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会場:東京・五反田
「ESWC」は、仏国のeスポーツ専門企業GAMES-SERVICESが2003年から毎年開催しているeスポーツの国際大会。今年の「ESWC2008」本戦はアメリカ・カルフォルニア州のサンノゼで8月25日から8月27日まで開催され、全世界36カ国から約800名のeアスリートが集まり、総額25,000ドルの賞金をかけて6種目の競技が争われる。 日本予選の運営主体は、今年から「ESWC」日本地域予選の運営パートナーとなった日本eスポーツ協会設立準備委員会(JESPA)。「ESWC」に日本選手団が送られることになるのは今回が初の試みということもあり開催規模は小さく、本戦で戦われる6種目の競技のうち、日本でもeスポーツ大会の競技として実績のある「Counter-Strike 1.6」の男子5人制チーム戦のみが日本選手参加種目として採用されている。 会場に集まったチームは、事前のオンライン予選を勝ち抜いてきた「Speeder」、「Loosely」、「A.vouLus」、「Lycoris Radiata」の4チーム。ただし、「Counter-Strike」の国際大会で常連となっていたプロチーム「4dN.PSYMIN」を母体とする後継チーム「4dN!-ziG」は、オンライン予選Aブロック2位で出場資格を満たしていたが、チーム事情のため出場を辞退し、同ブロック3位の「Lycoris Radiata」が繰り上がって出場するという形になっている。 試合は「Counter-Strike 1.6」のゲームルールに則り、各5人で構成された2チームが各15ラウンドの前後半戦で攻撃サイド、防衛サイドをそれぞれプレイし、先に16ラウンドを取得したチームが勝利するという形式で行なわれた。トーナメントは1度までの敗北が許されるダブルイルミネーションルール。午前9時からおよそ10時間、本戦出場を掛けて全6試合が戦われた。
■ 圧倒的な強さを見せる「Speeder」が文句なしの内容で優勝
チーム「Speeder」は、上記2名に加え、Twist選手(浅野 幸弘・22)、nativo選手(Tiago Yoneyama Mendes・20)、xEnqLity選手(鈴木 将太・19)の5名で構成され、補欠なしのチームで一丸となって今大会に臨む。その強さはオンライン予選で既に半ばを証明しており、16-1、16-3といった圧勝で決勝大会出場を決めている。 その「Speeder」が会場で最初に迎えた試合はその日の第2試合、対「Lycoris Radiata」戦。「Lycoris Radiata」はオンライン予選で同ブロックだった「4dN!-ziG」の棄権により今回の出場が実現したチームで、ころがりこんだチャンスを活かせるのか、真の実力が試されるところだった。 しかし、試合は一方的な展開で「Speeder」が圧倒。「Counter-Strike」の試合では、開始早々のファーストラウンドを勝利できるかどうかがその後の展開において大きな鍵を握る。勝利したチームはゲーム内資金を獲得し、2ラウンド目で装備を充実できるからだ。一方ファーストラウンドを敗北したチームは、その後の数ラウンドを初期装備だけで戦う「エコラウンド」とすることを余儀なくされるため、逆転のタイミングが難しい。 強さを見せる「Speeder」は前後半戦のいずれもファーストラウンドを勝利して、危なげない試合展開を続けた。リズムをつかめない「Lycoris Radiata」はいくつかのウルトラプレーで数ラウンドを獲得したものの勢いは続かず、結局、前半12-3、後半4-0の合計16-3というスコアで「Speeder」が圧勝した。
・「Lycoris Radiata」が善戦。しかし「A.vouLus」が僅差で敗者側トーナメントから復活
第4試合では、最初の試合を勝利した2チーム、「Speeder」と「A.vouLous」が勝者側トーナメントで対決。ここで前後半ともファーストラウンドを勝利したのは「A.vouLus」。幸先の良いスタートで「Speeder」を苦しめるかに見えたが、前半、2つのエコラウンドを予定調和的に落とした「Speeder」が第4ラウンドで装備を充実させて勝利を挙げ、そのまま一気に巻き返して10-5で試合を折り返す。 後半のファーストラウンドも「A.vouLus」が勝利。しかし、ハンドガンのみを装備する「Speeder」が持ち前の勝負強さで2ラウンド目で取り返す。これには大きな歓声が上がり、モチベーションを上げることができたのか、「Speeder」はそのまま連勝、結果だけを見れば16-6という大差で試合が終わった。 敗者側トーナメントに転がり込んだ「A.vouLus」は第5試合、決勝戦への復活を掛けて「Lycoris Radiata」と対戦。「A.vouLus」はこの試合でも前後半でファーストラウンドを勝利するという出先の強さを見せたものの、「Lycoris Radiata」も負けずに盛り返し、前後半フルラウンドを戦う状態にもつれ込んだ。 両チーム同点(15-15)で終わった場合には規定により3ラウンドハーフの延長戦が行なわれるが、「Lycoris Radiata」が2ラウンド連勝し1ポイント差で迎えた最終ラウンド、2つのエコラウンドを終えた「A.vouLus」が辛くも勝利し、16-14という紙一重の差で「A.vouLus」が決勝戦へ進出した。
