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会場:NTTドコモ本社
後編はそれらの情報を踏まえた上、今後iアプリはどう進化していくのか、またプラットフォームとしての進化のほかにも、新たなサービスを提供する可能性があるのかなどを尋ねた。あまりモバイルゲームの経験がない読者にも理解しやすいよう、コンシューマゲームとの違いを聞く形で話を進めているので、そういった方もぜひ一読していただきたい。
今回も前編と同じく、NTTドコモのプロダクト部 第一商品企画担当課長の平松孝朗氏、同担当主査の神谷大氏、同担当の村上圭一氏にお話を伺っている。
■ 端末をゲーム機に近づけるのではなく、ゲーム機と並列に進化する
――また角度を変えたご質問をさせていただきます。今はゲームショップでモバイルゲームの販売は行なわれていませんが、これがパッケージの形で買える日は来るのでしょうか?
神谷大氏 : ホームページにQRコードを付けてもらって、そこで撮ってそのままダウンロードすればいいので、店頭にQRコードが入ったポスターなどが張ってあってもいいですね。 村上圭一氏 : microSDに入れて販売するという話もあるにはありました。 平松氏 : ノキア様が「N-Gage」という、かなりゲームを意識した携帯を出されたときに、N-Gage専用のメディアを販売されたのですが、やはりちょっと厳しかったようです。モバイルゲームのよさとしてコンテンツプロバイダ様がよく言われるのは、在庫を持たなくていいことなのです。パッケージにすると在庫を持って、余ると安売りしないといけないですから。もし店頭で求められる形を取るにしても、パッケージ商品として置いてあるのを買って行くというよりは、さっき言ったようなネットワーク系の形をユーザー様に導入しやすいようお見せするということなら、ありえるかなと思います。 村上氏 : 昔、お試し版を配りたいという話はありましたね。 平松氏 : もしお客様にとって、そこにモバイルゲームへの入りにくさがあるのだとしたら、携帯で用意しているメニューなどの見せ方がわかりにくくなっていることが問題なのかと我々は感じてしまうので、そこも一工夫しどころかと思います。もしお客様がわかりにくいと感じる部分を変えることでもっと楽しんでいただけるなら、そこは工夫していきたいですね。 ――今の質問は、まさにコンシューマゲームとのユーザー層の乖離の部分です。コンシューマゲームをやっている方は、当然ショップに行ってゲームを買うのですが、ショップに行ってもモバイルゲームはないし、逆に携帯電話を見ていてもコンシューマゲームは買えない。ここの差を埋める何かがないのかというところから見ていくと、面白いかもしれないと考えています。 神谷氏 : ただコンシューマゲームが羨ましいと思うのは、発売日が割と早くから決まっていて、ユーザーにも認知されていて、皆で一斉に買って一斉に解き始めるので、その時の話題になりやすいんですよね。それはモバイルゲームでは難しい。いつコンテンツ配信かというのも中々認知されないですし。 平松氏 : 先ほどのユーザー層の乖離の話をできるかどうかわからないですが、コンシューマゲームと携帯がもっと連携する時代が来ると面白いと思いますね。PS3やWiiのゲームを買って、遊んで、ネットワークにも繋がっていて、さらに携帯電話にもダウンロードできて何かできる、といったことがコンシューマゲームを入り口にしてできるとか。逆に、携帯電話で楽しんでいる人が、家庭用ゲームの方と連携するとこんな風にできるよ、とわかると楽しめるのではないかと。お互いネットワークに繋がっている機器ですから。 ――今はもうケーブルを繋ぐ必要もありませんから、手軽にできそうですよね。 神谷氏 : あと携帯電話はキャリアを通じて行なう決済手段が安心というか、ユーザー様の敷居が低いですよね。PCのオンラインゲームも、携帯電話でポイントを売っているところもありますから、そういうものをきっかけに、何かもっと連携すると面白いのではないかと思います。人によっては、PCでクレジットカードの番号を入れるのは抵抗がありますよね。 ――では次の質問です。ゲーマー的視点でモバイルゲームの辛いところは、やはりインターフェイスです。これについては、端末自体をどうにかするとか、あるいはゲーム用のコントローラを出すといったアプローチはありえるのでしょうか? 神谷氏 : 昔はコンテンツプロバイダ様から、ABボタンを付けてくれといった要望もかなりいただいたのですが、最近は全く聞かなくなりました。以前、auさんではゲームパッドみたいなものもありましたけど、廃れてしまったようで、上手くいっているようには見えませんでした。やはりモバイルゲームは片手でできるのがいいんでしょうね。コンシューマゲームとは全く違うものだとおっしゃっているコンテンツプロバイダ様も多いです。 村上氏 : あとは横画面についても。F906iだと横にしてゲームできますし、P906iは端末ごと横にしてゲームできるわけですが、普通の折りたたみタイプは縦でゲームするしかないので、何とかして横でゲームができるようにしてくださいと、かつては言われました。 あとゲーム専用端末も、世界的に見ても売れていないんですよね。パイの少ない端末を発売したところで、パイの少ない中でゲームを提供するのは、コンテンツプロバイダ様には難しい。ゲームについて何か特別なことをするということは、今は特にはないですし、コンテンツプロバイダ様も、今の状況の中でいろいろご提供いただいているので、あまり必要性を感じていないようです。
