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プロペ・中裕司氏インタビュー −後編−
「レッツキャッチ」ができるまで
そしてゲーム作りについて様々な意見を聞く

12月4日 収録

【レッツタップ】
12月18日 発売

価格:5,040円

CEROレーティング:A (全年齢対象)

【レッツキャッチ】
12月16日 配信開始

価格:1,000 Wiiポイント (1,000円相当)

CEROレーティング:A (全年齢対象)

 株式会社セガと株式会社プロペは、12月18日にWii用タップアクション「レッツタップ」を発売、それに先駆け12月16日からWiiウェア用体感スポーツ「レッツキャッチ」の配信を開始した。両タイトルともWiiリモコンの特性を活かしたタイトルとなっておりそれぞれ特徴的な内容となっている。

 前半では「レッツタップ」について集中的に伺ったが、後半では「レッツキャッチ」について伺うと同時に、セガ独立からプロペの設立、そしてゲーム作りについて様々な重要な意見を頂いた。


■ 「レッツキャッチ」は投げ手と受け手の心の動きが面白い!

「レッツキャッチ」
―― もうひとつ「レッツキャッチ」がありますが、これのキッカケは?

 「レッツキャッチ」自体は、Wiiリモコンの新しい使い方の形みたいなものを考えていたときに思いついたものなんですよ。当時、セガがダーツバーを経営しだした頃で、そのおかげで小口(久雄氏:現セガ取締役)さんにダーツバーに連れていってもらって、ダーツを教えられたんです。それでダーツが凄く好きになって、自宅にダーツの機械を置いたくらいなんです。で、プロペを作って、プロペのみんなでダーツやってて。「こういうの作ろうぜ」って。Wiiで「ダーツ」を作ってたんですよ。わりとそれっぽく出来たんです。最終的に出してないんですけど。

 そのときに「こうやってつかんで投げるという動作が面白いよね」という話が出たんです。ただ、あんまり「投げる」ということ自体がWiiのゲーム化という点で難しい側面もあったんです。「だったら、捕るほうがいいんじゃないか?」という話になったんですね。「つかむといえば、やっぱりキャッチボールだよね」という話になって。

 ボールを投げるじゃないですか。人に投げたときに、ちゃんと捕ってもらえるといいんですが、相手に後逸されると「その人が下手で落としてしまった」のか、それとも「自分が投げたボールが悪かったから落としてしまった」のかという心の葛藤がありますよね? その瞬間に、わりと自分がいい球を投げたにも関わらず、相手が落としたときに……基本的に仲がいいほど、落とした人じゃなくて投げた人が「ゴメン、ゴメン」って言んです。というところが「あぁ、キャッチボールの心の動きは、凄くいいなぁ」と思って、これをゲームにしようっていうのが、キャッチボールをゲーム化していった始まりなんです。

 キャッチボールって、ただ投げ合ってるんじゃなくて、人と人とのコミュニケーションが凄くあるんです。後逸したときに動く心の具合とか、投げたときの強さが伝わってきたりとか、その間に「最近どう?」とか話をする感じですとか、人と人とのコミュニケーションのなかにひとつのボールが行き来することによって、心の動きが生じる。凄く面白いなぁと。

 僕は別に野球もしないし、TV中継も見ないし、キャッチボールもしない人間なのですが、ゲームを作る人間として「ゲームで人の心が動くものを作りたい」というのが昔からあるんです。そういうのから生まれたのが「ナイツ」というゲームだったりするんです。わりとそういったところから、ゲーム作りにチャレンジしているケースって結構あるんです。「サンバDEアミーゴ!」なんかも、実はそういうチャレンジから作ったりしているんです。

 元々はダーツみたいなところから、Wiiリモコンの捕り方というところの発想に移り、「キャッチボールの心の動きが凄く面白いね」という所に発展しました。そこで、作っていって「キャッチ」するところに特化して考えると……「何kmまで捕れるんだ?」という人間の限界までいくみたいな所に発想が行ったんです。ただのゲーム機なのに、リアルなものの計測みたいなものがシッカリできる。Wii Fitで「体重が量れます」というリアルな繋がりと同じで、ホームベースからマウンドまでの距離 (18.44m) とピッタリ同じで、そこで捕っていくいう遊びを考え付きました。

