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エンタースフィア岡本氏が語る「オンラインゲーム、コミュニティの潮流を読む ゲームからオンラインコミュニティの展開にいたるまで」

2月5日開催

会場:ベルサール神田



 「はじめてのWii」チーフディレクター、「WiiFit」トレーニングディレクターとして任天堂 情報開発本部に2008年5月まで在籍し、現在は株式会社エンタースフィア 代表取締役として自社のコンテンツサービスを作成、サービスの提供を行なっている岡本基氏は「オンラインゲーム、コミュニティの潮流を読む ゲームからオンラインコミュニティの展開にいたるまで」と題した講演を行なった。

 「fg」は2008年11月にサービスを開始した立体の画像写真投稿がメインのSNS。講演では、同社が自社開発し、サービスを提供しているフィギュアコミュニティサイト「fg」に焦点を当てつつ、オンラインにおけるユーザージェネレイテッドコンテンツついて語った。


■ 自社開発は、 ブレストは長時間だがコーディングは短期で

株式会社エンタースフィア 代表取締役 岡本基氏
 まず岡本氏は、日本のベンチャーというのは、自社サービスだけでまかなえるわけではなく、エンタースフィアも創業当時は受託開発で食べて、それなりに忙しかったが、独立した志を思い出し、一念奮起して2008年9月に「fg」の開発を着手。2か月半程度の開発期間を経て同年11月にサービスの提供を開始したという経緯を説明していた。また、「fg」の制作過程は現在多数ある一般的なUGC(user generated content)を作成しようとしていたが、長時間にわたるブレストを経てターゲットを絞り、“立体物”というテーマにしたという。

 fgは2008年11月にサービスを開始した画像投稿をメインにしたSNSで、2009年2月5日の段階で会員数は1万2千人ほど。男女比率は男性が87%、女性が13%、年代別では20代が46%、30代35%と10代は数時での説明がないほど少ないという構図になっている。フィギュアは金額的にも高い部類があるため、経済力のある大人が多い傾向があるという。

 岡本氏は、立体物というコンセプトを、ユーザーにわかりやすくするために名称は“フィギュア”を使用しているが、掲載する被写体は、ガンプラなどのプラモデルをはじめ、ドール、雪像、そしてお寺の許可があれば仏像でもなんでもいいといったコンセプトを提唱している。

 現在のサイト構成は写真画像がメインになっており、1回の投稿につき10枚までの写真がアップロード可能になっている。またあらかじめ設定しておくことで、画像にメモを表示するメモ機能が搭載されている。

 メモ機能については、基本部分を作るので精いっぱいだったなか、サービス開始日直前の4日間で作成したとのことで、フィギュアなどを趣向とするユーザーは、指先や顔の表情など細かい情報を画像に直接貼りたいだろうという構想とAmazonをヒントに、フィギュアであればこの機能を生かしてくれるということで実装したところ好評を得たとのことだ。「最後の一滴を入れることで変わるということはゲーム制作であってもfgにおいても変わらない」という。

 インターフェイス部分では、ゲーム制作過程においてのノウハウよりも、スタンダードなサイトがあればそれを見習うべきだというといった内容が語られた。なお、制作に携わったメインプログラマは2人で、二人ともゲームプログラム出身ということもあり、Webプログラムであるfgは、彼らが試行錯誤しながら行なったという。

 サイト内での人気のあるものは、フルスクラッチで作成したものをはじめ、KONAMIの「武装神姫」や、VANCE PROJECTの「ピンキーストリート」が多く、その他にも「ドール」と呼ばれるジャンルでは女性ユーザーからの投稿も多く、中にはコスプレの衣装などを自ら作成し、ドールに着せて撮影している作品もあるという。アカウント部分の話では、「fg」のアカウントはモデラーアカウントと一般アカウントと呼ばれる2つのカテゴリーに分かれているという。

 「fg」でのアカウント名称であるモデラーは、実際にフィギュアを作成して画像を投稿している人などを表し、一般はROMを含め、既製品のフィギュアを買って撮影している人を表す。現状はこのアカウント機能の差別化は行なわれていないが、将来は差別化されていくという考えのもとアカウント設計がされたとのことだ。

 また、モデラーアカウントは、サービス開始当初にメーカー品の投稿が増えることを考え、アマチュアのクリエイターが作った作品が埋もれてしまう可能性があるため、優先して検索にかかるよう、運営側はモデラーを尊重しているという形で意図的に分けたという。

開発期間2カ月半で作成したSNS「fg」。最後の一滴を加えるのはゲームもWebサービスも同じ



■ UGCの人口ピラミッドゲームのMOD人口と置き換えての検証 ユーザーニーズに合わせたカテゴライズも必要

 UGCに関する説明では、冒頭にウィル・ライト氏が提唱したUGCの人口ピラミッドを提示し、これを「fg」のピラミッドに置き換えて説明していた。「fg」における人口ピラミッドは、サービス当初は、ピラミッド型の構図にはならず、長方形または逆三角形を構築した後、時間が経過するにつれ徐々に変化し、最終的には、ひし形に近くなったという。

 その中でも特に特殊なのは、改造フィギュアの階層がひし形状態になってらしく、現在は、このカテゴリが最も投稿が多いという。また、それらの影響によりサービス当初は過半数を占めていた既製品の写真は少なくなっているという問題も発生しているようだ。

 サービス部分では、サービス開始当初は「自作」と「購入品」のみのカテゴライズだった「fg」だったが、開始直後から送られてきたユーザーの要望をもとに6日目に「改造」を追加、キット、レビューなどが徐々に増え、最終的には、自作/制作中/改造/キット/購入品/イベント/レビューと数を増していったという。

