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★iPhone/iPod touchゲームレビュー★

育成シミュレーションの醍醐味を凝縮
小さな画面の中で自分だけの都市が成長してゆく感動

「Sim City」

  • ジャンル:都市育成シミュレーション
  • 開発元・配信元:エレクトロニック・アーツ
  • 利用料金:900円
  • プラットフォーム:iPhone/iPod touch
  • 配信日:2008年12月15日(配信中)


 定額給付金や消費税増税案、年金問題など、政治に対する議論が激しさを増す昨今。執政者の立場から行政や政治のあり方を見つめてみるのはいかがだろうか。百年に一度と呼ばれる大不況を乗り越えるアイデアが生まれてくるかもしれない。

 iPhone/iPod touch版「Sim City」が2008年12月15日にリリースされた。PCをはじめ、スーパーファミコンやニンテンドーDS、モバイルなど、さまざまなプラットフォームで発売され、根強いファンを持つ人気シリーズだ。プレイしたことはなくとも、その名を聞いたことはあるだろう。

 「Sim City」シリーズは、リアルタイムで進行する都市育成シミュレーションである。プレーヤーは市長となって、街を開発・運営し、大きく発展させることが目標だ。人口を増加させるために、市長として街が直面する様々な問題を解決する力が求められる。

 「Sim City」はシリーズを重ねるごとに新要素が追加され、プレーヤーのできることが増え、より遊び応えのあるゲームへと進化を遂げている。その反面、あまりに内容が高度化・複雑化してしまったため、多くの未経験者に“初心者お断り”というイメージを与えてしまっているのも、残念ながら事実である。

 iPhone/iPod touch版「Sim City」は、PC版「SimCity 3000」をベースに、タッチスクリーンですべての操作ができるインターフェイスに作り変えられたほか、地下鉄や土地の高低などの複雑な要素は取り除いたカスタムバージョンになっている。

 本作を、未経験者が「なんとなく難しそうだから……」という理由で敬遠するのはもったいない。またシリーズの愛好者が「iPhone/iPod touchで『Sim City』を遊んでも大したことはない」と判断するのも早計だ。あらためて本作のシステムを解説しながら、レビューを進めることにする。

【スクリーンショット】
画面をクローズアップすると、街を走る小さな車の姿がきちんと描かれている 本作では、各部門に専門のアドバイザーおり、プレーヤーが何をすべきか丁寧に解説してくれる
丁寧に日本語ローカライズされているのもポイントが高い 画面下を流れるニュースティッカーには、ときおりクスリとするようなジョークも流されている



■ 楽しく暮らせる街を目指して、いざ建設に着手

 タイトル画面の“新規”から、“難易度”や“開始時の日付”、“都市の規模”等を選んでゲームをスタート。難易度は“イージー”だと開始時の資金が豊富に、“ハード”だとわずかになる。“開始時の日付”は、ゲームがスタートする年代のこと。“都市の規模”は、都市を建設できる地域全体の大きさで、“大”か“小”のどちらかを選択する。なお、本作には明確なクリアの条件や、シナリオモードは存在しない。自分が納得できるまで、遊び続けることができる。

 都市の条件を決定し終えると、次は“地形のカスタマイズ”を行なう。地形は自動生成だが、海や川などの位置、水の量、樹木の量などを大まかにコントロールできる。水源は都市の繁栄に欠かせない要素なので、建設しやすいように変更してもいいし、あえて街づくりしにくい地形を選ぶのもいいだろう。

【スクリーンショット】
都市名、市長名を変更できる。ゲームの進行に影響はないが、ゲーム中に呼ばれることがあるので、思い入れのある名前のほうがいい ゲームを始めて遊ぶ場合は“チュートリアル”を選択すると、アドバイザーがゲームの基礎と操作方法を指導してくれる
1度は“入門用都市”で遊ぶことをお勧めする。すでにある程度まで発展している都市を途中からプレイすることによって、都市の成長過程で発生する問題をどうやって解決するかを試せる “ヘルプ”から“ゲームの遊びかた”を選ぶと、本作を遊ぶために必要な情報が記載されている。“チュートリアル”では説明されなかった内容も多いので、プレイ中にわからないことがあれば読むといいだろう


 設定やカスタマイズが終了したら、実際に街を造っていくことになる。先に述べたように都市開発の基本は、住宅・商業・工業地区の配置と、各種インフラの整備。“地区”、“輸送”などの画面左の建設メニューにタッチすると、さらに詳細なメニューがアイコンで表示される。例えば“輸送”メニューにタッチすると、“道路”、“線路”、“空港”などが表示される。ここで“道路”のアイコンにタッチすると、アイテム配置画面に切り替わる。

 アイテムはマップ上の配置したい場所にタッチするだけだ。“道路”や“地区”などのようにサイズが可変のアイテムの場合は“サイズ変更”アイコンをタッチしてスライドすると、大きさを変更できる。

 アイテムを配置する際には、確定のためのチェックボックスにタッチしないかぎりは決定されない。“アイテム移動”アイコンや“サイズ変更”アイコンを使い、納得いくまで何度でも置き直しできるようになっている。おかげでアイテム配置の失敗はほとんどない。慣れてくると、そこそこの精度で思ったところをタッチできるようにもなる。