 たぶん、キャッチボールっていうだけでは、みなさんあまり興味を持たないだろうと思うけど、そこで何か……「人類の限界はどの辺まで?」みたいな面白さがあれば、それだけでも十分やってみたいと思えるんじゃないか。そこがキッカケで、キャッチボールの面白さに触れてほしいなと思って作ったのが「レッツキャッチ」なんですね。

 作っていくなかで、意外と「投げる」というところの操作もうまくできたので「ナイントライアル」というモード (ボールを投げて数字の書かれたパネルを当てて落としていく) も入れてみました。社内で細かくデータ取りをしたおかげで、かなり精度が高められたと思います。そのおかげで「何枚早く抜けるのか」というスピードを競えるような遊びを入れることができました。これ相当面白いですよ!

―― うまいこと捕れた瞬間の「パシッ!」という音が気持ちいいですね。

 そうですね。かなり精度を高められたんですよ。Wiiリモコンの角度をデータとして読んで、そこからの流れで投げるところもうまく作り上げられた。普通にWiiリモコン側で思った投げ方で目的としたところに当てられるという遊びが実現できました。その点では対戦も面白いです。1,000円ですが、遊びとしてはかなり楽しいので、みんなに遊んでもらいたいと思うんです。

―― ちなみに、こちらが配信タイトルなのは、何か意味があるのでしょうか?

 実は、元々「レッツタップ」も「レッツキャッチ」もWiiウェアでいいなと思っていたんです。ですが、「レッツタップ」のほうは、その面白さをセガさんとか任天堂さんに感じていただいて、試作段階で「パッケージでいけるんじゃないのか?」というお話をいただけたので、「じゃぁパッケージで売れるようにちゃんと作りこんでいこう」ということになったんです。

 ですが、別に僕は「レッツキャッチ」もパッケージでも全然いいんじゃないかというほどよくできていると思うんです。ちゃんとMiiも使えますし。「ナイントライアル」でも自在にパネルを抜けるようになってくると、結構楽しいですよ。

 Wiiリモコンの“精度がいい”事をきちんとゲームで拾っているから、自分の狙ったパネルに投げることができて、それが楽しいんですね。今、Wiiのゲームを色々やると、かなりアバウトなものが多いと思うんです。それは、狙ったところに当てることができるという精度がうまく出せていないからだと思うのです。それを、プロペで開発したゲームは、両方ともうまく精度が出せた。そこが僕は凄く良かったなぁと思います。色々なゲームでセンサーのデータをどう利用するか、みなさんチャレンジされていますが、あまり調整がうまくいっていないと思うんです。

収録されている「スピードキャッチ」は、凄く楽しいですよ。実は僕、このゲームのなかで一番面白くできたなぁと思ってたんです。でも、「スピードキャッチ」がベストだと思ってたんですけど、最近「ナイントライアル」の1Pモードが一番面白くなってきてしまいました(笑)。このモードは、向こうから戻ってくるボールをうまくキャッチできると、次に投げるボールが有利になるんです。具体的には、次に投げた時、1投で2枚を一度に打ち抜く「2枚抜き」の判定が広がっていて、高確率で「2枚抜き」しやすくなるという。

 人と対戦すると、うまくなるとすっごくうれしいし、失敗すると悔しいし。CPUとやっても、すごくうまくそこら辺の感覚が表現できてるなと思います。この手のスポーツもののなかでも、そこの具合がうまく出せたかなぁと思います。

【レッツキャッチ】
Wiiウェアで配信されている「レッツキャッチ」。キャッチボールによって心が通じ合う瞬間がある……と言うところからゲーム化に進展。投げるのが難しいなら捕ればいいということでキャッチボールをゲーム化。タイミングよく捕った瞬間の「パシッ!」という音が気持ちいい。数字の描かれたパネルを当てていく「ナイントライアル」では、難しくなってくると2枚抜きをきちんと決めなければいけないのだという



■ 中裕司氏「ゲーム作りの現場に帰ってきた」

―― ひととおりゲームのお話をうかがって、そこに付随する話なのですが……セガから独立してプロペを設立して、ゲーム作りに“違い”はありますか?

