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★PCゲームレビュー★

あの「銀英伝」がリアルタイム戦術シムとして登場
数万隻の艦隊を指揮して嗜む用兵の妙味

「銀河英雄伝説」

  • ジャンル:リアルタイムシミュレーションゲーム
  • 開発元:マイクロビジョン
  • 発売元:バンダイナムコゲームス
  • プラットフォーム:Windows XP/Vista
  • レーティング:CERO:C(15歳以上対象)
  • 価格:通常版9,240円(税込) / 模型付き限定版11,340円(税込)
  • 発売日:10月16日(発売中)



 戦争を題材とするコンピューターゲームには、そのスケールに応じて幅広い様態がある。最もミクロなスケールは、ひとりか数人の兵士に視点を置く、アクションゲームや1人称視点のシューティングゲームだ。最もマクロなスケールは、国家レベルの勢力を統率し、兵力を戦略単位で指揮するというストラテジーゲームである。

 今回ご紹介するPCゲーム「銀河英雄伝説」は、上記2つのスケールのどちらにも属さない。これは、戦争における戦闘と戦略の“中間”のスケール、すなわち戦術をテーマとしたゲームだ。限定された戦場において、数千、数万隻の艦隊を率い、用兵の妙を競う楽しみに特化した作品なのである。

 田中芳樹による同名の小説を題材とする本作では、銀河の歴史を彩る数々の会戦を、ラインハルト・フォン・ローエングラム(ミューゼル)とヤン・ウェンリーという2人の主人公のドラマを軸に追体験することができる。ティアマト、イゼルローン、アムリッツァ、ヴァーミリオンといった数々の宙域で、プレーヤー自らの手で艦隊を指揮し、勝利を目指すのだ。


■ リアルタイムに艦隊を指揮し、用兵の妙を競う。提督体験を味わえる戦術シミュレーション

新たな「銀河英雄伝説」はリアルタイム戦術シミュレーションとして登場。プレーヤーの用兵手腕が問われる
 本作と同様のカテゴリに属するPCゲームタイトルとしては、Creative Assemblyの「Total War」シリーズや、1C Companyの「Theater of War」などが挙げられる。これらはいずれも“歴史”をテーマとし、ゲーム内で史上有名な会戦を追体験できる点で共通しているが、「銀河英雄伝説」もまた、ある意味で歴史モノのゲームだ。

 原作小説「銀河英雄伝説」は、遙かな未来、銀河系を2分する勢力となった銀河帝国と自由惑星同盟の戦いを、歴史小説スタイルで描ききった作品だ。そして作中における勢力同士の戦いは、未来を舞台とする作品でありながら、むしろ古代の会戦を思わせる、堂々たる軍団同士の激突として叙述され、名将達の繰り出す用兵の妙がドラマを重厚なものにしていた。

 ローマ史の愛好者がユリウス・カエサルの巧みな用兵に歴史的なロマンを感じることと同じく、「銀河英雄伝説」の愛好者はラインハルトやヤンの戦術に歴史的なロマンを感じる。本作が戦術レベルの戦場再現に特化し、実現しようとした面白さはそこにある。まずはそのゲームシステムからご紹介したい。


・「艦隊」指揮官として敵艦隊の撃破を目指す

プレーヤーの操作単位は「艦隊」。艦隊は1~10個の小部隊で構成される
 ゲームシステム的には、本作でプレーヤーが操作する対象は「艦隊」だ。戦闘の開始に先立ち、プレーヤーは最大4個までの艦隊を編成し、各艦隊に指揮官、副官、右翼戦隊、左翼戦隊の各指揮官を任命する。指揮官の能力は「統率」、「機動」、「砲撃」、「空戦」、「防御」といったパラメータで表現されおり、艦隊の機動速度や攻撃・防御力に反映される。だが、実際には、プレーヤー自身がどのような采配を振るうかが、戦闘の結果を大きく左右する。

 基本的に、本作の戦力を構成する艦隊は、側面や背後からの攻撃に弱い。特に、銀河帝国、自由惑星同盟双方の主力となる「標準型戦艦」は、主兵装のビーム兵器が前方にしか射撃できないため、側面や背後の敵に有効な打撃を与えられないうえ、背後にはシールドを展開できず、攻撃によるダメージを直に受けてしまう。

 したがって、本作における戦闘では、いかに敵艦隊の側面・背後をとるかが重要だ。しかし艦隊の移動速度に比べて方向転換の速度は非常に速いため、1個艦隊同士の撃ち合いでは正面を向き合ったままでの長期消耗戦になりやすい。

