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Xbox LIVE Arcade「ギャラガ レギオンズ」インタビュー

2008年8月22日 収録

【ギャラガ レギオンズ】

配信中(2008年8月20日)

価格:800マイクロソフトポイント

CEROレーティング:A(全年齢対象)

井口 正氏
 株式会社バンダイナムコゲームスのXbox LIVE Arcade向けタイトル、「パックマン チャンピオンシップ エディション」、そして「ギャラガ レギオンズ」。この2本は、過去のあまりにも有名なタイトルの名を冠してはいるものの、Xbox 360というハードウェアの上に載った、シリーズ最新作、かつ新しいゲーム性を生み出したタイトルだ。その売り上げ、そして評判の高さは読者の方々にも伝わっていることと思う。

 そんな2タイトルを手がけた同社コンテンツ制作本部所属のゲームディレクター・井口 正氏に各タイトルについてお話を伺うことができた。同じスタッフが手がけた2つのタイトル。しかし、その成り立ちの過程はあまりにも対照的なものになっていたようだ。それでは早速インタビューをお届けしよう。


■ 3Dにして、ギャラガの群れが、奥と手前を行き来するゲームにしようと……

「ギャラガ」をベースにしながらも、別のゲーム性を生み出した「ギャラガ レギオンズ」
――そもそもなぜ、今「ギャラガ」を手がけることになったのか? というところから話が聞きたいのですが?

● 作り手目線で考えると、リバイバルブームのような“27年周期”や“30年周期”といった法則のようなものがありますが、時期的に、僕達“30代の大人が子供の頃に楽しんだゲーム”というのを作れる時代になったのかなと思います。売り手目線で考えると、市場環境からは、“とにかく北米”なんですね。アメリカが8割、7割の市場なので。全体の市場規模からすると“アメリカで売れるゲーム”が一押しという形になります。そうなるとナムコのタイトルは何よりも「パックマン」と「ギャラガ」の2つが圧倒的に強いです。

――それは意外ですね。「ゼビウス」じゃないんですね。

● 1980年代初期のメジャーなアーケードゲームと言っても、実際にアメリカ市場で、誰もが知っている人気タイトルとなると、意外と絞られます。日本で「インベーダー」に相当するゲームが「パックマン」です。「ゼビウス」は、日本では、業務用でもファミコンでも大ヒットしたんですが、アメリカではそこまで認知されていませんね。

――Xbox LIVE Arcadeへの参入も「ギャラガ」と「パックマン」でしたね。

● 移植タイトルとして、まずは「ギャラガ」、次に「パックマン」の順にリリースしました。やはりこれらの2タイトルは、その他の移植タイトルとは売り上げペースが違いました。今回、ほぼ同じチームで「パックマン チャンピオンシップ エディション(以下パックマンC.E.)」と「ギャラガ レギオンズ」を作らせてもらいましたが、もともとは「パックマンC.E.」より先に「ギャラガ」のリメイク企画を検討していました。たまたま、先に「パックマン」の世界大会イベントの話をマイクロソフトさんから頂いたので、“じゃあ『パックマン』をやりましょう”と。それがうまくいったので、その流れで次は「ギャラガ」という感じになりました。

――いろいろな流れがあって「ギャラガ」だったわけですね。

● 「ギャラガ」は個人的にも因縁があります。会社に入って一番最初の仕事が「ギャラガ」のリメイク担当でしたから。1995年にリリースされた「ナムコクラシックコレクション」という、オリジナル3作品、そのアレンジ版が3作品づつ収録されているという業務用の仕事をやらせてもらいました。その際「ギャラガアレンジメント」のデータ作成を担当し、その仕事がとても楽しかったことが印象に残っています。「ギャラガアレンジメント」に続き、「パックマンアレンジメント」というリメイクを作りました。その後は「ソウル」シリーズに参加したため、リメイク仕事からはすっかり離れていましたが、それから7〜8年後、2001年頃に北米でリリースされた「ナムコミュージアム」が凄く売れたという話を聞きました。それも新人の頃に担当した2作品が大きく扱われていると。「そうか、ああいうのが北米で売れるのか」と思って、それ以後、また何かできないかなと画策していました。

――子供の頃に遊んで印象に残っていたとか?

