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【連載第3回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!

佐藤カフジの「PCゲーミングデバイス道場」

便利な実用デバイス? それとも無用の長物?
「左手デバイス」の可能性を追求してみる

 色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプトに、古今東西のPC用ゲーミングデバイスに注目して、単なる新製品の紹介にとどまらず、競合製品との性能比較や、新たな活用法の提案、果ては改造まで、様々なアプローチで有益な情報をご提供していきたい。


■ これは一体どう使えばいいのか?──「左手デバイス」という未知のカテゴリー

「キーボードでいいじゃん」と思って終わらずに、今回はその真価を考えてみよう
 PCゲーム系のショップに行くと、デバイスコーナーの片隅で一度は目にする珍妙なデバイス。キーボードのような、ゲームコントローラのような、そのどちらでもないような……。店頭でおそるおそる触ってみて、結果「よくわからない」とスルーした経験をお持ちの方もいるかと思う。果たしてこれらは、一体なんなのだろうか。

 この種のデバイスはゲームデバイス関連各社からリリースされているものの、その想像しがたい目的性からあまり知られておらず、「マウス」、「キーボード」のような通りのいい一般名詞も与えられていない。本稿では、この種のデバイスを総括して「左手デバイス」と呼んでおこう。様々な形態がある中で、左手で使うものであることだけは共通しているからだ。

 さて、「左手デバイス」がPCゲームシーンに登場してきたのは、キーボード、マウス、ジョイスティック、ゲームパッドなど、よく使われているデバイスに比べると、ずっと最近の事だ。おそらくマイクロソフトの「Sidewinder Strategic Commander」が広く知られた最初の製品だろう。RTSに代表されるようなショートカット依存性の強いゲーム向きのデバイスとして一部ユーザーの支持を集めたが、一般性がなさすぎて後続はなかなか出てこなかった。

 最近ではもっとキーボードよりになっていて、RTSだけでなくFPSゲーマーにも最適なデバイスだとして汎用性を高めている。それらの特徴は、いわば「限定キーボード」とでも言うべきか、FPSでよく使う「WSAD」回りを切り抜いたデザインになっている点だ。いくつかの製品では、それに加えてジョイスティック的な操作軸も備える。

 これにより、いつもはキーボードに占有されているPCゲーマーの左手の、ゲームファンクションへのアクセス性が向上するというのが一般に言われているメリットだ。果たして本当だろうか? キーボードでいいのでは?

 ごもっとも。確かめてみる必要があるだろう。今回は、現在市場で流通している製品を3つとりあげ、まだまだ良く知られていないと思われる「左手デバイス」の可能性について考えてみたい。ゲーマーの皆さんに新たな可能性を提示することができれば幸いだ。

【今回のラインナップ】
Cyborg Command Unit
発売元:MSY
価格:6,480円
発売日:2008年7月15日(発売中)
n52te Speedpad
発売元:Razer
価格:69.99ドル(国内実勢価格:6,480円)
発売日:2008年3月15日(発売中)
Wolfking Warrior
発売元:MSY
価格:5,980円
発売日:2007年9月30日(発売中)


■ Saitekならではの強力マクロ機能、アナログスティックを搭載する多機能デバイス

【Cyborg Command Unit】
発売元:MSY
価格:6,480円
発売日:2008年7月15日(発売中)
ボタン数:21
デバイス種:キーボード、マウス、ゲームコントローラ
マクロ機能:サポート
モード数:3(専用スイッチで切り替え)
備考:親指アナログスティック付き

若干「おもちゃっぽさ」が気になるデザインだが、日本人の手にもなじむサイズで手触りは良い
 はじめにご紹介するのが、ジョイスティックメーカーとして有名なSaitekからの新製品「Cyborg Command Unit」だ。この左手デバイスは、全21個のボタンと3モード切替のスイッチを持ち、親指部分にはSaitekらしくアナログジョイスティックを1本搭載している。外見が少しおもちゃっぽいのが難点だが、この種のデバイスの中では機能的に綺麗にまとまっているのが良い点だ。

