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Game Tools & Middleware Forum 2008レポート

すべては良質なゲームづくりのためにある!
「GTMF 2008」で紹介された最新ツール&ミドルウェアをチェック

6月4日 開催

会場:大手町サンケイプラザ

 東京・大阪・福岡の3会場にて連続で開かれるゲーム開発者向けのセミナー「Game Tools & Middleware Forum 2008 (GTMF 2008)」の初回が東京会場で開かれ、たくさんのゲーム開発のためのツールやミドルウェアが紹介された。

 本イベントは、ゲーム業界関係者の中でも特に開発の中心に関わる人々にフォーカスした専門的なセミナーで、一見、エンドユーザーには無関係なものにも見えるが、実際のところ、開発ツールやミドルウェアの善し悪しは消費者の手に届く製品クオリティに直結する重要なポイントだ。

 ほぼすべてのゲーム開発は、開発期間とクオリティとのせめぎ合いである。ユーザーニーズが高度化・多様化し、よりクオリティの高いゲームが求められるなかで、効率的な開発ツールの存在は益々重要なものになっている。良質なツールやミドルウェアが存在すれば開発期間は短縮され、ゲーム内容を洗練する余地が大きくなり、結果としてエンドユーザーの手に素晴らしいゲームが届くという寸法である。

 そんな前提にたち、ここでは、本セミナー「GTMF 2008」で紹介された中から、ゲーム開発期間を短縮し、ユーザーの利益に直結しそうなツールやミドルウェアをチョイスしてご紹介してみたい。


■ ゲームのローディング時間を効率的に短縮し、快適なゲーム環境を支援
 データ圧縮とレイアウトを自動化するCRIミドルウェアの「ファイルマジック PRO」

「圧縮」、「適切なレイアウト」を施すとこんなにロードが早くなる! というのが「ファイルマジック PRO」の趣旨
「ファイルマジック」ではプログラマが意識しない形で圧縮ファイルを取り扱える
 プレイステーション 2・Xbox世代からプレイステーション 3・Xbox 360世代になり、ゲーム機は高性能になったのに、ロード時間は逆に長くなってしまったという不満を抱いたことのある読者はいないだろうか?

 これはDVD-ROMやBlu-rayといった光学メディアからデータを読み出す方式のゲーム機にはつきものの問題で、かつてのゲーム機と比べると容量は10倍にもなったのに、読み取り速度は4〜5倍にしかなっていないため、と語るのは、映像・音声を専門とする国内のミドルウェア開発会社、株式会社CRIミドルウェアの押見正雄氏だ。

 「データの圧縮」にフォーカスしたこのセッションでは、最新の主力プロダクトとして「ファイルマジック PRO」が紹介された。この製品は、ゲームデータのローディング時間を短縮するために必要なノウハウを一極集中的にまとめあげた開発ツールで、データ圧縮・解凍から実行時のデータ使用傾向分析、そしてROM上のデータ配置までの作業をエレガントに自動化するものである。

 押見氏は、ゲームを構成する全データを見ると、動画や音声といったデータはもちろん圧縮状態で格納されているが、モデルデータやテクスチャなどは案外圧縮されずに格納されていることが多いと、10年以上ミドルウェア企業としてゲーム開発現場を見てきた立場から実情を紹介する。ゲームデータがなぜ圧縮されずに格納されているかというと、「圧縮してみないとサイズがわからないし、逆に大きくなることもある」、「展開するためにバッファが必要で、メモリを余分に使ってしまう」といった障害があるなどの事情によるようだ。

 CRIが開発会社向けに提供してきた「ファイルマジック」(旧版)の機能はまさにそこで、ゲームデータを圧縮して格納したものを、プログラマが通常のファイルロードと同じ感覚で扱えるようにするものだ。展開するためのバッファは「自己エリア展開」と呼ばれる方法で余分なメモリを必要としないため、ゲーム機につきもののメモリレイアウト問題を意識せずに圧縮ファイルを扱える仕組みだ。

 そして最新の「ファイルマジック PRO」では、さらに「ロード時間の短縮」にフォーカスした機能として、記録メディアのリード(読み取り)、シーク(走査)の特性に配慮したデータレイアウトを自動的に構築する。ゲームのあるステージで使われるデータを自動的に連続で並べて記録し、ロード時のシークタイムを最小化するというのが基本だ。

本セッションでは光学メディアの特性から懇切丁寧に解説。時間のかかるシークが大量に発生するランダムアクセスは大幅な速度低下につながり、データレイアウト調整不足のゲームはロード時間の長さに泣くというシナリオになるようだ

