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★Xbox 360ゲームレビュー★

冒険、戦い、生活の全てに「選択」を問われるRPG
アルビオンの英雄を待ち受ける過酷な試練とは?!

「Fable II (フェイブル2)」

  • ジャンル:アクションRPG
  • 開発元:Lionhead Studios
  • 発売元:マイクロソフト
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • レーティング:CERO Z(18歳以上対象)
  • 価格:6,800円
  • 発売日:12月18日(発売中)



前作から4年の時を経て、自由度とボリュームをさらにスケールアップして登場
 Xbox用アクションRPGとして2004年に発売された「Fable」は、主人公が自由に相手を選んで結婚したり、不動産を所有してお金儲けをしたりと、他のRPGタイトルでは考えられないほどの自由度がウリの作品だった。メインシナリオのクリアタイムがわずか数時間というボリュームの少なさが欠点ではあったが、秀逸なゲームコンセプトが広く評価され、多くの人々の間で傑作として記憶に残る。

 その前作からおよそ4年が経過し、2008年12月18日にXbox 360専用タイトルとして続編「Fable II」が発売された。制作者は前作と同じ、「ポピュラス」シリーズで“ゴッドゲーム”ジャンルを創始したゲームデザイナー ピーター・モリニュー氏だ。

 ピーター・モリニュー氏率いる英国のゲームスタジオ、Lionhead Studiosが4年間にわたって取り組んだ「Fable II」は、まるで絵本のような柔らかみのある世界観は前作そのままに、ゲーム中の自由度をさらに向上させ、前作の欠点であったゲームボリューム不足も大幅に改善した。冒険、戦い、街の生活、どれをとっても前作を越えるスケールを実現し、間違いなくこの冬最大の注目RPGと呼べる存在に仕上がっている。

 作中、ごく一部のケースでボディが欠損する表現が入れられているため、CEROレーティングでは18歳以上対象を意味するZ指定となっているが、それは些末な映像表現上の問題であり、本作のほとんどは絵本の世界のような、どこか牧歌的で独特の暖かみのある世界観となっている。ゆるやかに流れるアルビオンの時間にどのような楽しみがあるのか、ご紹介していきたい。


■ 前作から500年。アルビオンを救った英雄の血統とともに、ゲームシステムも引き継がれる

小雪降る寒空の下、あこがれのお城を眺める2人の姉弟
街では怪しげな商人が怪しげな品物を売っている。姉弟はオルゴールを買うために5ゴールドを稼ぐことに
衛兵が探している逮捕令状。どれをとってもどこか可笑しくて、ユーモアが効いている
 本作の舞台は中世ファンタジーの雰囲気を色濃く備えた世界、“アルビオン”。500年前、前作「Fable」にてアルビオンの英雄が世界を破滅から救って以降、様々な出来事がこの世界で起こっていた。ひとつは前作の主人公が修行した“英雄ギルド”の消滅。しかし、英雄の血筋は連綿と受け継がれ、そのひとりが都市バウワーストーンの旧市街に生きていた。

 小雪がぱらつく中、街の片隅で小さな焚き火を頼りに暖を取る2人の姉弟(妹)。遠く市街の中心ににそびえるフェアファックス城の偉容を臨み、姉ローズは「私もあんなお城に住んでみたい」とぽつり。無言で姉の話を聞く主人公は、これから自分を待ち受ける運命など知るよしもない、まだ10歳ほどの無邪気な子供だ。

 ゲームはこの“子供時代”から始まる。近くで大人達の歓声が上がっているので姉弟揃って行ってみると、行商人がインチキくさい“魔法の品々”を販売している。「魔法なんてないわ、こんなのインチキよ」と姉のローズは言うが、通りがかりの謎めいた女性(その正体は前作の英雄の姉)の導きにより、願いを叶えるという魔法のオルゴールを買うことになる。

 プレーヤーが与えられる最初のクエストは、このオルゴールを買うために5ゴールドを稼ぎ出すことだ。旧市街の界隈には手伝いをほしがっている大人が何人もいて、衛兵が無くした5通の逮捕令状を集めたり、酔いどれ親父の酒瓶を見つけたり、倉庫でビートルを退治したりしながら、1ゴールドづつ稼いでいく。

