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★PCゲーミングデバイスレビュー★

3G赤外線センサー搭載の“エントリーモデル”
最強の高速トラッキング性能はどう生かされるか?

「Razer Salmosa」

  • ジャンル:ゲーミングマウス
  • 開発元:Razer
  • 発売元:MSY
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 価格:4,980円
  • 発売日:12月12日


 12月12日、ゲーミングデバイスメーカーRazerの代理店を務めるMSYは、ゲーミングマウスにおけるエントリーモデルの製品を発売した。

 今回紹介する「Razer Salmosa」は、高機能、高価格路線をひた走ってきたRazerブランドの新製品としては初となるエントリーモデルのゲーミングマウスだ。ボタン数はホイールボタンを含めて3つに抑え、価格は5,000円を切る設定。それでいながら、センサーには、Razerのラインナップで最強の、“Razer Precision 3G infrared sensor”(第三世代赤外線センサー)を搭載し、トラッキング能力に不足はない。

 いわば、「普及価格帯の高性能マウス」という新しい位置づけの製品ということになるわけだが、果たして本当にゲーミング水準の性能が期待できるのかどうかゲーマーの立場から検証してみたい。


■ 機能構成はごくシンプル。3ボタンマウスに最高水準のセンサーを搭載

パッケージ。標準価格は4,980円と、他のゲーミングマウスに比べて格安となっている
パッケージ内容はマウス本体とドライバCD、簡単なマニュアルと最小限に抑えられている
裏面にはDPI切り替えスイッチ、レポートレート切り替えスイッチが存在する
 本製品「Razer Salmosa」を手にとって感じることは、その不安になるほどのシンプルさだ。搭載するボタンはメインボタン2つとホイールボタンの計3つ。ゲーミングマウスには必ずありそうな、サイドボタンやDPI切り替えボタンなどは全く付いておらず、あまりの簡素さゆえに、これがゲーミングマウスであることが信じられないほどだ。

 背面には、赤外線センサーの両脇に2種類のスイッチが付いている。ひとつはDPI切り替えスイッチ。800DPIと1,800DPIのどちらかをハードウェア的に選択することができる。もうひとつのスイッチはレポートレート設定スイッチで、こちらは125Hz、500Hz、1,000Hzを選択できるようになっている。このあたりは間違いなくゲーミングマウスならではのもので、Razerらしい仕様だ。

 こういったシンプルな機能を反映し、本製品は外形寸法が他のゲーミングマウスに比べてずっと小さめである。長さ115mm×幅63mm×高さ37mmというサイズは、日本人を意識して開発された国内メーカーのゲーミングブランド製品のマウス「DHARMA TACTICAL MOUSE」シリーズよりもさらにひとまわり小さく、年少のゲーマーにも扱いやすそうだ。

 マウスの形状そのものは、Razerの伝統に則り左右対称で、左利きユーザーも同じ感覚で使えるようになっている。ボタン数が少ない以外は、幅広いユーザー層に使いやすくなるよう工夫されている感じだ。実際に手に取った感じでは、側面に何らかの滑り止め素材が欲しいという以外には問題を感じず、すんなりと自然な操作を開始できた。

 セパレート式のメインボタンは、押し込み応力が非常に軽く設定されている。指を乗せているだけでは反応しないが、軽く力を加えると反応する、という絶妙なバランス。このあたりは、完全にゲームでの使用を念頭に置いた作りだ。ホイールは回転時にクリック音のないタイプで、なめらかなさわり心地。全体的に見て、外形は非常にそつなく造られている印象だ。

 そして背面中央には、本製品の核であるRazerの3G赤外線センサーが顔を出す。このセンサーは、同じRazerのハイエンドゲーミングマウス「Deathadder」や、「Diamondback 3G」に搭載されているのと同じもので、ゲーミングマウスの中でも最高水準の性能を持つとされる。これについては次章で詳しく述べるとして、次にドライバ機能を見てみよう。
外形寸法は長さ115mm×幅63mm×高さ37mm。低めに抑えられた全高が、地を這うような一体感のある操作を可能にしている。漆黒のボディはサラサラとした手触りで、多少の手汗なら問題なさそうだ。ボタンは3つのみで、多数のボタンを使用したい人には全く不適だが、シンプルなFPS系ゲームでは充分に実用性がある