 データ配置は、汎用OS用の「デフラグ」ツールのように、ゲームの実行時にデータロードの傾向を分析し、自動でレイアウトするため、開発時間の短縮に大きく寄与する。頻繁に使われるデータは記録メディア上の余り領域に複製しておき、1回のシークでまとめ読みができるようにする「デュプリケート」機能もついているという念の入れようである。

 実際に展示されたグラフィカルなデモでは、ランダムに配置したデータと、「ファイルマジック PRO」を使ってレイアウトしたデータの読み取り速度で3倍の差がついていたため、その効果はかなりのものがあるようだ。また、圧縮も含めたこの技術は、光学メディアだけでなく、Wiiウェアのようなシリコンメディアにも効果的であるという。

「ファイルマジック PRO」の基本コンセプトは「圧縮」と「ファイルの最適配置」。これらを自動化することにより、人の手で行なえば膨大な労力が必要となる作業を、ゴールドディスク作成前の最終段階で大胆に行なうことができる。他にも、よく読まれるデータを複数配置してシーケンシャルリードを保証する「デュプリケート」や、一緒に使うデータをまとめて読む「グループリード」機能などを装備

 製品機能を解説する押見氏が、「ゲームとの関係が多様化するにつれて、ユーザーがいちどにプレイする時間が短くなっています。5時間プレイする間に1分のロードなら無視できますが、10分プレイする間に1分のロードではやる気をなくしてしまいますよね」と表現していたのが印象的である。

 プレイアビリティに直結するロード時間をいかに短くするか。いろいろな方法があるだろうが、一般にゲーム制作の最終工程で行なわれることの多いデータレイアウト作業を手動でやる限り、開発スケジュールが押していればおざなりにされてしまう可能性も高い。それを自動化してくれるツールがミドルウェア企業から広く提供されることは、結果的にユーザーの快適さにつながっていきそうだ。

【CRI「ファイルマジック PRO」】
ランダム配置との差は圧倒的だが、同様にシーケンシャルリードが出来る条件下でも、圧縮が効いている分高速に読み込める。一般的なゲームデータの圧縮率は40%程度ほどになるとのことで、解凍をバックグラウンドで行なうことによりおよそ2倍以上の高速化が成る

【CRI「救声主」】
サウンド圧縮・高品位再生のミドルウェア「救声主」。ニンテンドーDSタイトルで広く使われている製品だ。16kHzで記録された音声を32kHzにアップサンプルして再生することにより、自然な音質が再現されていた

【CRI「Sofdec」】
こちらもCRIの製品で、ゲーム向けのビデオコーデック「Sofdec」。映像のシャープ感を重点的に残すという量子化方式を使い、低解像度で高品位な表現を実現することに特化している。右の写真はWiiで再生したフルスクリーンムービーである


■ プロトタイピングに大活躍する欧州生まれの統合ゲーム開発環境「Virtools」

高性能なゲーム環境構築ツールとでもいうべき「Virtools」は、欧州生まれの統合ゲーム開発環境で、プロトタイピング用途に最適だという
 精密部品、工作機械、半導体などを手がける三徳商事株式会社からは、欧州生まれの統合ゲーム開発環境「Virtools」が紹介された。三徳商事が日本公式のリセラーを手がける「Virtools」は、ゲームの最終製品を作る一般のツールやミドルウェアとは異なり、「プロトタイピング」の効率化に注目した開発環境だ。

 良いゲームとは良いゲーム性を持つ作品という見方をすれば、ゲーム開発中に繰り返すトライアンドエラーはとても大事な工程だ。ゲームの本質を表現するルール、操作性、アクション、演出など、試作段階で広範囲に実際に試す(プロトタイピング)ことができれば、洗練されたゲーム仕様を最終製品に導入することができるからである。

 このためプロトタイピングは効率よく進めたい。しかし、プロトタイプ版とゲームの最終製品版が本質的にひとつのプロジェクトである場合(よくある話だ)、ゲームが完成に近づくほどプロジェクトが大規模になり、変更をかけて別の仕様をテストすることが容易ならざる仕事になってくる。したがって、特定のゲーム要素だけを素早く構築して試すことのできる仕組みがあれば、この工程は大幅に改善されるはずだ。これがまさに「Virtools」の活躍する分野である。