 昔はプログラマーをやっていたとき……僕がプログラマーをやっていたのは「ナイツ」までなのですが、プログラムをやっていると、自分でバランス調整から何からずーっと細かいところまで1日中ゲーム作りに集中できていたんですね。それで満足のいくゲームを作り上げることができていたんですが、だんだん上に立っていくと、本当に細かいところまでは見られなくなってきていたんですね。プログラムもできずに、何作品も見なければいけない。偉くなると、偉い仕事も一杯あって。

 とにかくこういう会社を作らさせていただいて、今回の2タイトルでは本当に細かいところまで調整……バランス取りからチェックまで全部やれた。そういう意味では、物凄く満足です。セガのときも、作っていて満足できたゲームも……「ファンタシースターオンライン」、「サンバ DE アミーゴ!」、「君のためなら死ねる」とか……あるにはあります。

 それでも、細かいところすべてまでは無理なんです。たとえば「サンバ DE アミーゴ!」でしたら、メインの調整などは普通にできましたが、凄く難しいモードとかの調整までは自分でできませんでした。それが、今回のゲームは「すべてのモードの、すべてのバランス調整がちゃんとできた」という意味では、凄く満足な出来だと思います。僕も「やり残した」っていう感じもないし。凄くイイですね。かなりスッキリした感じ。

―― ゲーム作りの“現場”に帰ってきた、みたいな感じですか?

 ん〜、そうですねぇ。「現場にかなり近づいた」ですよね。プログラムもやりたいんですが、やらせてもらえてないのでアレですけど (笑)。

 とにかく、細かいところを少しずつやりながら「ここはまずいからこう直して、ここをこういう仕様にかえて」とか。ゲームの一番最初のキッカケみたいなところもそうですし。「代表作は?」と聞かれたときに、今までは「『ソニック』とか『ナイツ』とか『PSO』ですかねぇ」とか、「『サンバDEアミーゴ!』かなぁ」なんて言ってましたけど。この「レッツタップ」って、絶対、間違いなく、僕の一生のなかで代表作になるタイトルになったと思います。発売前の時点で、売れていようが売れていなかろうが、間違いないと思いますね。

 僕がやりたかった“新しい一歩”というものが、凄く大きく踏み出せたタイトルだと思います。「サンバ DE アミーゴ!」のときも、かなりそういう手ごたえがあったんですけど。あのときも空間認識の技術をみんなで作り上げて世に出したのですが、物凄い技術を開発しているのにおバカなゲームを作っていった。このゲームも、技術的にすごく高度なことをやっているのですが、あんまりそういう細かいところは言わずに「箱叩くだけなんだよね」という良さですよね。子供たちに「このゲームはね、こうやって細かいところで凄いんだよ」と言うこともなく、そういったあたりがゲームクリエイターの面白いところというか、そこでの満足度の高さですかね。

 たぶん車を作ってる人も、あんまり言わないと思うんですよ。「ここのコーナーをうまく曲がれるために、こういうふうなところをこうやってる」なんて言わずに「どうですか、スタイリングが格好いいでしょう? 乗りやすいですよ」くらいしか言わないで売りますよね。安全性のために開発者の方々はすごく研究していると思うんですけど。

 そういう意味では、今回はゲームのなかで“かなり新しいもの”が作り上げられた。たぶん、あと25年くらい経たないと出てこないと思いますよ、こういう発想のもの……と、僕は思っているくらい。ネットワークゲームを作っていたときも、わりと「このあと10年くらいしたら、何か違うの出てるといいなぁ」って。「ファンタシースターオンライン」を出すときに言ってましたが、出てこないですよね。次の流れが何か。ネットワークになった瞬間が2000年だったんですが、もうちょっとしたら、この次の進化があらわれてくるのかもしれないのですが。

 ゲーム業界は進化しないと。十字キーとボタンだけでの満足度がみなさん下がってきたのではないのでしょうか。今はタッチパネルだけで、いいのかもしれないのですが。まぁ、まだまだ進化できると思うんですよ。ゲームは映画と違って“入力”という大きなアドバンテージがある。お客さんが入力することによる面白さって、たくさんあるわけですよ。でも入力の進化って、25年も経つのに意外と進化してないんですよね。そういう意味では、今回はいい発見だったと思います。アーケードゲームばかり作ってると、もうちょっといいと思うのですが。本当は、こういうゲームってアーケードから始めたほうが良かったと思うんですよね。

―― でも、Wiiのコントローラーはそのあたりも許容するというか。そこら辺がまたマシン、ハードとしての面白さでもありますよね。

 そうですね。その辺の面白さがかなり出せているとは思います。

―― では、あとふたつほど。ひとつは……セガさんから独立されてプロペになってから、結構時間がたっているじゃないですか。セガさんにも「中さんの新作って、いつですかね?」と季節ごとに聞いたりしてたのですが、「もうちょっと、もうちょっと」みたいな話があって。今回の作品はちょっと難産だったということですか?

