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価格:8,190円(PS3/Xbox 360版)
CEROレーティング:C(15歳以上対象)
「慰めの報酬」は「カジノ・ロワイヤル」のラストシーンから続く、ストーリーに連続性を持たせた作品になっている。「007シリーズ」はこれまで22作制作されているが、キャストなどが続くことはあっても、ストーリーとしては1話完結だった。「慰めの報酬」はこれまでのシリーズの伝統を打ち破った作品であり、ゲームでは2つの映画で語られる1つのストーリーを再現している。 本稿では、ゲーム発売に先がけてスクウェア・エニックス本社で体験することができたPS3/Xbox 360版の「007/慰めの報酬」を紹介したい。本作はゲームエンジンに「Call of Duty 4」のものを改良して使っており、FPSのカテゴリーの作品だが、ただ銃で撃つだけではなく、物陰に隠れてチャンスを狙ったり、監視カメラを避けたり、格闘技で敵をたたきのめしたりと、ボンドならではのアクションもたっぷり楽しめる。 本作は日本語吹き替えの完全日本語版であり、英語音声の切り替えなどはできないが、映画の吹き替え版と同じ声優達による、リッチな雰囲気を持ったローカライズを行なっている。プレイしていてなによりも楽しかったのがモチーフとなった映画のシーンをゲームという手法で再現していることだ。時には映画と全く同じアングルで、時には独特のアレンジで映画と、そして「007らしさ」を再現している。多くの人にオススメしたい良質のアクションゲームである。
■ 007ならではの戦いで難局を切り抜けろ! FPSの手法でボンドの魅力を引き出す
ゲームシステムはコンシューマーのFPSタイトルをプレイしている人にはすんなりとプレイできるだろう。照準を合わせ、トリガーを引いて敵を銃撃する。ボンドは拳銃の他、マシンガンやアサルトライフルも使いこなす。ゲームは難易度設定が可能で、初心者からFPSゲーマーまで自分の腕に合わせて挑戦できる。 「Call of Duty 4」のエンジンを採用したことで、ミリタリー色の強いシビアなFPSという印象を持たれがちだが、「007/慰めの報酬」のプレイ感覚はむしろ「Gears of War」に近く感じた。建物の陰に隠れ、敵が討ってくるタイミングを見計らい照準を合わせて撃つ。敵を倒したら前の物陰まで走り、隠れる。銃火に無謀にも身をさらしているとあっという間に倒されてしまう。 FPSは自分の姿があまり映らないが、本作では物陰に隠れているときはプレーヤーもボンドの姿を見ることができる。無謀に突撃するだけでないゲーム展開は、「007」の雰囲気をうまく再現していると感じた。敵の猛攻を隠れてしのぎ、一瞬のチャンスで相手を撃ち倒すボンドは「殺しのライセンス」を持つ腕利きの諜報員ならではのかっこよさも感じる。 ボンドらしいアクションとしては、「テイクダウン」がある。敵に近付くとできるアクションで、関節を取って投げ飛ばしたり、コンビネーションを決めたりと見事な格闘術で相手をノックアウトする。このときはボンドの流れるような殺陣を見ることができるが、アクション中は無敵ではないので、敵が集団でいるところでテイクダウンを使うと他の敵に撃たれてしまうこともある。使用には注意が必要だが突然現われた敵を一瞬で倒したり、敵の背後から一気に倒したりと、攻撃が決まると爽快でカッコイイ。 この他にも爆発するオブジェクトなど戦いを有利にする仕掛けもある。ガスタンクを背後に戦っている敵などは恰好の的である。ガスタンクが大爆発を起こして数人をまとめて倒したり、教会の鐘を敵の集団の上に落としたり、「映画のような」派手なシーンを楽しむことができる。爆発シーンなどでは映画のようにスローモーションになる演出もある。「007/慰めの報酬」は映画を補足するシーンや、より派手な戦闘シーンもたくさん入っている。映画以上に派手な007の活躍を自分の手で実行させることができるのだ。 ステージが進むと、敵の警報装置を避けたり、感知されないためにサイレンサーを使うなど「スニークゲーム」的要素も入ってくる。この他にも、スナイパーライフルで距離の離れた敵と撃ち合ったり、一定時間の間に決められた場所まで駆け抜けなくてはならなかったりと、様々なシチュエーションとルールで戦う場所が用意されているという。