ゲーム的な振る舞いは、「ビヘイビア」を定義するパーツを回路図のように組み合わせるという、ダイアグラムベースのエディットで実現する
 「Virtools」は、プログラマの支援なしにインタラクティブなゲーム環境を構築できる機能を備える開発環境だ。「Virtools」の中に構築される仮想空間には、ゲームで使う様々なモデルデータなどをドラッグ&ドロップで配置でき、独特の「ダイアグラムエディタ」上でふるまいを定義し、ゲームルールを再現した世界を短時間で構築できるというものである。

 この環境には「Havok」物理エンジンを統合しているため、物理処理ベースの環境を構築することもできる。基本的なオブジェクトの振る舞いは「ダイアグラムエディタ」のGUI上に配置する回路部品の形でライブラリが用意されているため、「入力方向に応じて車が走行する」といったありがちな挙動は1行のスクリプトも書かず、「ビヘイビア(振る舞い)」パーツをマウスで配置していくだけで実現可能だ。

 またオブジェクト間の相互作用も定義することができ、「ゲームの特定のシーン」を素早く再現する上で有用な機能が充実している。特殊な動きが必要なら専用スクリプトで多少のコーディングが必要になるが、プログラマ以外でも扱いやすく、学習が容易なものとされている。まさにプロトタイピングにぴったりのツールと言えよう。

プロトタイピング用途で広く使われる「Virtools」。ゲームのプロトタイピングは最終製品のクオリティ向上のために重視されるべき工程であることが、プレゼンテーション資料のなかで繰り返し強調されていたのが印象的だ。採用実績は図の通り多数に上り、有名タイトルもちらほらと確認できる

 「Virtools」は基本的に「非プログラマ」による使用を前提としたツールであるだけに、ゲームデザイナー御用達の道具として試作用に使われることが多いようだ。このため、三徳商事の佐々木良彦氏による解説は主にプロトタイピング用途の紹介が中心となったが、もちろん、このツールを使って最終的な製品を構築することも可能である。大規模開発には必要となるモジュール化による分散開発のサポートも充実しており、実例としてUBISoftやJoWoodといった有名スタジオが最終製品版の作成に「Virtools」を用いた例もある。

 プロトタイピング用途としては国内メーカーも含め多くの採用実績がすでにあり、現状では広く知られてはいないものの、その存在感はなかなかのものがあるようだ。このプレゼンテーションでは、よいゲームを実現する上でのプロトタイピングの重要性を重ねて強調していたし、まさにその通りだと思う。「Virtools」は、そんなゲーム開発の現実に即した開発ツールである。

「Virtools」はXbox 360、プレイステーション 3など高性能機向けの実機動作も可能で、高品位のレンダリング機能が利用できる。最終製品版の製作にも応用できるとされるが、スクリプトベースのゲームエンジンがパフォーマンスに及ぼす影響については詳しく触れられなかった


■ 国内発のグラフィックスエンジン、シリコンスタジオ「DAIKOKU」、「YEBISU」
 多用されるシェーダー機能をワンパッケージに納めた便利さに注目

シリコンスタジオが国内展開を手掛けるミドルウェア群は相当数に上る。海外系のミドルウェアは有名なものばかりだ
シェーダー機能を網羅した描画ライブラリ「DAIKOKU」。必要な機能をあらかじめビルトインし、取捨選択して手軽に使える方向性を目指す
 シリコンスタジオ株式会社から紹介されたミドルウェアは多数に上った。2000年にSiliconGraphicsからグラフィックス技術者集団として独立した経緯をもつシリコンスタジオは、国内向けに欧米の優秀なミドルウェアを手広く紹介する事業を手がけており、高性能ゲームエンジンとして既に有名な「ALCHEMY」を始め、米RAD GAMETOOLSの「Bink」ムービーコーデック、「Miles Sound System」サウンドエンジン、加Quazalのネットワークミドルウェア「Net-Z」など多数のミドルウェア製品を扱っている。

 その中で今回、多くの時間を使って紹介されたのが、シリコンスタジオ内製の、つまり国産のグラフィックスエンジンである、「DAIKOKU」と「YEBIS」だ。

 まず、「DAIKOKU」はシェーダー世代のモデル描画を効率的におこなうための「高機能固定パイプライン」である。「固定」というのが最大の特徴で、本来柔軟性を持つ存在であるはずのシェーダープログラムから、その柔軟性を敢えて犠牲にし、そのかわりによく使うシェーダー機能を片っ端からパッケージ化したというのがコンセプトだ。

