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ゲーマーにも初心者にも意外とわかる!!
「KORG DS-10」講座【第1回】

  • ジャンル:音楽ツール
  • 発売元:AQインタラクティブ
  • 価格:4,800円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(7月24日)
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)



■ 30年前に誕生したシンセ、MS-10/20を知っているか!?

 KORG(コルグ)といえば日本を代表する電子楽器メーカーのひとつであり、プロ・アマ問わず世界中のミュージシャンに愛されているブランド。そのコルグが1978年に放った製品が、モノフォニックアナログシンセサイザーMS-10、MS-20だ(株式会社コルグのWebサイト内「コルグ・ミュージアム」で画像を見ることができます)。

 たくさんのツマミとジャックがズラリと並んだ大仰な操作パネルに、2.5オクターブ(MS-10)、3オクターブ(MS-20)のキーボードがついていながら同時発音数はわずか1音。デジタルシンセ・ソフトウェアシンセ全盛の現在からするとプアな仕様に思えるが、当時中学生だった筆者にとってMS-10/20の登場はセンセーショナルな出来事だった。

 なにしろ、ユーザーが音色を自由に操れるシンセサイザーは、かつて大変高価な楽器だった。モノによっては、高級車が軽く買えるほどの機種さえあった。そんな時代に、MS-10が53,500円、MS-20が98,000円と、個人でも手が届く破格の値段で登場! 当然喉から手が出るほど欲しかったものの、30年前の中学生としては5万円を捻出するのもなかなか困難で、結局MS-10/20を手にしたのはそれから数年後のことである(笑)。

 ちなみに、当時同業メーカーからも同価格帯のアナログシンセは発売されていたが、操作パネルのジャックを活用して音作りの自由度を高める「パッチング」ができたのは、この価格帯ではMSシリーズだけだったように思う。


■ DS-10はMS-10/20+αの機能を持つ「統合音楽ソフト」

 それから30年の歳月を経て現われたのが、株式会社AQインタラクティブより発売されたニンテンドーDS用ソフト「KORG DS-10」。タイトルから察しがつくように、MS-10/20系アナログシンセ音源のエミュレーションエンジンを搭載した音楽ソフトだ。シンセ2台分の音源と4種のドラム音源、シーケンサ機能などを装備していることを考えれば、超小型ミュージックワークステーションと呼んでも差しつかえあるまい。

 DS-10は販売ルートが限られていて、現在のところAmazon.co.jp(リンク先はアフリエイトリンク)の通販でのみ購入できる。私も3月の予約受付開始と同時に速攻予約し、待つこと4カ月……。オーダーしたことを忘れかけていた7月24日、ようやく手元に届いたDS-10に触れた最初の印象は、「ハンパなく硬派!」というものだった。率直に言えば、「初心者にはハードル高すぎじゃね?」とさえ思った。

 個人的には、一切の無駄を排したモノトーン画面&極小フォント(メニュー類はすべて英字)という、過剰にストイックなユーザーインターフェイスに漢(おとこ)を感じずにはいられない。MS-10/20が醸し出す質実さを再現しようとしているあたりにも、制作者の意気込みが伝わってくる。実際、最初はなにがなんだかわかりにくいが、しばらく使い込むと各機能をスムーズに呼び出せるようになってくる。変な親切や余計なおせっかいがないぶん、ストレスを感じることなく作業に没頭できる。

 が、いかんせん、パッと見ではユーザーフレンドリーさが皆無なのである。使い方さえマスターすれば面白くて楽しいソフトなのに、とっつきの悪さでその良さが十分伝わらないかもしれないではないかDS-10! どうするDS-10! というわけで、急遽「初心者にも意外とわかるDS-10講座」を開講せねばと思い立ったのであります。


■ DS-10でできること《シーケンサー編》

 アナログシンセやシーケンサの知識がまったくないDSユーザーにとっては面食らうこと必至の硬派音楽ソフト、DS-10。その楽しさを伝えるにはまず、DS-10でできることをザクっと説明しておかねばなるまい。DS-10での基本的な音楽制作の流れは以下のようになる。

【STEP 1……パターンの作成】

  • シンセ1、シンセ2のシーケンス作成(各トラック最大16ステップ)
  • シンセ1、シンセ2の音色作成
  • ドラム1~4のシーケンス作成(各トラック最大16ステップ)
  • ドラム1~4の音色作成
  • エフェクター設定
  • シンセ1~2、ドラム1~4のミキシング(音量バランスの調整)
【STEP 2……ソングの作成】
  • STEP1で作成したパターン(最大16種類)を繋げ、1曲に仕上げる。