● ファミコンで「ギャラガ」や「ギャラクシアン」も遊びましたが、ハマったのは「ゼビウス」や「スーパーマリオ」ですね。私は35歳なので、いわゆるファミコン世代ですけど、「ギャラガ」に特別の思い入れはなかったです。意識するようになったのは「ナムコクラシックコレクション」に関わって以後ですね。「ギャラガ」や「パックマン」に関係する仕事が何度かあったので、その都度いろいろとイメージが膨らんでいるということもありましたね。

――Xbox 360というパフォーマンス的にもかなり高いハードで作り直すということになると、ゲーム内容的に詰め込みすぎというか、力が入りすぎたりしませんでしたか?

● これが本当に難しかったですね。予算の規模が決まってるから、あまり凝ったものを作っても、売れる数に限界があるじゃないですか。ただ、「ギャラガ レギオンズ」に関しては、前作の「パックマンC.E.」という上手くいったタイトルが下地にあったからできたということがありますね。「パックマンC.E.」は、実製作期間が約4カ月、コアスタッフ5名の小規模のプロジェクトでしたが、リリース後も、社内外の評判も良く、海外のイベントも成功し、売り上げ面でも成果を挙げました。個人的にも、いろいろな経験をさせてもらった作品です。

 実は「パックマンC.E.」自体は去年(2007年)の6月6日にリリースされたのですが、その3カ月前にはプロジェクトは半ば終わっていました。以降はずっと「ギャラガ レギオンズ」の企画を練ってましたね。だから、完成までは足掛け1年半以上かかっています。

 しかし、この時代に縦画面のシューティングゲームのリメイクというのは難しいですよ。そもそも縦方向に弾を撃つゲームを、魅力を損なわずに16:9の横画面に持ってくること自体、ハンデがあるアプローチですから。無難な手法としては、ゲーム画面を縦横を断ち切って狭くするしかないですよね。左右にデッドスペースを作るということになりますが、「パックマンC.E.」と同様、それは嫌だから、当初は3Dにしてギャラガの群れが、奥と手前を行き来するゲームにしようと考えていました。


■ 最終的に思惑の全く逆、「新アイディア」は、ほぼ全て盛り込む方向で

特定の敵を撃つことで、複数の敵が誘爆する
――現状とは違うアプローチですね。

● 最初は、開発スタッフも前向きに検討していましたが、“やはり短期間では検証が難しい”ということで、早い段階で2Dに戻しました。他に、横画面でとにかく「ギャラガをいっぱい出す」という構想も最初からありました。しかし、合意できていたのはそのくらいで、それ以外の要素について開発スタッフ間のコンセンスがしっかりと得られてないまま作業がスタートしてしまいました。

 今思うと非常にまずい立ち上がりですよね。制約の多かった「パックマンC.E.」で、現場の意向を優先して導入したアイディアが結果的に上手く機能した、という成功体験も関係していたかもしれません。とにかく、検証過程では、いろんなアイディアがみんなから提案され、その都度、取捨選択していたのですが、時々、自分としてはNG、もしくは優先度低めのアイディアが先にゲームに実装されたりするんですよ。

――あまり良い流れではないですね。

● 初期の企画コンセプトで、合意していたことの1つは「大量のギャラガ」を出すことでした。「ギャラガアレンジメント」の時から、ギャラガの数がもっと増えれば、迫力が増して絶対に面白くなるだろうという確信がありました。でも、ある日、自機を画面全体で動かしたいと複数のスタッフから提案されて……。この辺りから雲行きが怪しくなっていきました。

 そもそもギャラガのような固定シューティングは基本的に敵が「上から攻めてくる」ことが前提です。絶対に自機とぶつからないスペースが必要なんです。もし自機の周囲に高速で動く群れが発生したら、どうしようもない。ゲーム性が崩壊しますからね。だから「自機の移動範囲は必ず下だ」という前提でいろいろ仕様を書いていたんです。でもある日、自機は上にも動けるべきだというか、もう画面全体を自由に動き回る自機が……。

――もうできていたんですね。

● 参ったなと。これでは「ギャラガ」ではなく、「ギャプラス」だと。でも確かにこれはこれで面白かった。「ギャプラス」レベルの移動範囲(画面の下半分程度)ぐらいなら技術検証する価値があるかもと考え直し、解決策として出現を予測できる「軌跡エフェクト」を提案してみました。スタッフはみんな凄腕なので、数日であの美しい軌跡ができてました。確かに画面のスピード感が高まり、見栄えが凄く良くなった。

 昔「ギャラガ」のアレンジ版を作った時の経験で、オリジナル「ギャラガ」の美しい軌道を再現する手法はわかっていました。なので、そういった綺麗な動きを軌跡として表示したら絶対に面白い。それにゲーム性にも重要な意味を持つ演出になる。「これはもうやるしかないだろうな」と腹をくくって動き出しました。

本作では、まずギャラガ(敵)敵の軌道が予告表示されてから、実際に編隊が出現する


――自機の操作についてはどう決まっていったんですか?

