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会場:韓国国際展示場(KINTEX)
入場料:4,000ウォン(前売り2,000ウォン) 例年G-Star初日は平日にあたり、実質ビジネスデイといった雰囲気で、大手メーカーの発表会に当てられ、会場は比較的閑散としていることが多いのだが、今年は違っていた。G-Star初日となった11月13日は、日本のセンター試験に相当する大学修能試験の日で中学高校が休みということもあり、試験に関係のない中学生や高校生らしき来場者たちで会場は初日からごった返した。 本稿では取り急ぎ、「G-Star」の概要と初日の模様をお伝えする。初日のメーカー発表会の模様や新作タイトルの具体的な出展内容については、別稿にて詳しくお伝えしていくつもりだ。
■ 李明博大統領就任後初のゲームショウ。オンラインゲームショウとしての位置づけが明確に
G-Starの大きな特徴としては、韓国政府の強い要請により、韓国大手メーカーは必ず出展しているという点と、ビジネスマッチングを促進するためのBtoBコーナーが充実しており、さらに日本のCEDEC(CESA Developers Conference)に相当するKGC(Korea Games Conference)が併催されているところなどだ。 今年の開催規模は、昨年とほぼ同一で、変化がない点は寂しくもあるが、開催4年目にしてようやくショウとしての体裁が固まってきたという印象も受けた。ジャンルとしてはPCオンラインゲームを筆頭に、PCゲーム、コンシューマゲーム、アーケードゲーム、ボードゲーム、e-Sportsなどバラエティに富んでいる。ただ、日本の東京ゲームショウではコンシューマゲームが圧倒的なシェアを占めているのと同様に、G-Starでは過半数がオンラインゲームという状況になっている。その他のジャンルは、アーケードゾーン、コンソールゲームゾーンといった形でひとまとめにされてしまっており、実質的にはオンラインゲームのショウになっている。 BtoBコーナーも必然的にオンラインゲームメーカーが盛況であり、欧米、中南米、中東、東南アジアなど世界中から実に80社以上のメーカーが出展し、全世界から訪れたバイヤーと分刻みのミーティングが行なわれていた。日本からはサイバーステップ、ゲームポット、セガなどが出展。昨年に比べると半分以下の数字で、日本だけ見ると勢いが減退しているが、全体としてみると依然として盛況であり、オンラインゲーム関連の商談ならG-Starという位置づけは、確固たるものになっている印象だ。 こうしたことから、バイヤーもオンラインゲーム目当てが過半数を占めるため、いよいよオンラインゲームメーカー以外のコンソールメーカーやアーケードメーカーにとっては参加するメリットが薄くなってしまっており、オンラインゲームのみに生きるつもりならまだしも、そうでないなら対策を練る必要を感じた。 さて、今年の韓国大手メーカーは、NCsoft、Nexon、NHNの3強を筆頭に、JC Entertainment、CJ Internet、SK Telecom、Neowiz、T3 Entertainment/Hanbit Softなど、名のある韓国大手メーカーはほとんど顔を揃えた。各社ともG-Starに対する取り組み方はさまざまだが、海外から訪れるバイヤーにとっては、韓国大手メーカーと確実に交流できる場として非常に有益である。
KGCについては、開催規模は前年並み。NCSoft開発本部長兼「Blade&Soul」プロデューサーのJames Bae氏と、Blizzard Entertainment「DIABLO III」アートデザイナーのJeff Kang氏といういずれも韓国で高い注目を集めるタイトルに関連したキーノートスピーチが注目される。日本からは、GDCやKGC常連スピーカーであるIGDA日本代表の新清士氏や、ゲームリパブリック代表取締役社長の岡本吉起氏などが参加している。
■ 韓国大手は盤石ながら、パブリッシングタイトルが急増。コンシューマはXbox 360のみ
その他、会場での影響は感じられなかったが大型のM&A案件として、NexonによるNeopleの買収、DragonflyによるPhantagram/Bluesideの買収などがある。これらに共通しているのは、自社開発タイトルに成功したメーカーが急成長し、失敗したタイトルは買収の憂き目にあっているという単純な事実だ。 こうした事実を反映してか、今年の新作は、他社からライセンスを獲得して展開するパブリッシングタイトルが増えていた。昨年の時点で日本産や欧米産といった海外タイトルが増えていたが、今年は、韓国内の独立系デベロッパーの作品をライセンスした作品が増えていたのが特徴だろうか。自社開発にこだわるメーカーは今やNCsoftとJC Entertainmentぐらいになりつつある。 それに付随して、いわゆる“大作”も見られなかった。2005、2006年頃は、開発費100~200億ウォン(当時で約10億~20億円)クラスの大作を各社で競い合うように開発していたが、その後、サービスの終了や開発中止が伝えられたことは記憶に新しい。