 本作の重要なテーマであるプレーヤーの「選択」は、この時点でもう始まっている。それぞれのミニクエストの中で、善と悪に分岐する2つの行動が取れるのだ。倉庫のビートルを退治するか、盗賊団の男の言うとおり在庫をめちゃめちゃにするか。見つけた酒瓶を、夫の酒癖を直そうとしているおばさんに渡すか、泥酔状態の親父に渡すか。

 そしてこの時代最大の「選択」は、集めた逮捕令状を衛兵に渡すか、盗賊団の男に渡すか、というものだ。この選択によって、主人公が10年後に再び訪れた際の街の姿が決まる。良い行ないをすれば街は再開発され高級住宅街に、悪い行ないをすれば街は荒れ、無法者の跋扈する暗黒街になる。いずれにしても、今は魔法のオルゴールを買い、「お城にいけますように」という願いを叶えるときだ。

 願いは叶い、姉弟はフェアファックス城に向かった。そこに待っていたのは、ある研究に没頭する領主・ルシアン。「英雄だが……あの3人ではない……どちらかが4番目だ」。状況が全く飲み込めないまま、姉ローズは射殺されてしまう。そして主人公も。

 そして瀕死の状況を謎の女性テレサに救われた主人公は、10年の歳月を修行に費やし、姉のかたきを取るための戦いに向かう。これが「Fable II」の序章だ。

フェアファックス城に正体された姉弟は、ある研究に没頭する領主・ルシアンと対面する。姉妹が英雄の血筋をひくことが明らかになった矢先、姉ローズは射殺され、主人公も死の淵に追いやられてしまう


■ 「強さ」、「スキル」、「ウィル」の3つの力で展開する英雄の成長

「強さ」の近接攻撃
「スキル」の遠隔攻撃
「ウィル」の魔法攻撃
 このように始まる本作で、主人公は英雄として世界を探検していくことになる。そこで基本となるゲームシステムは、前作のものをほぼ踏襲したものだ。

 戦闘はリアルタイムのアクションで、Xボタンで剣や斧といった近接攻撃、Yボタンでボウガンや銃といった遠隔攻撃、Bボタンで“ウィル”と呼ばれる魔法が発動する、シンプルなシステムだ。

 これらの攻撃方法は、主人公の成長要素である「強さ」、「スキル」、「ウィル」の3能力に対応しており、敵を倒した手段に応じて、対応する能力用の経験値が得られる。このため、多用する攻撃方法に関する能力が、早く向上していくというシステムになっている。

 各能力をどのように成長させるかはプレーヤーの自由だが、後々の厳しい戦いを考えれば、ある程度バランスの取れた成長が望ましい。「強さ」の戦闘スタイルを磨けば、敵を一撃で吹き飛ばす「フラッシュムーブ」や、高速なコンボ攻撃を習得できる。「スキル」を成長させると得られる「ズーム」の能力を使えば、敵の急所を打ち抜いて攻撃力を何倍にも高めることが可能だ。

 そして「ウィル」能力では、多数のスペルのうちどれを重視して成長させるかが、戦いのスタイルを大きく変える。肉弾攻撃を得意とするプレーヤーなら、「タイムコントロール」のスペルを成長させ、時間の流れを遅くして戦うのがいい。魔法中心で戦うのならば、攻撃スペルの「インフェルノ」を最大限まで成長させれば、多数の敵を一撃で葬ることも可能になる。そのほかにも色々な選択肢が用意されているので、自分のスタイルに合わせた成長が可能だ。

 ちなみに、能力の向上は主人公の姿にも影響する。例えば「強さ」を高めれば筋骨隆々に、「スキル」を高めれば背が高くなる。「ウィル」を強化した主人公は、体中に青白く光る文様が浮かび上がり、オーラを纏うようになる。

 そんな英雄の心をなごませてくれるのが、冒険を共にしてくれる愛犬だ。子供時代の出来事で主人公になつき、以来10年来の友人となったこの愛犬は、鼻を生かして宝のある場所を教えてくれたり、戦闘でダウンさせた敵を仕留めてくれるなど、冒険の先々で常に主人公を助けてくれるのだ。時にはボール遊びをしたり、ごほうびをあげたりして、労をねぎらってあげたい。