 STEP 1でやることが結構多いので、慣れるまではデモソングをロードしてシーケンスだけを作り替えるのも手だ。デモとはいえクオリティが非常に高く、即戦力になる音色が揃っている。なお、DS-10ではリアルタイムにパターンを繋いで演奏することもできるため、STEP 2「ソングの作成」は必須ではない。

 さて、大まかな流れを理解したら、次に起動からシーケンス作成までの遷移と操作を見ていこう。

【(1)メニュー選択】【(2)セッションをロード】
起動後のメニュー画面で、通常は「SINGLE PLAY」を選択。ニンテンドーDSとDS-10のセットが複数あれば、ワイヤレス通信で合奏する「MULTI PLAY」も楽しめる(最大8台) 読み込むセッションデータを選択。A、B、Cの各バンクにデモセッション2種類と初期データ(INIT)1種類を含む計21種類のデータが記録されているので、いずれかをロードする。まっさらの状態から作るには、バンクCの「INIT」を読み込もう
【(3)キーボードを弾いてシーケンス作成】【(4)マップ画面に切替】
キーボード上部の赤○ボタンをタッチすると録音開始。タッチペンでキーボードを弾き、1小節分のシーケンスを作成する。「OCT」ボタンはオクターブの変更、「S」(Solo)ボタンは他トラックをミュート(消音)するためのものだ。再度○をタッチすれば録音完了。なお、キーボード演奏が苦手なら、この手順をスキップして(5)まで進み、シンセ・シーケンサーに直接フレーズを入力しても構わない 下画面の「↑↓」ボタンを押すか、DS本体のLボタンを押すと画面が上下入れ替わる。ここで下画面に表示されているのは、DS-10の各種機能を呼び出すためのマップ画面だ。マップ画面上部の「STEP」はシーケンスのステップ数((5)の横方向のマスの数)で初期値は16。3拍子のシーケンスが作りたければ12にするといいだろう。画面下部の「SWING」「BPM」でノリやテンポも変えられる
【(5)シーケンスデータの修正(NOTE)】【(6)シーケンスデータの修正(GATE等)】
マップ画面で「SYN1 SEQ」をタッチする(もしくは十字ボタンで「SYN1 SEQ」を選択してAボタンを押す)と、シンセ・シーケンサー画面に移行。キーボード画面(3)で弾いたシーケンスをタッチペンで修正できる。上下方向が音程、左右方向が発音タイミング(1マスが16分音符に相当)で、再生ボタンを押はぜ音を聞きながらの修正もできる 下画面左上にある「⊃」型の矢印ボタンを押すたびに、シーケンサー画面が「NOTE」(音程)→「GATE」(1ステップ毎の発音時間)→「VOLUME」(音量)→「PAN」(左右の定位)→「KAOSS X」→「KAOSS Y」(カオスパッドパラメータX・Y)の順で切り替わる。複数の音をつなげて発音(=タイ、スラー)したいときはGATEをLEGATOに、個々の音を短く発音(=スタッカート)したいときはGATEを25%にすればOK。
【(7)SYN2 SEQ、DRUM SEQの作成】【(8)パターン2(~16)の作成】
(6)までの作業でシンセ1の基本シーケンスが完成したら、マップ画面で「SYN2 KBD」、「SYN2 SEQ」や「DRUMS SEQ」を選択し、シンセ2とドラムのシーケンスを作っていこう。シンセ2はシンセ1とまったく同じ方法で作成可能。ドラム・シーケンスも、鳴らしたいマスをタッチして白くするだけ。4種類の音源をそれぞれどのタイミングで鳴らすか、指定していこう シンセ1、シンセ2、ドラムのシーケンスが完成したら、マップ画面左上の「PATTERN」をタッチしてパターン選択画面に切り替えよう。ここまでに作ったシーケンスはパターン1に記録されていて、「PTN 1」をタッチすると即座に再生される。パターン2以降のシーケンスを作るには「PTN 2(~16)」をタッチしたあとマップ画面に切り替え、パターン1と同じ要領で作成していく
【(9)パターンの再生と確認】【(10)ソングの作成】
いくつかのパターンを作ったらパターン選択画面に戻り、PTN 1~16のパッドを任意の順番でタッチ。複数のパターンを続けて再生したときに違和感がないか確認しておこう。このとき下画面左上の「LOCK」をタッチして赤く点灯させておくと、再生中のパターンを最後まで演奏したあと、次のパターンが再生される。また、画面下部の「M」を押すとそのトラックをミュート(消音)、「S」を押すとそのトラックの音のみを聞くことができる いくつかのパターンを決まった順で再生したい場合は、マップ画面の「SONG」を選択して、ソングを作成すればよい。基本的な使い方はシンセ・シーケンサーと同じだが、ここでは上下方向がパターン(PTN 1~16)になっている。画面上部のスライダーを動かして画面をスクロールさせれば、最大100小節分のパターンをつなげることが可能だ