 ――市長に就任したばかりの私。初仕事ということで、早速ドカーンとでっかい街を作ってみたくなるが、まずは自分の目が行き届く小さなスケールで街づくりを開始した。関西人なら心に刻まれている「小さなことからコツコツと!」という西川きよしのギャグを思い出す。

【スクリーンショット】
“輸送”メニューにタッチすると、さらに細分化されたメニューが表示される 画面右下の緑のチェックボックスをタッチして、アイテムの配置を確定
拡大すると、かなり詳細にグラフィックスが描かれているのがわかる。マップ画面の拡大縮小は、ピンチアウト・ピンチイン(2本の指を離したりつまんだり)で行なう。またダブルタップで、クイックズームになる


 住宅・商業・工業地区を設置して、道路を整備したら、次に必要になるのは電気や水道。“ユーティリティ”メニューから、発電所を選ぶのだが、発電所は種類によって発電能力や設置費用、環境に与える影響などに違いがある。石炭発電所は設置費用に対し発電能力は高めだが、公害が非常に激しい。一方、ソーラー発電所は石炭発電所以下の発電能力しかなく費用も3倍かかるが、環境への被害は一切ない。これらの要素を考えて、最も適切な発電所を建設する。この発電所から各地区に電線を敷くと、電力が供給される。同じように水道も水道施設を設置して、水道管を敷設。これで街が発展していく下地ができた。

 ここまで準備すれば、勝手に各地区に建物が建ち始め、住民が増加し始める。住宅・商業・工業それぞれの地区の需要を表している画面右上の“RCIインジケーター”を見ながら、少しずつ街を拡大していけばいい。

 街に建物が建ち始め、最初はゼロだった人口が徐々に増えていくこの瞬間は、シリーズを象徴する感動的な時間だ。「自分の作り上げた箱庭に人が住んでいるんだな」と実感し、妙な責任感や使命感が芽生えてくる。

 ――何もなかった土地に家や工場が建ち、次第に街として形成されていく様子を眺めていると、市長の私としては誇らしい気分になってくる。「われは神だ! 皆あがめよ!」などと言ってみたくなるのだが、そんなこという支配者は映画でも漫画でもろくな目に合わないので止めておくことにする。

【スクリーンショット】
“ユーティリティ”メニューにタッチし、“発電所”アイコンをタッチするとパネル画面に切り替わる 耐久年数や、現在の発電量などをこまめに確認しよう 時間の進む速度は一時停止を含めて4段階から調節できる



■ 情報を活用して、トラブル続出の都市を立て直せ!

 街を拡大していくと、住民たちは市長に対しさまざまな要求をぶつけてくる。「公害をなくせ」、「犯罪が多いから住みづらい」、「近くに病院がないので暮らしにくい」といった、実際に我々が自治体や政府にぶつけたくなるような要望だ。住民あっての市長としては、ここはできる限り願いにこたえたいところだ。どの地域が警察署や学校、病院を必要としているのかデータを活用して調べ、必要な施設を必要な場所に建てていく。

 しかし、財政という問題がここで立ち上がってくる。施設を建てるのにも、維持するのにも費用がかかるのだ。何でもかんでも住民たちの希望を叶えていくわけにはいかない。今最も街に必要な施設は何なのかを分析し、何を行なって、何をあきらめるのかをじっくり考える作業は本作の醍醐味であり、情報の活用と取捨選択は、街を発展させるための大きなポイントになる。

 ――順調に成長を続けるわが街だが、老人から意見が寄せられた。「街にもっと病院を!」。ふむふむ、それはいかんな。すぐに病院を建てようではないか。資金的に余裕はないが、市民あってのこの街。市民様は神様です。しかし病院を建設すると、続々と新たな要望が上がってくる。勝手ばかり言う神様どもめ、勘弁するがよい。

【スクリーンショット】
ニュースティッカーに市民の陳情が表示されることも。メッセージを直接タッチすれば詳細が読める
市民からの請願は、市長として非常に耳が痛い。時には厳しいお叱りの言葉も頂戴する 「どこの地域の大気汚染がひどいのか」などの情報はマップ上で確認できる グラフで人口や市長の支持率の推移などを確認し、常に街の情報を把握しておくことだ


 街を発展・維持させるためには多くの資金が必要になる。資金の主な収入源は、住民から徴収する税金だ。つまり街が発展すればするほど収入は大きくなる。一方で、住民が増えると様々な施設が必要になり、建設費用や維持するための経費など、支出も増えていく。当然のことではあるが、「収入よりも支出が低く」なるように上手くやりくりしなければ、いずれ財政が破たんしてしまう。

 収入をてっとり早く増やすための手段は、税率を上げること。税率を上げれば、街が現状のままでも収入が多くなる。しかし、あまりに税率が高いと住民は不満をおぼえ、どんどん街から脱出してしまう。現状にふさわしい税率まで上げるのが基本となる。

