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株式会社ジー・モードは4月17日、同社の新事業戦略説明会を開催した。発表会では、代表取締役社長の宮路武氏が、同社が新たに掲げる“+CCE”戦略と、それに基づいて展開する新サービス「おしゃべりテレビ」ならびに「勝手サイト」について説明した。 ■ +CCE提供企業を目指すジー・モード
宮路氏は、「これからのインターネットサービスにおいて、カジュアル、コミュニケーション、エンターテイメントが競争の軸になっていくと考えている」という。この3つの柱をもって、まったく新しいものを生み出そうというのではなく、今あるものの価値を高め、誰でもコミュニケーションやエンターテイメントを楽しめる「カジュアル・コミュニケーション」を創出するという。 例えば、テレビは誰でも扱える極めてカジュアルなもので、エンターテイメント性もそれなりにあるが、コミュニケーション性には乏しい。またmixiを代表とするSNSは、コミュニケーション性は優秀だが、利用するにはPCや携帯電話などである程度の知識が必要で、単純なエンターテイメント性は薄い。これらの不足部分を補うようにして、より競争力のある、新たなサービスを創出するのが同社の狙いだ。
この+CCE戦略において具体的に進行しているサービスとして紹介されたのが、テレビ視聴ソフト「おしゃべりテレビ」と、勝手サイトの運営である。
■ 「ながら視聴」を前提にした+CCE化テレビ視聴ソフト「おしゃべりテレビ」
例として出された映像では、左側にテレビ画面、右側にチャットができる釣りゲームが表示されていた。釣りの参加者は全員、左側の同じテレビ番組を視聴している。釣りをしながらテレビを見て、互いにテレビや釣りについて会話するというものだ。 このサービスについて宮路氏は、「テレビを見ながら、みんなが独り言を言うというものを考えた」とコンセプトを説明。視聴ソフトというサービスを選んだ理由については、テレビを見ながらインターネットなどを利用する「ながら視聴」の存在があるという。「ながら視聴」をするのであれば、最初からそれを前提としたサービスを用意し、さらにコミュニケーション性を盛り込んで、より楽しいサービスを提供しようというわけだ。 テレビを見ながら、PCでチャットをしたり、携帯電話でメールを送ったりする、というのは別段珍しいものではない。ポイントは、これを1つのアプリケーションにまとめ、参加者全員が同じ映像を見ているという前提を用意することだという。これによってコミュニケーションもスムーズかつ活発になる。 もう1つの理由は、タイミング。「今年は北京オリンピックの年で。みんなでワイワイ騒ぎながら見られるサービスなので、スポーツなどに非常に有効なのではないかと思っている」、「地デジ対応PCや、PC向けチューナー、ワンセグ携帯、インターネット対応テレビ、ゲーム機など、ハードウェア面で放送と通信の融合が進んでいる。土壌は今まさにできつつあると考えている」という2点を挙げた。 サービスではさらなる工夫も考えられている。見せ方は釣りばかりでなく、参加者のアバターが並んで表示されている状態でスポーツ観戦するものもあった。ほかにも、「巨人阪神戦で、テレビ画面の左に巨人、右に阪神のファンが並んで応援合戦をする」というように、インターフェイスの変更も可能。サービス制作においては、「視聴者が100人いるうち、99人は見ているだけであろうという想定で作っている、見ることに徹底したソフト。1人で見ていても楽しくなるような仕掛けも考えている」という。 なお、このサービスはあくまでテレビ視聴ソフトであり、YouTubeやニコニコ動画のような動画投稿サイトではない。そこが既存サービスとの差別化になるという。 プラットフォームはPCで、今夏に実証実験を行なうとしている。宮路氏は、「将来的には他のプラットフォームにも乗せていきたい。ただこのサービスがどれだけ面白いのか、どれだけ人気が出るのかは、やってみないとわからない。実験によってでてきた結果を見たい。オリンピックにあわせてクローズドな形でβサービスを始めたい」としている。
このサービスについて宮路氏に詳しく話を聞いたところ、今回はテレビ視聴ソフトとして発表しているものの、「映像は必ずしもテレビである必要はない」という。ユーザーが同じときに同じものを見てさえいれば、それが話のネタとなってコミュニケーションが取れる。今後はこの発想で、さらにサービスが広がっていくのかもしれない。
■ 公式サイトを持つジー・モードが、勝手サイトでサービスを展開
