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★モバイルゲームレビュー★

マップも分かれ道もないダンジョン探索
手軽に遊べるプチやりこみRPG

「はじまりの洞窟」

  • ジャンル:ロールプレイング
  • 開発元・配信元:株式会社カプコン
  • 利用料金:月額315円(サイト利用料)
  • プラットフォーム:iモード
  • 対応機種:FOMA 903i/703iシリーズ以上
  • 配信日:配信中(7月1日)
  • アクセス方法:iMenu → メニューリスト → ゲーム → ミニゲーム → カプコンパーティ



 「RPGは好きだけど時間がないし、1度やり始めると日常生活に支障が……」なんていう話をよく耳にする。実際、筆者もRPGに手を伸ばすには多少のためらいがある。「切りのいいところで終えて寝よう」なんていうことを頭では考えているのに、気づいた時には睡眠時間を削ってプレイしていることも。止め時を決めるのが難しく、ずるずる続けてしまう、そういう時間のかかるRPGには手を出しにくい。

 そんなRPGの“時間の壁”をとっぱらってしまったのが「はじまりの洞窟」だ。移動の手間を省いたコマンド選択によるターン制の移動、マップの概念が排除されたダンジョン、地下33階を目指して突き進むだけのシンプルな目標。RPGの本質的な面白さだけを抜き出し、ギュッと濃縮している。



■ RPGの面白さの源“キャラクタの成長要素”を引き出すシステム

マンド選択式の移動により、操作の手間を省いてサクサク進める
 不思議な洞窟の真上に建造された街。洞窟は“はじまりの洞窟”と呼ばれており、伝説では最下層にある不思議な石がありとあらゆる物質から生物までも産み出し、街の発展に貢献してきたという。しかし、最近は洞窟の中から魔物が次々と現われ始め、街の人々を襲いだした。

 そこで3人の冒険者、戦士「ガラハド」、魔法使い「パーシス」、盗賊「ボールス」は魔物発生の原因を探るべく、不思議な石を目指してはじまりの洞窟に潜っていく。

 ゲーム中のフィールドは街と洞窟の2つのみで非常にシンプル。街で冒険の支度をし、ダンジョンである洞窟に潜り……という行動を繰り返し行なっていく。洞窟では魔物との戦闘や、宝箱の発見、時には仕掛けられた罠の解除といったイベントの積み重ねで、キャラクタを育てていく探索型のRPGだ。その上で、本作にはRPGが手軽に楽しめる2つの特徴が組み込まれている。

 1つ目は、マップがないということ。洞窟内の画面はサイドビューで表示されており、1本道で分かれ道さえない。道に悩むことはなく、マップを確認してルートを決めるといったことも必要ない。よって洞窟探索だけに集中できる。

 そして2つ目、ゲーム目標がシンプルだということ。ゲーム目標は“はじまりの洞窟”の最下層にある不思議な石を目指すことのみ。地下3階、10階といった節目でアイテムを入手して街に持ち帰るといった目標はあるものの、全ては最下層の地下33階を目指すための中間目標だ。

 また、ゲームを開始して驚かされたのが、ものの数分でゲームの最終目標が告げられたということ。一般的なRPGならば、街の人の話を聞いて次の目標を探すものだが、本作では「ゲームを開始したらまずは街の人の話を聞こう!」 というRPGにありがちな流れさえもカットされている。

 これら2つの特徴により、RPGの面白さの源である“キャラクタの成長要素”のみに集中できる。初めはレベル1の敵にも苦戦していたプレーヤーが、経験を積んで強くなり、装備を整えてさらに強くなる。そして最終的には、自分よりも数倍大きい強力なボスを討伐。そういったRPGの醍醐味である成長過程だけを純粋に楽しめるのが本作の特徴だ。

【スクリーンショット】
オープニングでは不思議な石の謎に触れる。細部にまで細かく作られたキャラクタのモーション。焚き火を囲んでいる3人は、剣を磨いたり読書をしたりといった独自の可愛らしい動きを見せてくれる。



■ 個性的な3人のキャラクタ、力を合わせなければ倒せない絶妙な戦闘バランス

3人の力を合わせ、最大4体同時に出現する魔物を倒す。戦闘は気を抜くとやられてしまう絶妙なバランスになっている
 洞窟内での移動は、「探索」メニューから「素早く」、「慎重に」、「お宝重視」の3種類の移動パターンを選ぶだけ。選択した移動パターンで、イベントの発生率と、到達率の増加度に違いがある。到達率というのは洞窟を進んでいると増えていくもので、100%になると次の階への階段が出現する。

 到達率の増加は「慎重に」では10%程度だが、「素早く」ではそれよりも多く、「お宝重視」ではかなり少ない。その代わり「慎重に」では罠などのイベント難易度が下がり、「お宝重視」では宝箱の出現頻度が上がる。

