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アンラボ、オンラインゲームのトータルセキュリティサービス事業を発表
クライアントPCからゲームサーバーの保守、監視まで、トータルでソリューションを提供

5月15日開催

会場:六本木アカデミーヒルズ

 株式会社アンラボは、5月15日、六本木アカデミーヒルズにおいて、オンラインゲームのトータルセキュリティーサービス事業について発表会を行なった。単一の新製品の発表会ではなく、既存の製品を統合した形で、オンラインゲーム分野への普及浸透を目指していくというもので、同社はこれまでエンタープライズ分野に主にセキュリティーソリューションを提供してきたが、今後はオンラインゲーム分野にも注力していく。価格は基本サービスプランで、月額2万円から。日本のオンラインゲームパブリッシャーをターゲットに、初年度の販売見込みは2億円としている。


■ 韓国最大手のセキュリティベンダーによるオンラインゲームに特化したトータルセキュリティサービス

アンラボ代表取締役社長山口一郎氏。アンラボの今後について「業種業界に特化したセキュリティソリューションを提供していく」とコメント。2008年の事業目標がオンラインゲームに対するセキュリティソリューションの提供ということだ
アンラボ副社長ムン サンジュン氏。ITビジネス研究会やOGC等のセミナーでは韓国RMT市場の語り手として著名。しっかりとしたセキュリティソリューションの導入こそが、不正なRMTによるゲーム世界の崩壊を防ぐという明快なスタンスを持っている
アンラボが提供するトータルセキュリティサービスは、オンラインゲームを運営、サービスしていくために必要な各レイヤーに対するセキュリティソリューションをトータルでサポートするというものだ
 アンラボは、韓国におけるセキュリティソリューションの分野でトップシェアを誇るメーカー。2002年に日本法人を設立し、BtoBを中心にビジネス展開してきた。エンドユーザー向けにも、アンチウィルスソフト「V3 ウィルスブロック」シリーズをインターチャネル・ホロンを通じて発売している。BtoCに関しては、積極的に社名を出すことはしていないため、日本で展開している様々なセキュリティベンダーと比べると、日本での知名度は今ひとつだ。

 一方、韓国では大手企業や官公庁への独占的導入を軸に、あらゆる業種で圧倒的なシェアを誇っている。その中で唯一、韓国でシェアを奪われている分野が、韓国のメジャーな輸出産業のひとつであるオンラインゲームである。この分野では同じく韓国のINCA Internetの「nProtect GameGuard」がトップシェアを維持し続けている。日本でもテクノブラッドを代理店に、多くのオンラインゲームパブリッシャーが導入している。

 日本では、サードパーティー製のセキュリティソリューションの導入そのものが、発展途上の段階にあるものの、導入事例の中では「nProtect GameGuard」の寡占状態にある。しかし、「nProtect GameGuard」導入直後にサーバー遅延やログイントラブルが複数のタイトルで頻発し、メーカーにとっては、セキュリティが強化された一方で、新たな運営リスクを抱え込む結果となった。メジャータイトルでは「ラグナロクオンライン」が導入時にずいぶん苦しんだことが記憶に新しい。

 今回、アンラボが発表した「オンラインゲームトータルセキュリティサービス事業」は、そうした背景を踏まえてのもので、「nProtect GameGuard」の寡占状態だった日本のオンラインゲーム市場に強力な競合メーカーが参入したことになる。「nProtect GameGuard」に対抗するアンラボのソリューションとしては「HackShield Pro」があるが、これは単体ですでに複数のメーカーが導入している。具体的な導入例としては、ゲームオンの「RF Online」、JC Grobalの「フリスタ」、そして現在、再開発しているガンホーの「ラグナロクオンライン II」などが挙げられる。

 アンラボの「オンラインゲームトータルセキュリティサービス事業」は、ゲームクライアントをハッキングから守る「HackShield Pro」に加えて、ゲームクライアントを導入したエンドユーザーのPCに自動的にアンチウィルスソフトを組み込む「My SaaS」、運営内部の監視や管理者権限を制御する「White Shield」、スタッフのPCのセキュリティを守る「V3 ウィルスブロック」、アンラボによるネットワークセキュリティ監視サービスなどを組み合わせたトータルサービスとなる。

 これにより防げる不正行為としては、オートプレイ(オートマクロ)、スピードハック、ファイル変更MOD、メモリ変更MOD、パケット変更MOD、BOT、ノンクライアントBOTなど。もちろん、常に新種が登場するため、完全に対応しきれるわけではないが、新種に対応したソリューションの提供が随時受けられる。逆にサポートしないものとしては、IDとパスワードを盗むキーロガーの類。これは別途、ユーザーが自己責任でウィルス対策ソフトを導入して自衛する必要がある。

 導入メリットとしては、個々にセキュリティソリューションを導入するよりコストが安く済み、年間契約という業界の慣例を破って月間契約とすることで、オンラインゲームではありがちな不意のサービス終了でも、終了以降の無駄なコスト発生を抑えられる。といっても、アンラボのあらゆるノウハウを詰め込んだトータルサービスとなるため、月間あたり数百万単位のコストが発生することは避けられない。一発ですべて揃うというサービスは、これから本格的にオンラインゲームビジネスを開始しようというメーカーにとってはありがたいソリューションとなるが、まずは部分部分での導入という流れとなりそうだ。

 同社では今回の発表に前後して、水面下で営業活動を行なっており、大手各社から良い手応えが得られているという。アンラボの発表によれば、新種のコンピュータウィルスの約2割が、オンラインゲームユーザーのみをターゲットにしたものだという。この事実をオンラインゲーム各社は重くとらえ、ユーザー保護の観点から、セキュリティソリューションの導入が恒常化する流れになることを願いたい。

【トータルセキュリティサービス】
アンラボのトータルセキュリティサービスは、オンラインゲームの運営全般に対して、強力なセキュリティソリューションを提供するサービスだが、唯一の残念なポイントは、右下のスライドが示しているように、個人ユーザーの悩みである、キーロガーやトロイの木馬によるアカウントハックに対するセキュリティソリューションは対象外となるところだ。ゲームプレイとコミュニティ活動は表裏一体であり、「オンラインゲームは安心」と言われるようになるためには、避けて通れないポイントだろう

【不正行為の実例】
ムン氏は、不正行為の実演も行なった。いずれもWeb上で簡単に入手できる類のツールを使った実演だったが、スピードハックツールで、PCの時間の進みを早めて時計の秒針を高速回転させると会場からは驚きの声が上がった。そのほかにはオートプレイツールを使ってマインスイーパを早解きしたり、メモリハックツールを使って、ピンボールを実行中にアプリケーションが使用しているメモリの位置をサーチし、その内容を書き換えて、高得点を得ていた

【契約イメージ】
オンラインゲームに特化したトータルサービスとなるため、βテストの段階から、サービスレイヤーを分けて丁寧にサポートしていく。中央のスライドは、おそらくクローズドβとオープンβの位置が逆だが、クローズドβから正式サービス終了までをトータルサポートするのが基本スタンスとなる

□アンラボのホームページ
http://www.ahnlab.co.jp/
□「OGC2008」のホームページ
http://www.bba.or.jp/ogc/2008/
□関連情報
【2007年9月12日】アジアITビジネス研究会、韓国の最新RMT事情を報告
韓国RMT市場は1,250億円規模、7月からRMTに課税開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070912/korearmt.htm

(2008年5月15日)

[Reported by 中村聖司]



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