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プロペ・中裕司氏インタビュー −前編−
Wii用タップアクション「レッツタップ」発売
コントローラに触れないまったく新しい入力方法を楽しんで欲しい

12月4日 収録

【レッツタップ】
12月18日 発売

価格:5,040円

CEROレーティング:A (全年齢対象)

【レッツキャッチ】
12月16日 配信開始

価格:1,000 Wiiポイント (1,000円相当)

CEROレーティング:A (全年齢対象)

コントローラーを箱の上に置いてプレイするという、これまでにない操作方法に発表直後の東京ゲームショウ2008でも注目が集まった「レッツタップ」
 株式会社セガと株式会社プロペは、12月18日にWii用タップアクション「レッツタップ」を発売、それに先駆け12月16日からWiiウェア用体感スポーツ「レッツキャッチ」の配信を開始した。両タイトルともWiiリモコンの特性を活かしたタイトルとなっておりそれぞれ特徴的な内容となっている。

 特に「レッツタップ」に至ってはコントローラーを持たないという、これまでのゲーム業界では思いもよらない発想からゲームが作り上げられている。このコントローラーを持たないという操作方法は大きな注目を集めたと同時に、そのゲーム性も含めて確認したいというユーザーが東京ゲームショウ2008のセガブースに集まり長蛇の列を作ったのは記憶に新しい。

 「レッツタップ」は箱の上にWiiリモコンを置き、箱をとんとんと叩く (タップする) ことでキャラクタの操作などを行なう。Wiiリモコンが持つ高い精度の傾斜センサーに注目して編み出された操作方法で、「レッツタップ」に収録されたゲームでは強く叩いたときと弱く叩いたときを読み分け、ゲームプレイに活かすようなシステムが採用されている。

 このゲームを作ったのがセガで数多くの作品を生み出し、2006年にセガから独立し新会社「プロペ」を設立した中裕司氏だ。セガマークIIIの「北斗の拳」、「ファンタシースター」、メガドライブ「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」、セガサターン「NiGHTS」、ドリームキャスト「チューチューロケット!」、「サンバDEアミーゴ」、「ファンタシースターオンライン」、ニンテンドーDS「きみのためなら死ねる」などなどなど、多数に渡るためその全てをここに書き連ねることは難しいほど。

 セガから独立しプロペを設立後、新作が待たれていたがなかなか発表されず、その動向が注目されていたが、ここに来て斬新なタイトルが2タイトル同時に発表された。そこで弊誌では「レッツタップ」が生まれた背景を初め、生まれるまでの苦労など多岐にわたって伺ってきたので2度に分けてお伝えする。前半では「レッツタップ」について伺った。


■ 「レッツタップ」誕生はちょっとしたきっかけから

今回インタビューにお答えいただいたプロペの代表取締役社長を務める中裕司氏
中 裕司氏(以下、中 氏) (パッケージを見ながら) 今日やっと製品版の箱が届いたんですよ。今までのはサンプルだったんですけど、これは生産ラインから届いたもの。やっとです。これから製品版、量産を通った最終版をチェックしないと……。

―― さらにもう1回チェックされるんですね?

中 氏 この前段階とかを見てはいるのですが、まぁ、大丈夫だと思います。

―― これから量産に入るんですか?

中 氏 もう量産してます。(付属の) タップボックスは、手でパッケージのなかに入れてないといけないんですよ。そのあたりは機械じゃ入らないので、手作業で入れるみたいです。初めは組んだ状態で……東京ゲームショウで発表したときは大きいパッケージで発売するつもりだったんですけど、お店にとっては大変だということで、ちょっと小さめになりました。小さめというか、タップボックスは潰して入れることにしました。お客さんに組み立ててもらうんです。工作する楽しみもあっていいかなと。

―― タップボックスを作るところからゲームは始まっているということですね。

中 氏 箱の作り方でだいぶ違うんですよ。丁寧に作っていただいたほうが安定する。普通に作ってしまうと安定しないんです。角を押してみると一番いいんですけど、ペコペコ……箱ってどうしても傾く可能性がある。あまり傾かないほうがいい。机とかにピッタリくっついたほうがいい。

―― 箱の裏に両面テープを貼って固定するという方法もありますね

中 氏 それでも大丈夫だと思います。組み立てる段階でちょっとねじっていただくとか。紙ですので、すべてがカッチリいくわけではない。プラスチックで作れればまたいいんでしょうが。そのあたりは、ちょっとゲームを遊べばなじんできたりするので……。

―― なじむ! なじむっていうのは、またいいですねぇ。

中 氏 だんだん自分なりの味になってくるとは思うんですよ。でも、最初は組み立ててから両角を押して大丈夫 (安定している) というのを確認していただければいいと思います。

―― 調整の仕方としては、端っこを押して“ゆがみ”がない、みたいな感じでしょうか?