 そこで、1つの艦隊が正面で敵を拘束し、もう1つの艦隊で背後を急襲するような戦い方が有効だ。両陣営共に2個以上の艦隊を擁する戦いでは、有利な位置を取ろうとする相互の意図が複雑に衝突し、半ば空間争奪戦のような様相を呈する。

 そこで相手を脅かす機動ができるかどうかは、プレーヤーの機転と、操作の的確性に掛かっている。敵を見事に罠にはめ、大打撃を与えることができればまことに痛快だ。やりようによっては、損害ゼロで数万隻の敵艦隊を屠ることもできる。まさに「銀河英雄伝説」的な戦場風景を体現したゲームと言え、好印象だ。

正面の撃ち合いは長期の消耗戦になる。側面、背後から攻撃を加えれば大打撃を与え、短時間で戦闘が決着する。1局面を素早く勝利し、次は他の部隊へと、素早く展開することが基本的な技術だ


・「陣形」の相性

紡錘陣で横陣に対し攻撃を加える。旗艦のある中央部に砲火を集中できるため、素早く旗艦を撃破可能
 戦闘においては、陣形も重要な要素だ。艦隊は最大10単位の部隊で構成され、6部隊以上で構成された艦隊は様々な陣形を取ることができる。陣形には“突撃陣”に分類される「縦陣」、「紡錘陣」、“包囲陣”に分類される「横陣」、「鶴翼陣」、“防御陣”に分類される「円陣」、「方陣」がある。

 各陣形分類は3すくみの関係にあり、“突撃陣”は“包囲陣”に強く、“包囲陣”は“防御陣”に強く、“防御陣”は“突撃陣”に強い、という相性があるほか、“突撃陣”は機動力が高く、“防御陣”は遅い、という特性がある。なかなか複雑だが、頭に入れておけば、ぐっと有利に戦闘を進められるようになるだろう。

 ただ注意したいのは、戦闘中にとれる陣形は、揮官毎に決められているということだ。例えばラインハルトやヤンは“突撃陣”と“包囲陣”を取れるが、“防御陣”を取ることができない。これは副官の能力で補うことができる。ラインハルトにはキルヒアイス、ヤンにはパトリチェフといった“防御陣”を取れる副官を付けよう。

 全ての陣形を取れるように艦隊を編成すれば、あらゆる状況に万全に対処できるが、中には“カストロプ動乱”に登場するマクシミリアンのように、いかなる陣形も取れないデタラメな提督もいる。それも作品世界の好ましい反映と言えよう。

各陣形には、ゲーム的に定められた相性により、攻撃のシールド貫通力に補正が加えられる。また、もちろん見た目通りに、砲火が集中していればそれだけ強い圧力を敵に与えることになるため、陣形だけでなく実際の位置関係も重要だ。その意味で、“突撃陣形”の使い勝手の良さは抜きんでている。しかし状況に応じて“防御陣形”で長く持ちこたえたり、“包囲陣形”で多数の敵を拘束したりといった臨機応変さも必要だ


・「特技」を駆使して戦局を有利に運ぶ

「斉射三連」。使い勝手のよい特技だが、これを使える提督は限られる
 提督のキャラクタ性を出す要素として見逃せないのが、提督ごとに与えられている「特技」だ。これは、戦闘中、一定時間毎に蓄積されていく「特技ゲージ」を規定数消費して繰り出す特殊効果である。発動時には、各キャラクタが作中で発した名台詞と共にカットイン演出が行なわれる。

 ラインハルトやヤンならば、艦隊の士気、耐久力、攻撃力、防御力を一定時間向上させる強力な特技を使えるが、ゲージのコストが非常に高く、1戦闘で使えるのは1回か2回だ。一方、ロイエンタールやアッテンボローが持つ「斉射三連」という特技は、戦艦のビーム砲に短時間ながらシールド貫通能力を与えるというわかり易い効果があり、ゲージコストも低いため使いやすい。

 攻撃力増加系の特技は、敵の側面や背後をとってから発動すれば劇的な効果を発生するため、艦隊運動のタイミングに合わせてうまく使いたい。また、敵の特技発動に合わせてアンチ効果のある特技で打ち消すことや、ゲージを大量に溜めて、強化系の特技を2種類以上重ねる事も可能であるため、色々な使い方が想定できる。