常に2つ存在する固定砲台オプション「サテリテ」。左右別々に4方向に射撃方向と設置位置を指定できる
● 当初のコンセプトでは、自機の操作はできるだけシンプルすることでした。これは「パックマンC.E.」でも同じで、シンプルにレバー1本で勝負したことがいい結果に結びついたと考えていた為、重要なポイントでした。あとLIVE Arcadeはカジュアルなゲームが売れていました。だからそういう流れで「ギャラガ」もカジュアルに操作が楽しめるリメイクにしようと考えていました。

 当然、「サテリテ(固定砲台オプション)」は提案されるまで全く想定外でしたし、ショットもオリジナル版と同じく1ボタンで撃てるのは「同時に2発まで」と考えていました。過去の仕事でそのように監修したこともありましたし。しかし、今回は大量のギャラガを上手く捌けるようにしたい。これを同時に解決する仕掛けが必要だろうということで「誘爆ボス」の導入を決めました。

 だからこの時までは、群れの中にいるボス1匹を狙い撃ちすると、ドカーンと爆発するという感じのゲームだったんです。当時は、2008年3月の〆切のスケジュールで動いていたので(実際のリリースは2008年8月)から、「大量のギャラガの群れ」、「予測軌跡エフェクト」と、今言った「誘爆ボス」の仕様で、このゲームはOKかなと思っていました。

――なるほど。

● プロトタイプは、去年の今頃(2007年8月頃)にはできていました。自機が全体を動き、敵が派手に動いて、ラインが出て、敵を撃つと誘爆する。傍目から見ると、非常に楽しげな「ギャラガ」ができてるように見えたそうです。後は「ギャラガ」っぽい仕様が入れば完成だと思われていましたが、実際は完成から程遠い状態でした。というのも、技術検証の時点で各スタッフから提案された「新提案」の取り扱いについて全く意見がまとまらず、ゲームの全体像が固まらないと着手不可能な作業が、山積み状態だったからです。

 「さすがにこれはまずい」と。とにかく、検証段階で試したアイディアの中で「ギャラガ」からかけ離れた要素、具体的には自機の稼動範囲や、サテリテの見直しを、11月頃にスタッフに切り出しました。しかしこの話がこじれにこじれ、最終的に思惑の全く逆、「新アイディア」は、ほぼ全て盛り込む方向でまとめることになりました。

――大変なプロジェクトだったようですね。

● それからはひたすらパズル作業。断片的なアイデアを、ゲームの中へどうやって落とし込めばいいのか、ひたすら考えました。 「ギャラガ レギオンズ」では、各エリアの冒頭部分がもっとも「ギャラガ」らしい部分と言えます。この部分は「ギャラガ」のオリジナルデータを、参考にしているので。

 ただ、それ以外は1から作らざるを得ず、スケジュールも厳しい。「さてどうしよう……」となったとき、スタッフと協議して、新要素にオリジナルのエッセンスを盛り込むような形でどんどん整備を進めました。例えば、プログラマーのほうから、「サテリテ」のショットは「『ギャラガ』みたいに、近づくと連射が上がるというのはどう?」と言われて、なるほど、とか。

 その後、何とか形が見えてきたところで、やっとデータを作り始めました。精神的にはそこまでが本当にしんどかったですね。今度はひたすら1人で敵のデータ作成でした。路線変更の影響は想像以上で、それまでの作り置きの素材も半分以上作り直しになりました。その一方で、「トラクタービーム」や「合体パワーアップ」の仕様も決めなければならない。

――アイデアはあったんですか?