 ひとまず目に付くのが、「WSAD」の刻印のある4キーを中心に配置された18個のキーボード的なボタンだろう。これはキーボードのように見えるが、デバイス的にはゲームコントローラのボタンのようにも使える多目的なスイッチだ。キータッチは軽めで、サクサク感があって押しやすい。ややキートップのぐらつきが大きいのが気になるところではある。

 デフォルト設定では刻印されている「WSAD」の通りに機能するこのボタン類だが、本機の真価を発揮させるためには、最近のSaitek製品に全て対応する「SSTプログラミングソフトウェア」を使いたい。これは本機のボタン割り当て、マクロなどを柔軟に設定できるアプリケーションだ。

Saitek製品ではおなじみの「SSTプログラミングソフトウェア」。ここでありとあらゆる設定ができる
 ひとまず、筆者は「WSAD」でなく「EDSF」配置でFPSをプレイしているので、キー設定を少々触って「EDSF」仕様に変更し、「Team Fortress 2」などをプレイしてみたが、本製品のボタン数でひとまずは普通にプレイできた。ただ、ボタン数が少なくチャットは不可能なので、コミュニケーションを完全否定するのでなければヘッドセット着用でゲームに臨む必要がある。

 親指部分にあるアナログスティックは、ジョイスティックのようなアナログ軸としても使えるが、「SSTプログラミングソフトウェア」を使って、軸入力にキーやボタン機能を割り当てることができる。これはRTSをプレイするときなどに、画面スクロールに使うキーを割り当てておくと便利だ。アナログなので、傾け具合に応じて複数のキーを割り当てることも可能なのが面白い(傾き50%でカーソルキー、90%でSHIFT+カーソルキーなど)。

 スティックのそばにある15、16の刻印があるボタンは、ゲームコントローラ的なタッチのボタンになっていて、FPSをプレイするのであればジャンプキーあたりを割り当てておくとちょうどいい感じだ。プレイするゲームを切り替えるときには、「SSTプログラミングソフトウェア」で異なるプロファイルをロードするか、あらかじめ各モードに用途別の割り当てを設定しておいて、左上にあるモード切替スイッチをスライドさせる。

 デバイスの大きさ的には、日本人の手でもしっかり全ボタンにアクセスできるサイズなので、とりあえずは違和感なくゲームをプレイすることができる感じである。さて、このデバイスどう使うべきだろう。

Saitekらしいのは、親指部分にアナログスティックを装備していること。色々な用途に使える 使用時には、マップモードに合わせた色でLEDが点灯する。赤・黄・緑の3モードを搭載 中央にシャフト状の構造物がみえ、長さを調整できそうだが、できない。おもちゃっぽさに拍車を欠けるデザインだ……

・どう使う?──アナログスティックの強みを生かした実用性を考える

親指スティックの活用により、ゲームコマンドへのアクセシビリティは驚くほど向上する。FPS、RTS、MMOにも使えそうだ
 本機はデバイス的に、各ボタンがゲームコントローラと同様のボタン扱いになっているので、キーボードにありがちな「同時押し可能なキー数の制限」などとは無縁だ。このため、日頃使っているキーボードが3キー、4キーの同時押しをサポートしていない場合など、ゲームのときだけに使うガジェットとしてこのデバイスを使う価値は大いにある。少なくとも、ゲーム用のキーボードをもう一つ机に置いておくよりは、小さいので邪魔にならないというものだ。

 実際の活用方法としてまず思いつくのは、やはりFPSゲームだろう。ボタン数が足りるか? という点は気になるが、最近のタイトルはもともと同時携行できる武器数が少なかったり、Valve系のタイトルでは武器選択がサブメニュー化されていたりするので、武器選択には4ボタン程度あれば十分だったりする。

