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価格:900円
CEROレーティング:A (全年齢対象)
PS3「PixelJunk Eden」は、カジュアルな作品を低価格で提供する「PixelJunk」シリーズ第3弾。プレーヤーは「グリンプス」と呼ばれる小さなキャラクタを操作し、植物をモチーフにした広大なステージ内で「スペクトラ」と呼ばれる隠されたお宝を探し出す。最大3人までの協力プレイ、PSPでのリモートプレイ、オンラインランキング、トロフィー、プレイ画面の録画、YouTubeへのアップロード機能にそれぞれ対応。価格は900円で、CEROレーティングはA(全年齢対象)。北米では実施済みだが、国内でも31日から体験版が配信される。 今回、アニプレックスとキュー・ゲームスがプレス向け体験会を企画したのには、もちろん理由がある。それは「本作の魅力が、静止画や端的な動画だけでは伝わりにくい」からだ。かくいう筆者も、過去記事の静止画や動画を見ただけでは、正直面白いのかどうかさえあやふやだった。無論、この先入観は後の実体験でアッサリと覆されるのだが……。 会場では、キュー・ゲームスからスタジオ ディレクターの吉田謙太郎氏と開発マネージャーの富永彰一氏が解説と実演を担当。本作は、京都在住の日本人マルチアーティスト「Baiyon氏」とのコラボレート作品。キュー・ゲームスは2001年に京都で設立された会社で、代表取締役は任天堂やSCEJでさまざまなタイトルの開発に携わったディラン・カスパート氏。「PixelJunk」シリーズは京都在住アーティストとのコラボレート企画が恒例となっており、今回はBaiyon氏がグラフィックス全般とサウンドのディレクションを担当している。 Baiyon氏の世界観や考え方が色濃く反映された本作は、トップメニューにも“ひねり”が加えられている。通常、トップメニューといえばゲームモードなどを選ぶだけだが、「PixelJunk Eden」はトップメニューそのものが簡易ステージのようになっており、プレーヤーは「グリンプス」をゲーム本編同様に操作し、ステージの入り口「ゲート」まで動かしていく。富永氏は「既存のゲームとは違う、新しい感覚。いわゆるトップメニューという感じではなく“トップメニューからエデン世界”。そういうところに自分が居る! という感じにしたくて、ここからもうゲームがプレイできるというふうにしました」と説明する。 ゲームは全部で10ステージ(実際には、本作ではステージのことを“ガーデン”と表現する)。前述のとおり、ガーデン内にはお宝「スペクトラ」が散在しており、最初にチャレンジするときはスペクトラをひとつ見つければステージクリア。同じステージに次回挑戦するときは、クリアに必要なスペクトラはふたつになり、以後3つ、4つと増えていく。各ステージには5つのスペクトラが存在し、ひらたくいえばステージごとに5レベルが用意されている、ということになる。 プレーヤーは、スペクトラを集めるために「グリンプス」を操作して広いステージを上下左右に飛び跳ねて回る。操作系はシンプルの一言で、使用するのは左アナログスティック、ボタン(×、○、△、□どれを押しても同じ機能)、L1またはR1ボタンのみ。ボタンを押すと、“シルク(糸)”を伸ばしながら「グリンプス」がゆるやかにジャンプ。糸は一定の長さまで伸びるとストップし、このとき左アナログスティックを回すと“投げ縄”よろしく「グリンプス」をグルグル回すことができる。もう一度ボタンを押すと糸が切れてグリンプスはその方向にふわふわと飛んでいく。なお、ボタンを2回素早く押すと糸を伸ばさずにその場からジャンプ。伸ばしている最中にL1またはR1ボタンを押すと糸がまきとられていく。
飛んでいった先に植物や岩などのオブジェクトがあれば、「グリンプス」は自動的にピタッとつかまってくれる。ゲーム中では、これを「グリップ」と表現する。岩に対しては無理だが、ジャンプの際にボタンを押しっぱなしにすると「スピン」となり、植物のみグリップせず素通りできるようになる。特殊な操作としては、ジャンプ中にSIXASISコントローラーを足場のほうに素早く振ることで「アタック(急降下)」が可能。後述するエネミーが真下にいるとき、ジャンプして目的地を飛び越えそうになったときに役立つテクニックだ。
ステージ内には「ポレン・プローラ」と呼ばれるエネミー(敵)がいる。エネミーは、ジャンプして「グリンプス」を直接ぶつけるか、もしくは回転させた糸にまきこめば倒すことができる。一度のジャンプや糸の回転で複数エネミーをまとめて倒すとコンボになり、高得点が獲得できる。 倒されたエネミーは、その場で大量のポレン(花粉)を噴出する。これを体当たりや糸で回収すると、画面内でもっとも近くにある「プラントシード(種)」に吸い込まれていく。ポレンをMAXまで吸収したプラントシードに体当たりすると新たな植物(プラント)が発芽し成長。これを繰り返して、ステージを探索する“足場”を広げていくわけだ。ちなみにステージが進むと、糸で巻き込めない、糸を切断する、スピンやアタック以外では倒せないなどの特殊エネミーが出現するという。