・DPI、レポートレート切り替えをハード側で提供しているためドライバもシンプル

Razerらしからぬことに使用中に光る機能は無い。色々な面でコストダウンが計られているようだ
 製品に添付されているドライバは、やはり他のRazer製品に比べてぐっとシンプルなものになっている。これは、マウス本体側にDPI切り替えとレポートレートの調整スイッチが付いていることで、ドライバ上で調整する必要がないということと、そもそもマウス本体のボタンが3つしかないために、豪華な機能を付ける余地がないためだ。

 設定パネル上で利用できる主な機能は、ソフトウェア的なマウス感度調整、ホイールの動作調整、そしてボタンの設定だ。ボタン設定については、Razerの他製品用のドライバと同じく、マクロ利用も可能な機能が提供されている。ただ、ボタンが少ないことにより、相対的な活用シーンは少なくなるだろう。

 また、任意のボタンを押すとゲーム中でもマウス感度を調整できる“On-the-fly Sensitivity”機能もドライバで提供されているが、こちらも、マウス本体のボタンが少ないため活用しづらい。5ボタン、6ボタンあるマウスなら、こういった付加機能を余分なボタンに割り当てるところなのだが、本製品にそのあたりを求めるのはいささか無粋というものだ。

 さて、ここまで本製品の外面を中心にご紹介してきたが、いよいよ、本製品の魅力が9割方詰まっているといえるセンサー部分について見ていきたい。

マウスそのもののシンプルさを反映して、設定パネルの項目も簡素にまとめられている。とはいえきちんとマクロ割り当て機能はサポートしているので、この機能構成で困ることはほとんどなさそうだ


■ 3G赤外線センサーとは何か? Razerが「Salmosa」を投入した意図を探る

「Salmosa」の背面中央に顔を覗かせる3G赤外線センサー
こちらは3Gレーザーセンサーを搭載するハイエンドの「Razer Lachesis」
「Razer Lachesis」のセンサー部
 さて、センサーに話題を移すにあたり、本製品の位置づけをより一層明確にするために、Razerの現行の製品ラインナップについて簡単にご紹介しておこう。

 現在、Razerが提供しているゲーミングマウスには、2系統のセンサーテクノロジーが使われている。ひとつは、本製品「Salmosa」にも搭載されている3G赤外線センサー、メーカーの正式名称としては“Razer Precision 3G infrared sensor”だ。2007年1月にリリースされたハイエンドマウス「Deathadder」でデビューしたこのセンサーは、最大トラッキング速度がおよそ300cm/秒という高性能を誇る。その後「Diamondback 3G」、「BoomSlang 2007」でも使用され、ゲーミング水準のオプティカルセンサーとして高い評価を得ている。

 もうひとつのセンサーテクノロジーは、3G赤外線センサーに続いて製品化された、3Gレーザーセンサーだ。正式名称としては“Razer 3G Laser Sensor”とシンプルに呼ばれているものだが、これは従来のレーザーセンサーとは本質的に異なる原理を使い、サンプリングレート800万回/秒という桁違いの数値を実現したものだ。これによりトラッキング性能を劇的に上げることが期待されたセンサーだった。

 その3Gレーザーセンサーを採用した実際の製品としては、ハイエンドゲーミングマウス「Razer Lachesis」がある。しかし、他のレーザーセンサーに比べてある程度のトラッキング速度向上は果たしたものの、ボタンをクリックしただけでカーソルが動いてしまうなど、接地面との相性が厳しすぎる特性が明らかになり、ゲーマーからの評価は芳しくない。

 本製品「Salmosa」には、「Lachesis」の3Gレーザーセンサーではなく、3G赤外線センサーが採用されている。手ごろな価格で入手できるエントリーモデルの製品というのは、往々にしてハイエンド製品への入り口として、戦略商品的な役割を期待されるものだ。そこでRazerが「Salmosa」に最新の3Gレーザーセンサーではなく3G赤外線センサーを搭載した判断は、つまるところ「3Gレーザーセンサーではなく3G赤外線センサー搭載型のマウスがRazerのメインストリームだ」という暗黙の意思表示とも受け取れる。


・3Gレーザーセンサー搭載の「Lachesis」と性能比較。「Salmosa」が圧倒

「Razer Salmosa」VS「Razer Lachesis」。価格差は2倍
 それでは続いて「Salmosa」のトラッキング性能が実際にスペック通りのものかどうかを調べてみた。

