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マイクロソフト、「Gamefest japan 2008」を開催
遊び、作る楽しみをエンドユーザーに広げていくプラットフォーム戦略が結実

9月4日、5日開催

会場:ホテル グランパシフィック LE DAIBA


 マイクロソフト株式会社は、9月4日より、東京お台場のホテル、グランパシフィック LE DAIBAにて、国内のゲーム開発者を対象とするプライベートカンファレンス「Gamefest Japan 2008」を開催した。初日の4日に行なわれた総セッション数は23個と、前年の「Gamefest Japan 2007」を上回る規模となった。開催期間は9月4日と5日の2日間で、参加費は無料となっている。


■ 成熟し、融合しつつあるマイクロソフトのゲームプラットフォーム

基調講演を行なったXNAグループ部長の田代昭博氏
Xbox 360とWindowsにまたがるオンラインプラットフォーム「LIVE」は、多くのプレーヤーが長時間ゲームをプレイする場として成熟している
 「Gamefest」は、マイクロソフトが提供するゲームプラットフォームの技術情報をゲーム開発者向けに公開するプライベートカンファレンスだ。今回のカンファレンスでは、Xbox 360ファームウェアの大型アップデートとして現在準備されている新インターフェイスや、コミュニティ開発者向けの開発プラットフォーム「XNA Game Studio 3.0」、そしてそれによって実現される「Xbox LIVE コミュニティゲーム」の3つが大きなトピックとなった。

 全セッションの皮切りとなる基調講演では、マイクロソフト ホーム&エンターテイメント事業本部部XNAグループ部長の田代昭博氏が登壇し、「Non Stop Gaming - イノベーションは止まらない」と題する講演を行なった。講演のメインテーマは、マイクロソフトが推進する数々のゲームプラットフォームがもたらす「イノベーション」。ここでのプラットフォームという用語は極めて広い意味で使われており、ゲーム機そのものからOS、開発インフラまでを包括する。

 まず田代氏は、Xbox 360の普及台数が全世界で2,000万台になり、また本体1台あたりのゲームソフト販売本数が現行ゲーム機で最高となる7.7に達したことなど、Xbox 360が強力なゲームプラットフォームに育った事を報告した。そして潜在的なゲームプラットフォームと目されるWindowsについては、現時点において全世界で10億台が設置されており、そのうちWindows Vistaは1億台を占め、さらに64ビットが主流になりつつある潮流を紹介。

 さらにXbox 360/Windows共通のゲームプラットフォームとなった「LIVE」では、全世界1,200万人のユーザーが15億の実績を解除し、マルチプレーヤーゲームを8億9,000万時間以上プレイし、ダウンロードされたコンテンツ数は5億5,000万に達したという。それぞれの数字を人数で割ってもなかなかの数字であり、ゲームプラットフォームとしての稼働率が非常に高いことがわかる。

 このまま話題はXbox Development Kit、DirectX SDK、XNA Gamestudioなどの開発プラットフォームにおよび、「XNA Game Studio 3.0」が今冬に投入されることが改めて紹介された。PC向けの話題としては「Games for Windows - LIVE」が無料で提供されること、また今秋にはWindows版のマーケットプレースが登場することの2点に言及。目新しい情報こそ無かったが、Xbox 360とWindows PCという2つのゲームプラットフォームが、ひとつの「LIVE」プラットフォームになるというマイクロソフトの展望がこの基調講演で確認されたと言えるだろう。

【マイクロソフトのゲームプラットフォーム】
Xbox 360の1台あたりソフト装着数は7.7本と、高い水準に達する マイクロソフトはmsn Messengerをもゲームプラットフォームとして考えている Windows PCは、事実上最大規模のゲームプラットフォームといえる


■「Xbox LIVE コミュニティゲーム」で、ユーザーサイドでのゲーム制作・流通が可能に
 ノンプログラマ向けには「ゲームツクール」のXNA版が登場

ユーザーサイドで完結したゲーム制作・流通がXbox 360上で可能になる
「アクションゲームツクール」の紹介のため登壇したエンターブレイン杉内賢次氏
 何か別のものが融合してひとつのプラットフォームになるという観点では、この基調講演の最後に紹介された「Xbox LIVE コミュニティゲーム」が非常にホットなトピックだ。これは、「XNA Game Studio」と「LIVE」コミュニティを連動させ、ユーザー制作のゲームをLIVEネットワークを通じて自由に流通させるという、まったく新しいゲームの流通モデルである。

 従来、「XNA」によるゲーム制作とゲーム流通の間にはマイクロソフトによるサーティフィケーション(承認手続き)という分厚い壁が立ちはだかっており、一般ユーザーが制作したゲームを他のユーザーがXbox 360上でプレイするのは非常に難しいことだった。それが今回、XNAユーザーのコミュニティである「XNAクリエーターズクラブ」のプレミアムメンバーシップに加入しているユーザーが他のユーザーの制作したゲームの品質チェックを行ない、複数人の承認が得られれば全体に公開できる「ピアレビュー方式」が導入され、障壁がなくなる。この結果として「XNA」と「LIVE」が融合して「Xbox LIVE コミュニティーゲーム」が成立する。

