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★iPhone/iPod touchゲームレビュー★

クレヨンで描いたら物理エンジンで動く!
先端技術をゆるく表現したパズルゲーム

「Crayon Physics Deluxe」

  • ジャンル:パズル
  • 開発元・配信元:ハドソン
  • 価格:600円
  • プラットフォーム:iPhone/iPod touch
  • 配信日:1月1日(配信中)


 ここ数年で全世界のゲーム開発者に衝撃を与えたタイトルの中に、2006年の「Line Rider」と2008年の「Crayon Physics Deluxe (クレヨン・フィジックス デラックス)」がある。ともにタブレットPCをメインに開発された、いわゆる「手描きフィジックス」系のタイトルだ。北米「Independent Games Festival」で前者は07年度のイノベーション部門、後者は08年度の金賞に当たる「Seumas McNally Grand Prize」を受賞している。

 ハドソンから1月1日にiPhone/iPod touch向けに全世界リリースされた「Crayon Physics Deluxe」は、このうち後者を原作に開発された、2D物理エンジンパズルゲームだ。元がタブレットPC向けだったこともあり、iPhone/iPod touchとの相性は最適で、携帯ゲーム機に移植されたことで、いつでも、どこでも楽しめるようになった。総じて原作のエッセンスをうまく活かした、カジュアルながら先進的なタイトルだ。



■ 「手描きフィジックス」によるパズルゲーム

左側のボールを動かして、右側の星に当てるのが目的。そのためには中央の溝に道をつける必要がある
 ゲームをスタートすると、画面上にボールと星が表示される。ボールをタップすると右に移動するので、うまく誘導して星に当てればステージクリアだ。ただし経路は障害物や溝などに遮られており、うまく道筋を作って誘導する必要がある。収録ステージは全50面で、簡単なステージの作成機能もある。クレヨン画風のグラフィックスに、ほのぼのとしたBGMが印象的だ。

 最大の特徴は、画面上をなぞって絵を描くと、リアルタイムに「物体」となって落下することだ。物体同士の衝突判定もあり、個々の大きさで質量も異なる。これこそが「手描きフィジックス」なる所以である。横に線を描くと板ができ、四角形をなぞると箱となって下に落下する。落下する箱をボールに当てて、衝撃でボールを動かしてもいい。小さな丸を描くとアンカー(留め)になり、これを軸にハンマーなどを描けば重力で回転する。アンカーから線を引くとロープも垂らせる。描いた絵を消すにはダブルタップだ。

 これらを組み合わせて、ボールをうまくゴールまで誘導していくのである。プレーヤーの想像力の数だけクリア方法は存在する。ある程度「ごり押し」でクリアすることもできるし、美しい解決策を見つけてもいい。

【操作説明】
メニュー画面で「HOW TO PLAY」をタップすると操作説明画面が出る。画面に絵を描いて落とし、ボールをはじいて動かしたり、アンカーを描いて物体を回転させる仕方などが説明される。このほかピンチ・スライド・シェイクのやり方もわかる

【Level1 ステージ紹介】
画面の指示に従い箱の絵を描くと、箱が下に落ちてボールをはじき、星に到達する。ボールをタップして右に動かすこともできるので、この方法でクリアしてもいい



■ 画面の外にも世界が広がっている!?

 操作方法は独特だが、簡単な解説に加えて、新しい仕掛けや解法を説明したチュートリアル風のステージもあるので、遊びながら理解できる。一例として中盤ステージのlevel21を紹介しよう。まず最初に画面右下でアンカーを描くように指示される。次の指示はアンカーを軸に箱を描くことだ。すると箱がアンカーを軸に時計回りに回転し、画面外をぐるっと一周して、地上のボールを上にはじき飛ばす。ボールは斜めに浮かんだ板にはじき返されて、中央のスターに到達する……という流れだ。

 テレビゲームはついつい画面の中だけを考えてしまいがちだが、本ステージでは画面の外にも世界が広がっていることを感じさせる。画面の中だけを注目していては解けない、優れたパズルだ。

【重力によるセンスオブワンダー】
最初にアンカーを描き、次に四角を描く。するとアンカーを軸に四角が右回りで回転し、ボールを左上にはね飛ばす。ボールは板で跳ね返り、星に当たる仕組みだ



■ 雰囲気と同じく、ゲーム内容も「ゆるゆる」だ

 ただし、タッチペンやマウスと違って指で描くため、描かれる「絵」もかなり大ざっぱなものになりがちだ。そのため他の物体との衝突判定も、タブレットPC版より大まかになるよう調整されている。しかし、そこは世界観自体が「クレヨン画」ということで、この大らかさが逆に温かみのある、カジュアルなイメージにつながっている。指で画面をピンチ操作(2本の指で開いたり閉じたりする)すると拡大縮小できたり、2本の指を画面にスライドさせるとスクロールもできるが、ほとんどのステージは最初のノーマル画面のままでクリアできるようになっている。

 ちなみに本作では多くのパズルゲームと異なり、クリアに時間制限やボール数の制限などがない。50面のうち、どのステージからでもプレイできるので、文字通り自分なりの楽しみ方でゆっくり進められる。ステージをやりなおすにはメニューから選ぶ以外に、本体をシェイクさせてもいい。オプション設定でサウンドをオフにすると、次回起動時から好きな音楽を再生させたままゲームもできる。随所にiPhone/iPod touchならではの仕様が生きている。

【Level8 ステージ紹介】
星が2つ配置されているステージもある。このような時は1回ずつ星を回収してもいいし、まとめて2つ回収してもいい。解き方によるボーナスやペナルティは存在しない