 その点、本機のF1からF4ボタンに割り当てるのもいいが、筆者が発見した素敵な方法として、親指スティックの4方向に武器選択ボタンを割り当てるスタイルをお勧めしたい。この方法では、武器の切り替えが親指だけでできるので、「WSAD」の移動入力を全く邪魔しないのが強みだ。操作に慣れるまでしばらくは混乱して「不便だなあ」と思っていたが、2、3時間もやっているとすっかり適応して、今度は逆に「キーボードは不便だなあ」と思うようになってしまった。

 RTS系のゲームをプレイするときにも親指スティックが便利だ。ここに画面スクロールを割り当てておくと、マウスを画面端に持って行ってスクロールさせるような操作がいらなくなる。結果的に、マウスを持つ右手がゲーム内要素の操作に専念できるようになるので、総合的にかなり快適な感じとなる。また親指で画面をスクロールさせつつも、他の4本の指は完全にフリーでショートカットにアクセスできるので、「複数の操作を同時にこなす感じ」がかなり向上。なんだかゲームが巧くなった気がしてきて、楽しい。

 MMORPGについて考えると、本機は左上のスイッチで3モードを即座に切り替えられるので、それぞれのキー設定を「町中用」、「フィールド用」、「集団戦用」のように割り当てておくと便利だ。MMORPGでは数字キーの1から10に割り当てられたスキルスロットを叩いて戦闘することが多いが、その点本機のボタン数はやや足りない。思い切って移動キーをアナログスティックに割り当ててしまえばほとんどのボタンをスキルショートカットに割り当て可能だが、できれば1から4の4列ではなく、もう1列、5列欲しかったところだ。この点は大いに不満が残る。

 というわけで本製品はFPS、RTS用途であればかなり便利に使うことができる。もう少し横方向のボタン数が多ければさらに汎用性が増した感じもするが、その点においては次に紹介するRazerの「n52te Speedpad」に軍配が上がるかもしれない。

全高が低いため、小さめの手でも無理なく全機能にアクセスできる。使わないときは邪魔無くしまっておけるサイズでもあり、ゲーム用のセカンドデバイスとして傍らに置いておくのに違和感はなさそうだ


■ 圧倒的にカッコいい! Powered by RazerのBELKIN製タクティカルコントローラー

【n52te Speedpad】
発売元:Razer
価格:69.99ドル(国内実勢価格:6,480円)
発売日:2008年3月15日(発売中)
ボタン数:27(ホイール、方向パッドを除くと16)
デバイス種:キーボード、マウス、ゲームコントローラ
マクロ機能:サポート
モード数:3(設定ソフト上または割り当てボタンで切り替え)
備考:パームレスト取り外し可能

黒を基調とした高級感のあるデザイン。なんとも言えない格好良さがある
 「n52te Speedpad」は、PCプリフェラルメーカーの米BELKINが開発した「BELKIN Nostromo Speedpad n52te」に、ゲームデバイスメーカーのRazerが様々な改良を施した製品だ。外見は高級感があり、前述の「Cyborg Command Unit」に比べてずっと落ち着きのある雰囲気に仕上がっている。オフィスにあっても違和感がなさそうだ。

 本製品のボタン数は総計27個。その内訳は、小指から人差し指でアクセスする5列3行のボタンでまず14個、親指でアクセスする十字方向パッドが8方向で8ボタン分、親指ボタンが2個、そしてマウスホイール状のスイッチが上下回転と押し込みで3ボタン分となる。

 本機の良いところは、小指から人差し指でアクセスするキー部分が5列構成になっているところだ。この部分のボタン総数としては「Cyborg Command Unit」よりも3つ少ないのだが、5行3列(3列目は4行)の真っ直ぐな配列になっていることで、全キーへのアクセス性において上回っている。このため実ボタン数としては十分に感じるのだ。

 また本機の大きな特徴として、マウスホイール状のスイッチを搭載していることが挙げられる。これは本当にマウスホイールと同等の感触、機能を持っており、用途としては「第2のマウスホイール」として使えるほか、付属の設定ソフトによりいろいろな機能を割り当てて、面白い使い方ができる。