中 氏 そういうのが1番いいですね。組み立てるので、どうしても傾きがでる場合がある。普通に作って大丈夫な場合もあるんですが、若干そういうケースもあるので、組み立てる段階で調整してもらえれば。

―― それでは、まずは「レッツタップ」が誕生するキッカケをお話していただけますでしょうか。

中 氏 1番最初はアクションゲームを作っていたんですけど、そのときコントローラーを“持って”遊ぶというか“仕掛け”を作っていたんです。持っている段階で“揺れ”に対して画面に変化があるようなものを実験で作っていたんですね。それを持ったままプログラマの席で確認して、 (コントローラーを) 置いて話をしてたんです。そのとき、机になにか当たって画面に反応があったんです。コントローラーに触ってないのに。

 それを見て「あ、Wiiのコントローラーってこんなに性能いいんだ」というのが1番最初。それが最初に発見したっていうか。(インタビュー時に目の前に置かれたWiiリモコンを見て) 今、現状でも反応しています。このように凄く反応はするんですが……机の端っこでも、タップすると普通に反応しますよね。これ隣の机とかでも反応するんだ……ということを試してみて、Wiiリモコンってこんなに凄いんだなって。

―― これだけきちんと細かく反応をチェックできるとなると、ハードのチェックにも使えますね。

中 氏 「レッツタップ」にはオプションで「タップの入力調整」を変更できるのですが、そこである程度は調整できますね。話がそれちゃうかもしれないけど設定を「3」に変えると、かなり強めにタップしても動かない。たとえば街道沿いにお住まいの方や、電車がすぐ横を通っている家でも、(そういった揺れがゲームに影響しないよう設定することで) 遊べるように用意してあります。

 どちらかというと、お子さんが遊ばれるときは「1」くらいに上げてるほうが良かったりします。どうしてもワーッと力一杯タップしてしまいがちで、そーっと遊ぶことができない子供も多い。まぁでも、そういうのを発見したっていうのが1番大きくて。その瞬間に「だったらコレで (ゲームが作れるね)」っていうふうに感じたんです。同じ強さで叩いたときの距離や加減が見えた。「タップしたときの強弱が (データとして) 取れるんだ」ということもわかった。強弱が取れるってことは、ゲームが作れるということなんです。その瞬間にゲーム化できると思いました。

 そのアイディアを思いついたその日の段階で「タップランナー」で走る、「花火」かなんか出してとゲームに関するアイディアも出しました。あと、「そーっと抜く」といったアクション。今でいう「サイレントブロックス」。その3つに関しては「すぐ実験でちょっと作ってみよう」という話になって。それが「レッツタップ」の始まりになるんです。

 そういう意味では、入力の面白さを発見した時点で、ゲームをすぐに発想することができた。そのあと作った「バブルボイジャー」や「リズムタップ」とかもそうなんですけど、新しい入力を発見したことで、色々なゲームが考えやすくなっていったのは事実ですね。まだこのあとも考えられると思うんです。だって、「ボタンを押す」という入力方法だけで、ゲーム誕生から今までシューティング、RPG、アドベンチャー、アクションとか一杯できてますよね。それと同じように、今回「入力方法が新しくなった」というおかげで、色々なゲームが発想できてしまう。既存のゲームでさえこの入力方法に置き換えるだけで、また全然違った遊びになります。その面白さは凄く感じ取れた。

 ですが、任天堂さんが「コントローラーをこういうふうに使っちゃダメです」と言うんじゃないかと不安は持っていたんです。作り手側からしたら、このゲームで1番の懸念でしたね。セガもなんていうかわからなかった。

 普通、先に企画書を持ってセガや任天堂に出すのですが、「レッツタップ」に関しては「出してもダメって言われるから (先に) 作ってから見せよう」って。それでゲームを作っちゃったんです。それで持っていって「どうですか?」と見てもらったのですが、「ああ、いいね」みたいな反応がもらえて。任天堂さんなんか「あぁ、凄くいいですね」っていってもらえたんです。

 おかげで世に出ることになりましたが、やはり新しいチャレンジ、新しい使い方をするということで、それが「いい」か「悪い」かちょっと読めなかったりもしました。25年もゲームを作っていますが、不安だなぁと思うところもありますね。でもまぁ、今までの経験もたくさんあるぶん、ここらへんまでのチャレンジならたぶん許容範囲だろうというところは読めていますけど。

―― しかし、コントローラーを持たないっていう発想は、大転換じゃないですか。そういった意味では今まででのチャレンジで一番不安だったのでは?

