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SCE正田氏、「PlayStation Network」のストラテジーを語る
PSN会員は190万、「Home」はPSユーザーのための「新しい遊び場」

2月5日開催

会場:ベルサール神田

 2年連続のセッションとなるソニー・コンピュータエンタテインメントからは、ネットワークビジネスを統括するネットワークビジネス&サービス部部長 正田純二氏がスピーカーを担当。昨年は、Home Japan Project推進課シニアプロデューサー赤川良二氏から「Home」の概要が語られたが、今年は「『プレイステーション』ユーザーのためのオンラインサービス」と題して、プレイステーションフランチャイズ向けのオンラインサービス「PlayStation Network(PSN)」の概要が語られた。

 発表内容そのものは、2008年の東京ゲームショウSCEブースの発表会で語られた内容と大差なかったが、1月末時点の最新データを数字で示し、SCEが推進するオンラインサービスが確実にゲームファンに浸透しつつある現状を報告するなど、手応えの感じられる内容だった。

【PlayStation Network最新データ】
正田氏のセッションで示されたPSNの実情を示すデータ群。左から順に「PlayStation Store」、「PlayStation Home」、「まいにちいっしょ」。3つ目の「まいにちいっしょ」の検討ぶりが目立つデータとなっている


■ “「ウルティマオンライン」日本サービスの父”がSCEのオンラインサービスを牽引

ソニー・コンピュータエンタテインメント ネットワークビジネス&サービス部部長兼Global Home推進部部長 正田純二氏
 スピーカーを務めた正田純二氏は、MMORPGの分野では、日本で最初のメジャータイトルである「ウルティマオンライン」(エレクトロニック・アーツ)の日本運営の最高責任者として、同作の全盛期を支えた人物として知られる。定期的に開発者を日本に呼んでユーザーカンファレンスを開催し、自ら通訳を務め、クリエイターとユーザーを繋ぐ姿勢は多くのコミュニティリーダーに支持された。

 当然のことながら、PSNの日本展開において正田氏にかける期待は大きい。今回のセッションでは、正田氏特有のハッキリとした物言いは聞くことはできなかったが、ひとつ収穫だったのは、正田氏は、現在、SCEにおいてネットワークビジネスを統括するだけでなく、「PlayStation Home」のグローバル戦略を担うGlobal Home推進部部長も兼務しているところだ。

 正田純二氏というオンラインコミュニティに理解と実績のある人物が日本の「Home」の舵取りを担当したことで、「Home」は今後もドラスティックな変貌を遂げることを期待できそうだ。

 さて、正田氏は、PSNが提供するサービス要素について「インフォメーション」、「ダウンロード」、「コミュニケーション」の3つを挙げ、次いでPSNの果たすべき役割を「ネットワークサービスを通じてプレイステーションユーザーに豊かなエンタテインメント体験を提供するサービス」と定義。実際に提供しているコンテンツを「PlayStation Store」、「PlayStation Home」、「アドホック・パーティー」、「まいにちいっしょ」の4つの種別に分けて、順番に解説していった。

【PlayStation Network(PSN)】
正田氏は冒頭で、3つのスライドを使用して、PSNがプレイステーションプラットフォームで果たすべき役割を規定


■ 少しずつ見えてきたPS3の強み、そして「Home」の遊び方

「PlayStation Store」では、新しい取り組みの一環としてHDクオリティ/5.1chサウンドで提供している有料レンタルコンテンツ「亡念のザムド」などが紹介された
「PlayStation Home」は、PSユーザーの「新しい遊び場」と定義
 「PlayStation Store」は、3大要素のうちインフォメーションとダウンロードの役割を担うPSNの中核を担うサービスだ。正田氏の報告の中で特に目を引いたのはPSNの利用状況を示すデータ。アカウント総数は190万アカウント、月間来場者数70万アカウント、累計ダウンロード数3,500万回といった基本情報の最新アップデートに加え、週間の来場者数が30万アカウント、総コンテンツ数3,500個といった新規データも披露。正田氏によれば、ワールドワイドのユーザー数はこのざっと10倍だという。

 「PlayStation Home」については、プレイステーションユーザーのための「新しい遊び場」と説明。サードパーティーが自由に参入できるラウンジによる「Home」世界の拡張と、インゲームの要素を取り込んだアバターアイテムや家具を中心とした有料アイテムの販売により、「さらに深いゲーム体験を提供し、“エンターテインメントプラットフォーム”として活用していく」と構想の一端を披露してくれた。