親指のスティックは、アナログではなくデジタルスイッチ。8方向を別のボタンとして割り当てることが可能だ
 親指部分の十字パッドに関しては、アナログではなくデジタルスイッチとなっているため、「Cyborg Command Unit」の親指スティックのような柔軟性はないものの、8方向の各入力が別々のボタンとして使えるあたりが逆に強みとなっている。その上に配置されている親指ボタンはやや堅めに作られており、特殊なコマンド(暴発しては困る種類のもの)を割り当てる用途に向いている感じだ。

 「Cyborg Command Unit」と同じく、本機は3つのキーマップモードを備えており、これは付属ドライバの設定パネルで各種割り当てを行なうことができる仕組みだ。設定パネルはRazerのデバイスユーザーならおなじみの黒基調デザイン。ここでは全ボタンの機能割り当てのほか、マクロ編集、デバイスのレポートレート変更(最高1,000hz)などが行なえる。

 キー割り当てやマクロ機能については十分な機能がサポートされており、必要なことは想像しうる限り全てできる。各ボタンにはキーストロークのほか、マウスコマンド、Windows制御コマンド、マルチメディア制御コマンド、それらを組み合わせたマクロなど、あらゆる機能を割り当てられる上、単なる「ゲームコントローラの1ボタン」にしてしまうこともできる。そうすれば「JoyToKey」などの外部ソフトウェアで制御することも可能になるため、いくらでもつぶしが効くわけだ。

キーは歪みなく配列されている。キーボードっぽさよりも汎用性を優先した格好だ 側面から。やや全高が高いため、使い始めは少々違和感を感じた Razer製品の例に漏れず、使用中は青く光る。背面スイッチで消灯することも可能

・どう使う?──MMORPGに最適。加えて実用ソフトでの応用に活路を見いだしてみる

ゲームプレイ時はこのような格好になる。親指まわりに十字方向パッドと2ボタンがあるので、いろいろな操作を親指でこなせる
パームレストが邪魔な場合は、取り外せばOKだ。筆者の場合、この状態のほうがしっくりきた
Razerらしいコントロールパネルで、非常に広範囲のコマンドを割り当てることができる
 本機には親指部分に十字パッドが配置されているので、「Cyborg Command Unit」と同様に、親指操作による武器切り替え、画面スクロールといった使用方法でFPSやRTSにうまくフィットさせることが可能だ。

 FPSプレイ時の問題点としては、小指から人差し指でアクセスするボタンの総数が、やや少ないことだ。「Counter-Strike」などの操作ボタン数の多いソフトでは、武器購入・弾薬購入コマンドといった特殊コマンドを、うまく他のボタンにマクロ化して登録しておくなどの対策が必要だろう。

 またFPSプレイ時にかなり気になったのが、パームレスト部が大きすぎて、手をいっぱいに広げなければ、親指ボタンにうまくアクセスできないという点だ。筆者は平均より小さめの手をしているため、この点が非常に気になった。対策としては、パームレストを取り外してしまって目方を小さくすることだ。この状態ではなんとか、全ボタンに無理なく指が届くようになった。

 MMORPGでの活用については、「Cyborg Command Unit」よりもずっと向いている。というのは、本機のボタン配列は横方向に5行が確保されているので、MMORPGでよく取られる1から10のスキルショートカット数に綺麗にフィットするためだ。この場合はキャラクタの移動を親指十字パッドに設定して、1から10までのボタンをスキルショートカットに振る。こうすると移動とスキル発動が完全に並列で行なえるので、いつもよりアグレッシブなプレイが可能となって良い感じである。

 そして、本機のデザイン上の特徴である、「オフィスに置いてあっても不真面目な感じがしにくい」という特性に、敢えて注目してみたい。ゲームではなく実用アプリでも、親指による方向入力、14個のショートカット操作、追加のホイールによる特殊操作は便利に使えるはずだ。