中 氏 そうですね。たぶんコレ、セガのドリームキャストで作ってたら、僕がねじふせて「いいじゃん、売ろうぜ!」って言ったと思うんです (笑)。やはり他社さんですので、オーケーをいただけるのかどうかわからなかった。

 Wiiリモコンの場合、「ストラップを必ずつけなければいけない」というのがありますよね。「レッツタップ」は、コントローラーを持たないじゃないですか。でも、ストラップをつけなくていいのかなという不安もあったんです。ストラップをつけて、箱をタップしなければいけないのかなと、ちょっと思ったりはしたんです。ですが、驚くことにこのゲーム……Wiiって起動時に「ストラップをつけてください」っていう画面が出ますよね。「レッツタップ」では出ないんですよ。

 実は最初は「ストラップをつけてください」という注意書きが入ってたんですよ。任天堂さんが「あの、ストラップ、つけられないですよね。出さなくてもいいですよ」って。「出さなくてもいいんだぁ」と思ったら、ちょっとうれしくなりましたね。立ち上げたときにみなさん「あれ、いつもの画面が出ない?」と思われるかもしれませんが。そのかわり違う「注意書き」だけは思いっきりたくさん出させていただいています (笑)。じゃないと心配なことが一杯あるので……。

―― 注意書きというのは?

中 氏 「手を傷めますよ」とか「爪で叩かないで下さい」とか。

 このゲーム、プレイするどんな人にとっても初めての入力方法となるので、みなさんどう叩いていいかわからないと思うんですね。我々的には手のひらとか指の腹で叩いていただくのが1番いいのですが。初めはわからなくて、爪で叩かれる方がいるんですね。そうなると、どうしても爪を割ったりケガをする恐れがある。ですから「気をつけてくださいね」という注意文が出ます。心配ですし。

 我々も最初は最初は机を直接たたいて遊んでいましたが、5分くらいしたら手が痛くて遊べなかったんです。その瞬間に、「もう、(このゲームを作るのは) 無理だな」と思いました。素晴らしく面白いけど、ダメだ。残念ながらこのゲームはここで終了……。僕らはゲームを作る間にテストプログラムを一杯作って、こういうゲームがある、こういう遊び方は? って色々試行錯誤するんです。この遊び方 (コントローラーを触らない操作方法) も「ここで終わってしまうんじゃないか」という瞬間が訪れていたんです。

 でも、週末に色々考えてみたんです。なぜ思い浮かんだのか覚えてないのですが、「Wiiリモコンを箱の上にのせたらいいんじゃないか」っていうのを、ふと思いつきまして。「箱の上でいいや、それだけで調整して作ってみよう」って。

 それで様々な箱で調整しなおして、最終的には箱をつけてもらえることになった。元々「箱はつけられないだろうなぁ」と思っていたから、セガさんが「箱つけようよ!」っていってくれたので、それはうれしかったですね。

 当初僕が想定していたのは「どんな箱でもいい」ということだったんです。「身近にある箱ならなんでもいいから用意して遊んでくださいね」というゲームにしようとしていたんです。箱にしたおかげで手もあまり痛くない。さすがに思いっきりやってると痛くなると思いますが、そのあたりはみなさんご自身の手ですから、加減していただかないと (笑)。

―― 子供さんとかは、ついつい熱中してやっちゃうかもしれませんね。

中 氏 そうですね。東京ゲームショウのときもタップボックスがベコベコになってましたから。物凄い勢いでドァーって叩いてしまうんですよ。でもこのゲーム、あまり強く叩くことを推奨していないんですね。たとえば「タップランナー」では、強く叩いたら前に進まないので、「あっ、もうちょっとそーっと叩かないといけないんだ」っていうことを学習していただきたくて、わざとそういう風にゲームを調整してあります。

 これはもう本当に、プレイするときに力の加減がわからないと思うので、気を遣って作ってあります。「タップランナー」は、その加減が面白くできたんです。速く走るためには、わりとタカタカ叩かないといけないけど、その延長で強くたたいてジャンプしちゃうと遅くなってしまう。ジャンプしないギリギリのところで必死に叩いていかないといけないというバランスの面白さが、物凄くうまく出せたと思うんですね。

 その「加減」というところが、人間は凄くうまくできている。負けていると焦ってちょっと強く叩いちゃったりするんです。前に自分が出て「一位だ!」と思っていると「がんばらなきゃ!」って(無意識のうちに力が入って)ジャンプしてみんなにピューッって抜かれるという。