・他を寄せ付けない強さで「Speeder」が優勝を決める
決勝戦が行なわれた時間帯の会場は、歩くことさえ困難なほど多くの観客でごった返した。こうして迎えた最後の試合、ファーストラウンドを勝利したのは「Speeder」だった。出鼻をくじかれた形の「A.vouLus」はなすすべもなく11ラウンドを連続で失い、前半で2ラウンドを取り返したものの、選手同士で掛け合う声にも元気が無い。 後半ファーストラウンドも「Speeder」が勝利。いちど対戦して「対策」が済んだかのような安定したプレイぶりで、すべてにおいて1手先を行くような展開だ。「A.vouLus」がスモークグレネードを炊いて集団で突入するや、ほとんど見えないはずの場所からxENqLity選手がスナイパーライフルで次々に打ち抜く場面や、先陣を勤めるnoppo選手が出会う敵を次々に打ち倒す場面など、個々の場面でも力の差が歴然としていた。全体を統率するSion選手の動きにも迷いがない。 試合の結果は16-2で「Speeder」の圧勝。結局、「Speeder」が他を寄せ付けない強さで優勝を決め、アメリカ・カルフォルニア州で行なわれる「ESWC2008」本戦への出場切符を手に入れた。全試合の結果は以下の通り。
■ 「Speeder」の強さは海外で通用するか。充実した練習に取り組めるかどうかが課題
表彰台でのコメントでは、「アメリカ・サンノゼで、日本人の真の強さを見せ付けたいと思います」(noppo選手)と、チーム「Speeder」の鼻息は荒い。本戦でどのような結果を出してくれるか、いやがうえにも期待が集まるというものだ。ちなみに、これまで「Counter-Strike」の大規模国際大会で日本人チームが獲得した最高成績は、「4dN.PSYMIN」がCyber Athlete Professional League(CPL)2005年夏季大会で記録したベスト12である。 「Counter-Strike」は世界的に競技人口が多く、壁は厚い。今回の「Speeder」は圧倒的な成績で出場権を獲得したが、世界の舞台でかつての「4dN」以上の成績を残せるかどうかはまったくの未知数だ。ちなみに、日本をホームグラウンドにすることの弱点は「練習環境」にあるとの見方がよくされる。トップレベルのチームが少なく、練習場所も限られるため、実力の限界を引き出し続けるような濃密な練習機会をセッティングすることが困難なのである。 「Speeder」が世界で優秀な成績を残すためには、8月のESWC2008本大会開催日までにどれだけの練習が積めるかにかかっているだろう。リーダーのSion選手によれば、オンラインで毎日8時間のチーム練習をしているのだという。 その質を語る中で、noppo選手の存在は大きい。ゲームの腕を上げるため「Counter-Strike」の世界的な強豪チームがひしめくスウェーデンに単身で留学をしたというnoppo選手は、eスポーツが盛んな欧州基準のプレイをよく知っている。チームのまとまりもいい。古参スナイパーのxENqLity選手に加え、6月に参加したディフェンシブなnativo選手、遊撃役のTwist選手もうまくフィットし、Sion選手のリーダーシップのもとスムーズなチームワークが実現されている。 しかし、それだけでは足りない。今回、日本予選決勝トーナメントでぶつかりあったチームを含め、日本でも指折りのチームやトッププレーヤーが、「Speeder」をサポートして濃密な練習機会を提供できるかどうか。それができれば、「Speeder」は本戦に向けて最善の状態に仕上がることだろう。昨日の敵は今日の友と言う。「日本代表を応援するため、スポーツマンシップを発揮してともに戦う」という姿勢を、日本のeアスリート達に求めたい。
□Erectronic Sports World Cup 2008 日本予選のホームページ http://www.eswc.jp (2008年7月28日) [Reported by 佐藤カフジ]
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