ブラックホールに撃ち込むと、敵を吸い込む。これが従来のトラクタービームの代わりとなっている
● トラクタービームの演出は、当初からブラックホールみたいなものをやろうとスタッフと話していました。今の感覚でオリジナル「ギャラガ」のトラクタービームを再現するなら、ブラックホールのように引き寄せられたり、それに自機が抵抗したりできれば面白いだろうと、開発スタッフ間で盛り上がっていましたね。

 しかし、検証段階で実際に試してみると、吸い込まれる過程の自機はコントロールできない、さらに画面のあらゆる所から敵が飛んでる過程で自機を操作するのは難しすぎて面白くない。開発スケジュール期間もないし、ギャラガらしさを増やしたいう思いもあったので、オリジナル「ギャラガ」の演出に戻ろうとスタッフに提案したのですが、これも受け入れられず、この作業は一旦凍結となりました。

――なかなかまとまりませんね。

● とりあえず「最悪無くてもいいや」と思いつつ、既に決まっている仕様のみでデータ作成を進めました。しかし、どうにもゲームとしてこれだけでは単調でした。派手な「チャレンジングステージ」がひたすら続く展開になって「こりゃ参ったな」と。電車道があって、そこを敵が通る。そこに対してサテリテを置くという構造自体面白いが、さすがにこれだけでは、勝ちパターンを1個決めると、それでゲーム攻略が完成してしまいます。

――そうですね。出現地点に一番近いところへ密着して置けば、問題はないですよね。

● 今でもそういう要素はかなり多いですけどね。でも「さすがにそれだけはまずいだろう」となって、ギャラガの動きに「ホーミング機能」を追加しました。要は自機を追いかける動きです。これに関しても“『Geometry Wars: Retro Evolved(以下Geometry Wars)』みたいになって独自性が失われる”と反対されました。その頃の「サテリテ」は、右スティックでいろいろな方向に弾を撃てましたからね。

――8方向ですか?

● そう、あの当時のサテリテは今よりもさらに多彩な攻撃ができて、これはこれで面白かったと思いますが、操作がかなり難しく、一般の人はうまく操作できないだろうなと。この局面も話がまとまりそうもなかったので、プロデューサーと相談し、「鶴の一声」で4方向で決着。スケジュールの延長も認めてもらいました。

 しかし、今度はプロデューサーからサテリテと「合体」するボタンを入れるように強い要望が……。それまで、なるべくボタンを増やさないようにしていたのですが、初心者にとっては辛いだろうという指摘を受けまして。シンプルな操作のはずがいつの間にか、左右のスティック2本でボタンでさらに2つになるのか……と。でも、指摘自体は正しいし、この状況をうまく収めるにはこれが1番いいだろうなと。またそこで描いた絵が崩れてしまいましたが……。

――展開が読めませんね。

● 三谷幸喜さんの「ラジオの時間」という映画がありましたが、あの気分でしたね。「当初描いていたゴールに近づこうとする度に別の予想外の話が加わって結末が見えなくなる」という感じで。以後は、“『ギャラガ』の魅力をできるだけ残した『新しいシューティング』を完成させよう”と考えを改めました。それでやっと状況が進んでいった気がします。


■ 過剰な攻撃には過剰な敵をぶつける、全部「群れ」に収束

ブラックホールに吸い込まれた敵が反撃する「レギオンアタック」
――「トラクタービーム」や「合体パワーアップ」についてはどうなりましたか?

● まず、「トラクタービーム」という敵の攻撃要素をばっさりカットしました。合体パワーアップの発生条件も、シンプルに「キャプチャーボス破壊」で。これを破壊したら、現状のように自機ではなく、周囲の全ての敵を吸収し、自機と合体。そうして一斉に反撃する。要はこれも「ギャプラス」なんですが、既に雛型ができていたので仕様そのものは間をおかずに入りました。

 しかし、バランス調整は非常に苦労しました。合体パワーアップした際の攻撃(以下、レギオンアタック)が強すぎ、無理に組み込んでも、展開が大味になって面白くないと。どうしようとなった時、以前、ボツにしていた「大量すぎて撃ちきれない敵の群れ」のデータがあったのを思い出しました。これを「レギオンアタック」にぶつければ……。そこでやっとパズルが解けたような、「ゲームの全体像」みたいなものが見えてきました。過剰な攻撃には過剰な敵をぶつける、全部「群れ」という要素に収束させてしまおうということです。

 最初から、敵をいっぱい出すことは決まっていましたし、画面中から敵が湧き出すという絵は、凄くイケそうだなと。とにかく「群れ」、何かあったら全部「群れ」だと。「群れ対群れ」という形でバランスさせれば、当初からそれを考えていたような素晴らしい形に……素晴らしい形かは知りませんが、それっぽい形に収束させて今の形になりました。

――ステージ構成についてはどうなったんですか?