 それはありますね。「レッツタップ」の前に今回の入力方法の発想を思いつくきっかけとなったアクションゲームは……もうボツにしたのですが……そのアクションゲームを作る前まで作っていたアクションゲームが、実はあるんです。

―― 独立してずっと作っていらっしゃったんですね?

 ええ、独立してから作り始めた1本目っていうのがあるんです。そのまま作っていたら本当はこの年末に出たと思うのですが、泣く泣くといいますか……まぁ、今の時代にあってないのか、色々な判断がされたなかで「やめよう」と。やめたおかげで、また次のアクションゲームを考えていて、そのなかで「レッツタップ」を思いついたので、(結果的には) 良かったと思うのですが。

 プロペを作って、元々やっぱり「ソニック」に並ぶような新しいゲームが作れればということを小口さんからも言われていて、「そういうのはできるかどうかわからないけど、やりましょう」ということで会社を立ち上げたんですね。

 本当は僕、こういう「レッツタップ」のような路線も凄く好きなんですよ。「サンバ DE アミーゴ!」とか「君のためなら死ねる」とか、こういったゲームをずっとやっていければ、それはそれで幸せだなぁと思うのですが、「ソニック」のようなキャラクタが立ったゲームというのもまた作れればいいなとは思います。

 難産だったというか、作っていたものを思い切って捨てること……セガのときにもありますし、ゲーム業界ではたくさんあると思います。途中まで作って「面白くないね」って中止になることは。

 最初作っていたゲームは、僕は結構いけるなと思っていたんです。そういう意味ではかなり“チャレンジ”していたゲームなんですよね。ゲームかといわれると……2時間の映画を見終わったときに「あぁ、良かった」って映画館から帰ってくるじゃないですか、あれくらいの感覚に近いようなゲームを作ろうとしていたのですが、それが色々なビジネスの判断のなかで「やっぱり、よくないかなぁ」という話になって、中止になったんです。いつか機会があればまた作るかもしれませんが。結構動いてたんですよね。もったいない感じ。でも、新しいのも作ってますしね。

色々と新しいことにチャレンジする一方で、商品化にあたっては「一歩先ではなく半歩先を行くことが大切」という中氏 プロペの「レッツタップ」の製作に関わったメンバーの方々。中氏はインタビューの中で「人集めは本当に大変だが最高のチームができた」と語っていた



■ プロペは昔の「ソニックチーム」並のパワーになってきている

―― ゲーム業界って「新しいものを作らなきゃいけない!」っていうのにしばられてるところがあるじゃないですか。

 でも、みんなあまり作ってないじゃないですか? (笑)。しばられてっていうか、みんな新しいゲームなんてほとんど作ってないですよ、世の中の人は!

―― 難しかったりするじゃないですか。個人的に思うのは、よくアナリストさんが「新しいゲームが出ないから」っておっしゃるんですけど、そんなの人間の歴史上を見ても、なかなか出てこない。一種の発明だと思うんです。「新しいものを作らなきゃいけない」という“閉塞感”みたいなのがあるとみなさんおっしゃるじゃないですか。そういうののアンチテーゼとか、独立されて色々思われたこともあるのかな、と。ゲーム業界に対して。

 ん〜まぁ、どうですかねぇ。セガは昔からわりとチャレンジしていた会社なので、社風的にも何か新しいものをやらせてくれるところはあったと思うんですね。ですが、まぁ……本当にゲームクリエイターと呼ばれる人たちってゲーム業界に30人くらいしかいないと思うんです。有名ゲームクリエイターといわれるような。そのなかのひとりに僕も入れてもらってるんだと思うんですけど、そういう“新しい人”が出てくるのを、ゲーム業界は待ち続けていたんですが、なかなか待ってるだけではそういった人も出てこないし、そういう考えを持って作る人も出てこない。