■ 伝統的なデザイン手法を新技術でリファイン

ステージセレクト画面。クリア済みステージにはサムネイル表示などがあれば嬉しかった
 画面上のAからBに「ライン」をつなげることを目的としたゲームは(本作でもボールの“導線”を作る意味で「ライン」だ)、古くはカードゲームの「水道管ゲーム」から、アクションパズルの「レミングス」、テレビ番組「ピタゴラスイッチ」風にスイッチをつなげていく「インクレティブル・マシーン」などがある。逆に導線を遮るゲームには、攻め寄せる敵を撃退する、タワーディフェンス系のストラテジーゲームなどがあるだろう。

 本作がこれらのタイトルと比べてユニークなのは、「手描き」認識と物理エンジンの融合による、いい意味での「大ざっぱさ」だ。そのためゲーム展開はきわめてゆるく、脳髄にドーパミンがしみ出るような、集中して解くゲームを求める人には向いていない。しかし、ちょっとした合間にゲームを楽しみたかったり、先進的なゲームを楽しみたいユーザーにはお勧めできる。伝統的なゲームデザインの手法を、最先端の技術でリファインし、しかも何らすごそうに見えない点に、このゲームの非凡な点がある。

 裏を返せば、もう少し手描き認識の精度が高かったり、より精緻な絵が描ければ、と思わされる部分が、ないでもない。全50ステージの配置も、もう少しメリハリをつけて、段階的に難度を上げていった方がいいのでは、とも感じられた。また細かい点では、どのステージからでもプレイできるのはいいのだが、ステージセレクト画面が真っ白なのはもったいない。クリアしたステージについては、ステージがサムネイル表示されてもいいだろう。しかし、これらはマニアの意見にすぎない。iPhone/iPod touchというプラットフォームの制約上で、うまくバランスが取られている点を賞賛したい。

 また一部の例を除き、重力以外にボールを動かす要素が存在しない点もポイントだ。この点は、自由に引いたラインの上をソリが滑っていくアプリ「Line Rider」も同じで、物理エンジンにすべての動きをゆだねた、シンプルで美しい世界が展開されている。この手のゲームを作るときは、バネやトランポリンなど、ついつい余計な要素を入れてしまいがちで、実際にその方が派手になるのだが、その誘惑を断ち切った点が秀逸で、制作陣のストイックな姿勢が感じられる。



■ コミュニティ機能も期待したいところ

 メニューで「LEVEL EDITOR」を選ぶと、レベルエディターモードが開き、簡易ステージが自作できる。ただし、操作が少しわかりにくいので注意が必要だ。

 ステージデザイン自体は、画面にタッチして直接描いていけばいい。左上のペンシルアイコンをタッチして、線の色も8種類に変えられる。ただしステージの構造物は、丸や四角のように、「線」ではないことが条件だ。大まかな配置が終わったら、「TOOL」メニューを開いて「DRAG US」欄の「X」アイコンを構造物にドラッグし、アンカーで止めていく。構造物を回転させたいなら1点、制止させたいなら2点のアンカーが必要だ。

 画面上の星やボールをスライドさせて、配置の変更もできる。「TOOL」メニューの星やボールアイコンをスライドさせれば、数を増やすことも可能だ。最後に「TOOL」メニューから「START」アイコンをタッチすると、画面内に重力が働いて、ゲームが開始できる。ポイントはアンカーでしっかり構造物を止めること。これを忘れるとゲームを始めたときに、画面の下に流れ落ちていってしまう。筆者もはじめ、この意味がよくわからなかった。レベルエディターモードにもチュートリアルや解説が欲しかった。

 ただし自作ステージは、Wi-Fiなどによるデータ受け渡しや、サーバーへのアップロード機能がないので、他のプレーヤーに遊んでもらう場合は、本体ごと手渡しする以外にない。セーブスロットが3カ所しかないのも少ないように思う。これに付随してプレイ動画の録画・投稿機能なども欲しいところだ。パズルゲームはコンストラクション機能と相性がいいため、今後はコミュニティ指向へのアップデートも期待したい。

 とはいえ、最も期待したい改良・アップデートポイントは、追加ステージの配信だろう。50ステージはちょっと遊ぶには適量だが、ハマってプレイすると、すぐに終わってしまう。筆者を含む全世界の「Crayon Physics Deluxe」ファンのために、早急な追加配信を期待したい。またはユーザーコミュニティによる、自作ステージ配信の環境を整えるか。それだけの魅力があるプラットフォームであることは確かだろう。

【レベルエディター】
メニュー画面で「LEVEL EDITOR」をタッチして、レベルエディターモードに入る。タッチして絵を描き、アンカーで止めていく。構造物の重心とアンカーの位置をずらすと、構造物をゆらゆら回転させられる

【ステージ紹介(level01〜15)】
カジュアルユーザーへのウケは抜群で、iPhone/iPod touchのデモソフトとしても使える。筆者のお薦めはLevel8、11、13、14などだ

【デモムービー】


(C)Kloonigames. Licensed exclusively to Hudson Soft for Apple iPhone and iPod Touch
(C)HUDSON SOFT

□ハドソンのホームページ
http://www.hudson.co.jp/
□「Crayon Physics Deluxe」のページ
http://www.dothehudson.net/jp/app/crayon-physics/index.html
□関連情報
【2008年12月24日】ハドソン、2D物理エンジンを搭載したパズルゲーム
iPhone/iPod touch「クレヨン・フィジックス Deluxe」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20090108/crayon.htm
【2008年10月6日】ハドソン iPhoneアプリ統括の柴田真人氏インタビュー
iPhoneで日本向けのコアゲームは実現できるか?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20090108/crayon.htm

(2009年2月9日)

[Reported by 小野憲史]



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