一定時間が経過すると、画面左下にある「オシレーター」と呼ばれるゲージが少しずつ減少。オシレーターは、画面内に浮遊するクリスタル、もしくはスペクトラを取ると回復。オシレーターがゼロになるとゲームオーバーとなり、トップメニューに戻されてしまう。
本作は「31日発売で、他に対応タイトルがなければ初(吉田氏)」というPS3のトロフィー機能に対応。開発中にアナウンスがあったため、今回は「いくつ敵を倒したら」などのストレートな内容が多いという。「もっと考えられたら(トロフィーを使った)色々な遊びかたがあったと思います。ネットで対戦しながらトロフィーの奪い合いをしてみたり……。本作に関しては、開発後期にトロフィーやビデオ録画の話がきたので、今から入れるのは大丈夫かな? というくらい。でも(開発体制が)少人数だから小回りがきくぶんなんとかなりました」という。
トロフィーの項目は、コンボ数、パーフェクトクリアなど多数が用意されており、コンプリートはなかなか大変そう。このとき「トロフィーの各項目には、SCEJが策定したアウトラインのようなものはあるのか?」と質問すると「私たちが作っていたときはなくて、手探りでした。今はたぶんあると思います(富永氏)」、「内容はかなり作り手側の自由になっているんですが、トータルのポイント数はわりときっちり定義されています(吉田氏)」との回答が得られた。トロフィー機能が気になるユーザーは、まずは本作で体験してみるというのも良さそうだ。
■ ファーストインプレッション ~ 独特の浮遊感と“ひとひねり”が効いたジャンプアクションの妙味~
ステージ構成は、最初こそシンプルだが、先に進むと古式ゆかしいパズル風のフィーチャーなども随所に顔を出してくる。たとえば、瞬間移動に使えるテレポートゲートが、先のステージになると「トラップ」として出現。“さもありなん”という場所にちょこちょこ配置されていたりして、ちょっとしたミスがスゴロクでいうところの「スタート地点に戻る」状態になり、これがなかなかいやらしい。この他にも、特定の場所にグリップすると動き出す岩場、特定の方向に凄まじい勢いでキャラを弾き飛ばすプラントなど、楽しい仕掛けが各ステージにちりばめられている。 丁寧に構築されたひねりのある王道ジャンプアクションと、Baiyon氏の手によるアートディレクションとサウンドが生み出す一体感は、分業制のもとシステマチックに作られたゲームでは絶対に味わえない“濃厚”なもの。スペクトラを取るごとに少しずつ変化していくステージの色彩、ゲームが進むごとにトーンを変えていくサウンドなど、繊細な作りこみはプレイするごとにジワリとプレーヤーをひきつけていく。カジュアルだが、その土台と精神性は、フルプライスとまったく引けをとらないか、それ以上に堅牢だ。 会場では、3人によるマルチプレイも体験できた。誰かが画面外に消えてしまうとシードにチャージしていたポレンが半分に消えてしまうため、ひとり気ままに動き回ると他の誰かがタイヘン! といったことになり、チームワークの大切さがあらためて身に染みる。みずから実践はできなかったが、糸を使ったコンボで協力することも可能だという。マルチプレイの楽しさは、シングルとは完全に別物といっていい。オンラインプレイに対応していないのが残念だが、一緒に遊べる友人知人が居る人は、ぜひとも集って楽しんでいただきたい。
当初のアートコンセプトは“印刷された2D”だったという本作。3D感を極力出さないように配慮されており、一見するとさしたる手間はかかっていないように思われるかもしれない。だが、実際には草木などの自然な動きを再現すべく非常に手間のかかった物理演算が(文字どおり見えないところで)行なわれている。グリンプスの微妙な動きも用意されたアニメーションパターンではなく、それぞれ精密な物理演算によるもの。これらはPS3だからこそ実現できた表現だという。小さいモニターだと確認しづらいかもしれないが、大型ディスプレイでプレイされる人は、プラントはもちろんグリンプスの所作にも注目してほしい。実は結構エグいデザインをしているのだが、遠めには非常にかわいらしく見えるのもポイントだ。
■ オリジナル・サウンドトラックCDが9月24日に発売
前述のとおり、ゲーム本編のアートとサウンドの各ディレクションを手がけたBaiyon氏がパッケージとインナーをデザイン。収録曲もアルバム用に再編集されている。ゲームをプレイした人ならひとめでわかるのだが、パッケージとゲーム内のメニュー周りなどのデザインがきちんと統一されている点も見逃せない。
実は今回、体験会にてBaiyon氏、吉田氏、富永氏から本作に関するさまざまなエピソードをおうかがいする機会に恵まれた。これらはインタビュー形式にて明日(31日)あらためて掲載する。ファンの人はもちろん、気になる人はぜひチェックしていただきたい。
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□Q-Gamesのホームページ (2008年7月30日) [Reported by 豊臣和孝]
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