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会場:両国国技館
この大会は、韓国国内で事前に選出された3名の韓国代表選手団と、当日の日本予選大会で選出される3名の日本代表団が直接対決し、日韓の雌雄を決するというもの。日本側は事前にオンライン予選を勝ち抜いた24名の選手達が集まり、午前中から予選を戦うというハードスケジュールだ。 試合意外の部分では、韓国版「アラド戦記(Dungeon and Fighter)」のトッププロゲーマー「アゴ様」や、同作のテーマソングを歌うシンガー、チェ・ヒョンアが登場するなど、一般の「アラド戦記」プレーヤーへのファンサービスも充実した内容となっていた。
■ 日本代表選抜戦、GM100人斬り、韓国プロゲーマー「アゴ様」
「アラド戦記」は、NHNがハンゲームにてサービス中のアクションRPG。格闘ゲーム系のシステムにMMORPG的な成長要素を組み合わせた作品で、ゲーム内で行なう各種ルールの対人戦「決闘」が多くのユーザーに人気のゲームモードとなっている。 また韓国ではオリジナルバージョンの「Dungeon and Fighter」がサービスされており、大規模な決闘大会が何度も開かれるほど大きな人気を誇っている。日韓両国ともに沢山のファンを集め、競技人口・レベル共に高い水準となっている作品であるだけに、今回「夏祭」の中で開催される「日韓決闘大会」には、会場を訪れた多くのゲームファンの耳目を集めていた。
「夏祭」では、この「アラド戦記」に関連して数多くのイベントを開催。「日韓決闘大会」の日本代表を選出する「日本代表選抜戦」のほかにも、会場の一般プレーヤーが飛び入りでGMとの決闘に参加できる「GM100人斬り」イベントや、韓国「Dungeon and Fighters」のプロゲーマー「アゴ様」ことジャン・ウン選手による「アゴ様決闘教室」、また同作のテーマソングを歌うシンガー、チェ・ヒョンアによるコンサートと、メインステージイベントも「アラド戦記」づくしの1日となった。
・「日本代表選抜戦」、シードで選抜に臨んだ前日本代表組は全敗!! オフライン予選からの勝ち上がり組が新日本代表に選出
まずシード権を持たない24名の選手たちが午前10時30分からスタートした「本選」で戦い、「日本代表選抜戦」に臨む6名の選手が決定した。意外だったのは、対人戦に強いとされる「格闘家」系のクラスを使うプレーヤーが、この段階で1名しか残らなかったことだ。このほかは、「鬼剣士」系の覚醒職「剣聖」が1名、「メイジ」系の覚醒職「ベラトリックス」が2名、「ガンナー」系の覚醒職「デスペラード」が2名という構成だ。
シード選手として前日本代表の4名が登場。合わせて10名によるトーナメントで、日本代表選手3名を選出する。筆者は同作でガンナー系職業を中心にプレイしているので、同じくガンナー系を操るロイド安藤選手に注目した。「特別な対策などは有りません。いつも通りプレイするだけ」と語るロイド安藤選手だったが、選抜戦の初戦ではシード組の前日本代表のあー君選手を撃破し、第2戦では「格闘家」の覚醒職「チャンピオン」を操るCampanella選手を撃破して、「ガンナー」系職としてはただ1人代表選抜戦を勝ち抜いていた。
選抜戦のブースにおかれた選手用のPCには、あらかじめ規定のゲームパッドが装着されており、ゲームパッドで操作する選手にはきちんとセットアップのための時間が与えられていた。しかし、その環境に慣れるまでは数回の対戦を経る必要があるようで、この点において事前の「本選」から繰り返し戦ってきたオフライン予選勝ち上がり組に有利だったと言えるだろう。気持ちの面でも、十分な準備ができていなかったのかも知れない。
まあ、それも含めて勝負のうちだ。結果として、「剣聖」のるるぃ選手、「ベラトリックス」のSilvia選手、「デスペラード」のロイド安藤選手と、いずれもオフライン予選を勝ち上がってきた新参の選手達3名が日本代表選手に選ばれ、韓国代表との戦いに臨むということになった。
・飛び入り選手とのエキシビジョン・マッチで「アゴ様」全敗?!