● 最終的に5つのエリア、その中で各4つのレベルになりましたが、各レベル毎にコンセプトが異なります。先ず「ギャラガ」らしさを重視した敵はレベル1とレベル3に入れます。これだけでは単調で厳しいのでエリア1の終盤で「パワーアップ」の機会を与え、「レギオンアタック」でのプレイが楽しめるレベル2を入れました。

 レベル2は、先ほど触れた「群れ対群れ」が売り物です。これでぐっと展開に幅が生まれたのですがまだ、物足りないですよね。やっぱり締めにボスは必要だろうという話になりました。本当はもっとボスらしいギミックを多用したかったのですが、もはや状況的に無理。そこで、やはり「群れ」を活用しました。試行錯誤の中で“画面全体にバーッと広がる敵の群れの感覚をギュッと縮めて、それぞれのギャラガを細胞に見立て、そこにコアを加えると、なんか生き物っぽくみえなくもないな”という形で自分なりに納得して、それらしいボスデータを工夫して作りました。

 こんな感じで、何とかゲーム内のデータ仕様が1エリア分揃ったのが2008年の3月ぐらいですね。あとはひたすらデータを量産するために休みなしで作り続けて、6月で全ての帳尻を合わせ、今に至るという状態です。とにかくゲームが完成してくれたことと、無事リリースできて本当によかったな、というのが発売から1日経過した今の心境ですね。

――なるほど。

● とりあえず、思いついた斬新なアイデアをいっぱい出して、「全部群れの中に放り込んじゃえ」みたいな形でゲームになったかなという感じです。だから結果的にですが、当初考えていたものよりも、要素が少ないためか、より統一感が出て、予想以上にスタイリッシュな感じになりました。とにかく、いろんな方向から突っ込まれたアイデアを現実に掏り合わせる、それをひたすらやった感じですね。だからまったく余分なものがないです。削れるものは全部削ってしまいましたからね。これはいいことか悪いことかわかりませんが、キーコンフィグがありませんね。普通入れると思いますが。

――そういえばそうですね。

● 入れることによって不確定な要素もありますし、スケジュールが無理だというのもありした。それでも全てスタッフと2カ月以上の議論を経て決めています。また、コンティニューを入れるか入れないかもさんざん揉めましたね。入れられるどうかでなく、必要か、不要か判断で。それぞれの取り決めに関して数カ月の長丁場を経てまとまった結論なので、開発末期にいまさらそれを蒸し返す状況ではなかったんです。そうやって、作業をしていたら、いつのまにか敵のキャラが4万匹越えていたと。つまり後付です、完全に。「4万匹作ろう」ではなく、とにかく間を持たせるために群れをどんどん入れていったらこうなった。

 本来は、企画として、全体をパッケージングする青写真を作って、それに骨組みを作っていくという作り方が普通でしょう。「パックマンC.E.」は、それが計算通りバッチリはまった感じで完成した作品でした。ある意味理想的ですね。一方「ギャラガ レギオンズ」はまったく逆。同じチーム、同じ人間が作ったとは思えないぐらい、想定外の連続を経て完成した感じです。本当に「群れ」と言うコンセプトには助けられましたが、「群れ」の話は最初からあったにしても、今の「群れ」とは全然重要性が違いますからね。

 ここまで話して“なんてむちゃくちゃな現場だったんだ”と思いますが、僕もその一員ですからね。つまり、今まで話してきたことは全て「ディレクター」目線の話なんですが、同時に担当した「ゲームデザイン」スタッフとしての目線で言うと、自分自身も相当やっかいなスタッフだったんです。他のスタッフから見て「データ作業」でやって欲しくない仕様を、どんどん入れてしまうわけです。当初は「こんなことはできない、無理」と言っていたことを僕がバンバン入れるものですから、「なら俺はもっと入れる」みたいな。どんどん削るのではなく、積む方向に加速して行くわけです。