 案としては、「Photoshop」系の画像処理ソフトを使う際に、本機の十字パッドに作業領域のスクロール操作を割り当てておいて、1から10のボタンには、よく使うツールモードへのショートカットを登録しておく(領域選択、ペン、パスなど)。11から14のボタンにはコピー・カット・ペーストあたりの頻出コマンドを登録し、ホイールにはズームイン・ズームアウト、原寸表示の3コマンドを登録。余った親指ボタンには、セーブやレイヤーコマンドを入れておくといい感じだろう。

 ここまですれば、編集作業時にキーボードに手を伸ばすことなく、かつ、作業領域のスクロールや、ツールパネルの選択などにマウスを使うことなく、作業に集中できそうだ。実際、筆者の周囲から聞こえてくる声によると、スピードが命とされる業務上の画像編集、モデル作成などの現場で、この手のデバイスを活用して効率化している例があるそうだ。

 ゲーム以外にも応用できるとなれば、本機の購入価格はむしろ安く見えてくるから不思議だ。同様のことは「Cyborg Command Unit」でも可能だが、「第2のホイール」が付いている点、ドキュメント編集などに相性が良さそうで、「n52te Speedpad」にはまだまだ可能性が隠されている気がする。

親指の第15ボタンはやや硬いため、少々使い込む必要がありそう 使用中のモードに応じてこの部分のLED点灯位置が変わる。全3モード 「第2のホイール」。人差し指でアクセスしやすく、応用を考えるのが意外と面白そうだ


■ あまりにもFPS専用、まさに「Counter-Strike」プレーヤー御用達の左手限定キーボード

【Wolfking Warrior】
発売元:MSY
価格:5,980円
発売日:2007年9月30日(発売中)
キー数:55
デバイス種:キーボード
マクロ機能:なし(純粋なキーボードである)
モード数:なし

55キーを搭載する「キーボード」。キーボード以外の機能は有さない
 最後にご紹介したいのは、米Wolfkingが製造しているFPS専用キーボード「Wolfking Warrior」だ。この製品は、これまで紹介した複合デバイス型の2製品とは異なり、デバイス種としては純粋なキーボードだ。このため、各キーへのコマンド割り当てや、マクロといった機能は全くなく、見たままの働きしかしないという、ある意味思い切った製品仕様となっている。

 円形に配置されたキーは、FPSの移動によく使用される「WSAD」を中心に55個。とてもチャットが可能な数ではないが、これまで紹介した2製品に比べて、コマンド数の多いゲームでも余裕のある作りだ。

 このキー配列を見てピンと来た人も多いと思われるが、本製品のキー配列は、まさに「Counter-Strike」を前提としてデザインされている。親指部分には大きなスペースバー、その先に大きな「O」キー、「B」キー、「,」キー、「.」キーがあって、これらは「Counter-Strike」の武器・装備・弾薬購入コマンドのデフォルト配列そのままだ。

「Counter-Strike」で使う、武器購入ボタンにすぐ指が届く。この点だけは便利だ
 キーが円形に配列されているため、第一印象としては「使いづらそうだなあ」というのが大方の共通するところだろう。ところが、実際に使ってみると、違和感なくプレイできる。普通に手を置き、「WSAD」設定のゲームをプレイすると、親指はちょうどスペースバーの上に乗るし、その他の周辺キーも一般的なキーボード配列に近いため、あまり気をつけなくても間違いなく狙ったキーをタッチできるためだ。

 さすがにF1からF12までのファンクションキーはほぼ180度に渡って広がっているため、きちんと目視して狙わないとうまく押せないし、数字キーの6から9あたりも押しづらい。しかしこのあたりのキーは、ゲームプレイ中に頻繁に押すモノではないため、実用上の問題はそれほど感じないのだ。

 しかし、本製品は、一般的なキーボードの半分近い面積を机の上で占有しておきながら、それに見合う実用性があるかというと、答えはかなり疑わしくなる。続いてはこの点についてよく考えてみよう。