 どちらかというと、そういう新しいゲームを作れる人間が偉くなってしまったのが、今のゲーム業界にとって損だなと思う。そういう意味では、ゲームクリエイターをあと何年やれるかわからないというなかで、僕は独立させてもらって、「新しいゲーム作るから、何かやらせてね!」っていうことで出させてもらったのでいいと思いますね。

 セガの中でもできたかもしれないのですが「そのかわり、平社員にしてほしいんだけど」って話をしていたんですね。役員の仕事、全部やりたくない!! そんなのやってたら、たぶんゲーム作れないからって。立ち上げたら役員みたいな仕事もなくはないんですが、ひとつのゲームに集中できるというのは凄く良かったと思いますし。

 「新しいものを」っていいながら、今の若い子たちって、続編の仕事をやらされてる人たちばかり。新しいものへの発想を出す機会もあまりないし。アイディアを出したとしても、そのまま潰されちゃうケースも多い。そういう意味では、古い人たちというか、僕らみたいな人たちが新しいものにチャレンジしていかないと、(新しいものが) 世の中に出ていかないようになっちゃってるんですよね。それが今のゲーム業界の悪循環。

 そういう意味では、ソニーさんのやってた「ゲームやろうぜ!」とか、ああいうのをもっともっと盛り上げてあげたらいいのかなと思いますね。任天堂さんも、マイクロソフトさんもやっていますよね。「ゲームやろうぜ!」から出てきた方ははわりと実績を上げていらっしゃいますよね。そういったものを、メーカーさんはもっともっと支援してあげて、若い子にチャレンジさせてあげたりするといいのかなぁという気もします。

 新しいゲームクリエイターの人、もっとどんどん育ってきてほしいなぁと思うんです。新しいことをやる人が! RPGを作ってる人とかレースゲームを作ってる人とかいうのは、あまり僕は新しいと思わないので。知ってるって思っちゃう。昔、初めてRPGを見たとき「うぉぉ、何だコレ!」と思ったんです。「ウィザードリィ」とか「ウルティマ」の頃ですけど。でも一般の人たちからしたら「ドラゴンクエスト」を見てビックリしたと思うんですよね。そういうのってあると思うんですよ。アドベンチャーゲームを見たときの驚きとか。でも今、ないですよね。ほとんどない。ジャンルとかで驚きがないのであれば、ハードメーカーががんばらないといけない時代になってきていると思います。

 まぁでも、色々まだまだ、やろうと思えばできることはたくさんあるので。あとは、一般の人が「グラフィックスが凄くないとダメなんだけど」といった概念にしばられないほうが、いいゲームができると思います。どうしてもグラフィックスを良くしようと思うと、1カ所良くすると、それが50時間遊べないといけないねとなった瞬間に、じゃぁ開発費が20億円、30億円ってなっちゃうという悪循環が出てくる。ワンカットだけ凄いの作っちゃうと、引くに引けないじゃないですか。任天堂さんがグラフィックスチップの性能をあまりあげなかったのは、ある意味“凄い正解”だったなぁと思います。このゲーム業界にとって凄く良かったと思います。

 Wiiウェアっていうのも作っていただいて、宮本 茂さんと岩田 聡社長が「ゲームクリエイターのチャレンジの場としていいんじゃないか」というお話をされていましたよね。で、僕ら作っていたゲームがボツになり「レッツキャッチ」の発想を出したときに、「とりあえず最初はWiiウェアでいいんじゃないの?」といって企画書を書いて進められるような体制が、凄く……気持ち的に踏み込めたっていうのは良かったと思うんですよね。

 たぶん今、新しいものを作ろうと思ってるいる人たちは、みなさんWiiウェア、PS3やXbox 360のダウンロードとか、まずそういうところに向かって発想してみると、ちょうどいいかもしれないですよね。最初からパッケージで考えると、僕みたいに何10本もゲームを作ってきた人間でさえ、ちょっと戸惑うところもあるので……。でも、今回のは凄くいい発想だったので、それを見ていただいたあと「あぁ、これはもうきちっとしたゲームでいけるね、伸ばせるね」と。今回のWiiウェアの思想の“一番いい流れ”を汲んで、今の状態まで持ってこれたというのは良かったんじゃないかなと思います。

