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台湾Joymasterは、台湾と香港でモバイルゲームを展開している企業だ。設立は2003年5月で、社員数は北京支社を含めて80人弱という若い会社だが、設立当初から積極的にJavaベースのモバイルゲームを企画制作し、2年後の2005年には台湾のモバイルゲーム市場でシェア1位を獲得。年間30~50タイトルを配信する、台湾有数のモバイルゲームコンテンツプロバイダである。 ゲームは純粋な自社開発のほかにも、日本のバンダイネットワークスと提携して「BB戦士三国伝」を展開するなど、世界各国の企業と手を結んで多彩なモバイルゲームを提供している。2007年からは東京ゲームショウにも出展しており、日本市場にも強い関心を示している。 ところが同社は、オフィスから歩いて行ける距離にある台北世界貿易中心で開催されているTaipei Game Showには出展していない。もっともこれはJoymasterに限った話ではなく、今回はキャリアも含めてモバイルゲームの出展が一切なかった。
そこで今回、Joymaster本社を訪ね、同社で副総経理を務める林亮宇氏にお話を伺うことにした。新作タイトルを紹介してもらうのではなく、台湾のモバイルゲーム市場の仕組みや現状を教えて欲しいという厚かましいお願いをしたのだが、林氏は快諾してくれた上、資料も交えながら丁寧に説明してくれた。改めて林氏とJoymasterの方々に感謝したい。
■ 市場規模はまだまだ小さいが、端末の3G化が拡大の起爆剤となるか
市場規模が爆発的に伸びない理由としては、3G端末の普及率がまだ低いことが挙げられるという。3G端末は通信速度が速く、通信料金も下がることから、台湾モバイルゲーム業界にとって3G化が進む意味は非常に大きい。2008年12月の時点では、2G端末数が約1,266万台、3G端末数が約1,129万台と、まだ過半数は2G端末を使用している。それでも2007年12月に比べると、2G端末は約300万台以上減り、3G端末は400万台以上増えていることから、かなりの勢いで3Gへの移行は進んでいる。逆に言えば、この勢いで3G端末が普及することで、今後爆発的な伸びが期待できるとも見られる。 通信料金については、台湾最大手キャリアの中華電信では、コンテンツのダウンロードにかかる通信料金を無料にするサービスを提供している。他のキャリアでも、コンテンツのダウンロード数が一定数に達するまでは通信料金を無料とするサービスを行なっているという。ただ、プレイ中に通信するようなアプリケーションでは通信料金が発生してしまうので、3G化が重要なことには変わりない。
アプリケーションの料金(前述の通信料金を除く)は、50、70、90台湾ドル(約150、210、270円)の3つのパターンが多いという。支払いの形態は、1ダウンロードごとの個別課金が8割で、月額課金は2割程度。台湾では、日本では一般的なSIMロックがないため、SIMカードを抜いて別の端末に差し込めば、キャリアを問わず使える。このこともあってか、個別課金のほうが浸透しているようだ。
■ ごった煮状態の配信スタイル。新端末の対応に苦慮 次にモバイルゲームの配信スタイルについて。日本ではキャリアが認定したサイトへのリンクを用意し、CP(コンテンツプロバイダ)自身のサーバーからエンドユーザーに配信している。日本と並んでモバイルゲーム先進国と言われている韓国では、全てのアプリケーションをキャリアが一元管理し、配信サーバーもキャリアが用意している。 では台湾はどうかというと、特に定まったやり方がない。例えばキャリアの遠伝電信はiモードを使って日本型の配信を行なっているが、中華電信は韓国式のキャリア管理方式をとっている。他にも、Yahooなどのポータルサイトで配信することもあれば、NokiaやMotorolaといった端末のプラットフォームに向けて配信することもある。
CPの自由度が高そうにも見えるが、同時に発生する問題が、発売される端末の数の多さだ。SIMロックがないこともあって、台湾では1年間に約600種類の端末が新たに登場する。これらの端末に逐一対応していく労力は、日本のそれとは比較にならない。Joymasterのホームページで各タイトルの対応機種を見ると、世界各国で売られている端末の名前が無数に羅列してあり、かなり負担が大きいことは容易に想像がつく。
■ コアユーザーは20歳前後の若者。カジュアルからアダルトまで多彩なジャンルを提供
人気のジャンルは、台湾式麻雀など伝統的なゲームが強いという。ただその分だけ開発しやすいということもあり、各メーカーの競争は激しいようだ。他には、テレビやPCゲームの人気ブランドを扱ったモバイルゲームも人気が高い。また日本製品への憧れが強い土地柄が影響し、日本産のゲームも安定して人気があるという。「太鼓の達人」のモバイル版では、台湾モバイルがテレビコマーシャルを打ったこともあるそうだ。 日本では「iアプリオンライン」などでにわかに活気付いているモバイルオンラインゲームについては、台湾ではまだこれからといった状況で、モバイルゲーム全体に占める割合では1%にも満たないという。Joymasterは設立からまもなくモバイルオンラインゲームを手がけており、ここでも3G化の波に乗った伸びを期待しているという。 そして台湾のモバイルゲームで面白いのが、アダルト要素のあるモバイルゲームの存在だ。日本ではあまりおおっぴらに見られないが、台湾ではメジャーなジャンルの1つとして、どこのCPも当たり前に出しているという。やはり売れ行きは好調だそうだ。ただアダルトといってもそれほど過激なものではなく、セクシーなグラビア程度のもので、あまり激しいものが出ないよう業界の規定もあるという。
ほかに売り上げに大きな影響を及ぼす要素として、言語が繁体字版かどうかが重要だという。世界中の端末が集まるだけに、世界中のゲームも集まり、英語版のソフトも入ってくることになるが、繁体字版は英語版に比べて約20倍の売り上げがあるそうだ。
■ iPhoneやAndroidなど新プラットフォームにも積極的に参入するJoymaster
現在同社は、同社のモバイルゲームで最も人気の高い「正宗台湾16張麻雀」のiPhone版を開発している。台湾式麻雀は日本で知られている麻雀よりも牌の数が多いが、ルールはシンプルですぐ覚えられるという。またiPhoneならではの操作として、捨てたい牌をタッチして上に弾くと捨てられたり、アガリの際に手牌を前に倒すイメージでiPhoneを前に倒すなど、臨場感を高める演出を加えている。今のところは繁体字版と英語版の2種類を準備しているそうだが、「日本語版も作りたい」と語ってくれた。実現すれば、これが日本初上陸のJoymaster作品となるだろう。 他にも、Android向けのアプリケーションも開発中だという。Android搭載の端末は、台湾ではまだ売られていないが、先日、北米で端末を入手して、現在研究開発を進めているという。既に既存のパズルゲームを動作させており、タッチパネルで操作していた。こちらも近いうちに何か形になったものが出てきそうだ。
他にも台湾国内では、2008年11月から中華電信が提供するIPTV(ブロードバンドインターネット経由のデジタルテレビ)に向けてゲームサービスを提供している。こういった新しいプラットフォームにも積極的に参入するJoymasterの姿勢には好感が持てる。台湾でトップを取ったモバイルゲームメーカーが、iPhoneやAndroidで世界に向けてどういったゲームを提示してくれるのか、まだまだ今後が楽しみな企業だ。
(2009年2月15日) [Reported by 石田賀津男]
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