 そして戦闘で傷ついたときの体力回復はポーションや食料でおこなうのだが、これも主人公の見た目に影響する。回復のために肉やパイを沢山食べてしまったら要注意だ。あっという間にでっぷりと太ってしまうのだ。おなかの肉が気になり始めたら、食料品店で買えるセロリを食べるといい。

成長の内容によって、主人公の見た目はどんどん変化していく(愛犬も影響を受ける)。肉の食べ過ぎで太ってしまうと、元の体型に戻すのは至難の技だ。ちなみに食料品など各アイテムには丁寧な説明文があって、思わず吹き出してしまう面白い物もある。くまなくチェックしてみよう


■ 英雄の行動が様々な結果を及ぼす街の生活

色々な感情表現アクションで街の人気者に
結婚して所帯を持つ。夫婦関係を円満に続けていくためには、時々家に戻ってご機嫌を取る必要がある。面倒くさいがある意味リアルだ
子供ができました。成長した姿を見るためには、何年もの冒険を経過する必要がある
 本作では前作と同様に、冒険だけではなく街の生活もゲームの一環だ。街には沢山のNPCが住んでおり、主人公の行動によって、主人公のことを好いたり嫌ったり、その程度によって様々な反応を見せる。みすぼらしい格好で歩いていれば、小汚い英雄だなあとバカにされるので悔しい。街の仕立て屋に入って、格好いい服を新調しよう。

 街では色々なことができる。LBで呼び出す感情表現メニューから、人を笑わせたり、喜ばせたり、プレゼントを贈って人気者になれば、商店で特別割引を受けられることも。逆に、脅したり、威圧して怖がらせて「この人は怖い」という評価を植え付ければ、不当に安い値段で品物を購入することができてしまうこともある。

 異性を狙って集中的に好意を高めたら結婚することも可能だ。婚約指輪を贈って、家を購入するという“儀式”を済ませたら、ベッドルームに誘って子作りができる。一晩で子供が誕生するのは笑ってしまうが、時間が経てば子供は成長し、プレーヤーに帰属意識を与えてくれる。

 武器や服装の購入、そして家族の扶養にお金が足りなくなったら、街でアルバイトをするのも手だ。鍛冶屋、木こり、バーテンダーといったアルバイトは、タイミング良くボタンを押すミニゲームになっており、連続で成功させれば報酬の倍率が上がっていく。報酬金額の高さに従って難しくなっていくが、慣れてしまえば大変な金額を短時間に荒稼ぎすることもできる。小一時間、お店に籠もって冒険費用を工面しよう。

 お金を沢山稼いだら不動産業を始めるのがいい。街のほとんどありとあらゆる住居や商店は購入が可能で、その価格は1,000ゴールドから10万ゴールドまで様々。購入した住居には自分で住んでもいいが、貸し出すようにすれば家賃収入を得られる。家賃や、商店の売り上げの一部は、5分おきに主人公のゴールドに加算される。最初はほんの小さな額だが、たくさんの不動産を所有すれば、莫大な金額を、何もせずに稼ぎ出せる。

 不動産価値は街の景気によっても上下する。所有物件の多い街で沢山物を購入すれば景気がよくなって、家賃収入も向上する。家具店で高級家具を買い、物件の模様替えをするというのも家賃収入を上げる秀逸な手段だ。

 まじめに働くのがツマラナイと感じるなら、商店のレジからお金を盗んだり、通りがかりの人を恐喝して金銭を巻き上げるという金稼ぎの手段もある。その場合、主人公は悪に傾いて、恐ろしい形相になっていき、人々は次第に主人公を避けるようになる。そうしたプレイが望みなら、悪人のスタイルを貫くのも本作で許された自由のうちだ。

手っ取り早くお金を稼ぐにはアルバイトがいちばん。鍛冶屋、木こり、バーテンいずれかの得意な職業で冒険資金を稼ごう

ある程度の元手ができれば、住居や商店などの不動産を購入して、その家賃収入で暮らすという手もある。5分おきに加算されるゴールドは、本作をプレイしていない時間もカウントされ、再度プレイを開始した際にまとめて手に入る仕組みだ(カウントの上限はある)

一攫千金を狙うなら、パブや路上で営業している賭博屋のゲームをやるのもいい。アルビオン固有のスロットマシーンやカードゲームで大当たりをひけば、不動産の1つや2つは購入できるはず。冒険そっちのけでギャンブラーを目指すというのも悪くない


■ 前作を遙かに超えるボリュームで楽しめるアルビオンの冒険。寄り道要素も沢山!