 ユーザーに開かれ、またユーザーサイドで完結するという「Xbox LIVE コミュニティゲーム」のゲーム制作・流通モデルにより、田代氏は「ゲームを作る楽しみ」を新たなゲーム体験としてユーザーに提供できるとした。さらにゲーム供給側のユーザーは、他のユーザーによる品質チェックを通過したゲームに200、400、800マイクロソフトポイントの3段階の価格をつけることができ、売り上げの70%をマイクロソフトから受け取ることができる。新たなゲームビジネス空間となりそうな気配がするこのサービスは、2009年前半に日本語版サービスをスタートさせるという。

 しかし、「Xbox LIVE コミュニティゲーム」にゲームを提供するためには、「XNA Game Studio 3.0」で開発する必要があり、プログラム言語C#を使いこなせないノンプラグラマのユーザーにとっては敷居の高いものとなる。そこで田代氏が、スペシャルゲストの株式会社エンターブレイン プロデューサーの杉内賢次氏を壇上に招待した。その杉内氏が発表したものは、プログラムができなくてもゲームが作れるXNA開発環境である。その名も「アクションゲームツクール」。

 Windows用の開発環境として提供される「アクションゲームツクール」は、誰でもゲームが作れることがウリの「ツクール」シリーズ最新タイトルであり、最大の特徴として「XNA Game Sutudio 3.0」に完全対応を果たす。「XNA」に対応しているので、「アクションゲームツクール」ではXbox 360、Windows、ZuneというXNAのターゲットマシンで動作するゲームを制作できる。またXNAには元々多言語対応のための仕組みが組み込まれており、例えば英語圏向けのバージョンを制作することも可能だ。そして作られたゲームは「XNA Game Studio 3.0」バイナリなので、「Xbox LIVE コミュニティゲームス」で流通させることが可能だ。

 会場で行なわれたデモンストレーションでは、「アクションゲームツクール」を使ってゲーム構造をグラフィカルに編集し、出力を行なうと「Microsoft Visual Studio」用のプロジェクトファイルが出力される模様を見ることができた。プロジェクトファイルはC#コードで構成されており、そのままビルドしてターゲットマシン上で動作可能だ。またC#コードを自力で編集すれば、「アクションゲームツクール」を踏み台にして複雑なゲームを作ることも可能になるかもしれない。「アクションゲームツクール」の発売日は12月12日、価格は10,290円とアナウンスされた。

 XNAと「Xbox LIVE コミュニティゲーム」は、それがゲーム機をターゲットにするからこそ発生する特別な価値が感じられる。PCでは無制限にゲーム制作・流通が可能だが、ネットワークの参加者全員がゲームに関心を持っているわけではないので、羅針盤を持たずに航海するようなものであり、いちユーザー制作者がチャンスを掴むことは非常に難しい。しかしXbox 360のネットワーク上ならば、参加者全員がゲームに関心を持っているのは当然であり、大きな可能性が開けている。「Xbox LIVE コミュニティゲーム」は、将来の本格的ゲーム開発者を生み出す強靱な“プラットフォーム”として機能するに違いない。この戦略が今後どのような実を結ぶのか見守っていきたい。

【Xbox LIVE コミュニティゲーム】
「Xbox LIVE コミュニティゲーム」日本版リリースは2009年前半と発表された コミュニティゲーム制作者はゲームに価格を付けて配信でき、売り上げの70%を受け取れる。同人ゲーム作家の活躍の場が大きく広がりそうだ Xbox 360では遊ぶ楽しみと作る楽しみの両方を、全てのユーザーに提供する。ゲームプラットフォーマーとしては今までにない画期的な試みといえるだろう

【アクションゲームツクール】
「アクションゲームツクール」では、グラフィカルな編集でゲームを構成することが可能 デモでは作成したゲームをXNAプロジェクトとしてVisual Studioに出力し、ビルドを行なった 完成したゲームはXNAバイナリであり、Xbox 360上で動作するほか公開も可能である


■ Xbox 360の新ユーザーインターフェイスに注目が集まる

従来のXbox 360ダッシュボードは完全に刷新され、新たなユーザーインタフェースが導入される
アバターをゲームに登場させるためには、複数の方法がある。デフォルトのアバターを登場させるだけであれば、マイクロソフトが提供するAPIで非常に簡単に済むようだ
 基調講演に続いて行なわれた各ジャンルのセッションでは、この冬に公開されるXbox 360の新ユーザーインターフェイスに関連する話題に注目が集まった。新インターフェイスではダッシュボードの見た目が一新されるほか、ゲーマーアイコンに変わりアバターがサポートされるなどドラスティックな変更が予定されている。今回はその概要から開発者向けの情報までをカバーする数多くのセッションが組まれており、新ユーザーインターフェイスで実現される機能の詳細に触れることができた。