 特徴的なカテゴリには、「制作中」というものがあり、これはフルスクラッチで作っていく過程の画像をUpさせてほしいという意見から制作したものという。ゲームであっても、フィギュアであってもクリエイターも制作過程を評価してもらうことで、継続したモチベーションの維持が行えるようになっているといった内容が語られていた。

岡本氏は、ゲーム業界では著名人ウィル・ライト氏のUGC人口ピラミッドを例にあげ、fgでの人口ピラミッドの推移を説明していた。現在は、ピラミッドではなく、ひし形のような状態になっているという



■ ランキングやスターなど、ソーシャルスコアのバランシングが重要

 続いて岡本氏は、UGCの一般論的な特徴としてランキングなどがあるが、評価の高い作品が見たいというのは当然のことだが、ランキングというのは常々問題になりやすいとう側面を提唱した。コミュニティサイトにおいてランキング機能などを導入すると、これに対してサイト内で新しい価値が生まれ、最初は純粋に作品をみてほしいという気持ちで投稿されていた作品が、どうやったらランクインするかという攻略法を探すようになってしまうという。

 結果としてコミュニティが偏りだし、スコアやランキングがゲーム化し、価値のないはずの要素を稼ぐことを自己目的化されてしまうという傾向があると語っていた。「fg」におけるランキングの計算としては、マイリスト、スター、ページビューなどを要素に、独自の計算方法を利用しているとのことだが、ランキングを導入した結果上位に入りたいがために、複数のアカウントを使用し、自分自身に評価を多数つけるカジュアルチートなども始まったという。

 岡本氏はこのランキングなどにおけるスコアをソーシャルスコアと読んでおり、これはゲームに例えるなら、Xbox LIVEの実績など、1作品1,000点というスコアの中で、価値観が共有されていることをいう。

 UGCに関しては、このスコアのルールがなく、他のランキングがあるコミュニティサイトや、「うごメモはてな」で起こった「悪神騒動」で起こった低年齢層によるコミュニティの炎上を例にあげ、評価に時間制限などをつけず、頻度を上げるとアクティビティが上がるというメリットは出てくるが、コミュニティが荒れやすくなるというデメリットが発生するという事例を提示。

 またこれらを例に挙げた後、今後はWebやカジュアルゲームなどで起きていることを合せたものを作ればいいかと思うと語っており、運営の仕事としては、スコアを追い求めていくだけの中毒性が上がる反面、コミュニティが荒れてしまうので、価値観の多様化を提示しかなければならないと語っていた。

 とはいえ、スターを制限しすぎると埋もれてしまうような作品も出てしまい、格差が発生してしまう側面もあるのもコミュニティの偏りの発生となるとのことだ。これらのことを踏まえバランスをとりながら仕組みを作ったり調整をしていかなければならないと懸念事項も示していた。

ランキングなどのソーシャルスコアは、ユーザのアクティビティが増す反面、コミュニティが荒れやくなるという危険性も秘めていることを提示。運営側のバランシングが大事だという



■ どのようにコミュニティをカテゴライズするか、タグに住人を住み着かせるのが課題

 コミュニティのカテゴライズという点では、2ちゃんねるを例にあげ、Web1.0におけるカテゴリ分けは、2ちゃんねるでいうところの「板」ごとに分割されたディレクトリ構造であると説明し、Web2.0ではタグでこれらを多様化していくはずだったが、現状のタグでは多様化できていないという説明をしていた。

 これは「板」には住人という言葉もあるとおり、住み着いているという意識があるが、タグに住み着いている意識は誰も持っていない。検索に役立つことはあっても、タグではコミュニティが細分化されることもなく、かえってコミュニティが煮詰まっていくのではないかという。

 「fg」では現在、このタグによる多様化をフォーカスを当てようと考えており、タグに住人はいないという考えを、どうやって住人を作るかを考えているそうだ。


■ 広がるSNSに対し、ビジネスプランをどのように持つかが課題
安易な広告や月額課金以外の手法を

 「fg」のビジネスプランとしては、テキストに比べて画像がメインとなるため、データ転送量やサーバーの回線費用が高くなるといったデメリットや、特定のカテゴリが特出してコミュニティが煮詰まっていくといった危機感があるといった内容をはじめ、ビジネス的な課題としては、今後の課題は黒字化、海外展開などを検討しているとのこと。

 エンタースフィアでは先日、fgの姉妹サイトの「cg」を立ちあげており、fgが実物の立体であれば、cgはデジタル3Dデータを投稿するサイトとなる。

 課金モデルでは、安易に広告や月額課金などを行なわず、「cg」に投稿されたモデリングデータをもとに現実で3D化しての販売やデジタルプリントアウトなど、オンラインで制作したものをリアルに結びつけることで、ビジネス的な展開にカを入れていたいという。また、ユーザー間で取引ができるようなシステムを提供し、仲介手数料的なモデルも検討しているとのことだ。

 岡本氏は講演の最後に、OGC 2009で講演されたスクウェア・エニックス×ニフティの「ニコットタウン」や、任天堂×はてななどのコラボレーションを例にあげ、ゲーム業界とネット業界が近づいているのではないかと語り、今年はもっと増えるのではないかと「エンタースフィアもゲーム屋としてWebサービスを行なっていきたい」と語っていた。

講演の最後ではコミュニティ内でできた価値観の多様化を運営側から提示することも大事だと聴講者に唱えていた


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□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bba.or.jp/
□「OGC2008」のホームページ
http://www.bba.or.jp/ogc/2008/
□エンタースフィアのホームページ
http://www.entersphere.co.jp/
□「フィギュアコミュニティサイト fg」のページ
http://www.fg-site.net/
□「3DCGコミュニティサイト cg」のページ
http://www.cg-site.net/

(2009年2月5日)

[Reported by 鬼頭世浪]



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