているので、なめらかな曲線とかがよく見えるようになったと思います。2,048枚オブジェクトが出せる仮想ハードウェアの面目躍如です。

 ここまできてようやくちゃんとオブジェクトを並べられるようになったので……感無量ですね。

奥成氏:他の3DSのゲームと違って面白いのは、3DS向けといってもポリゴンではなくスプライトの2D絵の立体であることと、その絵も立体視を前提として描いた絵ではないところですね。2008年版のソフト(システム16リメイク)を作るとき、2Dの絵として、しかもシステム16が現役で活躍していた当時を想定して作った2Dグラフィックスを、同じスタッフが自ら3D立体視にしているわけです。ですから、確かに本作も「3D復刻」なんです。

堀井氏:同じスタッフが3D立体視に対応させるべくオブジェクトを分解しているという。奥行に合わせて本当に手で奥、手前、もうちょい手前、1番上……っていう感じでやっているので。惚れ惚れするぐらい滑らかな絵になりましたね。この作業のためにずっとスタッフが1人張り付いて。ひたすら立体視に対応させていくという。

奥成氏:ワイド画面対応と、立体視対応による画面の広がりというのが、3D復刻プロジェクトタイトルの中ではダントツに良くなっていますね。

堀井氏:「オパオパブラザーズ」でも驚いていただいたし、「3D ザ・スーパー忍II」も自信作ですけれども、やっぱり「3D ファンタジーゾーンII」はすごいですね。「最新作が自信作です」と言えますね。

――立体視で見ていても、「立体視に対応していること」を自然と受け入れているというか、そんな感じです。これまでは立体にしているんだな、がんばってるな、という感じがあったんですが、「ファンタジーゾーンII」はすごく馴染んでいるというか。

堀井氏:製作過程でどこかで閾値を越えた感じはありますね。突き破るところを突き破れたという。無理している感じはないと思います。さらっとできているという感じですね。作っている側は大変苦労しているんですが。見ている側としては何の違和感もなく、絵本の世界が立体になっているという感じはあると思います。

――立体視対応の初期の頃の映画と、最近の映画との違いというか、「無理やりそういうシーンを作りました」みたいな感じが感じられないんですよね。すごく自然だし、目が疲れる感じがあまりないというか。

奥成氏:そういう意味で言うと、3DSで2Dのゲームを立体視に対応させて表現するというものが、割合的にあまりないんですよね。そういう中において、エムツーさんが「3D スペースハリアー」から今回にいたるまで、短い時間にたくさんのタイトルを手がけてきたということで言うと、「3D ファンタジーゾーンII」は随一のものになったと思うんですよ。これまでのタイトルで培ってきた3D化技術の集大成になっているんじゃないかと。

――勝手なイメージなんですけれども、2Dのビジュアルを立体視に対応させるために起こしていくという過程は、それほど大きく変わっていないと思うんですが、その最適化のためのオブジェクトの配置や、動かし方というものに、縛りのようなものが今までのタイトルにあったとしたら、「ファンタジーゾーンII」にはそれを超えたのびのびしたものがあって、立体に見えるようにがっつり動かしてますよね、という感じですかね。

堀井氏:2Dビジュアルを輪切りにして作る立体視に対しての作り方もそうですし、アニメーションのタイミングもどう輪切りにするかを考えてやっているので……元があるものはアニメーションのタイミングもオリジナルから逸脱することはしていませんが、今回に関してはそのあたりもこまごま調整していたりして。立体視のために変えているだけではないですけれども、よりよく見えるように変えているところもありますので。そういった細かいところの積み重ねが突き抜けていくんですよね。

――いろんなパズルのピースがきっちりハマった感じといいますか。たぶん、1番すごいことをやっているんだけれども、1番普通に見えちゃう、遊べちゃうという感じがするんですよ。

奥成氏:そこが1つ、これまでのものより先に行けている部分じゃないかなと思います。

――これまで2Dビジュアルで立体視に対応させたゲームを作られた方ならわかるすごさなのかなとは思いました。素人考えですが。

堀井氏:このインタビューを読んでくださるような方々には感じてもらえることなのかもしれませんね。

――そしてニヤニヤするんだろうなーという(笑)。それぐらいいろんなところに手が入っている感じがするんですよね。それですべてが丸く収まっているというか。

堀井氏:ほころびが少なくなった、というのは間違いないですね。

奥成氏:3Dポリゴンのキャラクターはもちろん3DSの立体視にはうまくハマりますが、それと同じような感じで遊んでもらえるんじゃないかということですね。

堀井氏:僕らとしてはそれでOKです。

――これをみて「ゾッ」とする人がいてもおかしくないなと。

堀井氏:3DSのゲームで、2Dのドット絵でどれだけ立体視に対してチャレンジしているか、という部分では、うちで今までやってきたことでかなり極まったところまでできてきたかなと思うんですが、今回はその集大成になっていますね。