 その辺が、今までのレースゲームの「色々な仕掛けで抜きあいをする」とかいうのよりは、プレーヤーの心と身体の動きでうまくそこのバランスが取れたと思います。このタップするという操作方法のおかげでできあがっている“ゲームシステム”だと思うんです。


■ 「自由でいて不自由な操作方法」をゲームシステムに落とし込む

―― 個人的にちょっとプレイさせていただいて、ぜひおうかがいしよう思ったんです。「自由なようでいて、不自由」なところ。うまくいかない瞬間が、凄く魅力的だったと思うんです。

中 氏 そこのあたりは、やっぱり1番の面白さです。うまくなってくると「ゲームがうまくなってきてる感じ」が凄く感じられる。うまくできるようになってきて、でもギリギリでスピードを上げようと思えば思うほど、ちょっと失敗することがあって「あっ、この辺が!」っていうところの加減が素晴らしく面白いですね。デジタルで作ってるゲームでは出せない感覚ですので。

―― 入力自体がアナログですし。

中 氏 その絶妙のバランスでうまく遊びを作れている。物凄く、そこは新しいところ。新しい入力も考えられたし、そこでの入力をうまく使ったゲームをまた考え付けたというところでは、凄く良かったぁと思います。本当に、一瞬のヒラメキだけで作ってます。一番最初の、プログラマーのところで見た瞬間くらいで。それだけこの入力方法が画期的だったし、ゲーム業界みんなが待ち望んでいたような入力方法だと思うんです。加減ができる入力……0、1の2値ではない細かい入力を、やっぱりみんな求めていたんだろうなぁって思います。

 僕なんかもずっと25年のあいだゲームを作ってきて、「ナイツ」のときもマルチコントローラーを作りました。あのときもアナログのレバーとかスティックを作らさせていただいたのですが、あれはスティックに関してはわりとアナログを使いきれたと思うのですが、レバーの方がなかなか、どうしても「ピッ」って全て引っ張ってしまうじゃないですか。本当は途中とかやりたいんですよね。半引き、全引きとか色々やってたんですけど、コントロールするのが凄く難しくて。256段階あるにも関わらず、ほとんどのゲームが0と255しか使っていないんです。みんな、使いたかったんです。ゲーム開発者も、プレーヤーも。

 車のアクセルとかは、わりと細かいところまで加減できるにも関わらず、指はもっと細かいことができるのに、加減ができない。人間の凄く細かいことができる動作を「受け付けてあげる入力方法」を、ゲーム業界は誰も発想できなかった。今回、この入力方法のおかげで、その部分がひとつ実現できたのは凄く良かったなぁと思います。Wiiリモコンの中に入っている傾斜センサーの性能の良さだと思うんですけど、距離なら距離で、ここらへんから叩いて近くなっていって……というだけでも入力に差が出たりしますし。そこはうまくできたなぁと思います。

―― 先ほど自由、不自由、うまくいかない瞬間という話がありましたが。それは調整の段階で出てきた?

中 氏 いえ、「タップランナー」とかはもう、一番最初の段階から。ほとんど一発で決めたところから、そんなに変わってないですね。

―― 調整でバランスを取るのが難しかったのではないでしょうか?

中 氏 今回は僕自身の時間がたくさん取れたんですね。ほとんどが僕が遊んで僕の調整ですべて作ったという。バランス調整すべて僕みたいな状態のゲームです。昔からそうだったんですけど、自分を信じて自分のバランスで作り上げようって。

 セガにいた頃ですと、たくさんのゲームを手がけていると、バランス調整までやれなくなっていました。そういう意味では今回は、凄く細かいところの叩き加減とか、バランスを変えたりといったところを凄くやっていきやすかった。それは、僕とディレクターの河原塚とでほとんどやれていると思うんです。あとは新入社員の人たちとか。たくさんの人たちに一杯プレイしてもらってデータ化して分析し、「やっぱり、この辺りのバランスでわりと狙いはあっているな」とチェックしながら、細かい調整をまた少しやっていく。

 そのなかで一番調整に時間をかけたのが「リズムタップ」なんです。「リズムタップ」は、音ゲーのなかでも強弱をうまく叩かないと成功しないのですが……それを当初「弱、中、強」の「中」のデータはとれないと思っていた。弱と強、弱いか強いかだけでゲームを作ろうとしたんですね。たぶん、そうじゃないと作れないと思ったのですが、調整の過程で真ん中もきちっと取れるし、強いか弱いかみたいなところのうまいバランスもしっかり取れたので、3段階(弱、中、強)のマーク (リズム玉) が流れてきて、そこをタタタ、タタタと、わりと音楽っぽく叩くことができた。コンゴとかボンゴみたいにできて、凄く良かったなぁと思います。

 ゲームの制作ツールの中に傾斜センサーのデータがグラフで表示されるものがあるのですが、それとずっとにらめっこしながら、そのデータを全部エクセルのデータにして分析して、何百個もデータの平均をとっていく。何人ものデータをとりチェックするという調整を、すっっっごくやったんです。

 ここまでWiiリモコンの傾きデータをとって作られているゲームも少ないんじゃないかと思うのですが、今回「レッツタップ」ではかなりそれをやってます。Wiiリモコンに関して相当データ分析をやれたんじゃないかなと思います。

―― 「タップランナー」や「バブルボイジャー」は、どちらかといえばステージやマップ構成に気を遣ったという感じですか?