神谷氏 : モバイルゲームは今まではコンシューマゲームの下という位置付けでしたが、最近は並列で、携帯電話専用のゲームを追及したいというコンテンツプロバイダ様もいらっしゃいます。
平松氏 : 専用ゲームパッドが欲しいというのは、我々に聞こえてきている要望の中では少ないと感じています。ゲームを作られるコンテンツプロバイダ様も、もう携帯電話で楽しめるようにしようという傾向にあります。ユーザー様も、モバイルゲームを手軽に電車の中などでやることを考えたときに、あえて別付けのコントローラーを使うというのは難しい。 ではこのキーパッドそのものを変えるかというと、携帯電話は電話機としての使命もありますから、頑張ったところでDSやPSPには勝てないと思うのです。モバイルゲームのポジションがどこにあるかを考えると、あまりゲーム専用化に進めなくても、お客様に満足いただける領域はあるのではないかと感じます。 ただちょっと気になっているのは、手軽なゲームはこれでいいのですが、「ガンダム」にしろ「戦国無双」にしろ、やっぱりこのキーでは操作しづらいと感じることはあります。リッチゲーム系は、お客様にとって不満が出てくるレベルのクオリティを携帯電話上で表現できるようになってきていると感じるので、今後も少しお客様の声を聞きながら、そこに対してトライするかしないかを考えていきます。環境としては、BlueTooth対応のものがどんどん出てきていますから、そういうものも技術的には商品として扱えます。ただ、お客様がそれを求める声が、我々にはそれほど大きいとは感じられません。 神谷氏 : 仮にコントローラをつなげられるとして、携帯電話を置いて、その前でコントローラを持ってゲームしますか? ――私はまずしないでしょうね。P905iでも、横に開いて両手で「リッジレーサーズ」ができるというのは画期的だと思うのですが、電車でつり革に捕まりながらでは両手が使えませんから、手軽さを失うというデメリットも感じます。
平松氏 : だからそこは難しいところなのです。どんどんゲームの移植を進めて、モバイルゲームでも同じものが楽しめるというのをやってきましたが、今はちょっと違う傾向、さっき言った連携が取れるといった新しい世界に、ようやく携帯電話も能力が上がってきたので、そういう所にリーチしていけると、新しい価値をお客様に提供できるんじゃないかという気はしますね。
■ iアプリの今後は「他との連携」がキーワード。Flashも共存していく
神谷氏 : 2つの方向があると思います。1つはリッチ化にどう対応して行くか。3Dなどのグラフィックスの面は、行き着くところまで行き着いたような気がするので、あとはネットワークでオンラインゲームなどの方面をどうやって伸ばしていくか。もう1つは、モバイルゲームならではの部分をどう伸ばしていくかというところです。 平松氏 : 端末の処理能力の強化は、コンテンツプロバイダ様にとっては、よければよいに越したことはないので、そこは検討を続けます。あと携帯電話とコンシューマゲーム機の違いとして、機種が違うことによる差分が大きいですね。DSはDS向けに作ったら同じ性能が出て当然ですが、機種毎にインターフェイスも違うし、液晶も違います。インターフェイスが違うのは仕方ないと思いますが、性能に関しては均質化していきたいと思います。 ドコモだけで何かを考えて成し遂げられる世界ではないので、やはりゲームクリエイターの方の考えられていることとか、コンシューマゲーム機で起きていることを踏まえて、ドコモとして新しい付加価値をお客様に提供できるという世界を作りたいと思います。そのためのプラットフォーム整備を目指して進めているところです。 ――今、面白いと思っている技術やトレンドはありますか? 村上氏 : インターフェイス周りはいろいろあります。先程話に出たBlueToothにどう対応していくか。またWi-Fiもそうですし、SH906iのタッチパネルもそうですし、いろいろなユーザーインターフェイスが入ってくる中で、それをどう面白くお客様に提供するかは、引き続き考えていかなければいけないと思っています。 神谷氏 : 直感ゲームが認知されつつあるので、その方向はそれで1つ、どんどんやっていきたいですね。例えば、端末のボタンが光るといった、光の表現はまだ使っていませんし。1ボタンが光った! という機能で、もぐら叩きやってもいいですし。あるいはタッチパネルでもいいですね。うちの端末は他キャリアさんに比べて液晶が大きいので、タッチパネルと相性がいいのではないかと思います。
あとはBlueToothやWi-Fiを使った他の連携と、サーバーとの連携、というのは絶対やらなければいけないことだと思っています。