 敵が弱い場合には「素早く」を選んでさっさと下の階を目指し、敵が強い場合には「慎重に」を選んでレベルを上げ、装備やお金を貯めたいなら「お宝重視」を選ぶといったように、目的にあわせて選ぶ。一般的なRPGのように、レベルを上げるために敵が出現するまでフィールドをうろちょろする必要はなく、イベントに対する自発的なアプローチができるのはナイスなシステムだと感じた。

 イベント発生時の、宝箱を開けたり、罠を解除したり、といった成功判定はダイスロールになっている。キャラクタを1人選び、サイコロの出目とステータスを加算し、イベント時に表示される数字以上であれば成功、それ未満であれば失敗となる。もし、宝箱の開錠に失敗したとしても、APと呼ばれるポイントを1つ使用すれば、再度開錠にチャレンジできる。APは初期値では各キャラクタが3つ持っているため、1度開錠に失敗したとしても、3人で最大10回チャレンジできる(最初の1回はAPを使わない)。

 毒ガス等の罠の解除に失敗した場合は、3人のキャラクタ全てがダメージを受けてしまう。罠によるダメージはあなどれない威力で、最大体力の1/3程度減ってしまう場合もあるため、罠に出くわした場合には慎重に解除キャラクタを選ばないと全滅してしまうこともある。

 宝箱を開けるには器用さ、毒ガスを解除するには素早さ、というようにイベントによって要求されるステータスが違うため、ガラハドは力、パーシスは魔力、ボールスは器用さ、といったように各キャラクタごとに秀でたステータスを上手に使い分けてイベントをこなしていく必要がある。

 戦闘は、RPGではおなじみのコマンド選択式で、攻撃、スキル、防御、アイテムの中から選ぶ。スキルは各キャラクタ毎に用意されており、ガラハドは剣技で敵にダメージを与えるアタッカータイプ、パーシスは回復魔法、パーティーへの補助魔法、敵への攻撃魔法とオールマイティータイプ、ボールスは素早さを活かした攻撃と敵単体を弱体化できるデバッファータイプとなっている。

 洞窟を進んでいくとボスキャラクタが出現し、プレーヤーの行く手を阻む。ボスキャラクタは非常に強く、RPGとしてはやりごたえのある部類の戦闘となっている。普通に攻撃してもほとんどダメージは与えられず、ボールスが敵の防御力を下げ、パーシスが味方の攻撃力を上げ、ガラハドが一気に敵を叩くといった連携プレイで、ようやく倒せた。

 この戦闘バランスは絶妙だ。敵の素早さも速いため、スキルで相手の速度を落とさないと、ターンの初めに攻撃を受けてしまい、回復が間に合わないことも多い。3人それぞれに役割があるため、1人が倒されればたちまち全滅してしまう。ただ攻撃しているだけでは普通の敵にも倒されてしまうので、気の抜けない戦闘が終始楽しめる。

【スクリーンショット】
行き倒れの人を助けるイベント、回復アイテムと引き換えに役に立つアイテムをくれる 宝箱の色の違いで入手できるアイテムの種類が変わる。基本的にボールスが開錠するほうが成功しやすい イベントを変化させる悪魔。数ターンの間、宝箱が出るか、魔物が出るかの2択のギャンブルだ
地下10階のボスキャラクタ、妖精「スプリガン」。見た目は貧弱に見えるかもしれないが非常に強力 容姿そのままの強さをもっていた地下20階のボスキャラクタ 下層に進めば進むほど魔物も強力になってくる。一撃で体力の1/2以上奪われることもある



■ 手軽に“完全攻略”が味わえる図鑑システム。完成させると隠し要素が出現

アヴァロン、エビス、グリフォン、バックスと店の名前は神話をモチーフにしている
財宝を入手した時は、通常のアイテムとは違う演出で達成感を盛り上げてくれる
 洞窟探索は、途中で敵に倒されても1階からまた始まるわけではない。3階ごとに街と洞窟を往来するワープゾーンとなる石版が設置されているため、探索したら街に戻り、支度を整えてまた洞窟内へ、というように街の役割も重要になっている。

 街の中には宿屋、武器屋、防具屋、道具屋、倉庫、酒場の6軒がある。店の品揃えは序盤は少ないが、プレーヤーの探索度合いにより徐々に品数が増えていく。

 武器と防具は各キャラクタごとに用意されており、装飾品は各キャラクタ毎に2つ装備できる。装飾品はステータスやダンジョン探索の補助的効果があり、場面に合わせて最適なものを選んで装備する。全124種類の装備品には、「草薙の剣」、「エクスカリバー」といった神話を元にしているものが多く、後半になるほど神話の要素が強くなっていた。