中 氏 そうですね。わりと一番最初の決めうちで「タタタタダ」ってタップして走らせるという感じを決めてしまったら、それ以外はそんなに苦労してないです。「ソニック」とかを作るのと同じように、マップの難しさだったり、そういうところの面白さでちゃんと作っていった感じです。

【タップランナー】
タップを連打すると走り、“トンッ”と強く叩くとジャンプ。コースにはハードルや触れると“ビリビリ”としびれて動けなくなる“電気玉”といったトラップなど様々な仕掛けが配置されており、レースを熱く盛り上げてくれる。強くタップするだけでなく弱くタップしなければならない“タイトロープ”なども用意されているところがアクションゲーム的に熱い
【リズムタップ】
いわゆる音ゲー。右から流れてくるマーク (リズム玉) が左の指定された場所 (タップポイント) に来たときにタイミングよくタップする。強・中・弱の3つのリズム玉が流れてくるので、それに合わせてタップしなければならない。さらに「だんだん強くタップする」といったリズム玉も用意されている


―― 一番のお気に入りは「リズムタップ」ですか?

中 氏 僕一番のお気に入りは「ビジュアライザー」の「ジェム・ゲーム」です。

―― その理由は?

中 氏 ボーッとしながらいくらでもできてしまうからでしょうか。あまり考えなくていいゲームですよ。本当に、空間に浮かぶ器に入れるだけですから。僕のなかでは「レッツタップ」のなかで一番面白いですよ。これができた瞬間に「あぁ、これ絶対にいいなぁ」と思って。

 元々「ジェム・ゲーム」自体は“ただボールが跳ねるだけ”みたいな内容だったのですが、「ビジュアライザー」のなかにあるので“変化だけを楽しむもの”というのをやってみたんです。「物理演算で球を動かして楽しいというだけでいいじゃないか」なんて最初は思っていたのですが、「やっぱり、もう少しゲームらしくしようかな」と思って器を用意したんです。昔あった「ウォーターゲーム」……水の入った容器の中に迷路のようなものがセットされていて、ボタンを押したら水圧で輪っかが飛んでって入るみたいな遊びがあるじゃないですか、あの遊び。無心にやっていたこととかないですか? あんな感じをゲーム化してみた……ということなんですよ。それがデジタルでできるからこそ、やれることをゲーム化してみたかった。

 このゲームでは全てのボールの色を全て同じ色にするという目標があるのですが、物理演算を使っていることから、いいところで同じ色のボールが上手く器に入らなかったりするんです。この悔しくもあり、「アーッ」と思う心の動きをどれだけ出せるのか。「うまく入るかな? 入らないかな?」というバランスがうまく取れているので、ずっと続けられる。やると何十分でも無限に叩けますよ。会議中だろうとなんだろうと、ずっと叩ける。とっても楽しいです。

 このゲームがあまりに楽しかったので、これなら叩くだけで大丈夫なので「ペンギンでも遊べるゲーム」って謳ったんですね。「世界初、ペンギンでも遊べるゲーム」っていうのは、これだったらペンギンが認識してパタパタってやってるだけで楽しめるだろうってところ。なかなかTVゲームで……パチンコとか以外で、ほんの少しの入力加減で、それに対してずっと集中しながら楽しめると言うゲームは、ゲーム業界では意外とないんですよ。そういったものを僕がいつか作りたかったのですが、かなりいい線いけてるゲームができたなぁって。この「ジェム・ゲーム」が一番いいですね。僕の個人的な趣味になると思うのですが。

 まぁでも、ゲームのなかでいくと、たぶん「リズムタップ」が一番よくできていると思います。音ゲーってたくさんあると思いますけど“もっとも進化した音ゲー”ができたと思います。ボタンをただ押すとかっていうのと違って、そこに対して入力(の違い)が出せるっていう面白さって、凄くうまくできたと思います。

 ちょっと“今風じゃない”ゲームのほうが多いですけど。昔面白かったよねっていう作りを、かなりしています。このアクションゲーム「バブルボイジャー」とかもそうですし。「サイレントブロック」なんかも、棒倒しみたいなものをうまくゲーム化できていると思います。