 また、正田氏は、先日発表された「バイオハザード5」のラウンジについて補足説明を行なった。「体験版でプレイしてもらえればわかりますが、実際のそのままを持ってきた“ムービーセット”という設定」と切り出し、「BIOHAZARD 5」ラウンジは、ゲーム本編の発売以降に「Home」内に実装され、中でちょっとしたミニゲームが遊べたり、ゲームの進行や達成状況に応じて「Home」内でリワードが受け取れるといった連動ギミックが存在することを明らかにした。リワードは、すでに発表されているフィギュアなどが予想されるが、ミニゲームについても期待が高まるところだ。

 「バイオハザード5」は、3月5日にPS3版、Xbox 360版の同時発売が予定されているが、「Home」との連動機能は、PS3版の大きなアドバンテージといえそうだ。ちなみに1月末現在、24のライセンシーと、SCE内部開発タイトルにおいて「Home」への参画を表明しているという。「Home」は幸か不幸かコンセプト先行型のプロダクトとして、PSユーザーに対してなかなか具体的なメリットを提示できなかったが、ようやく明確なメリットを提示できた格好だ。

 気になる「Home」のアカウント数については35万と報告された(ワールドワイドでは約10倍の350万)。残念ながらアクティブユーザーについては明らかにされなかったが、実情と比較してコメントすると、期待度の高さを伺わせる数字といえるだろうか。「バイオハザード 5」ラウンジクラスのコンテンツが続々と登場するような状態になれば、状況はずいぶん変わってきそうだ。

【PlayStation Home】
「Home」については、ラウンジ機能をクローズアップ。「Home」のコンテンツ生成をサードパーティーに開放するというアプローチがようやく本格化しつつある印象だ

「アドホックパーティー」については、2008年10月30日のサービス開始から3カ月で18万人が利用
「まいにちいっしょ」では広告ビジネスをスタート。それにしても「まいにちいっしょ」がPSNの実験場だったとは驚きである
 「アドホックパーティー」については、1月末時点で18万人が利用し、196のPSPタイトルへの動作確認をほぼ終了させていることなどが報告された。今後、仕様拡張などは予定していないためか、概要のみのざっくりとした説明だったが、「アドホック・パーティー」の提供により「PSPのコミュニティがどんどん形成され、遠隔のユーザーとプレイするという新しい遊び方を楽しんでいただいている方が増えている」と手応えの一端を覗かせた。

 最後の「まいにちいっしょ」は、プレイステーション 3の発売と共にサービスが開始され、「お気軽ネット」をコンセプトに開始されたカジュアルコンテンツである。サービス開始以来、年中無休で文字通り“まいにち”更新し、更新回数は2年あまりですでに800回以上に及ぶことが報告された。アカウント数は55万と「Home」を大きく上回り、収益源である有料アイテムの総数は約1,000個に達し、販売数は100万個以上であることが報告された。

 聞いていておもしろかったのが「まいにちいっしょ」の隠されたタスクについて。実は「まいにちいっしょ」は、日々進化するPSNにおける新機能をテストする実験場として機能している側面もあるという。過去の例では、動画アップロードやサーバー上のデータの整合チェック、インゲームショップの実験、そしてゲーム内広告システムの検証などが行なわれたという。

 ゲーム内広告については、庭の看板にバナー広告を貼ったり、ニュースにおけるCMとして実在のアイテムを取り上げ、なおかつユーザーにアバターアイテムとして配布するなどの取り組みを行なっていることが紹介された。最後に紹介されたPSP版は、現時点ではPS3版の機能制限版となっているが、今後は、PSP版ならではの機能強化を図っていきたいということだ。

 45分という枠内で若干駆け足の紹介になってしまったことが悔やまれるが、それでもPSNを構成する各要素の最新情報が聞けたのは収穫だった。現状では客観的に判定して「まいにちいっしょ」がもっともユーザーの心を掴んでいるオンラインサービスという印象が強いが、それと同時に1年後にはどうなるかわからないという期待感も持った。GDC、E3を経て、我々の想像外の新サービスも出てくるかもしれない。今後のPSNのアップデートに期待したいところだ。

【まいにちいっしょ】
セッションでは「まいにちいっしょ」の敢闘ぶりが目立った。更新回数800回以上ということにも驚かされたが、実はさまざまな狙いを込めた戦略的なコンテンツであることがよくわかった

□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bba.or.jp/
□「OGC2008」のホームページ
http://www.bba.or.jp/ogc/2008/
□関連情報
【2009年2月5日】BBA、オンラインゲーム&コミュニティサービスカンファレンスを開催
コミュニティエンターテインメント全盛時代にゲームパブリッシャーが取るべき1手とは何か!?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20090205/ogc_01.htm
【2008年3月15日】SCEJ赤川氏、「Playstation Home」日本語版を実機で初披露
「Home」は“ビジュアルマッチングロビー”と再定義、サービス開始時期は「2008年春」を堅持
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080315/ogc_02.htm

(2009年2月6日)

[Reported by 中村聖司]



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