びっくりするのが、両選手の「決闘」歴の厚さだ。チョン・ジュン選手は「この3年間で5万回くらいは決闘したと思います」、ジャン・ウン選手に至っては、「正確にはわかりませんが、12万回くらい」と、日本のプレーヤーとは桁の違う戦歴を披露、会場から驚きの声があがっていた。 ちなみに、いずれの選手もキャラクタは「格闘家」の上級職である「ストライカー」だ。この職業は対人戦で強いとされており、韓国で大きな大会の上位に来るのはほとんどがこの職業なのだという。そのことを反映してか、今回、韓国代表として参戦する3名の選手も全員「ストライカー」使用のプレーヤーだった。 さて、この「アゴ様 決闘教室」では、飛び入りの来場者が両プロ選手と戦うというエキシビジョンマッチが2戦行なわれた。それに先だって「アラド戦記」のGM・ナゲール氏がジャン・ウン選手に1対1を挑戦したところ、わずか23秒で敗北。これを受けてエキシビジョンマッチは「この記録より、長く持ちこたえれば商品を差し上げます」という趣旨になったのだが、結果としては驚くべき内容となった。 練習では2戦とも韓国プロ選手チームが勝利し、続いて行なわれた本番試合では日本からの飛び込み参加選手チームが勝利したのである。飛び込みとはいっても、実際のところは本日行われた「日本代表選抜」に参加した選手達であり、当然レベルの高い試合になると思われたが、2試合とも勝ってしまうとは意外だった。
ジャン・ウン選手は「もう1戦やりましょう」と悔しそうだったが、進行時間の都合で負けっぱなしで終了。先に「会場慣れ」した日本側選手にホームアドバンテージがあったとも見られるが、日本プレーヤーの質の向上も感じる。このことから、続いて行なわれる「日韓決闘大会」でも、日本側が勝つ見込みが大いにあるのではないか、と期待することになった。
■ 全員「格闘家」の韓国代表と、「鬼剣士」、「メイジ」、「ガンナー」で臨む日本代表。試合内容にハッキリと現われた日韓の「実力差」
日本選手団は先ほどご紹介したように、るるぃ選手(剣聖)、Silvia選手(ベラトリックス)、ロイド安藤選手(デスペラード)の3名。全員が異なる系統のキャラクタであるのが、韓国選手団と対照的である。 試合は「アラド戦記」でサポートされる異なる決闘ルールを使い、3セットで行なわれた。第1セットは個人戦。3名の選手がそれぞれ1対1で対決し、3本中2本を先取したプレーヤーが勝利し、所属国が1ポイント獲得する。 第2セットは団体勝ち抜き戦。1対1で勝利したプレーヤーはそのままの体力で次戦に臨むという格好で、先に3人の選手を倒した国が1ポイントを獲得する。第3セットは団体戦。3対3の形で全プレーヤーが一度に対決し、3本勝負を行なって2本先取した国が1ポイントを獲得する。
この3セット、合計5ポイントの試合で両国が決着をつけるというわけだが、見ての通り個人スキルだけでなくチームワークも問われる内容だ。日本に来る前に予選を済ませ、作戦やチームワークを練る時間のあった韓国代表チームがこの面では有利だろう。そのかわりに、日本代表はこの日厳しい予選試合を何度も経験しているため、その意味での「準備」は良好なはず。どちらが勝つか、結果を見るしかないという状況である。
中堅戦、ロイド安藤選手とパク・ジョンワン選手の試合では、かなり拮抗した戦いが展開された。ロイド安藤選手は試合全般でタイミング良く「グレネード」を絡めて、爆発で相手を浮かせてから怒濤のコンボ攻撃を決める。しかしその成功率は7割程度。緊張のためか、「浮かせ」から技を繋げる時点での失敗が目立ってしまった。体力的に同等の条件になると、パク・ジョンワン選手の静さが際だつ。結果的には確実にコンボを成功さえたパク・ジョンワン選手が2本とも勝利した。
大将戦ではSilvia選手とチョン・サンウン選手が対決。ここではSilvia選手が終始優勢に試合を進め、隙を見て大技も決めるなどの余裕も見せた。1本目をSilvia選手が勝利すると、対するチョン・サンウン選手も負けずに2本目で巻き返した。3本目は互角の状況で試合が進行したが、最後の最後まで回避に専念したSilvia選手が少しずつ相手を追い詰め、単発の攻撃で「削る」形で3本目を勝利。ここでようやく日本側が1ポイントを獲得した。
日本側にとって後のなくなった2戦目では、このロイド安藤選手がチョン・サンウン選手、チョ・ジュンヒョン選手を続けざまに破り、日本側の底力を見せた。しかし、続けざまに3人目のパク・ジョンワン選手が登場した時点で、すでに瀕死の状態。
ここから見事な立ち回りでチョ・ジュンヒョン選手の体力を半分にまで減らすという驚異的な強さを見せたロイド安藤選手だったが、最後の最後で体力を削り取られ、敢えなく敗北。団体戦の結果は、韓国が2本先取して勝利という結果に終わった。
団体戦は全6名のプレーヤーが入り乱れての乱戦になるため、個人戦に比べるとランダム性の高い展開になるようだ。しかし、職業特性も強くでるモードであり、近接攻撃中心のるるぃ選手は、ラウンド開始早々に敵へ大ダメージを与えつつ、一番最初に倒されてしまうという役回り。遠隔攻撃を中心とするロイド安藤選手は最後まで粘り強く生き残り続けたが、3対1の状況ではさすがに対処できず、囲まれて倒されてしまった。
結果としては韓国チームが計2本を勝利し、このセットでもポイントを獲得。総合ポイントは4-1となり、韓国チームの圧勝となった。
勝利した韓国代表チームには賞金300,000円と、NHN特製・黄金の格闘家トロフィーが授与された。韓国チームはこういった試合会場に場慣れしている様子で、オリンピックの金メダルになぞらえてか、トロフィーを噛んで見せたり、胸の前に掲げてガッツポーズを取って見せたりと、会場を沸かせる余裕も持ち合わせていた。今回韓国チームが勝利したのは、これだけの精神的余裕があったから、と思えてくる。 惜しくも敗れた日本代表チームには銀の格闘家トロフィーが授与された。各代表へのトロフィー授与が終わると、両国の選手は互いの健闘をたたえて握手。韓国の選手にいたっては日本の選手を抱擁したりと、Eスポーツアスリート的な精神を強く感じさせるシーンを見ることができた。 本大会を通じて、韓国のEスポーツ大国としての底力を実感することになった次第だ。その違いは試合の内外で出ており、その点、当日の予選で即席チームとなった日本代表選手達は、全面的にリードされるという状態であった。 この国技館という会場で、日韓両国で人気を誇る「アラド戦記」を通じ、日本の競技レベル、韓国の競技レベル、いずれも見ることができたということは大きな収穫だ。今後、日本選手のレベルがもっと向上して、韓国に負けないゲーマーが育っていくことを期待したい。
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(2008年8月25日) [Reported by 佐藤カフジ]
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