 「バブルボイジャー」は、シューティングゲームの面白さ。昔スコアアタックに凄く燃えたと思うんですけど、実は思いっきりスコアアタックに特化したゲームに作ってあるんですね。「何点までこのゲームはいくか」というところを、凄く追求して作ってある。凄くシンプルなんです。

 「どうやったら点数が上がるんだろう」ということを、昔は考えたじゃないですか。それがわかってきたときに、それを実行することによる緊張感っていうのが、うまく出せたと思いますね。しかも、操作性の不自由さがゲーム性にマッチしている。最初始めるときは普通にプレイするだけでいいのですが、スコアアタックをしていると、絶対にパーフェクトを取ったほうがいい。パーフェクトを取れるかどうかというところの遊び。それがうまくできたときの楽しさ、ゲーム本来の凄く細かい操作ができたときの喜びが、うまく表わせたゲームだと思うんです。

 「バブルボイジャー」も相当……シューティングゲーム、昔「ゼビウス」や「グラディウス」が大好きだったんですけど、そういう「昔ながらの楽しさ」が出せたかなぁと思います。

【バブルボイジャー】
自機「バブルボイジャー」をタップによって操作し、障害物を避け進めていくアクションゲーム。タップを続けると上昇し、何もしないと下降する。ステージを進んでいくと徐々にエネルギーが無くなっていくため、ステージ内にあるエネルギーを取り補給しなければならない。機雷を避け、ミサイルを使い分けて進めていく。マルチプレイでは、ステージにあるアイテムを上手く使い同時プレイ可能なアクションシューティングでシングルプレイとは違ったルールが採用されている



■ 入力方法が新しいのでゲームはわかりやすくした

―― 「ちょっと懐かしい」とおっしゃいましたが、それはたまたまという感じですか?

中 氏 いえ、どちらかというと新しい操作方法を取り入れている分、ゲームのシステム的にはわかりやすいものから入っていったほうがいいだろうなと思って、意図的にそうしました。わからない操作でわからないゲームをやってしまうと、よりわからなくなる。

 どういうゲームかはイメージできていて、それに対して入力方法がこういうふうに違うんだよっていう面白さを感じてもらえばいい。「バブルボイジャー」も「普通のシューティングですよね」っていうことを言われたりします。でも、この新しい操作性で、見たこともないような画面を用意すると、たぶん誰もついてこれないと思うんですよ。

 昔セガの社長だった中山隼雄さんが、その当時セガで言ってたのは「1歩先を行くんじゃない。半歩先を行くんだ。そうじゃないとエンターテインメントはダメなんだよ」っていうお言葉があって。今それが凄く「あぁ、なるほどな」って思えるんです。セガはよく1歩行き過ぎるんです。僕も1歩行き過ぎちゃう人。「ファンタシースター・オンライン」とかもそうですし。「半歩先」と言われていたにも関わらず、あまりにも行き過ぎちゃう。そういう意味では、今回は「1歩行かないようにした」というのが大きいかもしれません。新しいことを考えたなかで、わりとわかりやすいなかで、楽しんでいただく。そのほうが、よりたくさんの人に楽しんでもらえるだろうと。

 やっぱり……なんですかねぇ。Wiiでゲームを作る以上、ファミリー層、カジュアルゲーマーと呼ばれる人たち、なるべくたくさんの人に楽しんでもらうためには「わからないもの」をやってしまうと、たぶん誰もついてこれなくなる。そういう意味では、わりとなんとなく知っているような感じのゲームを新しい操作性でやる。もしこのゲームが凄く売れたら、この操作性で次の作品を作ることも可能だと思うのですが。昔の僕だったら、最初からもっと最先端のものを目指していたと思う。ちょっと勉強して、抑えてみた感じじゃないかなと思うんですけどね。

―― 収録タイトルは5つですが、この他にもゲームを考えつかれていたんですか?

中 氏 考えついてますね。色々。まだこれ以外にもたくさんあります。

―― では、さっきおっしゃったような理由で、今回はこれを選ばれたということですか?

中 氏 そうですね。というか、本当はこれ程のボリュームを入れるつもりもなかったんです。本当は「リズムタップ」とかは「レッツタップ2」のつもりで僕は考えていたんです。もっと楽曲も増やしておいて……とか。どちらかというと「総合的なゲームの面白さを上げるため」に、ちょっと前倒しをしている部分もあるんです。僕らがこのなかで「アジャスター」と呼んでいた遊びがあるのですが、それも「タップランナー」最終面に片鱗を突っ込んであったりします。

―― それはどういった内容なんでしょうか?