■ DS-10でできること《音色作成編1》

 シーケンサーの使いかたさえわかれば、曲を作ることはできる。が、それで満足してもらっては困るのだ。DS-10の醍醐味は、なんといっても音源の音色エディットにあるからだ。

 マップ画面の「SYN1(2) EDIT」を選択すると、ツマミがズラッと並んでいるシンセ・エディット画面に移行。音色の編集はこのツマミをタッチペンで回しながら行なうのだが、多少なりともアナログシンセサイザーの知識がないと、各ツマミの機能が理解しづらいはず。まずは、アナログシンセサイザーのしくみを簡単に説明しておこう。

 アナログシンセサイザーは、大別すると以下の3ブロックで構成されている。

DS-10のシンセ・エディット画面をよくみると、VCO、VCF、EGが左から右へ並んでいることがわかる(VCAは下部にある)。サウンドメイクをするときも、最初はこの流れに沿って左から順に操作すると理解しやすいだろう
●VCO(Voltage Controlled Oscillator)

 アナログシンセのキーボードを押すと、音程ごとに決まった電圧を発生する。この電圧を受けて、対応する周波数(音程)の音を出す発振器がVCOだ。DS-10にはVCOが2系統あり、2音をミックスすることで音に厚みを持たせることができる。

●VCF(Voltage Controlled Filter)

 VCOの発振音には基音の他に複数の倍音が乗っており、たとえばノコギリ波で基音440Hzの「A(ラ)」の音を出すと880Hzや1,320Hzなどの倍音も混じっている。VCFはこうした倍音を特定の周波数でカットしたり、一部の周波数を増幅したりすることで、音色を変化させるためのブロックだ。

●EG/VCA(Envelope Generator/Voltage Controlled Amplifier)

 音量を設定するためのブロック。音の鳴り始めから鳴り終わりまでの音量を細かく設定することで、ピアノのように立ち上がりが速い減衰音や、ストリングスのような立ち上がりの遅い持続音など、さまざまなキャラクタの音を作り出せる。

 では、DS-10のシンセ・エディット画面に並んだツマミの機能を見ていこう。

【PITCH】

OCTAVE……その名の通り、オクターブの設定。左に回すと低く、右に回すと高くなる。

PORTA……ポルタメントの速度を設定。ある音から次の音へ音程を変えるとき、瞬時に変えるのではなくなめらかに移行させることができる。左に回すと音程変化が速く、右に回すと音程変化が遅くなる。

EG INT……EG(後述)で設定した音量変化に従って、音程を変化させることができる。左に回した場合は音量が増すほど音程が下がり、右に回した場合は音量が増すほど音程が上がる。通常はセンターにしておこう。

【VCO】

VCO1/VCO2……VCO1、VCO2それぞれの出力波形を設定。偶数・奇数倍音で構成されたノコギリ波は華やかな金管系の音、奇数倍音のみで構成された矩形波や三角波は木管系の音を作るのに適していると言われるが、実際に音を聞きながら自分の感性で選べばOK。右下のホワイトノイズはパーカッションや効果音を作るときに重宝する。

BALANCE……VCO1とVCO2の音量バランス調整。初期状態では左いっぱいに回してあるため、VCO1の音しか出ない。必要に応じて右に回し、VCO2の音をミックスしよう。

VCO2 PITCH……VCO2の音程のみを上下約3オクターブの範囲で調整できる。わずかにずらせばコーラス、大きく回せばユニゾン(オクターブ違いの同じ音を重ねる)といったように音の厚みを増す効果が得られる。