 まず、新ユーザーインターフェイス全般について概要紹介をおこなうセッションでは、本年末に行なわれるアップデートの機能の各要素についてその狙いと効果が紹介された。まず新しくなるダッシュボードのメニューデザインについては、Xbox 360上で利用できるコンテンツがあまりにも膨大な数となった結果、従来のダッシュボードでは使いづらくなってしまったことに対応する。まず階層構造に基づくメニュー構成を取ることで大幅に操作性を向上させ、さらにユーザーの情報・操作などに応じてメニュー項目を変化させる仕組みを導入。これにより大量のコンテンツと快適なアクセス性が両立するようになったという。

 また新ユーザーインターフェイスと同時に投入される大きな要素として、アバター機能がある。これは従来のゲーマーアイコンを置き換えるもので、多種多様なカスタマイズパーツを使って自分だけのアバターを作ることができる。日本向けのオリジナルアバターアイテムや、ゲームの「実績」に対する報酬として特別なアバターアイテムも提供されるそうで、楽しみを増やす効果も期待できそうだ。

 アバターを使ったゲームを作る際には大別して3種類の方法がある。1つは、アバターアイコンを表示する方法。2つ目は、専用のアバター表示APIを使って、デフォルト挙動のアバターを表示する方法だ。3つ目はタイトル毎の独自描画コードでアバターのモデルを動作させる方法である。最後の方法では、アバターを使ったどのようなゲームも実現でき、他のプラットフォームよりも柔軟に対応できそうなところも魅力といえる。

 ただ、アバターがあまり残虐な行動を取ったり、アバターそのものがダメージを受けるようなゲームというのは、性質上望ましいとはいえない。マイクロソフトとしては、「なるべくCERO A(全年齢対象)にして欲しいが、アバターそのものに対する残虐な暴力表現がない限りは、CERO Zのタイトルでも利用可能」としている。ただし、詳細な基準については現在策定中であるという。

 また、オンラインプレイの敷居を下げるために導入されたのが「Xbox LIVE Party」機能だ。これはフレンド機能をさらに濃密化させたような機能で、任意のユーザーを誘って最大8人までの「パーティ」を組み、メンバー間で今プレイしているゲームの情報を共有したり、一斉に1つのゲームを始めるといったアクションが可能になる。従来のフレンドを誘う機能とは異なり、ゲームセッションが終わってもパーティは存続するため、ゲームをまたがって一緒にプレイし続けることができる点で非常に便利なものといえそうだ。

 このパーティ機能を完全に機能させるためには、タイトル側の対応が必要となる。具体的には、パーティを一単位としてゲームにまとめて参加させるメカニズムとしてゲームセッション作成時に「パーティを招待する」ボタンをユーザーに提供することや、プレイ中のゲーム情報を他のパーティメンバーに送信するための処理が必要だ。これらの機能は扱いやすいAPIの形で提供されるため、開発者の負担になることはほとんどないようだ。おそらく、今後リリースされるほぼ全てのマルチプレーヤーゲームが対応することになるだろう。

 その他の新機能としては、既に発表されているとおり、ハードディスクへゲームをインストールする機能がある。この機能は既存タイトルを含む全てのゲームで利用可能であり、ゲーム開発者側は特に意識することなく実現される。現在のところ、DVDドライブに比べて4倍の読み込み速度を実現するために改良を重ねているという。

 これらの新機能をサードパーティ開発者が利用するためのSDKは、11月版のXbox Development Kitに含めて供給されるという。アバターなど各機能をゲームタイトル側から細かくコントロールする方法については、概要紹介と並行して開かれた各技術セッションで解説が行なわれていたため、日本の開発者も新ユーザーインターフェイスに向けての準備が整ったと見ていいだろう。エンドユーザーのひとりとしては、生まれ変わるXbox 360の機能を生かした面白いゲームがリリースされることを期待したいところである。

【アバター】
当初は動物や漫画チックな表現も考慮されたが、カスタマイズの汎用性を見込んで人間タイプのアバタースタイルを採用したという アバターは1体あたり900KBのリソースを必要とするため、大量に登場させるゲームでは考慮する必要がありそうだ 従来のゲーマーアイコンは完全に撤廃されるわけではないが、活用方法については現在検討を続けている最中としている

【Xbox LIVE Party】
パーティ機能を完全に活用するためにはゲーム側の対応が必要となるが、従来の招待機能に比べて圧倒的に便利であり、コミュニティの実態に適っている機能であるため、今後ほとんどのゲームが対応を果たしてくることになるだろう

【技術セッション】
並行してアバター関連の技術セッションも行なわれていた。アバターを使ってオリジナルのゲームを作るためには技術的な要素のほか、マイクロソフトによるサーティフィケーションの問題も立ちはだかるが、条件さえクリアすればCERO Zのゲームにも使える柔軟性は評価できる


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□「Gamefest Japan 2008」のホームページ
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/xna/cc723908.aspx
□関連情報
【2007年9月10日】Gamefest Japan 2007レポート
LIVEのクロスプラットフォーム化、Xbox 360でのMMO実現に向け
マイクロソフトのオンラインゲーム開発支援内容を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070910/gf_live.htm

(2008年9月4日)

[Reported by 佐藤カフジ]



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