 どういうことかというと、通常、シェーダーを使ったグラフィックプログラミングには専門のプログラマの手が必要になる。グラフィックデザイナーが映像表現上の要求をし、それをプログラマが実装して、ゲームに載せるという形だ。ところが実際のところ、一般に使われているシェーダー技法はノーマルマップや環境マップ、フレネル効果など、ありがちなものが多い。そこに注目して、よく使われるシェーディングはあらかじめビルトインしておき、グラフィックデザイナーだけである程度の作業をできるようにしてしまおうというのが「DAIKOKU」なのだ。

 その結果、「なんでも作れる」というような柔軟性は犠牲になってしまっているが、「近年のシェーダーのフィーチャーをほぼ網羅」するほど表現技法を片っ端から部品として用意しているため、よほど特殊な表現がしたいのでないかぎり、障害にはならない。それよりも、ゲーム開発者がレンダリングパイプラインを即座に構成でき、極めて負荷の低い開発が可能というのがウリになるようだ。

【シリコンスタジオ「DAIKOKU」】
「プログラマがシェーダーを書かなくて良い」グラフィックスエンジンとは、思い切ったコンセプトだ。しかし、それでもアーティストの工夫次第で一通り以上の表現ができてしまうのは確かなことである。質実剛健主義に基づいたミドルウェアと言えるだろう

今風のポストエフェクトをあらかた網羅するシーンエンジン「YEBIS」。柔軟なスケーラビリティによる、画質とパフォーマンスの調整自由度が特徴だ
 もう一方の「YEBIS」は、モデル描画を担当する「DAIKOKU」の上位層としてシーン描画を担当するライブラリである。こちらも最新のシェーダー機能を網羅したものになっており、フルシーンタイプのポストエフェクト機能を多数備えている。HDR世代のグレアやライトブルーム、トーンマップといった技法から、現実のカメラで起こるゆがみ、ボケなどの現象を再現する光学ミュレーション、カラー補正、ブラーなどの表現をサポートする。

 考え方としては「DAIKOKU」に似ており、膨大に実装されているエフェクトから必要な物を取捨選択して構成するという、こちらもお手軽に実装が可能なコンセプトをとる。各エフェクト技法はかなりスケーラブルな調整ができ、非HDR環境でも動作する疑似表現から、HDRバッファを使用する「ほんもののHDR」まで、詳細な知識なく、「簡単なパラメータ調整だけでも充分な効果」を得ることができる。

 リアルタイムデモで見た映像は、画面上のバーやボタンを操作するたびに次々に映像が変化していった。そのクオリティも非常に高い。その「DAIKOKU」、「YEBIS」は別々に使うことも可能で、例えば「DAIKOKU」だけを使ってカスタマイズし、各デベロッパーのシーンエンジンに組み込むこともできる。実際にそのような形でゲームを開発しているスタジオもあるとのことだ。

 というわけで、「DAIKOKU」と「YEBIS」は、無限の拡張性を誇る一般のグラフィックスエンジンとは、明らかに異なるマーケットゾーンを直撃するミドルウェアなのである。とにかく時間と労力の掛かるグラフィックスプログラミングに、必要充分な機能をなるべく簡単に使えるようパッケージ化したこの製品群は、1プロダクト単位で完結するパッケージソフトの開発に非常に向いていそうだ。

【シリコンスタジオ「DAIKOKU」&「YEBISU」】
デモではリアルタイムにレンダリングオプションを切り替えながら様々な高品位なエフェクトを実演していた。プラットフォームはDirect3D、Xbox 360、プレイステーション 3などに対応し、マルチプラットフォーム開発に用いることができる

【シリコンスタジオ「ALCHEMY」】
統合ミドルウェア「ALCHEMY」は、沢山の一流ゲームで使われている製品だ。マルチプラットフォームの柔軟性が特徴で、「ALCHEMY」の権利をもつACTIVISIONでは7機種同時開発・同時リリースという離れ業もやってのけている


■ ニンテンドーDSの開発現場で大活躍する国産2Dオーサリングツール「SpriteStudio」

3Dづくめの最新テクノロジーが多数紹介される中にあって、開発者のための実用性に溢れていたのが2Dツールである「SpriteStudio」
 最後に、ニンテンドーDSのゲーム開発現場で強力に使われているグラフィックツールを御紹介しよう。3Dグラフィックスばかりがクローズアップされるこのご時世、意外と盲点になっているのが2Dのグラフィックツールの進化だ。DS向けのタイトルでは3D機能をほとんど、あるいは全く使わずに制作することも多いため、この分野でのツール需要というのは少なからずあるようだ。

 株式会社ウェブテクノロジからのプレゼンテーションで紹介された「SpriteStudio」は、そんな2Dベースのゲーム開発現場で重宝されているツールだという。このツールはいわゆるスプライトベースのアニメーション作成に特化したアプリケーションで、プログラマの手を借りずに、2Dスプライトを使ったアニメーションからシーンの演出まで、軽快な操作性で実現するものだ。