背面スタンドを引き出すと、若干の傾斜をつけることができる キーに段差はなく、すべて平面に配置されている 左側面にはESCキーと、ボリューム操作のメディアキーが2個付属

・どう使う?──とは言っても汎用性は皆無。FPSにしか使えなさそうだ

大きな数の数字キーは、しっかり狙わないとミスタイプする。どう転んでも「FPS専用」から広げていけそうにない……
 本製品は、デバイス的には完全に普通のキーボードだ。これが意味するところは、他のゲームデバイスのように、自由な設定変更ができないということである。それでいて、本製品は「WSAD」による移動操作を前提とした配列になっているため、筆者のように「EDSF」派のプレーヤーとしては、まずこの仕様に躊躇してしまう。

 それを踏まえて、FPS以外の用途を考えるにしても、どうにも使い道はなさそうだ。上記で紹介した「Cyborg Command Unit」及び「n52te Speedpad」は、親指部分にアナログスティックもしくは十字方向パッドを備えることによって、「左手親指の表現力」を、通常のキーボード操作に比べて爆発的に向上させていた。

 本製品「Wolfking Warrior」にそれはない。親指でできることといえば、ジャンプする、武器を買うくらいで、他のゲームで応用しようにも「キーボードでいいじゃないか」という声に反論できないのである。

 このように、本製品はあまりにも、「Counter-Strike」に特化しすぎているため、汎用性については壊滅的だ。幸い、ゲーミングキーボードとして「同時押し」問題には対処してある製品なので、常日頃使っているキーボードが問題を抱えているのであれば、ゲーム時のみに使うガジェットとして存在価値はあるかもしれない。だが、価格的には上記2製品とあまり変わらないため、本製品を選ぶだけの理由としては弱い。

 まあ、毎日「Counter-Strike」しかやらないというコアなプレーヤーであれば、本製品を選ぶだけの理由が見つかるかもしれない。とはいえ、他の2製品が提供する選択肢が魅力的すぎるので、それも微妙なのだが……。


■ 今回わかった「左手デバイス」に必須の、そして合理的な特性

左手デバイスには「親指の能力を最大限に引き出す」という効果があることがわかった。大きな収穫だ
 以上3製品をご紹介してきた中で、はっきりと見えてきたことがひとつある。通常、PCゲーマーは右手にマウス、左手にキーボードという状態でゲームをプレイしているが、そのとき、「左手の親指」がヒマを持てあましているということだ。

 他の指は、キーボードの各キーを複数担当しており、常に忙しい。小指は、SHIFTやCTRLやTABやQやAやZで手一杯だし、薬指、中指、ひとさし指は、移動キーを押したり、スキルショートカットを押すのに忙しすぎて、パンク寸前だ。右手はマウス操作で全神経を使い果たしているので、他の仕事をする余裕がない。結果的に、スペースバーくらいしか担当していない左手の親指は、いちばんヒマなのである。

 ゲームガジェットとしての「左手デバイス」は、そこに目をつけるからこそ価値がある。「Cyborg Command Unit」、「n52te Speedpad」の双方で、左手の親指部分に方向入力装置を取り付けている背景には、そういった極めて合理的な理由があるのだ。「Wolfking Warrior」が、明確なメリットを打ち出せていない理由も同じである。

 親指で移動やスクロール操作ができれば、他の指がフリーになる。それによって、ゲームの各種コマンドへのアクセスが素早く、適切に、同時に行なえるようになる。これは確実に大きなメリットだ。その上で、汎用性を加味して評価すると、今回紹介した製品の中ではRazerの「n52te Speedpad」が最良の製品だと思える。

 いずれにしても、PCゲーマーの皆さんには、この「左手親指」の表現力を高めてくれる左手デバイスの可能性に注目していただきたいと思う。きっと、日頃のゲーミングをもっと楽しく、レベルの高いものにしてくれるはずだ。

(2008年9月9日)

[Reported by 佐藤カフジ]



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