 なかなか、そういう流れがないと、「レッツタップ」や「レッツキャッチ」は世に出なかったかもしれません。世に出ない可能性は、物凄くたくさんありましたよ! 何回も山を乗り越え、乗り越え、ここまでやってきました。でも新しいゲームを作るときって、そうだと思うんです。やっちゃいけないようなことに取り組んでいかないと難しい。

 僕は昔、鈴木 裕さんが作ったアーケードゲーム「スペースハリアー」が大好きで、「家庭で遊びたい!」と思ったんです。当時、セガの家庭用ハード「セガ・マークIII」で画面に出してみたのですが、どう見てもグラフィック的に、あれをそのまま出したくても出せない。そのときにテストで作った枠がついていたのですが、「この枠、消したいけど、消すと処理速度的に間に合わない」と。どうしてもパワーの差は縮まらないんです。

 でも僕はゲームは“楽しい”ことを優先しなければならないと思っていたので、「枠、ちょっとついてるけど、この状態で商品って、どうですかねぇ?」という話を上司とか営業の人とさせてもらったんです。そうしたら、「面白いじゃない。これでいいんじゃないの? 大丈夫だよ!」と言っていただいたんです。そのおかげで、次のステップを踏んで最終的にはリリースさせていただいて、その当時の友だちみんなに喜んでもらえて、僕もうれしくて「良かったなぁ」と。ハードウェアの結構ギリギリの線だと思うんですけど、そういうチャレンジ。そういうのをわりと僕はセガにいるあいだに何回もやらせてもらえた経験があるので、「無理だ!」とどこかで思わず、あきらめずに最後までやっていると新しいものに行き着くと思います。みんなが驚くようなものが作れるんじゃないかなと思いますね。

―― そういった意味では、何度もお話がでてますけども、中さんにとって「プロペ」っていうのは転機であり“良かった”ということですね。

 良かったですね。スタジオ化の一番いい流れとして、僕はこの会社を作れたと思う。いつかは「セガさんのおかげで、お世話になって独立させていただきたいな」と。ほぼセガみたいなところですよ、もう。セガの実験室みたいな感じかもしれませんが。プロペは理想の形じゃないかなと思います。

 ゲームを作るときのモチベーションの在り方ですとか、作り方のひとつの団体の意識的なものとかもプロペはいい形です。欧米にスタジオの結束力が高くて、いいゲームを作る志向があると思うんです。ゼロから人を集めを始めて、いま2年半経っていますが、人集めに1年ちょっとかかっています。そこからやっと作り始めて……そういう意味では、ちゃんと作り始められるようになって、まだ1年くらいだと思うんです。

―― 長い間に感じましたが、色々と難しかったんですね。

 人集めって、意外と大変です。凄く大変ですよ。今、色々なゲームクリエイターで独立されたみなさん思われていることだと思うのですが。なかなか……人がいないと作れないですし。

 僕は昔から、会社名なのに「ソニックチーム」と名前を付けて「みんなで作るんだよ」ということを掲げてました。僕ひとりでゲームを作ってはいないですし、今回のゲームもプロペの社員みんなで作ったものですので。やっぱり、いいクリエイターがたくさん揃わないといいゲームにならないですから。

 本当にプロペはいい感じだと思います。昔の「ソニックチーム」並のパワーになってきていると思います。そういう意味では「ソニックチーム」みたいなのがもうひとつ作れたので、僕的には凄く満足。「ソニックチーム」もうまく体制を作れたと思いますし。今回も、かなりいい感じなので。面白いですけどね。2年も経ったときに「どうしようかな」と思いましたけど、そのなかで生み出された「レッツタップ」が1本目で良かったです。

 当時、小口さんからは「大成功するタイトルが欲しい」と言われ、プロペで一番最初に作ったタイトルは成功はしそうだったのですが、小口さん的には「大成功しなさそうなので、やめようぜ、コレ。もうちょっと大成功しそうなやつにしてね」と言われてボツになったんですよね。

 普通じゃ満足してもらえない。そこがまた大変なんですけどね。

―― それだけプロペに期待がかかっているということですね。

 まぁ、そうですね。期待していただいているので、有難いことだなと思います。そういう意味では、その流れのなかでコレを思いついたので、その潰れたゲームは可哀想でしたが、それはそれで良かったなとも思います。