 支出に関しては、住民サービスに必要な予算をある程度コントロールできる。予算を払い過ぎている部門の予算はどんどんカットしていこう。ただしやり過ぎると、各部門で働く職員たちがやる気をなくして機能がマヒしてしまう。どうしても資金が足りない場合は、一時的に債券を発行し借り入れができる。もちろん利子が発生するので、むやみやたらに行なうものではない。

 財政がマイナスになっても、即ゲームオーバーにならない。だが、最重要施設である発電所が耐久年数を超えたときに、新しい発電所を建設できる資金が用意できなければ、事実上のゲームオーバーといえる。

 ――私は財政問題を解決するため、税率を上昇させ、各部門の予算を縮小させた。素晴らしき英断であると自負していたが、「こんな街には住んでいられん!」とばかりに人口は激減、各部門は「ストライキするぞ!」と徹底抗戦の構え。「収入と支出のバランスをよく考えて」。ああ、このお決まりのフレーズのなんと重きことよ……。

【スクリーンショット】
「ギャンブル合法化」の条例を制定すると、収入が増える代わりに犯罪率などが上がってしまう。非常に悩ましい 住民税、商業税、工業税の各々に税率を設定できる。街の状況を見て、ふさわしい税率を見極める
債券を発行しローンを組む。いざというときのために取っておきたい 6部門の予算を変更する画面。予算が余分な場合は浪費してしまい、市民の不評を買うことに


 時には予想もしないイベントや災害が発生することもある。市長の功績を表彰したプレゼントや、市民の請願などによって、特別な施設を建設できることがある。街にプラス効果だけを与えてくれるものから、大きなデメリットを持つものまで種類は豊富。街の景観にいいアクセントになるので、積極的に配置したい。

 災害の中で最も起こりやすいのは、火災だ。火災は消防署を作ることで被害が大きく広がることを食い止められる。災害は自分の手で起こすこともできるが、UFO襲撃や毒雲発生など、現実ではありえないような大惨事も含まれている。大きく育った街を蹂躙して、破壊欲求を満たすのもよし、あえて災害を起こし復興を目指す“縛り”プレイをするのもいいだろう。

 ――我が都市も財政危機をなんとか乗り越えた。市民からプレゼントされた銅像を街の中央に建てて住民に崇拝させようかと考えていると、火災発生の情報が飛び込んできた。しかも原子力発電所の近くだと言う。もし原発に被害が及べば、周辺が放射能汚染されてしまう。何があろうとも、それだけは絶対に防がねばならん。市民の命を守ることが、市長の役目なのだから。

【スクリーンショット】
火災が発生。消防署の設置が鎮火に大きくかかわる UFOが出現。ランドマークがある場合はまっさきにUFOの攻撃のターゲットになる 軍事基地を建てるように持ちかけられる。街の発展のために承諾すべきか、拒否すべきか?



■ タッチスクリーンゆえの強みと弱点。ゲーム機と遜色ないゲーム性

 多くの人が本作の評価で気になるのは、iPhone/iPod touchのタッチスクリーンで操作に不満がないのかという点だろう。場所の指定や範囲の選択などの操作にちょっとした違和感や面倒な点があると、同じような操作を何度も繰り返すゲームだけにストレスがたまってしまう。この手のシミュレーションゲームにとって、ユーザーインターフェイスは作品そのものを左右しかねない大きなポイントだ。

 本作の操作感覚は筆者の主観でいえば、コンシューマ版のようにコントローラーでカーソルを動かす方法よりも素早く操作でき、かなり快適だ。しかしPCでのマウスとキーボードでの操作と比較すると、どうしても落ちてしまう。私の指先が太短過ぎるのか、思ったところを押すのにひと苦労する。もちろんそのような状況は制作側も想定済みのようで、前述の確定用のチェックボックスなど、iPhone/iPod touchというハードでプレイするために最適化されたシステムが用意されている。

 しかしながら、タッチする自分の指が邪魔になって画面が見づらいのは非常に気になった。これについてはiPhone/iPod touch用タッチペンを使えば、かなり解消されるものと思われる。

 理想の大都市を造るためには、土地や資金のマネジメントと、住民たちの意見・要望をくみ取るデータ分析力、不測の事態へ対応するリスク管理能力が、プレーヤーに要求される。問題を解決するたびにゆっくりと人口が増え、近代的な町並みに変化していくさまを眺める満足感は、ほかのゲームでは味わえない。

 限られたリソースをやりくりする思考の楽しさと、プレーヤーの指示に対する反応を見るワクワク。iPhone/iPod touch版はプラットフォームの持つ“気軽さ”を損なわないよう、複雑すぎる要素は簡略化し、本質や自由度は失わないようにシステム設計されている。本作は、育成型シミュレーションゲームの面白さを純粋に凝縮した作品だ。

 スーパーファミコン版「シムシティ」を初めてプレイしたときに「大人の仲間入りをしたな」と感じた、思春期の自分をふと思い出す。実際に自分が社会人になって初めて見えてきたこともある。「政治や行政の意義」を考えつつ、どっぷりとシミュレーションの楽しさに溺れてみてはいかがだろうか。

(C) 2008 Electronic Arts Inc.

□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.eajapan.co.jp/
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(2009年1月28日)

[Reported by 山科明之進]



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