そのジー・モードが勝手サイトの展開を決めたのは、公式サイトではユーザー間でチャットのような自由なメッセージのやり取りを認めていないため(一部のモバイルゲームでは、全てのメッセージをサービス会社がチェックするという力技で対応している)。これではコミュニケーションが行なえず、+CCE戦略を実現できない。 この勝手サイトのターゲット層は、コミュニケーションに対して消極的なユーザー。既存のSNSなどでコミュニケーションに疲れて脱落したような人や、インターネットへのリテラシーが低く、楽しさを享受できていない人を徹底的に狙っていくという。勝手サイトで知名度の高い「モバゲータウン」では、20歳未満の若年層ユーザーが非常に多くなっているが、「この層は時間があって面白いコンテンツを貪欲に探す傾向にあり、サイトのコンセプトと合わない」と、明確に違う層を狙っていくことを示した。 中でも特に注目しているのが、F1層(20~34歳の女性)だという。この層はモバイルSNSの利用率が高く、口コミも活発で、モバイルコマースの中心顧客となっており、広告価値が最も高いというのがその理由。また同社の公式サイトにおいて、20代から30代のユーザーが他社のゲームサイトに比べて高く、中でもF1層の利用率が特に高いため、シナジー効果も期待できるとしている。 ここで用意するコンテンツとして、SNS「ひとこトーク」と、検定サイト「ちなみに~検定」の2つを発表した。「ひとこトーク」は、既存のコミュニティサイトよりも、楽しく、簡単で、居心地がいいという、「カジュアルコミュニティ」の構築を目指すという。今夏より関係者向けの試験運用を始める予定としている。 「ちなみに~検定」は、クイズ形式の検定サイト。問題はエンターテイメントのプロが制作した質の高いものにするとともに、解答後に「ちなみに~」で始まる雑学を提供する。さらに、解答したユーザーがコメントをつける機能も用意し、自分でもうんちくを語ったり、ユーザー同士が意見や感想をいえるコミュニケーションの場を提供するという。こちらは現在関係者向けのβテスト中。宮路氏によると、「現在は問題数が多すぎて1回10分くらいかかるので、短くすることを考慮している」という。
これらの+CCE戦略におけるサービスは、密接に連携して動いていくことで、相互にサイトの売り上げを高めていけるような構造を考えているという。現在はプラットフォームの違いもあるが、最終的には+CCE戦略のコンテンツとして、1つのまとまったものを形成していくことが理想といったところだろう。
■ 既存事業の整理も進行。モバイルゲームを使ったプロモーション事業も強調 このほか、「抜本的改革と拡充」と題して、既存の事業に関する発表も行なわれた。宮路氏は、「+CCE戦略を進める上で、過去の問題にあった事業を撤退するべく改革している」とし、ガンホー・モードの株式譲渡と、モバイル・リサーチの100%子会社化について、損失処理が全て完了したことを報告した。このほか、シニア向け雑誌で高いシェアを持つユーリーグと提携し、合弁会社エージ ウェーブを設立。携帯電話を使った付加価値の高い広告販促サービスを展開するという。 次にモバイルプロモーション事業として、モバイルゲームを使ったプロモーション展開が紹介された。例として挙げられたドミノ・ピザのアドバタイジングゲーム「焼きたて! ドミノ・ピザ」では、ゲームをクリアすることでドミノ・ピザの割引クーポンを獲得できる。ユーザーが獲得した割引クーポンの使用率は10%と、他の広告に比べて極めて高い数字を示しているという。さらに「ピザのゲームをやってクーポンが出てくるのが重要。やってるとピザを食べたくなる」とゲーム制作におけるポイントについても語られた。 公式サイトにおける事業については、au、SoftBank向けのゲームコンテンツが業績不振であるという。この原因には、事業環境の変化による導線の狭窄と、従量課金によるリピーター確保の難しさがあるという。この対策として、今回発表した新規事業による新たな導線の確保、課金形態の月額会員制へのシフト、開発費や広告費の見直しを行ない、利益率を改善していきたいとしている。
さらに運営コストに関して、売り上げと連動しないコストが増大し、業績悪化に影響しているという。この最大の理由は、各キャリアが出す端末の種類が日増しに増大し、テストなどの管理コストが増しているためだという。ただこれについては、「もうそろそろ落ち着いてくるとは見ている。これによりコストを横ばいか下げる方向にしていきたい」と楽観的な見通しを示した。
今回の発表においては、既存の公式サイトにおけるサービスに行き詰まりを感じているという風に感じられる部分もあった。公式サイトであればユーザーの目に触れる機会が増えるというメリットはあるが、既に一定の地位を獲得した同社がさらに収益を伸ばすためには、抜本的な改革が必要だという結論に至ったようだ。 中でも今回は、携帯電話というプラットフォームから離れ、テレビやPCという分野に乗り出している。これについて宮路氏は、「携帯電話だけに事業を絞ろうとは考えていない」と語っており、ジー・モードの舵取りは+CCE戦略によって大きく変わっていくことになりそうだ。
ただ宮路氏は、「私はゲームプロデューサーであり、ゲームデザイナー。今回お見せしたものもエンターテイメント性が高く、ゲームだと思っている」とも語ってくれた。宮路氏自身、ジー・モードがゲームを提供する企業であるという考えには変わりがなく、面白いものを提供していくという姿勢は今後も変わらず続けてくれそうだ。
(2008年4月17日) [Reported by 石田賀津男]
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