 本作では、このような戦術要素を駆使して、少ない損害で多くの敵を撃破するという用兵の妙を味わうことができる。フィールドは2次元空間であるため、原作「銀河英雄伝説」の作中で度々登場する三次元的な艦隊機動はさすがに不可能だが、敵を包囲したり、背後を付いて打撃を与えるといった戦場のダイナミクスは、十二分に楽しめる内容だ。

戦闘は、まず索敵に始まり、敵に接して有利な位置を占めるべく運動することに終始する。効果的な攻撃を加えられる位置につけたら攻撃系の特技を積極的に使いつつ、劣勢が続きそうなら防御的な特技を使うなど柔軟に対応したい

各キャラクタは原作の設定を反映したユニークな特技を持っている。無能な提督の特技はデメリット付きのものとなっているケースが多いので、その隙を突くのも有効な作戦になってくる


■ 原作の「ツボ」を見事に押さえた映画的キャンペーンモード
 物語の結末こそ覆せないが、各人物の命運はプレーヤーの手腕にかかる

キャンペーンモードの各ステージのクリア成績は記録される。「実績」の達成にも関連する仕組みだ
 本作ではシングルプレーヤーゲームと8人大戦のマルチプレーヤーゲームが搭載されている。シングルプレーヤーゲームは2モードあり、原作のストーリーを会戦毎になぞっていく「キャンペーン」モードと、自由に戦場と戦力を設定して戦う「シングルゲーム」モードだ。

 なお本作はマイクロソフトの「Games for Windows - LIVE」に対応しているPCゲームタイトルで、Xbox 360と同様の「実績」や、LIVE対戦機能がサポートされている。キャンペーンモードの成績は実績の解除に欠かせないので、ぜひ好成績でのクリアを目指したい。

 さて、キャンペーンモードでは、原作「銀河英雄伝説」のストーリーをなぞる形で、銀河帝国、自由惑星同盟いずれかの陣営を選択し、14ステージ(自由惑星同盟キャンペーン)ないし18ステージ(銀河帝国キャンペーン)を連続的にプレイする形でゲームが進行する。


・銀河帝国キャンペーン:ラインハルト・フォン・ローエングラムとして

銀河帝国側の初陣では、わずか2,500隻の分艦隊を指揮しての散発的な戦闘。まずここで本作のメカニクスを理解できるようになっている
 銀河帝国キャンペーンは、原作では外伝に相当する「第六次イゼルローン攻防戦」からのスタートだ。ラインハルト・フォン・ミューゼル少将が2,500隻の分艦隊を率いて戦うこのファーストステージでは、敵方は無名の提督の小艦隊がいくつか登場するだけで、正面で撃ち合うだけでも軽く勝利できる内容となっている。

 その後ラインハルトが大将となり正規艦隊を指揮する立場になるまでの3ステージが、ほぼチュートリアルのような内容となっている。これらのステージを攻略する間に本作のプレイ感覚はほぼつかめるようになっており、第4ステージ「惑星レグニツァ上空戦」からはミッターマイヤー、ロイエンタールらの諸将が配下に加わり、複数艦隊を編成・指揮することになる。

 このあたりの展開は、原作アニメ版の台詞と映像で表現されたドラマパートでいい具合に盛り上げてくれることもあり、ラインハルトが武勲を挙げ次々に「上昇していく感じ」を、まるで自分のことのように愉しむことができる。カットシーンなどの徹底したストーリー演出でプレイを盛り上げてくれる手法は、海外のストラテジーゲームには見られないもので、実に日本のゲームらしいやりかたであると感心させられた。

 やがてラインハルトは元帥へと昇進し、ゴールデンバウム王朝を象徴する門閥貴族達を打倒していくことになる。このあたりの展開を含め、原作小説に登場する会戦はほぼ全てゲームステージとして網羅されている。時にはキルヒアイスの分艦隊単独のステージをプレイすることにもなるが、やがてプレーヤーはラインハルトと同じ喪失感を味わうことになるだろう。原作の無情な展開も、プレーヤーにきちんと感情移入させる面で効果的にゲーム化されている。

ステージの前後にはストーリーが挿入される。原作の名シーンや名台詞がツボを押さえて再現されているほか、アニメ版の映像が挿入される箇所もあり、原作ファンなら間違いなくニヤリとさせられるだろう