 計測には弊誌連載記事「PCゲーミングデバイス道場」でも使用した独自開発のシステムを用いて、「Salmosa」の高速トラッキング性能を計測してみた。

 今回比較の対象としたのは、同じくRazerの製品で、3Gレーザーセンサーを搭載したハイエンドゲーミングマウス「Lachesis」だ。「Lachesis」はMSYからの標準価格で1万円を越えるという、超ハードコアユーザー向けの製品だが、その半分以下の価格で手に入る「Salmosa」との力の差がどれほどになるか見てみよう。

 なお、計測システムについて、使用マウスパッド、計測方法など、上記の連載記事と全く同等の条件で行なった。今回も双方800DPIという同条件での計測となったが、物理的なセンサー位置の違いなどで、正確に同じカウント数が現れるわけではないことにご留意を頂きたい。

 さて、計測結果を図にしたものを下に示す。

Razer Lachesis Razer Salmosa

 まずは比較対象の「Lachesis」を見てみよう。「Lachesis」はおよそ2.5メートル/秒程度の速度域で、サーフェスの検出が不安定になり計測不能となった。この性能は、およそ1.5メートル/秒でカウント数が不安定になる他のレーザーマウスに比べると高性能だが、ゲーミング水準のオプティカルマウスにはかなり負けているという水準だ。

 また、「Lachesis」のカウント数サンプルにはユニークな傾向がある。ひとつは、ばらけが大きいことだが、それ以上に、速度が上がる毎にレポートされるカウント数も増えていくという傾向が珍しい。ソフトウェア的に加速機能を入れた覚えはないので、これはハードウェア的な特徴なのかもしれない。

 対する3G赤外線センサー搭載の「Salmosa」は、2.5メートル/秒を越える速度域でも安定したトラッキングを見せており、現在の計測システムでの速度限界を迎える4メートル毎秒付近でも、大きな誤差を出すことなく動作し続けた。この性能は、筆者が計測した中では最高性能だったSteelseriesの「IKARI Optical」に匹敵する内容だ。

 その「IKARI Optical」には、オプティカルマウスの中でも特に極端な“リフトオフディスタンスの長さ”という問題があって、使いづらい面がある製品だった。それに引き替え、本製品「Salmosa」のリフトオフディスタンスは、筆者の実測でおよそ5mm程度と、実用上全く問題を感じないレベルに抑えられている。結論としては、3G赤外線センサーは非常に優れたオプティカルセンサーだと言える。


■ ゲーミングマウスへのアップグレードを検討中のFPSユーザーに最適

安い物には裏があると言うが、本製品の場合、それはボタン数の少なさにのみ表れた。トラッキング性能は間違いなく最高水準と評価できる
 Razerのエントリーモデルとして市場投入された本製品「Salmosa」は、そつのない形状、小型の寸法に、ゲーミンググレードとしても最高水準のトラッキング性能を備えたという、他には見られないタイプの製品だ。

 唯一の弱点は、ボタンが少ない、特にサイドボタンが存在しないという点だ。日頃サイドボタンを何らかの機能に割り当ててゲームをプレイしている人にとっては、本製品は選択肢から除外されることになる。たとえば、筆者の場合、職業柄、サイドボタンにスクリーンショット機能を割り当てている。本製品にはサイドボタンがないため、メインで使うシチュエーションはおそらくないだろう。

 しかしながら、客観的に判定して、サイドボタンの有無がマウス購入の決めてになるPCゲーマーがどれだけいるかというと、おそらく少数に限られるのではないかと思う。欲しいのは優秀なトラッキング性能と扱いやすいボディ、そして求めやすい価格設定だろう。そういう点においては本製品は非常に魅力的なチョイスだ。

 また、お手持ちのPCで、とりあえずゲームを始めて、例えば「サドンアタック」などのタイトルをプレイしてハマってしまったというカジュアルゲーマーが最初に手に取るゲーミングマウスとしては最適だと思う。本製品の持つ最高水準のトラッキング性能と、扱いやすい形状という材料は、ゲーミングマウスへのアップグレードを検討する上で、非常に好ましい選択肢になりうると思うからだ。

 さらに、本製品を使ってゲーミングマウスの快適さに慣れてきたら、同じ3G赤外線センサーを搭載するハイエンド品、「Deathadder」や「Diamondback 3G」などにアップグレードしていく、というシナリオが理想的だろう。「Salmosa」は、まさにそういった役割を担うべく生まれた製品だ。


□MSYのホームページ
http://www.msyshopping.com/
□Razerの日本語公式サイト
http://jp.razerzone.com/

(2008年12月25日)

[Reported by 佐藤カフジ]



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