 地下33階を目指して探索するという目標に肩を並べるものとして、“図鑑システム”がある。プレーヤーは洞窟内で発見したアイテム、魔物、財宝を図鑑に登録し、酒場にいる学者の研究を手伝うというシステムだ。図鑑には310種類の空欄があり、登録数が一定数を超える度に、学者は様々なアイテムをプレゼントしてくれる。

 図鑑を完成させるにはアイテム100個、装備124個、魔物53匹、財宝33個の合計310種類必要で、当然ながらゲームクリアが必要になる。全てを集めるのは面倒だと感じるプレーヤーも多いかもしれない。しかし、ゲームクリア時に図鑑を覗いてみると、アイテムの一部と装備品は全て店で購入可能で、魔物は全て揃っていた。アイテムを図鑑に載せるには1度所持するだけでよく、魔物ならば1度戦闘するだけでいい。後から集めたのは、洞窟内部のイベントで手に入る売却用アイテム3つと、財宝1つだけだった。

 あと少しで図鑑が完成するのに、放っておくのは気持ち悪いという感覚と、全てを集めてやろうという感覚が、完全攻略という名でプレーヤーの欲望を揺さぶる。図鑑にはさらに、310種類ある全ての図鑑の内容に解説文が丁寧に書き込まれており、読んでみるとなかなか面白い。

 例えば、魔物の欄にいる「卑弥呼」の解説文。「古代日本のどこかに存在したという、邪馬台国を治めた女王。同時に強力な魔力を持ち、神託を行なう巫女でもあった」と書かれている。卑弥呼は一応、歴史上の人物と学んだ覚えがあるのだが、本作では魔物にされていて、強力な魔法をもってプレーヤーに襲い掛かってくる。そんな事を想像しただけで馬鹿馬鹿しくて、思わず笑ってしまった。

 図鑑に載せる上でやや難しいのが財宝だ。財宝は各階に1つずつ存在し、特殊な色をした宝箱から入手できる。ボスキャラクタの存在する階では、ボスキャラクタ討伐後に財宝が入手できるのだが、他の階ではイベント時にランダムで宝箱が出現するため入手しづらい。また、宝箱が出現したとしても4種類の色があるため、財宝の宝箱とは限らない。

 そこで、今までは探索コマンドの「素早く」を選択して洞窟を進んでいたのだが、探索コマンドを「お宝重視」に変更。財宝が手に入ったら降りるようにしてみたところ、財宝を入手した頃にはレベルも上がり、装備品も整い、次の階を楽に進められるようになった。これは、「一気に階を降りるよりも、じっくりと財宝を集めながらRPGを楽しんで欲しい」という制作者側の配慮なのかもしれない。

 ちなみに図鑑を完成させると、隠し要素として33階にあるキャラクタが出現する。正直なところ、「図鑑を完成させたとしても、単なる自己満足で終わるのだろう」と思っていたので、いい意味で裏切られる内容だった。

 筆者が図鑑をコンプリートするのに要した時間は17時間。やりこみと呼ぶほどの長時間ではないが、飽きやすい筆者でも久々に“完全攻略”したという達成感が手軽に味わえたのは、本作の魅力といえるだろう。

【スクリーンショット】
洞窟内には石版があり、次回移動する際は階を選択してワープできる 洞窟内の石版は3階間隔で置かれているため、上の階にも自由に移動できる 武器や防具には、攻撃力とは別にステータスを増加させてくれることがある
「卑弥呼」は魔物扱い? 財宝「ロンギヌスの槍」 財宝の宝箱が出現した時は非常に嬉しいが、開錠に失敗して苦渋を飲んだことも……



 謎解きやクエスト類に力を入れたRPGも、それはそれで面白い。しかし本作は、あえてキャラクタの成長、探索、コレクションの3つの要素を抜き出したことで、RPGの持つ本質的な面白さだけを存分に楽しめた。そういったシンプルなシステムのおかげで、完全攻略まで間延びすることなくプレイできたのも長所といえる。

 最近のヘビーなRPGに疲れたという人には、最も美味しい部分だけに注目した「はじまりの洞窟」をプレイして、RPGの面白さを再認識してほしいと願う。

【スクリーンショット】
「太陽の宝石」は、アイテムを入手するためのスイッチのようなアイテムだ 全てをクリアすると図鑑の表紙の宝石とメダルが埋まる。“完全攻略”を感じる瞬間だ 弱体化スキル「攻撃力低下の呪い」を敵が使用。普通の攻撃では苦戦する一筋縄ではいかない戦闘


(C)CAPCOM 2008

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「ケータイカプコン」のページ
http://www.capcom.co.jp/keitai/
□「はじまりの洞窟」のページ
http://www.capcom.co.jp/keitai/imode/apri/i_111/

(2008年8月25日)

[Reported by 日高文典]



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