「SpriteStudio」利用事例として紹介されたDS用「ビックリマン大辞典」
画像パーツを配置し、キーフレームを打ってパーツの状態をマウスで変更すると、自動的にアニメーションになる
 現場の声を代表して本製品を解説したのは、フロム・ソフトウェアのグラフィックデザイナー、井出健仁氏。2007年4月に設立された「3 O'CLOCK(スリーオクロック)」ブランドで、DS用ソフト「ビックリマン大辞典」など従来のフロム・ソフトウェアのカラーとは異なるタイトルでグラフィック制作を担当する人物だ。

 井出氏が2Dグラフィックツールに求めていたのは、アニメーション制御を手軽に行なう方法だったという。1枚1枚の絵を作り出すために必要なツールについては優秀なアプリケーションが多数あり非常に恵まれた状況にあるが、一方で、複数の絵を構成しアニメーションさせたり、ひとつの演出シーンを作り出す作業にはどうしてもプログラマの出動が必要となってきたため、なかなか効率のよい開発ができなかったのだそうだ。

 そこで「SpriteStudio」である。このツールは、いわば2Dスプライトにおける「Adobe AfterEffect」のようなもの。画像を編集する機能ではなく、画像の一部を切り抜いてシーンに配置したり、画像を切り替えてアニメーションさせる。また、タイムライン上にキーフレームを設置して、キーフレーム間で位置や角度、大きさなどを変えてアニメーションさせるための機能に特化したものだ。

 井出氏が実演を行なったのは「ビックリマン大辞典」での、カードコレクションを次々に見せていくシーンだ。このシーンでは複数のカードが次々にスクロールしていき、周辺の装飾(『第1弾!』などの書き文字)がズームしてアニメーションする。こういった挙動をいちいちプログラマが作るのは少々骨だし、できたものを変更しにくいが、「SpriteStudio」を使えばタイムライン上にキーフレームを打ってマウスで状態を編集するだけで、なめらかなアニメーションができてしまう。2Dシーン作成向きの相当強力なツールなのである。

2Dに特化したアニメーションオーサリングツール「SpriteStudio」。最新版の「Ver.2」では、アニメーションを1つのパーツとして使える機能や、キーフレームごとに設定するオブジェクトの属性を細かく設定できるようになる

 井出氏は、この機能のおかげで、製品の開発が非常にスムーズに進んだと正直に告白した。プログラマの手を煩わせずにコンテンツを作り出せていけるので、2重の意味で効率的に作業を進めることができるようである。また、DSでは2Dスプライトを使った演出が主流といえるほど多方面で使われているため、「SpriteStudio」を他のプロダクトでも使いたいという要望は強く、新バージョン「SpriteStudio Ver.2」への期待も高いようだ。


 ゲーム開発では、個々の作業効率が向上することによって、結果的にコンテンツ全体のクオリティが上がるということが往々にしてある。基本的な開発がスケジュールどおりに進めば、十分な時間をクオリティの洗練に振り向けられるためだ。

 今回のフォーラム「GTMF 2008」で公開された中だけでも、3D開発においては前述の「Virtools」がプロトタイピング用途としてあり、2D開発においては最後に紹介した「SpriteStudio」がありと、適材適所で優れたツールが存在することが、面白いゲームが生まれるインフラとなるわけである。一般ユーザーの読者の皆さんも、いつも触れているゲームを「作る側」の視点で眺めてみてはいかがだろうか。プレイするだけとは違った意味での面白さが見えるかもしれない。

□Game Tools & Middleware Forum 2008のホームページ
http://www.webtech.co.jp/gtmf2008/
□CRI・ミドルウェアのホームページ
http://www.cri-mw.co.jp/
□三徳商事のホームページ
http://www.san-toku.co.jp/
□シリコンスタジオのホームページ
http://www.siliconstudio.co.jp/
□ウェブテクノロジのホームページ
http://www.webtech.co.jp/
□関連情報
【6月4日】「SIREN NT」、「忌火起草」PS3ホラーゲーム開発の実例
Cellコンピューティングが実現する“真の恐怖”
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080604/gtmfps3.htm
【6月4日】東京大手町にて「Game Tools & Middleware Forum 2008」が開催
今年も盛況。プラットフォーマーの開発環境に対する取り組みに注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080604/gtmf_01.htm

(2008年6月5日)

[Reported by 佐藤カフジ]



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