中 氏 先ほどの「リズムタップ」は「弱・中・強」しかデータを取りませんが、そこの本当に細かいデータを全部とり「ココならこのくらいの強さでタップしなければならない」と狙ってタップする遊びです。「タップランナー」の最終面で「カタパルト競争」というモードがあるのですが、「トン」とタップするとちょっとしか飛ばないのに「ドンッ!」とタップすると遠くまで飛ぶ。先に置いてある物体に当てなければならないという遊びですね。本当はそれでひとつモードを作るつもりだったのですが。

―― 1本追加しないところが、1歩先ではなく“半歩先”という感じですか?

中 氏 そうですね。ですが、まったく入れないのではなく、そのあたりの要素も入れておきたくて、少しづつ入れてあります。あと、作っていくなかでいくつか面白いことを見つけていたりするので。

―― この操作方法はまだまだ広がるということですね。

中 氏 売れれば作りたい! と凄く思ってます。これが大ヒットしてくれたら、次ちゃんと作りたいなぁと思います。ですが、なかなか。今この世の中の不景気とかもありますし、ゲームに対してどれだけみなさんが面白いと感じてもらえるかによると思うのですが。うまく皆さんに認知してもらって、面白そうだなと思ってもらえれば、結構ヒットするかと思うのですが……。

【サイレントブロックス】
高く積み上げられた色違いのブロック。タップすることでブロックを引き抜いていく。激しくタップするとブロックが崩れてゲームオーバーとなる。モードは1人づつ順番にブロックを引き抜いていき、ブロックを崩した人が負けとなる「アンリミテッド」。同じ色のブロックを揃えると1度に消えてジュエルブロックに変化し、どんどん色を揃えていく「アルケミスト」、「アルケミスト」においてプレーヤーが条件を設定しそれをクリアした人が勝ちとなる「アルケミスト レース」の3つが用意されている
【ビジュアライザー】
中氏がお気に入りの「ジェム・ゲーム」。タップすることでジュエルボールを跳ね上げさせ、籠に入れていく。同じ色のボールが入り続けるとフィーバーし、さらに高みを目指すことができる 「花火」。タップする強弱により様々な美しい花火が上がる。画面にはタップの組み合わせなどが表示される
「絵具」。様々な色のインクで、タップすることによって絵を描くことができる。組み合わせでここに掲載したスクリーンショットのようなグラフィックスが描かれることもある 「川」。タップをすることで川に波紋を作る。タップのタイミングで色々な生物が登場。さらにタップすることで生物の反応も変わってくると言う


―― 追加配信などは考慮されなかったのですか?

中 氏 このなかにはないですね。

―― パッケージとして購入して遊んでいただきたいということですか。

中 氏 元々「タップランナー」とか、Wiiウェアで配信しようかなぁと思った瞬間もなくはないのですが、きちんとしたパッケージで遊んでもらうことにしました。それを楽しんでもらえるのが一番いいんじゃないかなと思います。

―― それで操作方法を楽しんで、馴れてもらいたいと。

中 氏 色々なジャンルのゲームをこのゲームの入力方法にあてはめるだけでも、結構色々なものができるんですね。そういったところをどこかのゲームクリエイターの方が「これをこうしたら面白いから、こうやって作ろう」と思ってもらえるかもしれませんし。

―― ではこの入力方法を他のクリエイターにもどんどん使って欲しいという気持ちはありますか?

中 氏 それはありますね。できればセガに作ってもらいたいんですけどね (笑)。僕は25年間ゲームを作ってきて、たぶん今回「もっとも新しい操作方法が思いつけた」んじゃないかなぁと。ここまで驚いたのは……たぶんマウス以来だったかもしれないですかね。マウスとかって、初めて見たとき「なんだこれ! すっげぇ!」って。凄い衝撃的だったんですよね。

 入力という意味では (「レッツタップ」は)、それくらい新しい。コントローラーを裏向けにしているという、ある意味普通ではない状態なのですが。きっと、この操作方法に慣れたハードやソフトメーカーの方が、今後新しいハードを作るときに「この入力ができるコントローラー」を開発されるのではないかと期待してるんです。たぶん、色々な人の発想は刺激したと思うんですね。なるほど、こういうふうに間接的に入力することによって、人間の細かい動作を入力することが可能なんだな、と。

 「傾斜センサー」自体は“傾き”を見るためのものなのですが、こういう“加減の入力が取れるセンサー”を、センサーメーカーさんが開発するかもしれないじゃないですか。それが、どこのチップメーカーさんかはわかりませんが、ゲームメーカーに売り込まれて実際に使われるかもしれませんし。

