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会場:千代田区役所1階 区民ホール
「リコリタ (licolita)」は、東京・秋葉原を舞台に、楽しくて敷居の低いエコアクションを発信し、アクションの実践の仕組みを作ることを目的とするNPO法人。名前の由来は、「“利己(リコ)的な行動=自分の好きな事”をしていると、いつの間にか“利他(リタ)的な行動=社会のためになる事”をしている」という意味で名付けられている。 秋葉原に興味のある方なら、メイドさんたちが一斉に打ち水をするイベント「うち水っ娘大集合!」や、買い物した際にレジ袋を断るとメイドさんがお礼をしてくれるという「Myメイドバッグ」プロジェクトなどを実施したといえばおわかりいただけるだろうか。 「秋葉原環境会議」は秋葉原を拠点に、地球温暖化対策としてさまざまなエコアクションを考えるという会議。第2回となる今回は、フリーライターの今一生氏が司会を務め、リコリタからは代表の真田武幸氏、サポートメンバーの大矢中子氏、ゲストにグリーンズLLP代表の鈴木菜央氏、環境エンタメプロデューサーのハッタケンタロー氏、秋葉原TMO専務取締役の関幸子氏、株式会社ダレット代表取締役社長の稲船敬二氏、神奈川工科大学教授の深野暁雄氏を迎えて行なわれた。 会議は第1部「秋葉原でできるエコアクションを考える」、第2部「ゲームでできるエコアクションを考える」の2部構成。本稿ではゲームに関連した第2部の模様をレポートする。
■ エコをテーマにしたゲームを紹介
続いて教授の深野氏からは、植林ネットワークゲーム「リズムフォレスト -REf-」を紹介。これは「戦わない殺さないゲーム」制作を目指す株式会社フォトンと、国連カテゴリー・ジェネラルに所属する国際NGOオイスカが連携して開発した作品。内容は集まったプレーヤーたちが、心のおもむくままキーボードを叩いて音楽を生成するという音楽コミュニティゲームで、ゲーム中で植えた木が現実に木が植えられるという、バーチャルとリアルを繋いだ作品となっている。詳しくは「リズムフォレスト -REf-」の公式サイトを参照していただきたい。 深野氏はこれを例にとり、ゲーム中の秋葉原でエコ活動をしたら、それがリアルタイムに現実の秋葉原でのエコ活動に繋がるというように、ゲーム中でのエコ活動を現実と結びつける。このようにしてゲーム中でのエコへの意識が高まってくれば、それを現実にやろうという流れになるのではないかという理論を展開した。 それを受けてグリーンズLLP代表の鈴木氏は、ゲーム中でうち水っ娘のアクションが溜まっていって、それに対応する水が現実にどこかで確保されていて、店の人などがその水を撒くというイベントをするというアイディアを披露。さらに“技術力”に注目し、ゲーム内にある要素を使った、発電やリサイクル、エコなものを作れるようになるのではないかなと期待感を示した。 さらに真田氏はネット上で見つけた情報として「GAMERS HEART」プロジェクトを紹介。こちらはちょうど同じ時間に記者発表会を行なっていたため、氏自身も詳しい内容については知らなかったものの、「ゲームの中で“良い事”とかエコアクションに繋げてみたい。環境についての教育なども含めて、ゲームの中でいろんなことを展開していくことが増えていくんじゃないかな」と今後のゲームについて触れた。 そして深野氏は、コナミデジタルエンタテインメントの「Food Force」という食糧支援をテーマにした作品を挙げた。このゲームは食料の不足している国に食料を送ることを目的としているが、テロなどの社会問題や予算の問題などが発生し、遊びながら現実問題を考えられる内容になっている。深野氏は「キャラクタがいけなくて、やる気にならない」としつつも、内容については評価しており、リアルな情報が入っているシミュレーションゲームを使って、エコなど社会的なことを教える授業をすれば、“ニュースでは知っているが詳しくは知らない”ということも教えられるし、そういうゲームが出てきてほしいと希望を示した。 また、リアルなエコ活動には参加するタイミングがなくて参加できない人もいるとした上で、ゲームの中で呼びかけやチラシ配りが行なわれ、仮想世界の中で頑張って「ここまで頑張ったらリアルに行ってみようぜ」というように、エコ活動への参加をゲームをきっかけにしてみてもいいのではないかと語った。
リコリタの大矢氏は、「潜在的にエコ活動をしてもいいなと思っている人は多いはずなんですが、最後にどうしても行動に移せないという人が、ゲームという仮想世界の中で誰でも自分を変えられるというところから入って、最後にリアルに戻ってくるという流れができたらいいんじゃないかな」とゲームの効果に期待を見せた。
■ 稲船氏「実際にゲームの中でエコ活動をするのは難しい」
さらに「『ダレットワールド』の立ち上げでは、僕自身も疑問に思ったところもありまして、“世界を作り上げる”ということをゲームとして成り立たせるにはどうしたらいいのかを考えました。『ダレットワールド』はゲームではなくてコミュニティです。コミュニティは“作る”ものですね。だから、単にエコ活動をゲームの中に持っていこうとすると、かなりハードルが高いんですけど、既存のゲームに何かを持っていこうというのは、“そのゲームにかかった課金の一部を寄付します”レベルでしかないんです。でもそれが現実の意識には向かないですね」とゲーム化することの難しさを語った。 「リズムフォレスト -REf-」についても「植林することがおもしろくておもしろくてたまらないという人がいるかというと、これもまた難しい。『ダレットワールド』でも同じような話が出てきまして、『ダレットワールド』で僕たちが街を作って提供するだけではなくて、みんなで作るということをやってもいい。例えば建築現場があって、作ってる途中を見せて、それを手伝わせることで、“この街を自分たちで作っているんだよ”ということをした場合、完成したときにものすごい達成感が得られて“自分たちの街”ってなるんじゃないかなと。ゲームとしては手伝った人に何ポイントあげますというようにエサを用意しないといけないんですけど、最初はエサで釣るけれども、将来的には達成感で“やろう”という気にさせられるのではないか」と、「ダレットワールド」を使い具体的な例を挙げた。 そして「木を植える場合でも、『木を植えました、はいできました』で終わってしまってはリアルに感じ取れない。『木を育てました。木ができました。その木が千代田区のどこそこに植わっています』とすることでリアルと繋がることはできると思います。順を追っていくことがすごく大切で、木を植えていくというビジネスではなくて、『人を集めて儲かるシステムがあって、そこで木を植えることがより人を集めることになります』とそこまで持っていけないとビジネスとしては難しいかな。企業の中で当たり前のことをした上でエコ活動を取り入れるということは、より時間と労力がかかると思います」とビジネスへの結び付け方を解説した。 世界を作り上げるということから「Second Life」にも話題が及んだが、「『Second Life』は自由度が高すぎて日本人には向かなかった。日本人向けになっているという意味で『ダレットワールド』には期待しています」とリコリタの大矢氏は「ダレットワールド」への期待を見せた。今一生氏は、「ミニ大阪」などをテーマに子供たちに街づくりを体験させるミッションなどを紹介し、「ゲームでネオ秋葉原を作らせてみては」とアイディアを披露した。
最後に真田氏は、「どんな方でも楽しくやることに関しては、モチベーションとかエネルギーというのは全く関係ないところからわいてくるのではないかと思っていまして、それを僕の大好きな秋葉原で発信できたらなと思い、環境会議を開催しました。今後も継続してやっていきたいなと思っています」と挨拶し、会議は終了した。
(2008年6月19日) [Reported by 滝沢修]
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