なんといっても、諜報員らしいスマートな活躍を目指すことが本作の大きな楽しさである。本作はより効率の良いアクションや、「ボンドらしい戦い方」を目指してやりこみたくなる魅力がある。集めると敵側の動きが見えて来るという「携帯電話」という収集アイテムもある。また、「ボンドなんだから、マシンガンなどの大きな武器は不粋だ。ピストルだけで進もう」というプレーヤーもいると思う。クリアした後もやりこみを楽しめる作品なのだ。
■ 映画とリンクし、さらに新しい魅力に気付かせてくれる演出。オンラインプレイも007ならではの要素を
「007/慰めの報酬」は映画以上に銃撃戦のウェイトが高くなっているものの、映画ファンならば感心させられる場面が多く盛り込まれている。映画のフィルムは使わずすべてリアルタイムのCGで再現しているが、日本語吹き替えの声優達の演技も相まって、ストーリーの展開もじっくり楽しむことができる。筆者はプレイに先がけ予習として「カジノ・ロワイヤル」を見ていたのだが、映画とゲームが高いレベルでシンクロしているだけでなく、アレンジの仕方にも驚かされた。 「カジノ・ロワイヤル」の冒頭には爆弾を持ったテロリストとボンドのチェイスシーンがある。テロリストは建設中のビルに逃げ込み、鉄骨をかいくぐり、作業用のクレーンを作動させ、足場を飛び越えて逃げ続ける。映画のこのシーンは、アクションゲームかと思うほどに犯人が驚異的な身体能力で逃げていく。ゲームでは完全にボンドの視点で犯人を追っていくことになる。 面白いのは、映画のカメラは犯人とボンドを交互に写すのだが、ゲームでは完全にボンドの視点となるため、映画のシーンがフラッシュバックしながら頭の中でシンクロするのだ。映画ではここからこのルートだった、ボンドはそっくりそのルートを全く違う視点で追っていく。「おお、映画ではこう見えていたのに、ゲームでは、つまりボンドはこういう視点で追っていたのか!」と驚かされた。この感覚は「007/慰めの報酬」ならではだろう。他のゲームでは味わえない独特なシンクロ体験である。こういった仕掛けが随所にされている作品なのだ。 映画の吹き替えと同じ声優の顔ぶれは豪華だ。ボンドに小杉十郎太さん、Mに此島愛子さん、ル・シッフルに中多和宏さんとベテラン声優達の演技でドラマを楽しむことができる。ボンドをフォローするMI6(英国諜報部)員の会話など、映画にはない要素もたくさん入っている「再現度」という要素は本作の大きなセールスポイントである。映画とゲーム両方を楽しむことで、面白さは何倍にもふくらむと感じた。 今回体験できなかったが、オンラインでは最大12人の対戦プレイが楽しめる。対戦ルールは様々なものが用意されており、「007」ならではの要素も盛り込まれている。「ボンド・バーサス」は、プレーヤーの1人がボンド、残り全員がテロリストになる。ボンドは爆弾の解体とテロリストの排除を目指す。ボンドになると他プレーヤーが全て敵になる。参加しているプレーヤーがすべてボンド役を体験したところでセッションが終了し、ボンドとして一番好成績を上げたプレーヤーが勝ちとなる。 「ボンド・エスケープ」はMI6とテロリストの2手に分かれ、MI6の1人がボンドになる。チームバトルとなっており、ボンドを脱出地点まで護衛すればMI6の勝ち、阻止すればテロリストの勝ちだ。「黄金銃」は超強力な黄金銃という武器を奪い合うバトルロイヤルルールのゲーム。黄金銃は強力な武器だが、持っているプレーヤーは他プレーヤーに位置がバレるため、勝ち抜くためにどう戦うか考えさせられるだろう。この他にも、エリアを奪い合う「テリトリーコントロール」など全7種類のルールが用意されている。オンラインプレイも盛り上がりそうだ。
原作つきのゲームなため、原作の知識があればゲームは何倍も楽しくなる。映画の雰囲気をどうゲームに再現するかに集中した開発者の情熱を感じてもらいたい作品だ。カッコ良くて渋いダニエル・クレイグの007をどれだけスマートに活躍させることができるか、是非チャレンジしてもらいたい。
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□スクウェア・エニックスのホームページ (2009年3月12日) [Reported by 勝田哲也]
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