 たぶん、確実にそういう人たちを刺激できたんじゃないかと思います。次のゲーム業界の新ハードが出るときが楽しみだなぁと。そういう入力があることの広がりというものが、たぶんみなさんにも感じられると思うんです。その次のステップというのが生まれてくれば、次世代機も面白くなると思いますし。

 僕自身このゲームの企画書を一番最初にセガに出したとき「今のゲームのプレイスタイルを変えたい」と書いているんです。企画書に書いてあるスタイルはWiiリモコンが置いてあって、人のポーズが書いてある。そもそもが「プレイスタイルが変わるよね」って、ゲームの途中でワイングラスかなんか持っていたりする (笑)。それくらい、軽くゲームができるよねというプレゼンテーションだったんです。

 20数年もコントローラーを持ってゲームするのは格好悪いなぁと。あちこちで何回もそういう提案をしたことがあるんです。「ギター (のコントローラー) とか格好いいじゃない!」とか言って。一番は「そのほうが女の子にモテるよね」って。「ゲームやってんだ俺!」、「えー、ゲームやってんの? こうやってるんでしょ?」っていうのは格好悪いけど「ゲームやってんだ、俺!」ってギターを弾く格好をやってるほうが格好いいし、モテそうじゃないですか。

 「俺は『ゲーム』をそういうふうにしたいんだ!」というのを、あちらこちらで言ってきました。セガでもずっと言っていました。なにか、スタイルを変えたいという。寝ててもいいんですよ、あんまり格好よくないのですが、なんでもいいんですよ。入力方法を変えたおかげで、これまでとは違う方達がゲームをプレイするようになるのが面白いなぁと思います。今後もっと……SF映画とかだと、壁とかをピピピッと触るだけで動いたりする。あんなのができるといいなぁと思うんですけどね。

 タッチパネルを取り入れたニンテンドーDSとか、凄いですよね。タッチパネル自体は昔からあったので、あれをゲームに取り入れた任天堂さんは、やっぱり凄い。入力方法を新しくしたかったんですね。

 Wiiも同じような発想から作られたようですが、なかなかコレってうまく使いにくいんですよ。みなさん、ポインタを向けても左、右、真ん中、くらいの方向しか使えないんです。真ん中といっても、真ん中でじーっと持ってると揺れるじゃないですか。そのために、通常のゲームだと“遊び”が必要になるので (精度の高い部分を) 切っちゃうんですね。そこを僕らはうまく使っていった。みなさんが切り捨てたところをゲーム化したようなものなんです。うまく切り捨てているところが、意外といい動きをしていることに気づけたのは、本当に良かったなと思いますね。そのおかげで、色々なアイディアが浮かんできましたし。あとは、売れてくれれば……売れるといいなぁ (しみじみと)。

社長室において、マイボックスでゲームの調整を行なう中氏。「自分の箱を持つことが重要」と言い、使い続けることで手に馴染んでくる瞬間があるのだという すでにいくつかは処分したのだと言うが、プロペの打合せスペースの一角にはテストで使用した箱がいくつか残されていた。金属製の箱などは安定性があるかもしれないが、少しウルサイかも


―― 後編に続く

(C) SEGA/PROPE

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□プロペのホームページ
http://prope.jp/
□「レッツタップ」のページ
http://prope.sega.jp/letstap/
□「レッツキャッチ」のページ
http://prope.sega.jp/letscatch/
□関連情報
【12月16日】セガ、Wii「レッツタップ」&「レッツキャッチ」
連動隠し要素の情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081216/lets.htm
【12月11日】セガ、Wiiウェア「レッツキャッチ」
3つのモードのプレイムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081211/lc.htm
【11月25日】セガ、Wii「レッツタップ」
テレビCM映像を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081125/tap.htm
【11月21日】セガ、Wii「レッツタップ」
「リズムタップ」モードの収録曲を細江慎治氏らが作曲
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081121/tap.htm
【11月19日】セガ、Wii「レッツタップ」
プレイシーンを収録したプロモーションムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081119/tap.htm
【10月17日】セガ、Wii「レッツタップ」とWiiウェア「レッツキャッチ」
発売日、配信日が決定。「レッツタップ」の体験会を実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081017/lets.htm
【10月12日】「東京ゲームショウ2008」セガブース、セガブースレポート
「428」、「レッツタップ」など、新作タイトルがプレイアブルで出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081012/sega.htm
【10月10日】「東京ゲームショウ2008」セガブース、イベントレポートその1
期待の3プロジェクトの記者発表会を開催!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081010/sega1.htm

(2008年12月25日)

[Reported by 船津稔・豊臣和孝]



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