美しい自然に囲まれたオークベールの村
シスターハンナ。「光の寺院」の修道女として、持てる力を振るえないでいることが悩み
儀式のため、聖なる湧き水を水瓶に汲む。主人公はハンナを助けてアンデッドと戦闘
 さて、主人公は主目的は姉のかたきを討つこと。街の生活ばかりにかまけているわけにもいかない。テレサの導きで修行を積んだ難民キャンプを離れ、懐かしいバウワーストーンの街に入った主人公は、「強さ」、「スキル」、「ウィル」の3人の英雄を見つけるための旅に出なくてはならないのだ。

 冒険の舞台となる広大なゲームフィールドは、地域ごとに独立したゾーンになっており、色々な“寄り道”の要素が隠されている。ちなみに、一度行ったことのある場所ならば、メニュー画面から瞬間移動が可能なので、移動にまつわるストレスはほとんどない(ただし、移動に必要なゲーム内時間は経過し、それに応じて主人公は歳を取っていく)。

 主人公は世界を探検しながら、その時々に与えられるクエストを解決していくことになる。クエストは大別するとメインストーリーの進行を司るメインクエスト、寄り道要素のサブクエストとがあって、ストーリーを進めるためだけであれば、メインクエストだけをプレイしてもいい。しかし、サブクエストをクリアすることによって、アイテムや「名声」など様々な特典が得られる上、世界観への理解が厚みを増すので、いろいろと寄り道をしてみたい内容になっている。

 クエストをクリアすることで高められる「名声」は、主人公の成長度を測る重要な要素だ。冒険を始めたばかりの主人公は全く無名。それが時を経て様々な試練をくぐり抜け、名声を向上させることで、知らぬ者はいない有名人となっていく。名声は一部クエストを受けるための条件になっているなど、人々の信頼を得るために欠かせない存在なのである。

 バウワーストーンの街でいくつかの仕事をこなし、次なる目的地であるオークベールの村に向かう。そこで主人公はシスターハンナと出会うことになる。「光の寺院」司教の娘であるシスターハンナは、女性ながら立派な体格を持つ武闘派。修道女であるためにその力を戦いのために使えないでいるハンナだったが、やがて英雄としての戦いに身を投じることになる。本人が「ハマー」と呼んでというとおり、彼女はハンマーを振り回して戦う「強さの英雄」なのだ。

 こうして主人公は、残る「ウィルの英雄」、「スキルの英雄」を味方にするための、過酷な冒険に乗り出していく。英雄捜しを軸に描かれる本作のシナリオは意外性に富み、英雄を待ち受ける過酷な試練を、本作独自のゲームシステムを十二分に使い切って、生き生きと描写してくれる。

「ウィルの英雄」を見つける旅は、想像を絶する過酷なものとなった。ところは、ルシアンの野望そのものが造られようとしている「いにしえの塔」。屈辱的な立場で長い歳月を暮らさざるを得ない状況となった主人公の、運命や如何に

世界各地に点在する「デーモンの扉」。彼らの要求を満たす方法は?
前作プレーヤーならおなじみの「シルバーキー」。50個全部を集めるのは大変そうだ
 アルビオンの大地には、クエスト以外にも様々な隠し要素がある。ひとつは、世界各地に置かれている「デーモンの扉」。しゃべる扉の前にたち、彼らの要求を満たすための“ある行動”を取ると、宝物が置かれた秘密の空間に導いてくれる。それぞれの解法はもちろん難しいし、全部の扉を見つけるだけでも、至難の業だ。

 もうひとつは、前作にもあった「シルバーキー」。特殊な宝箱を開けるための鍵で、世界中に50個が隠されている。シルバーキーで開ける宝箱には、必要なキーの数が書いてあり、それ以上の数を取っていれば開けることが可能。案外粗末なものが入っていたりもするが、キーの所用数が多いものは貴重品が手に入ることもあるので、シルバーキーを見落とさないよう、常に注意してフィールドを歩きたい。

 他にも、ときおり、一見何もない場所から主人公を小馬鹿にする声が聞こえることがある。これは「ガーゴイル」だ。声のしてくるあたりをよく見回して、ガーゴイルの像を見つけ、遠隔攻撃で射貫く。世界に50個隠されているこれも、貴重な宝物へと導くコレクション要素だ。