VCO SYNC……ONにすると、VCO1とVCO2の波形再生周期と同期させることができる(VCO1の波形が周期の頭に戻ったとき、VCO2の波形再生ポイントも周期の頭に戻される)。「VCO2 PITCH」がセンターだと、ONでもOFFでも音の差はない。「VCO SYNC」をONにして、「VCO2 PITCH」を右に回すと倍音が強調されたような尖った音を作れる。

【VCF】

サウンドサンプル1
VCFのEG INTを使った音色例。ギターエフェクターでいうワウワウ風な音だ。ギャグ漫画界の巨星・故赤塚不二夫先生のご冥福をお祈りしつつ捧げるサンプルフレーズ(MP3形式)
CUTOFF……CUTOFF FREQUENCYの略で、カットしたい(あるいは通過させたい)周波数を設定する。フィルターの動作モードは「TYPE」スイッチで変更可能。

PEAK……右に回すと、「CUTOFF」で設定した周波数付近の音を増幅。クセのあるサウンドを作ることができる。「CUTOFF」と「PEAK」の設定次第で、発振音のような過激な音も作れる。ちなみに、このパラメーターのことを「レゾナンス」と呼ぶこともある。

EG INT……EG(後述)で設定した音量変化に従って、CUTOFF周波数を変化させる。左に回した場合は音量が増すほどCUTTOFF周波数が下がり、右に回した場合は音量が増すほどCUTOFF周波数が上がる。特に必要がなければセンターにしておこう。

TYPE……フィルターの動作モードを設定する。「LPF」(Low Pass Filter=CUTOFF周波数以上をカット)、「HPF」(High Pass Filter=CUTOFF周波数以下をカット)、「BPF」(Band Pass Filter=CUTOFF周波数近辺のみ通過)のいずれかを選択。

【EG】

ATTACK……ATTACK TIME。音の鳴り始めから最大音量に達するまでの時間を設定。右に回しすぎると音が出るまでの時間が極端に長くなり、結果的に音が出なくなることもある。要注意。

DECAY……DECAY TIME。最大音量に達したあと、SUSTAIN(LEVEL)に減衰するまでの時間を設定。

SUSTAIN……SUSTAIN LEVEL。DECAYで設定した時間経過後、キーボードから指を離すまで、ここで設定した音量で音が鳴り続ける。

RELEASE……RELEASE TIME。キーボードから指を離したあと、音量が0になるまでの時間を設定。右に回すほど長い時間をかけて減衰する。

EGのADSR(ATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASE)を図にするとこんな感じ。この図をイメージしながらツマミを回し、自分の耳で変化を確かめよう
【VCA】

LEVEL……音量の設定。他の音色との音量差が大きいときに調整しておくとよいだろう。

DRIVE……右に回すとディストーション(歪み)がかかる。VCFの「PEAK」が高めに設定されていると変化がわかりやすい。

VCA EG……「EG」にすると、EGで設定したADSR(ATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASE) に従って音量が変化する。「GATE」にするとVCAに対するEGが無効になり、キーボードを押すとすぐ発音、キーボードを離すとすぐ消音する。EGをPITCHやVCFの「EG INT」に対してのみ使いたい場合は、「GATE」にするとよいだろう。


 ムムムッ! DS-10でできることをサクッと説明するつもりだったはずが、気がついたら結構な量書いてしまっているぞ。まあ、一気に全部覚えなくても十分楽しめるので、気軽に触って少しずつ覚えていきましょう。無理しすぎてイヤんなっちゃっても困るし(笑)。(第2回に続く)

【著者紹介】
ゲヱセン上野……編集者・ライターでありつつ、かつてはプログラマ、そしてサウンドコンポーザーとして「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」、「いただきストリート 私のお店によってって」、「けろけろけろっぴの大冒険」、「MOTHER2 ギーグの逆襲」などのタイトルに携わる。

(C) 2008 KORG Inc. All rights reserved. (C) 2008 PROCYON STUDIO CO., LTD. All rights reserved. (C) 2008 AQ INTERACTIVE INC.Game Design, Game System and Game Engine by cavia inc.Synthesizer Design and Sound Engine by KORG Inc.

□AQインタラクティブのホームページ
http://www.aqi.co.jp/
□製品情報
http://www.aqi.co.jp/product/ds10/index.html
□関連情報
【3月12日】AQインタラクティブ、アナログシンセの銘機をDS上で再現!
DS用音楽ツール「KORG DS-10」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080312/korg.htm

(2008年8月18日)

[Reported by ゲヱセン上野]



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