――お互いに俺理論が追加されていくと。

● このノリは過去にも経験がありました。開発過程でデータ構成をまるまるひっくり返すことも経験しました。これは傍目からみると非常に無駄、かつリスキーです。せっかく作ったリソースをゼロにして、そこからもう1回構築し直すので、下手をすると当初のものよりも完成度が下がる危険性さえあります。開発コストも膨れ上がります。これを僕は何度か体験しました。現場は凄いカオスの状況になってしまうというか。

 でも、そういった現場レベルでぶつかりあって試行錯誤を繰り返した作品ほど、なんか長持ちしている気がします。例えシリーズ化に成功していなくても、そこで培われたアイディアや技術ノウハウが今もそこかしこに活かされているというか……。

 現在のようにチームの規模が大きくなると、摩擦を生む連中が一番ヤバイわけです。トラブルメーカーですから。3D化する以前の業務用開発チームといえば、せいぜい5〜10人規模だったので、意見の衝突やちゃぶ台返しが起きたとしても、その中でそれぞれ融通を利かせて、何とか帳尻が合わせられました。例えスケジュールが伸びても、業界自体の景気がよかったので、ここで取り戻すからいいやと、贅沢な作り方も大目に見られていた時代だったと思います。

 前作の「パックマンC.E」、そして今回の「ギャラガレギオンズ」ではそういった一昔前のカオスな開発環境が許容された、ある意味ラッキーなプロジェクトだったのかもしれません。コアスタッフも5〜6人ですし。このぐらいの人数で意見をぶつけ合うと、本当にムカついて仕方がない。そうでありながらも、同じぐらいの情熱、熱量でぶつかり合っていくと、「何か」が残っているわけです。

 それが何なのかはその都度違うでしょうし。必ずしも世間と波長が合うとも限りません。でも、そういう雰囲気を持つゲームはなぜか熱狂的なファンがついてくれるんです。そういったファンが火付け役になってブレイクするか、さもなくばカルトゲームにはなる、といった感じですよね。「過剰なパワー」同士のぶつかり合いでできあがったものに共通する魅力みたいなものを含んでいるのではないかと思います。

――そこから生まれたものが、ユーザーにとっても大切なものにはなっていると思いたいですよね。

幾何学的にも見える敵の群れ
● 小規模チームなんで、正直大きいプロジェクトよりは、1カ月延びたとしてもお金はかかってないですが、回し方としては非常にマズイ回し方をしてしまったかなという、凄い反省点がありながら、「パックマンC.E.」よりもある意味「変なものができた」という思いはあります。この変なものは、もしかしたらあんまり他にはないものなのかもしれない。例えば、まったく“こんなのは嫌だ”という人もいるけれど、“これは滅茶苦茶いい”と言う人も出るのではないかという予感はしていまして……。

 前回の「パックマンC.E.」のときは、そのリメイクの手法に関して、プレーヤーの反応が一方向しかなかったので、これは逆に僕は怖かったです。絶賛する人の裏に無関心な人も大量にいるんじゃないかと……アンチでもいいから少しでも関心を持ってくれた方が大事ですから。

 今回の「ギャラガ レギオンズ」は開発途中で迷走したものの、最終的には“ゲームを面白くするポイントは、一通り回収したぞ”という自負はありますね。とりあえず「群れ」に突っ込めみたいな。「群れ」はキッチリ面白くしましたよというところです。だから今言えるのは、「パックマンC.E.」とスタッフも同じだし、同じLIVE Arcadeっていう市場だし、たぶん似たような目線で評価をされると思いますが、作り方はまったくの逆だってことです。

 それと、シューティングを手がけた途端、“なんでこんなにスタッフの人格が変わるのか”と。“シューティングってこえー”みたいな。これをやる前までは、結構、無邪気に考えてましたね。“じゃあ次は『ゼビウス』だ”なんて言ってた時期があります。いつか作りたいと思ってはいますが、正直、今の状況ではとても作れないですね。昔のものを復刻するというのは、絶対に100%評価されることがありえないじゃないですか。

――ありえないですね。

● オリジナルを知っているその人達を相手にしているのに、その人達にとっては、たぶんものすごく嫌なものができあがる可能性が高いという意味で、リメイクはすごくリスキーですよ。でも、一定以上間が空きすぎると喉が乾いて無性に欲しくなる。今回は、たまたまそういう流れにはまったのかなという気がします。シューティングというのは、たぶん1980年代の末期ぐらいで、ほとんど進化が止まっていて、その後、弾幕シューティングが出て、それだけで一辺になってしまうと。むしろ、同人ゲームのほうが盛り上がっている状況ですからね。