今年はそれらに続く韓国を代表するような大作は1本もなかったといっていい。 今年のG-Starにおいて大作不在の理由はいくつか考えられるが、ゲームショウとオンラインゲームのそもそもの相性の悪さや、タイミングの悪さ、そしてメーカーの消極性といった小さな理由以前に、オンラインゲームの開発に10億円や20億円も突っ込むような開発の仕方そのものが市場性に合わなくなっていることが挙げられる。 オンラインゲームの開発に、たっぷり予算と期間をとっても、コンシューマゲームの人気シリーズの続編のようにある程度数が見込めるビジネスではない上に、韓国や日本で実績を上げながら、なおかつ中国や台湾、東南アジア地域でも成功を収めるという非常に長く険しい道のりをクリアしないと商業的成功には結びつきにくいからだ。こうしたことによって、大作主義を維持しているメーカーは1本や2本の失敗ではビクともしない財務体質を持つNCSoftぐらいになりつつある。 そのNCsoftが現在開発している次期主力タイトル「Blade & Soul」は、完成度が十分ではないという理由から未出展だった。その代わりに11月11日にオープンβテストがスタートしたばかりのMMORPG「AION」を出展。OBT中のタイトルだけに集客はいまひとつだったものの、G-Star初日に同時接続者数17万人を突破したことがブース内で報告。大作MMORPGとしては久々のヒット作になりそうである。 大作が減った一方で、今年目立って増えていたのは、奇抜なアイデアを活かしたカジュアル寄りのMMORPGとアクション性の高いMORPGである。その総本山と言えるメーカーがNexonだ。 NCsoftはこのところ年に数本リリースすれば多い方という寡作メーカーになりつつあるのに対して、ライバルのNexonは相変わらず多作である。自社内で5本以上の開発パイプラインを持つだけでなく、数多くの独立系デベロッパーとのパートナーシップも有している。どちらが良い悪いという話ではなく、明確に企業文化が異なる。両社ともチャレンジ精神が旺盛で、韓国を代表するデベロッパー集団という点では共通している。 Nexonは「Zera」の失敗以降、大作こそ無くなったが、年に5~6本ペースで新作タイトルをリリースし続けている。今年もプレスカンファレンスにおいて、自社タイトル、パブリッシングタイトル併せて5タイトルの完全新作を発表。ブースではそれらの試遊台を公開し、さらに昨年発表して話題を集めた「マビノギ英雄伝」と「ハスキーエクスプレス」の試遊台も設置。計7タイトルの新作を発表した。
ちなみにブースの集客の面ではNexonが他を圧倒していたことは特記しておきたい。開幕と同時に来場者が駆け足で向かった先はNexonブースということが多く、朝から大混雑していた。人気が高い理由は簡単で、Nexonが出展したタイトルは、会場に行かないとプレイできないタイトルばかりだったためだ。韓国メーカーは、βテスト前のタイトルはなかなか出展したがらないが、すでにβテストが始まっているタイトルは、わざわざソウル郊外まで足を運ぶモチベーションにはなりにくい。この点については、多くのメーカーに学んでほしいところだ。
毎年本稿では、G-Starを通じた韓国ゲーム産業のトレンドレポートを行なってきているが、今年は特にトレンドと言えるものはないように思える。大作至上主義の失敗、韓国経済不況、輸出産業には大打撃となるウォン安というトリプルパンチをいかにしのぎきるかで頭がいっぱいというメーカーが多く、守りに入ってしまっていて、市場としてのおもしろさは感じることができなかった。 G-Starは、世界中のゲームショウの中でもきわめて移り変わりの激しいショウだ。3年前はゲームポータル、一昨年は大作MMORPG、昨年はFPSがそれぞれ目立っていたが、今年はいずれも見る影もない。依然として根強く生き残っているのは、比較的低予算、短期間で開発できるカジュアルオンラインゲームだ。それは現在日本でニンテンドーDSやプレイステーションポータブルへの開発が活発化しているのに似ているといえるかもしれない。 市場的には依然としてPCが一番人気のゲームプラットフォームであり、いかなるゲームコンソールもPCの牙城を崩すことはできなかった。この頑なまでの保守性は、韓国ゲーム市場の大きな特徴のひとつであり、水面下では、コンシューマゲームのデベロッパーが、再びPCオンラインゲームに戻りつつあるという話も耳にした。
そのPCオンラインゲームの牙城で、次にどのようなオンラインゲームが生まれつつあるのかは、残念ながら今年のG-Starでは見ることができなかった。ただ、多くの韓国ゲームファンが、新作オンラインゲームを遊ぶために、長い列を作って会場を待つシーンが見られたことは数少ない明るい話題のひとつであり、そうしたユーザーを満足させるオンラインゲームとは何なのか、残りの会期も注視していきたい。
□G-Star 2008のホームページ (2008年11月13日) [Reported by 中村聖司]
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