ステージが進むと、ラインハルトの下に大勢の提督達が参集する。運用する艦隊も大規模なものになり、じわじわと手応えが増していく。時にはステージクリアに失敗することもあるが、繰り返しチャレンジできるので、違った戦法で挑戦してみたい


・自由惑星同盟キャンペーン:ヤン・ウェンリーとして

ヤン・ウェンリー率いる「イゼルローンファミリー」は本作でも生き生きと描かれる
 自由惑星同盟側のキャンペーンではヤン・ウェンリーが主人公だ。ファーストステージはこの「レグニッツァ上空戦」で、ヤン准将はパエッタ艦隊の参謀としてラインハルト艦隊に遭遇することになる。このヘリウムと水素で構成された惑星の上空で少々のドンパチを繰り広げたのち、ラインハルト艦隊は早々に上空へ離脱していくが……。

 あとは原作と同じ展開だ。ラインハルト艦隊が惑星大気にレーザー核融合ミサイルを落とした結果、惑星上空に止まっていたパエッタ艦隊は爆風に巻き込まれ敗北を喫する。本作のキャンペーンモードでは、ステージ内の戦闘でいかに善戦し、圧倒的優勢に戦ったとしても、物語の筋書きを変えることはできない。

 その面で本作はストラテジーゲームとしてのダイナミズムに欠けるが、まあ、「序盤でラインハルトとヤンが戦死」という状況で話が進むわけもない。ただ、いくつかの人物の生死については、プレーヤーが主導権を握ることになる。

条件を満たしつつプレイすれば、特定キャラクタの戦死を回避し、ゲームの最後まで頼りにすることができる
 そのひとりが、ヤンの親友であるジャン=ロベール・ラップ少佐だ。原作では、ラップは「アスターテ会戦」でムーア艦隊の参謀として従軍し、艦隊の全滅と共に戦死する筋書きとなっているが、ゲームでは、プレーヤーの立ち回り次第でこれを回避することが可能である。具体的には、3艦隊に囲まれて絶体絶命という状況から何とか救い出す必要がある。なかなか大変だが、これを達成すると「ラップ生存」という「実績」も解除されるので、積極的に筋書きを変えてしまおう。

 筆者のプレイでは、このラップ少佐のほか、「第八時イゼルローン要塞攻防戦」で戦死することになっているグエン・バン・ヒュー少将も生存し、その両方がゲームクリアまでしぶとく生き残り続けた。ちなみに、これらの“本来は戦死する”キャラクタたちは、かなり高い水準の能力を持っているので、生き延びれば後々のステージで貴重な戦力として活躍してくれる。

 特にグエンは、銀河帝国側で言えばビッテンフェルトに相当するほど高い「砲撃」能力を持っているので、ほとんど全てのステージで艦隊を指揮させた次第だ。自由惑星同盟側のキャンペーンでは、フル編成の艦隊を満足に組むこともできないほど兵数が不足したまま進行していくので、なおさら有り難い存在なのである。

イゼルローン回廊の戦闘も再現。「トール・ハンマー」の直撃は原作通り壊滅的な打撃につながるが、チャージから発射までかなりの時間があり、すぐに対応すれば十分に回避できる。逆に、敵を挟み込むなどの方法で拘束して要塞砲を食らわせるという手もある

ポプランやコーネフなどのスパルタニアン組は残念ながら本作に登場しないが、キャゼルヌやシェーンコップらはゲームシステム上の都合で提督として登場する。ヤンの留守を守るステージもあるので、アッテンボローやフィッシャーは主戦力としてしっかり育てておこう


■ 提督は戦闘経験によってレベルアップ。
 理想の強さに育て上げたら、いよいよマルチプレイゲームにデビュー?

戦闘終了後、敵の撃破数に応じて提督に経験値が与えられる。レベルが上がれば各能力値が向上
 銀河帝国、自由惑星同盟双方のキャンペーンモードは、ラインハルトとヤンの唯一の直接対決となった「ヴァーミリオン会戦」を最後に終幕するが、ゲームプレイそのものはまだまだ続く。

 というのは、本作には各提督に「レベル」の概念があり、戦闘で挙げた戦果に応じて経験値を蓄積し、能力を向上させていく仕組みがあるためだ。この仕組みは各ゲームモードの共通機能となっており、キャンペーンモードで上げたレベルは、他のゲームモードでもそのままだ。繰り返しプレイできる「シングルゲーム」でもキャラクタレベルが上げられるので、がんばってプレイすればするほど、お気に入りの提督が強化されていくという面白さがある。