――そうですね。

● 今の時代に大手メーカーで正々堂々とシューティングを作れるなんて、結果的には美味しいお仕事をさせてもらったかなと。これで売れてくれればいいのですが……。いいか悪いかは微妙ですけど、現場まかせというか、自由な会社というか、未来を思考する熱意を持ったクリエイター集団みたいなところがまだこの会社に残っていたからできたのかなと今思いますね。会社がいろいろ変わっていくと、カルチャーが変わってきますから、場合によってはカルチャーがどんどん失われていくことがあります。そうなった後で、30年前のゲームを復刻させることというのは、教科書でしか見たことのないようなゲームを作るようなものだと思います。実際考えてみると変な話じゃないですか。

 でも、何とか僕達の世代でそれができたので良かったかなと。またこれが結果、後10年、20年でも「ナムコミュージアム」で出せれば、あるいは、またそこで復刻してもらう系統図の中に、「パックマン」中に「パックマンC.E.」、「ギャラガ」に「ギャラガ レギオンズ」のような、そういう形で残ってくれたらすごく嬉しいと思います。そしていつかこれも「ギャラガ」っていう名前で定着したら面白いなと。みんな「ギャプラス」と言ってますけど。でもやっぱりパワーアップがこれで自機がこれだけ上下に移動できたら「ギャプラス」だよね。

――怒る人がいたらそこだと思います。

● 「ギャラガ」としてのイメージを捉えると確かに怒る人がいても変ではありません。それは「ギャラガ」というゲームがまだそれだけ愛されている証拠だと思います。体験版や、プレイ動画を見ると、基本的に高評価。でも遊んでみると「ギャラガ」じゃないと怒る人が結構居た。「ギャラガ」に思い入れがある人がまだこれだけいる。「ギャラガ」はまだ現役なんだなと思いましたね。

――「ギャラガ」なのに、撃ち負けるのには驚きましたね。それが一番違和感に繋がる気もしますが。

● 僕もビックリしましたよ。なんでこうなったのかなと。半年前のバージョンを見せたいですね。でも今はそれが逆に面白いのかなという気がしていますね。

――これだけ出てるわけだから、まあ「しかたがないか」みたいな。

● 自機があれだけ強いから大丈夫でしょ、というところでしょうか。

 「ギャラガ レギオンズ」、前作の「パックマンC.E.」もそうですけれど、僕が好む調整をしていくと、どうしてもテンションが加熱するようなゲームになってしまう。スタートから、最高のテンションになる局面を結び付けていくという構成にしているので、ハイテンションなまま10分以上やるとみんな燃えつきてしまうんです。だから、どのエリアも最高に熱い5分になるように調整してます。本当は7分がベストですけど、5分で作る場合、その中ですごく気持ちよくする。多少辛くなっても5分だと完全に息切れてゼェーゼェー言う手前で終わります。「パックマンC.E.」では、それが上手くいったとは思います。

 それにしても「Geometry Wars」も結果的に因縁深くなりました。「パックマンC.E.」では、海外のサイトでは「Geometry Wars」と比較して「無限モードがないのはダメ」だと、レビュアーに評価点を下げられたことがあったんですが、最新作の「Geometry Wars: Retro Evolved 2」では、最初のモードが時間制限つきで、何か「パックマンC.E.」に似てるなと思いました。偶然かもしれないけれど、何か影響しあっているように感じられて面白いですね。ただ、こんなに近い間隔でリリースされるとはまったくの想定外でしたけど。もし、「Geometry Wars: Retro Evolved 2」のファンの方がいたら、是非、「ギャラガ レギオンズ」もチェックして頂きたいかなと思っています。

――そうですよね。本日はありがとうございました。

(C)1981-2008 NBGI

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□製品情報
http://galagalegions.namco-ch.net/
□関連情報
【2008年8月8日】バンダイナムコ、Xbox LIVE「Galaga Legions」8月20日配信開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080808/gl.htm
【2008年7月19日】E3 Media & Business Summit 2008現地レポート
Microsoftブースレポート
Xbox LIVE ARCADEの2つのSTGタイトルに注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080719/e3la.htm

(2009年1月6日)

[Reported by 佐伯憲司]



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