 このように、本作は様々な冒険要素がちりばめられ、ボリュームたっぷりに遊べる作品となっている。NPCの台詞はフルボイスで表現され、主人公の姿や評価におうじて膨大なパターンが用意されているので、街を歩くだけでも色々な反応が楽しめる。

 行動の選択によって主人公が善・悪に振れた時の結果はメインストーリーに影響しないため少々寂しいが、主人公の姿が美しく、もしくは恐ろしくなっていくという要素そのものは、プレーヤーの行動を決める指針としてうまく機能している。まずはこの世界“アルビオン”の住人として感情移入できるかどうか、それが本作を本当に楽しめるかどうかの分かれ道だ。

彫刻家に銅像を建ててもらったり、考古学者の発掘の手伝いをしたり、世界を探索するきっかけとなるサブクエストも色々ある。報酬が薄いため作業感がいなめない部分もあるが、シナリオがやたら面白いサブクエストもあるので、積極的に寄り道することをオススメする

シナリオ中盤以降で利用できる「試練の迷宮」は、前作では「アリーナ」として知られていた施設だ。全8ステージのクリアタイムで記録を打ち破ることができれば、豪華なご褒美がもらえる。それに経験値稼ぎにももってこいだ


■ 繰り返してのプレイが前提となるゲーム性。肝心のローカライズは完璧!

各地の商店が「セール」を開くことがある。安く仕入れて高く売るチャンスだ
極悪非道のプレイに挑戦。出て行け!と家主を殺害すれば、安値で家が購入できてしまうのだ
“スゴすばらしい”、発明家で実業家のバーナムおじさん
 本作「Fable II」は、前作で「ボリュームが少ない」という不満の声があったことを踏まえ、メインクエスト、サブクエスト、寄り道要素などを含めて何倍ものゲームボリュームで固めている。とはいえ、メインクエスト中心にプレイした場合のシナリオクリアタイムは、およそ10時間ほどだ。1本のゲームに何十時間も拘束されることを望むプレーヤーにとっては、少々物足りない感じは拭えない。

 だが、本作は基本的に、繰り返してのプレイを前提とするゲーム性を持った作品だ。善の道を行くプレイだけでは、本作の全ての姿を堪能できない。悪人にならなければ発生しない仕事や、クエストなど、様々な要素がプレーヤーの選択によって発生するようになっているからだ。全てのサブクエストや寄り道要素をコンプリートするためには、おそらく30時間から50時間のプレイ時間が必要になるだろう。

 他の面に目を向けてみると、感情表現コマンドを使ったNPCとの交わりは、少々反応が単純すぎて、機械的な感じもある。これをうまくクエスト内容にからめたシナリオも存在しているので、いちがいに無意味なものとも言えないが、「恋愛や結婚ができる」という外面のスペックから期待されるほどのものは実現できていない。

 このあたりは、本作のゲームデザイナーであるピーター・モリニューの理想と、現在のテクノロジーで実現可能なゲーム内容とに差があるように感じるところだ。現状では、NPCとの交わりは、プレーヤー側からの積極的な感情移入があって初めて成立するおもしろさであり、ゲームの側が強烈にプレーヤーを引き込むというほどにはなっていないのである。

 とはいえ、これは致命的な欠陥ではない。マイクロソフトは、本作のローカライズにあたって完璧な仕事を果たしており、本作の持つ英国流のユーモアを、センス溢れる翻訳で見事に日本語化し、NPCのしゃべる大量の台詞を文句のつけようのない演技で表現している。このおかげで、プレーヤーは、本作の提示する世界に違和感なく、心地よく没入することができる。

 本作に多数登場する個性的なNPCの中で、筆者の特にお気に入りになったのが、子供時代から写真師として登場する「バーナムおじさん」だ。奇妙な類語辞典で“ボキャブラリウム”を増やし、言葉が溢れてくるというこのおじさんは、本作のあらゆるところで顔を出し、“スゴすばらしい”といった可笑しな言葉遣いでプレーヤーの顔をほころばせてくれる。この耳に残る名台詞をオリジナル英語台本から生み出したマイクロソフトのローカライズチームの仕事は、まったく“スバラありがたい”。