 正直なところ、本作における各提督の能力差は、それほど大きくない。「叔父上様に何とかしていただこう」が口癖のフレーゲル男爵と、常勝の天才ラインハルトの能力値の差が2倍以下という具合だ。プレーヤーの立ち回り次第で、「青二才」が「宿将」に普通に勝ててしまうバランスなのである。

 したがって、常勝の天才をパラメータ的にも常勝たらしめるためには、プレーヤーがせっせと戦闘を繰り返してレベルを上げてやる必要があるのである。各能力値の初期値が高いキャラクタは、レベルアップ時のパラメータ上昇幅も大きいものになっているため、レベルが高まるほど能力に差が付くというバランスになっている。

マルチプレイモードで使用する艦隊は、あらかじめ編成しておくことが可能だ。ベストな編成を作っておこう
 こうして育て上げたお気に入りのキャラクタは、マルチプレイモードで使用することができる(ただし『レベル固定』設定のセッションでは、全キャラクタが同レベル扱いとなる)。マルチプレイモードは最大4人対4人で艦隊戦を行なう方式で、自分の操作する艦隊は1つながら、シングルプレーヤーモードと同じく、艦隊指揮官、副官、右翼、左翼の戦隊司令の4名を自分で任命する。

 育て上げたキャラクタを司令官に任命すれば、人間相手の艦隊戦でも大活躍が期待できる。ただ、「同一提督」設定がオンになっていないセッションでは、同じ戦場に同じ提督を2人以上登場させることはできないので、艦隊司令官候補としてあらかじめ3~4名ほど育成しておくといいだろう。特にラインハルト、キルヒアイス、ロイエンタール、ミッターマイヤー、ファーレンハイト、ヤン、アッテンボロー、フィッシャー、グエン、モートンあたりは、能力値と特技の関係から、非常に人気があるので被りやすい。

・マルチプレイモードの戦術とは?

多人数の対戦は、まず索敵機を飛ばして相手の位置を探るところから始まる。先に発見することが大きな優位を生む
 戦闘のルール自体は、マルチプレイでもシングルプレーヤーモードと変わらない。プレーヤーの意識として少し変わっているのは、シングルプレーヤーモード以上に「索敵」が重要になってくる点だ。広大な戦場では当初敵の所在がわからないのだが、偵察機を飛ばして先に敵を発見したならば、背後や側面から包囲できる可能性が飛躍的に高まる。勝手知ったる熟練プレーヤーの連合艦隊なら尚更である。

 互いに接敵したならば、あとはビームとミサイルの応酬だ。いかに敵の裏を掻き、有利な位置に専位して効果的な攻撃をかけるかが勝負となる。その際、プレーヤー同士の艦隊がうまく連動することが極めて重要だ。ゲームシステムの紹介で本作の戦闘を“空間の争奪戦”と表現したが、マルチプレイはまさにそうで、サッカーのようなチームスポーツ的な側面がある。その上で多様な展開がありうる点が本作のいいところだ。

1艦隊が全滅し、数的優位が確立すると、後は怒濤の勢いで決着に至る。ここから挽回することは難しい
 逆に難点としては、手持ちの艦隊がすり減ってしまうと、なかなか挽回できないという点が挙げられる。プレーヤー対プレーヤーの戦いでは、それぞれ1対1で拘束しあう状況に“ほぼ必ずなる”のだが、1艦隊が撃滅されてしまうと、数で優勢になった側が自由に2対1の状況を作れる。そうすると、2艦隊に攻撃されるプレーヤーは背後から攻撃され放題となり、また差が開く。従って、いったん数で劣ってしまった側の勝算はゼロに近いのである。

 これを挽回するためには、数的劣勢に追い込まれた艦隊が死滅する前に、いまだ1対1の状況にあるいずれかの艦隊が敵を撃破して数的劣勢を消すか、もしくは右翼・左翼の分艦隊を本隊から分離して、分艦隊に敵の背後を取らせて拘束する必要がある。が、やはり数で劣る側の勝算は少ない。

 劇的な逆転勝利がまったくない訳ではないものの、先に1艦隊が全滅した時点で勝敗がほぼ決する性質はぬぐえない。従って、マルチプレイでは戦闘序盤の判断が決定的に重要だ。友軍の戦いぶりを見た上で、自分が攻撃的に振る舞うか、防御的に振る舞るまうか、明確に決める必要がある。このあたりじつにシビアなゲームであり、プレイする者の素質を選ぶ内容となっている。これを「面白い」と感じるか、「つまらない」と感じるかによって、本作への評価がガラリと変わるだろう。