 「レッツタップ」を思いつくキッカケまでの流れが、今年の春くらいまであったのですが、その流れがなかったら「レッツタップ」ができていないわけですから。「レッツタップ」はそこから半年で作り上げてます。実は「レッツキャッチ」は実験を続けていたので、わりと長々と作っていたのですが。

 Wiiリモコンを色々調べている流れの蓄積も凄く大きいんですよ。「レッツタップ」も半年で作っていますが、それまでの作っていたアクションゲームを作った時に蓄積したベースというか、開発の仕組みを作るのにも半年から1年くらいくらいかかってますからね。通常、やっぱり会社でゲームを作るときは、システム周りって結構大切ですよ。そういったものは「レッツタップ」のなかに生かされていると思います。

―― では最後に、これからプレイされるユーザーさんにメッセージをお願いします。

 まず……本当に、今までにない新しい驚きが、このゲームのなかにたくさん入っています。人間はボタンを押す、離すだけじゃなくて“もっと凄く細かいことができる”ということに、このゲームで気づくんじゃないかなと思います。人間がそこまでできることを、これまで“ゲーム側が受け入れてあげられなかった”のを、この「レッツタップ」はうまく受け止められるようになった。その面白さを感じ取っていただけると、うれしいなと思います。

 堅いことをいってますが、みんなでワイワイやったら楽しいし。隣の人の箱をチョンチョンと叩いたりして、わりと意地悪もしながらみんなでやると楽しいゲームに仕上がったので、そのあたりも僕はこのゲームのいい部分だと思います。机をドン! と叩くと隣の人も揺れるんで面白いんです。そこは「いいね」とわざと残してる。みんなやってると (そのうち) 膝の上で遊んでるんですよね (笑)。

―― 邪魔されないようにですね (笑)。

 そうです (笑)。でもそれはまぁ、ゲームの一番面白いところだと思うんです。気心知れた仲間と遊ぶ面白さ。それは、凄く面白いですよ。あとは、“癒し”、“レース”、“音ゲー”、“パズル”、“シューティング”という5つの色々なバリエーションのゲームが入っている。それぞれ“頭脳”、“音感”、“体力”、“感覚”が必要だったりとか、それぞれ得意な人に向けてゲームが作れたと思うので、色々な人と対戦していただいて……ひとりで遊んでもかなりやりこめるように作ってあります。騙されたと思って買っていただいて! (笑)、新しさ……「うぉぉ! ゲームって、こんな面白いんだ!!」というところに触れていただけるとうれしいなと思います。

―― ありがとうございました!

「レッツタップ」と「レッツキャッチ」で両方揃えると連動する企画も用意されている。両作品ともそれぞれ違った面白さを追求した作りとなっているので、両方遊んでみてはいかがだろうか


(C) SEGA/PROPE

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□プロペのホームページ
http://prope.jp/
□「レッツタップ」のページ
http://prope.sega.jp/letstap/
□「レッツキャッチ」のページ
http://prope.sega.jp/letscatch/
□関連情報
【12月16日】セガ、Wii「レッツタップ」&「レッツキャッチ」
連動隠し要素の情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081216/lets.htm
【12月11日】セガ、Wiiウェア「レッツキャッチ」
3つのモードのプレイムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081211/lc.htm
【11月25日】セガ、Wii「レッツタップ」
テレビCM映像を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081125/tap.htm
【11月21日】セガ、Wii「レッツタップ」
「リズムタップ」モードの収録曲を細江慎治氏らが作曲
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081121/tap.htm
【11月19日】セガ、Wii「レッツタップ」
プレイシーンを収録したプロモーションムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081119/tap.htm
【10月17日】セガ、Wii「レッツタップ」とWiiウェア「レッツキャッチ」
発売日、配信日が決定。「レッツタップ」の体験会を実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081017/lets.htm
【10月12日】「東京ゲームショウ2008」セガブース、セガブースレポート
「428」、「レッツタップ」など、新作タイトルがプレイアブルで出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081012/sega.htm
【10月10日】「東京ゲームショウ2008」セガブース、イベントレポートその1
期待の3プロジェクトの記者発表会を開催!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081010/sega1.htm

(2008年12月26日)

[Reported by 船津稔・豊臣和孝]



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