個性的なNPCが多数登場する。その台詞はフルボイスで、世界観を伝える演技も完璧。方々で主人公についてまわる吟遊詩人は、プレーヤーが取り組んだ全てのクエストをネタに、ヘタクソな歌で適当すぎる詩を披露してくれるので(本人は傑作と思っているらしいが)、時折聴いてあげよう


・オンライン協力プレイは期待はずれだが、ゲーム統合型のロビー機能は秀逸

協力プレイでは相手の真の姿を知るすべがなく、せっかくのコスチュームがもったいない
画面外には出られないという制限があり、あまり自由に動けない。協力プレイは“オマケ”と割り切るしかないようだ
 最後に、本作のオンライン要素についてご紹介しておこう。発売前から話題になっていたことだが、本作には2人での協力プレイ機能がある。ホスト側プレーヤーの世界に、ゲストプレーヤーが参加して、冒険の“仲間”として行動をともにできるものだ。

 うまくすればとても面白い機能になったはずの協力プレイだが、ちょっと残念な出来になっている。残念な点その1は、参加したプレーヤーの服装や風貌が反映されず、あらかじめ用意されたプリセットから選ばれるという点。自分がどんな姿で相手に見えているか、想像するしかないという状態だ。

 残念な点その2は、協力プレイ中の2人のプレーヤーキャラクタがひとつの画面内に収まらないといけないという制限があり、自由に動けない点。カメラアングルはキャラクタの位置関係に応じて自動で制御されるのだが、建物や地形の裏に入ったときに、自分のキャラクタが見えなくなるため、プレイし辛いことこの上ない。また、どちらかのプレーヤーが操作をやめた場合、画面が動かないので、他方のプレーヤーも移動できなくなる。

 こういった残念な点により、本作の協力プレイは、フレンドと一緒に冒険を楽しめるというほどには至っておらず、ほとんどオマケ程度の出来となっている。本作の英語版が10月に発売された際、協力プレイ機能がゲームに実装されていなかったが、その理由は、完成していなかったからではなく、単純に面白くなかったから、とも推測できる。

 とはいえ、オンライン機能が完全に無意味というわけでもない。本作は、Xbox LIVEに接続してプレイしている限り、協力プレイを開始しなくても、ゲーム世界そのものがマルチプレイロビーとして機能しており、プレイ中のフレンドが同じ地域にいれば、アイコンの姿でその場所を確認できるのだ。

 プレーヤーはそのアイコンを通じてメッセージをやりとりしたり、アイテムやゴールドを受け渡すことができる。これを使えば、先行しているプレーヤーが余ったアイテムやお金を後発のプレーヤーに渡して手助けするといった、MMORPG的なやりとりができるのだ。この仕組みはなかなか秀逸で、町中でフレンドのアイコンを確認するだけでもちょっぴり楽しくなってしまう。


 協力プレイに関してはもう少しやりようがあったのではないかとも思うが、本作は基本的にシングルプレイの冒険を楽しむゲームなので、それが欠陥とまでは言えない。本作にはそれ以上の美点が多くあり、ゲームファンなら誰もが一度はプレイしてみるべき傑作に仕上がっている。

 特に前作「Fable」で高く評価された自由度の高さ、ゲームプレイのスムーズさは本作でスケールアップして継承されており、間違いなく十二分に楽しめるアクションRPGとなっているので、この冬に何か手応えのあるRPGを探しているなら、強くオススメできる。あれもこれも、色々と楽しめるアルビオンの冒険を楽しんで欲しい。

【スクリーンショット】
「Fable II」は前作の良いところをそのままスケールアップし、さらにボリュームたっぷりの冒険を楽しめる作品となった。はじめてのプレーヤーでも無理なく楽しめる内容になっているので、RPG好きの全てのプレーヤーにお勧めしたい

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□Xbox 360のホームページ
http://www.xbox.com/ja-JP/
□「Fable II(フェイブル II)」の製品情報
http://www.xbox.com/ja-JP/games/splash/f/fable2/
□関連情報
【2008年11月27日】マイクロソフト、Xbox 360「Fable 2」完成記念イベントを開催
プレーヤーの性格を写すゲーム性をお笑いコンビ“ザ・たっち”が面白おかしく実演
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081127/fable2.htm

(2008年12月26日)

[Reported by 佐藤カフジ]



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