マルチプレイでも「斉射三連」の特技は多用される。敢えて地味な提督編成で行く場合は、防御関係の特技を持つ副官をつけておきたいが……

戦闘は同等の条件で開始されるが、いったん艦隊数の差がつき始めると、劣勢に立った側が挽回することは難しい。このため、いかに序盤の戦いを有利に進めるかが重要だ。シビアなバランスだが、本作が戦術ゲームとしてマジメに作られた作品であることの現れと言える


■ 「銀河英雄伝説」ファンの期待に応えるだけでなく、純粋な戦術シムとしても秀作
 多くのPCゲーマーにとって、興味深い選択肢となりそう

ちなみに、数量限定の限定版「スペシャルパック」には、ブリュンヒルトとヒューベリオンのミニチュアが付属する
 以上、本作のゲーム内容についてご紹介してきたが、総合的な評価として、本作は「銀河英雄伝説」ファンに大きな楽しみをもたらしてくれるだけでなく、原作未見のPCゲーマーにとっても興味深いゲームに仕上がっていると評したい。

 まず最大の美点としては、本作が最近の国産PCゲームとしては唯一の本格的リアルタイム戦術級シミュレーションゲームであり、しかもなかなか優れたゲームシステムに仕上がっていることが挙げられる。世界に名だたる「TotalWar」シリーズのような面白さを、全く違った角度・視点で味わえるので、一般のPCゲーマーにとっても魅力的だ。

 また、原作「銀河英雄伝説」という作品は、このようなゲームを日本のPCゲーム市場で成立させる上で格好の素材だったと言える。その素材が持つストーリー、キャラクタ性を犠牲にすることなく、高水準のゲームとして仕上げたマイクロビジョンの力量に賛辞を送りたい。また個人的には、世界的にもほとんど対応タイトルのない「Games for Windows - LIVE」に本作が率先して対応している点も評価したい。

良作だが、ズーム時のフレームレート低下や、カメラ操作性の悪さといった弱点もある。可能なら、パッチによる改善を期待したい
 とはいえ良い点ばかりとも言えない。本作がウリにしている“ハイクオリティのCGモデルで再現された艦船の数々”は、確かにゲーム内でズームアップしてその姿を見ることができるが、艦形がはっきり見えるほどに画面をズームインすると、耐え難いほどフレームレートが低下するのだ。従って実質的には、我が艦隊旗艦の雄姿を間近で拝むことは難しく、常に最大限にズームアウトした状態でプレイすることになるだろう。本稿でグラフィックス面にあまり触れなかったのは、そういう理由からである。

 この点、重い重いと評判のFPS「Crysis」が高クオリティ設定で普通に遊べるPCでも10fps以下という、言わば紙芝居状態を正当化できるほどの映像が出ているとも思えないので、このあたりはレンダリング技術の改善など、今後のパッチで(リリースする予定があるのならば)対応してもらいたいと感じている。

 あともうひとつだけ指摘するとすれば、操作性の問題だ。本作は現代的なPCゲームらしく、ゲーム中に使用する各種コマンドは全てプレーヤー自身がキーボードショートカットを設定することが可能になっている。その点は良いのだが、画面の回転をマウスボタンやキーボードショートカットで行なえない点と、ズーム時にカメラの移動速度が低下しすぎて、事実上ズームイン時のプレイが不可能になっている点は、ユーザーインタラクションの練り込み不足と言えるかもしれない。このあたりのカメラ操作性では同ジャンルの「Total War」シリーズに軍配が上がる。

 と、本作の弱点を最後に指摘することになったが、本作で実現されたゲーム性に比べればいずれも些末な事である。本作は間違いなく良作と呼べる作品であり、多くの「銀河英雄伝説」ファン、及びPCゲーマーの方々にお勧めしたい。



【スクリーンショット】

(c)田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー 


□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□「銀河英雄伝説」の製品情報
http://gineiden-game.jp/
□関連情報
【9月16日】バンダイナムコ、WIN「銀河英雄伝説」
体験版&ベンチマークソフトを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080916/ginei.htm
【4月24日】バンダイナムコ、WIN「銀河英雄伝説」
発売日が10月16日に決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080424/ginga.htm

(2008年11月4日)

[Reported by 佐藤カフジ]



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