平松氏 : FlashはAdobe様が作られているものを載せさせていただいています。確かにコンテンツプロバイダ様からは、ドコモはiアプリ(Java)をやっていて、auさんはBREW、ソフトバンクさんはJavaですが我々と同じAPIなり機能拡張があるわけではないので、三者三様のプラットフォーム環境です。その中で、Flashという切り口で入ると、3社とも比較的プラットフォームとしての環境が近いことから、コンテンツプロバイダ様はFlashアプリを1個作ると展開できる先が多いというメリットがあります。 Flashゲームはコストが安く作れるというのをコンテンツプロバイダ様から伺うのですが、iアプリがゲームを作る上で高コスト化しているかというと、シンプルなゲームをFlashと同じように作る範囲では良し悪しはなく、プラットフォームとしては同じような位置づけで見ていいのではないかと思います。コンテンツプロバイダ様で誰が作るかという点で、Flashはデザイナー系のクリエイター系が多いのに対して、Javaはプログラムを書かないといけないという差異があることを考えると、iアプリに固執する必要もないのではないかと。 ユーザー様にとっては、iアプリなのかFlashなのかは、極論どちらでもよく、重要なのはゲームの中身ですよね。じっくり遊べる本格的なRPGをやりたいのか、あるいは暇つぶしのようにカジュアルなゲームをやりたいのかという発想だと思うので、裾野を広げるために、Flashもちゃんと見続けたいと思います。 お客様に少しでも届けやすくするには、クリエイターさんが作りやすい環境で作っていただけるとか、コンシューマゲーム機からの移植がしやすいものはどっちなのかというのは、作られている方によって違うと思うので、環境を広く用意しておく事が双方にとっていいことだと感じています。ユーザー様にとっても、コンテンツプロバイダ様にとっても利益があると思えるので、我々はどちらかしか駄目だとか、そういうことはあまり考えないですね。
iアプリはずっと頑張ってやってきて、我々が作りあげてきたプラットフォームという意識があるので、また新しいステージでこういうことを目指してやっていこう、といったものは考えています。Flashに関して、もしそういうことをやるようになったとして、足りない部分があるならそれも聞き入れながら、どうやっていくといい環境になるか考えていきたいと思います。
■ 自分でアプリを作れるのもiアプリの魅力
――では、弊誌の読者に……あまりモバイルゲームをやっていない方も多いのですが、そういう方へのアピールも兼ねて、最後に一言いただけますでしょうか。
平松氏 : コンシューマゲーム機やPCのゲームをプレイして楽しまれている方へのメッセージとしては、携帯にも結構、同じように楽しめるゲームが本当に豊富にあるので、まず「ゲームiガイド」をご覧いただき、どんなゲームがあるか垣間見ていただきたいです。また今、神谷が言ったように、我々のゲームプラットフォームをプレイするだけではなく、誰でもクリエイターにという形になると楽しいとも思っています。 今、ネット全体がロングテールになって、自分がコンテンツ作成に参加するということにどんどん近づいていると思いますが、iアプリもそういうものを少しはできる環境にあると思いますので、是非そういう観点でも見てきたいですね。競合他社さんではあまりできないことなので、ドコモならではの楽しみ方ということで。 村上氏 : 最近はとにかく、すごくクオリティが高いので、そういうゲームも見ていただくと、本当に驚くんじゃないかと思います。3Dでフルポリゴンのものが秒間数十フレームで動いているものもあります。さらに小さい画面で高精細なので、そういうものを1回体験していただくと、また新しい携帯電話の価値観みたいなものが生まれてくると思います。 神谷氏 : モバイルゲームは、コンテンツプロバイダ様の知恵が詰まっていると思うのです。この限られた画面の大きさと限られたボタンで、フルにネットワークなど色々なものを使って、コンシューマゲームとは違う楽しさ生み出していると思っています。別に競合するものではないので、コンシューマゲームとモバイルゲームを両方楽しんでいただければと思います。
――ありがとうございました。インタビューはこの辺りにさせいただこうかと思います。……あと、おまけと言うわけではないですが、こういった話題を目にして、端末を変えようかなと考えている読者に向けて、今ゲームをやりたければどの端末がオススメか伺ってもよろしいでしょうか?
村上氏 : 「レイトン教授と不思議な町」は凄いですよ。アプリを遊びながら、いろんなシーンで通信してムービーを取ってきて、全画面でムービーを見せて、またアプリに切り替わって。本当に高いクオリティで作られています。 平松氏 : パフォーマンス面でもパナソニック様の端末は結構好評を得ていますね。あとやはり、横に開くスタイルは、縦型よりも遊びやすいのではないかと思います。 神谷氏 : あとNEC様も面白いです。今回、アバターを作るアプリと、それを使うアプリが別に用意されています。 ――「アバターメーカー」と「アバター☆ボウリング」ですね。 神谷氏 : 多分、今後も出てくると思うので、好きな女の子でも嫌いな上司でもいいから、そのアバターを作っておけば、他のゲームでもそれを使って遊べるようになるのでは。 平松氏 : この辺りも、Wiiで作れるMiiと同じような形で楽しまれています。 神谷氏 : しかも友達と交換もできますからね。 ――参考になりました。ありがとうございました。
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□NTTドコモのホームページ (2008年7月31日) [Reported by 石田賀津男]
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