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会場:韓国国際展示場(KINTEX)
入場料:4,000ウォン(前売り2,000ウォン)
Jeff Kang氏はBlizzard Entertainmentが開発している「Diablo」シリーズの最新作「Diablo III」のコンセプトアートとエンバイロメントデザインを担当している。「Diablo III」が初めて発表された今年6月に開催された「2008 World Wide Invitational」で、Jeff Kang氏が「Diablo III」の開発に参加していることが紹介された。韓国内では韓国人が開発の主要メンバーに入っていることでも話題を集めた。 「Diablo III」は前作から20年後の物語。舞台には新しく登場する都市Caldeumと「Diablo」シリーズで登場するTristramを軸として「Diablo II」から広大になった世界観になっている。これまでのシリーズを受け継ぐゲーム性であることは発表されているが、革新的な部分はまだ公開されておらず、ファンはやきもきしながら次の情報公開を待っている状況だ。
今回のJeff Kang氏でもこの核心部分は明らかにされなかったが、「Diablo III」がどのような理念で、制作過程で作られているかが明らかになった。本稿ではスピーチの内容を紹介したい。 ■ 「Diablo III」のアートで活用されるBlizzard Entertainmentの6つの美術哲学
Jeff Kang氏はシリーズをプレイして、「Diablo」はやはり“恐怖ゲーム”だということを再認識したという。さらには「Diablo II」ではその世界観が拡大されていると感じ、そこから「Diablo III」も恐怖感をそのまま継承し、さらに拡大された世界観を作ることを決心したという。 Kang氏は、「Diablo III」はBlizzard Entertainmentが追求する6つの美術哲学を継承している、と語る。その6つの哲学とは、“現実を飛び越えるスタイルの形成”、“力動的なアニメーションの具現化”、“ハッキリとしたシルエット”、“ゲーム進行のサポート”、“思い切った色を使用”、“壮大なスケール感の演出”である。 “現実を飛び越えるスタイルの形成”は、「コミックのようなモノではなく、現実にはないけどリアリティがあるアートにすること」だという。Kang氏は、“力動的なアニメーションの具現化”の具体例として、BarbarianのLeapというスキルムービーが流された。Barbarianがジャンプし地面に武器を叩き付けるスキルで、地面に降りた瞬間に地面の揺れが1カ所に集中されたエフェクトが力動的なアニメーションを演出している。 ゲームの画面を見た瞬間、自分のキャラクタとモンスター、アイテムがすぐわかるようにするのが“ハッキリとしたシルエット”だという。“ゲーム進行のサポート”は、ゲームプレイの上で、謎を深めるために道が見えなかったり、わかりにくくするようなことはしないという考え方であり、Kang氏は「ゲーム進行をサポートするアート。ゲームプレイのためのアートでなければ、良いゲームアートとは呼べない」と強調した。 Kang氏は「『Diablo』を当時プレイした時は、ただ灰色で暗い恐怖ゲームだったという印象だったが、改めてプレイしてみたら意外にも様々な色が使用されたことを発見できた」という。そこにヒントを得て、「Diablo III」では青と緑を思い切って使用したという。これが、“思い切った色を使用”である。 これらを総合的に“壮大なスケール感の演出”で表現することによって「Diablo III」が生まれる。Kang氏はBlizzard Entertainmentの美術哲学に従い、「Diablo III」のアートを描いたことを強調していた。
Kang氏の言葉から、今まで公開された「Diablo III」のスクリーンショットやムービーを見ると特にカラフルになったのが印象的である。逆に鮮やかすぎてこれまでとは違う明るい感じもある。このアートの変化がシリーズ作品としてどんな印象の変化をもたらすのか、興味のひかれるところだ。 ■ 「Diablo III」のアートで活用されるBlizzard Entertainmentの6つの美術哲学
まず、第1段階ではブレインストーミングから始めるという。「Diablo III」のブレインストーミングでは部署や担当を問わず、恥ずかしがらずに積極的にアイディアを出し合うことを目指しているという。 「打ち合わせ以外にも、社内で日常の会話でも誰もがアイディアを出し合うというのが『Diablo III』開発チームの長所だ」とKang氏は語る。出されたアイディアが時間的、空間的、ストーリ的に適切であれば、実際にゲーム画面には現われる可能性がなくても、予想できる範囲全部を入れたラフなアートを描くという。 第2段階では3Dテンプレートを作るプロトタイプ制作段階に入る。第1段階のラフなアートをシンプルにモデリングし、実際にゲーム内で歩いてみることで、ゲームデザイン的に適切かをもう一度確認して見るという。 第3段階は、第2段階で作ったアセットでオブジェクトを保存して、使うことができるライブラリーを運用する段階で、「モジュール」作業と呼ばれるものだ。完成前のレベルまで制作し、必要なら修正を行なっていく。 最後に、第4段階ではフェード、エフェクト、物理効果、テクスチャ、オプティマイズ(最適化)といった作業を行なう段階である。第4段階までの作業が終わってでも、完璧ではない。実際のゲームで必要でないと判断が下されば、スケジュールが延ばされる事があるとしても、第1段階に戻して最初から作り直すという。最後にKang氏は「我々は完璧でないと作り直す。完璧なゲームでこそファンの期待に応じることだと思い、努力している」と語り、スピーチを終えた。 Q&Aでは「Diablo III」のアートに関する質問や、Blizzard Entertainmentの開発システムについての質問が多かった。なかでは、「Diablo」シリーズのファンたちの間でも話題になっている「Diablo III」の明るさについての質問あった。「Diablo III」は前シリーズに比べて、カラフルで明るく“前作の雰囲気とは違う“というのが、「Diablo」シリーズのファンからは不満となっている。 この点に関して、Kang氏は「『Diablo III』はより厖大になった世界観を持っている。プロモーションムービーで登場するマップは限られた一部分に過ぎず、前作より暗く、恐怖感溢れるマップも存在する」と語った。「Diablo III」は前作以上に多様な世界を見せてくれるようである。Kang氏は。「さらには期待に満足できるムービーやスクリーンショットが今後公開される予定で、もう少し待ってて欲しい」と語った。今後の情報に期待したいところだ。 今回の講演は、Kang氏個人の言葉ではなく、チーム全体の理念という印象を持った。満足できるまで作業をルーフさせるところはBlizzard Entertainmentがよく口にする“完璧になるまで作り直す”という哲学に従ったやり方と言えるだろう。 「韓国最新オンラインゲームレポート」の連載を手掛けている筆者は、韓国のゲーム開発の状況に触れることも多い。そこで感じるのは、韓国のデベロッパーは「何としててもスケジュール内にゲームを完成させる」という傾向が強いということだ。
デベロッパーそれぞれ、開発環境や様々な状況が違うため、どれが正しいとは言えないとは思うが、Kang氏が語る「Diablo III」の開発理念は、スケジュール第一の韓国とは全く逆のものに感じ、面白かった。 Kang氏のスピーチは韓国の業界者、学生たちに印象深いものだったのではないだろうか。
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□G-Star 2008のホームページ (2008年11月16日) [Reported by Dong Soo “Luie” Han]
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