――堀井さんが以前、「入山する人が他にいない」っておっしゃっていた部分ですね。

堀井氏:いないんですよ……。他でやっているものをもっと見たいんですけれどね。

――「立体視に対応したドット絵の恐ろしさ」をこれで感じられるんじゃないかなと。それが弾の見えやすさやいろんなところに見えるという。

堀井氏:開発中に、デザイナーの席の後ろに立ってみていると、ゾッとするんですよ。「こんなに(オブジェクトを)割るの?」とか、「ここまで手間をかけて試行錯誤するんだ」とか……その繰り返しだったので。がんばっただけのことはきっとあるんですね。

 思いついたネタを、処理速度の範囲で限定的に行なうのと、処理速度の制約がほぼない状態で好き放題行なえる差、というのが出ていると思いますね。キャラクター1枚単位での立体視に関しては、1番最初に手掛けた「スペースハリアー」のころからいろいろ試行錯誤していて相応の成果を上げてきているんですが、1つのアイデアを入れたとたんに60フレームで回らなくなったりしてあきらめていたものもあったので……。3DSのハードウェアを作った方々がこれを見て喜んでくださったら本望ですね。

――これは早く実際にプレイしていただきたい「すごさ」だなと思いました。

奥成氏:そして、立体のこととは関係なく、「ファンタジーゾーン」のファンの方に、このリメイク版「ファンタジーゾーンII」を遊んでもらいたいということですね。元となった「ファンタジーゾーンCC」はPS2の晩年に発売されたソフトであるということと、システム16リメイク版が入っている、ということは当時そこまで大きく伝わらなかったので、知らない方や遊んだことのない人も多かったと思います。また3DSで「ファンタジーゾーン」を久しぶりに遊んだ、という方もいらっしゃったと思います。そういった方々……「ファンタジーゾーンII」をこれまで遊んでこられなかった方に遊んでいただけるとうれしいなと思っています。

 システム16リメイクから導入した「マルチエンディング」なんかも今回初めてプレイされるお客さんには楽しんでいただけるのかなと。

 シューティングにしては若干システムが複雑なので、3DS版ではそういった部分のフォローとして、下画面の情報を多少充実させてみました。このゲームは1つのステージの中でワープゾーンを使うことでブライトサイドとダークサイドを行き来して、どちらをクリアするか、という選択肢があるんですが、自分がどういうルートをたどっているか、ということがわかるような全体マップを入れてみたり、オパオパのステータスのようなものがファジーパラメーターでなんとなく見えたりとか、そういったものも用意しました。

 あとは、おまけですけれども、「ファンタジーゾーンII」って各ステージごとに簡単なストーリーを英語で表示していたんですが、そこもせっかくなので、日本語訳したものを下画面で表示しています。

堀井氏:ストーリーはオリジナル版から結構凝った話になっていると思うんですが、見ていない方もいらっしゃると思います。今回日本語でバッチリ表示していますので、見て頂けるとうれしいです。

下画面に日本語によるストーリーが表示されている
ブライト/ダークどちらのサイドを通ってきたかがわかるようにもなっている

「ファンタジーゾーンII オパオパの涙」 プロローグ

 遥か昔、宇宙のかなたでの物語……。

 B・G1432年。英雄オパオパの活躍によりファンタジーゾーンに平和が戻ってから、早や10年。戦いのあと、行方のわからなくなったオパオパの父、そして侵略軍の黒幕の存在……いくつかの謎を残したまま、ファンタジーゾーンはかつての繁栄を取り戻していた。そんなある日、再びパニックが訪れた。新たな侵略軍が、ファンタジーゾーンに次々と侵略者「ネノン人」を送り込み、巨大要塞を建造しはじめたのである。計画を阻止するため、オパオパはファンタジーゾーンへと向かう。10年前のことが忘れられないまま、再び……。

奥成氏:ただし、ステージ冒頭に表示されるストーリーに関しては、普通にプレイしているとまず見られない……下画面を見ている余裕はあまりないと思いますので、ショップに入った時とか、或いは途中セーブを駆使しながら見て頂ければ(一同笑)。

堀井氏:普段は処理の限界でほとんど何も表示させられない下画面ですけど、今回はここぞとばかりに充実させてみました。

――そういえば、逆にオリジナル版に準拠した4:3の画面比率のモードを入れよう、という話にはならなかったんですか?

奥成氏:「オリジナルを3DSで遊んでもらうために必要なものは全部見直す」という話をしていたので、最初からそれは考えていませんでしたね。そういう意味で、今回はシリーズで初めて画面サイズ設定がありません。

――なるほど。

(佐伯憲司)